早いもので、右横にタイトルとして載せてある「獣医教育方針2018」を今治キャンパスに赴任された40名を超す先生方に講義したのが、丁度1年前でした。

 1年後の2019年4月2日に今治キャンパス(講義棟7階の会議室)で、今年度新しく赴任される先生方31名に、FD(Faculty Development) の一環として、本獣医学部の教育方針を紹介することになりました。昨年度のスライドを見ると、実績がないので理念を述べることが多かったと思います。また、十分に整理できていなかった気がします。かなりの部分を改訂し、「学部教育方針2019」としました。

 「合格者の方へ今治獣医」は新入生と親御さんのための紹介です。この「学部教育方針2019」は、教える側の先生がたへの解説です。21世紀の課題と獣医学の役割は?なぜ、獣医学部の新設が必要であったか?そのニーズは、ミッションは?どのような人材を育成するのか?そのためのポリシー(DP, CP, AP)は?新設学部の特徴は?ハード・ソフトは?この1年間の成果等を振り返って説明しました。

 

 最初は、21世紀と獣医学という視点で考えてみました。この獣医学部で育っていく人材は、21世紀の大部分を背負っていく人材です。最初に、20世紀の振り返りと、その中で明らかにされた21世紀の課題。関連して開催された国際会議、その中で採用されたミレニアム目標(MDGs:Millennium Development Goals)及び、その改訂版としてのSDGs(Sustainable Development Goals)と獣医学の関係を考えてみました。

 

 20世紀は驚異的に社会・文化が進みました。しかし、その分、種々の問題を産み出しました。20世紀を振り返ると、科学の驚異的な進展は、20世紀初頭に考えたようにはならず、その進歩は必ずしも平和や幸福に結びつくとは限らなかったという点があります。また、経済活動の拡大や高度成長至上主義は自然破壊や格差の拡大を産む結果となりました。20世紀の人間中心主義、自己中心の一国主義は矛盾の拡大をまねきました。

 21世紀を迎えて、その目標は「持続可能な社会(sustainable society)」の確立となり、克服すべき課題として、国際的な「環境保全」「感染症統御」「食料安定供給」がメインテーマとしてあげられました。具体的には、ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals, MDGs)として8つの目標が作成され、2015年に継続・改訂版としてSDGs(Sustainable Development Goals)が示されました。期間は2016年から2030年です。

 

 環境保全の重要性は、40億年の歴史を持つ生物が創生した持続可能な食料・環境・エネルギー循環を維持すること、環境汚染・環境破壊により、この循環を絶つことが最も危険であることを認識する必要があるということです。大気も土壌も水も、見えない微生物によって維持されています。動物も植物もミトコンドリア(αプロテオ菌)と葉緑体(シアノバクテリア)による物質循環(糖と酸素の供給、炭酸ガスと水の排出、炭酸ガスと水と太陽エネルギーから糖と酸素を産生する)によって生きているのです(One Worldという認識が大事)。

 

 食の問題では、第一に食料安定供給(食の安全保障)、そして食の安全、食の防衛(アグロテロ)が国際的な課題であるとされました。食の問題は3階建てで、土台である食の安定供給が確保できなければ、食の安全体制は確立できませんし、食の安全が確保できなければ、食の防衛体制を敷くことはできません。食の安定供給に関しては、途上国の人口増加と動物性蛋白質の供給が問題です。途上国における人口増加により、1960年が30億人、2011年が70億人という現状です。動物性蛋白質の需要では、肉の消費が2010年で3億トン、2040年には5億トンが必要、魚介類では2010年の消費が1.2億トン、2040年が1.6億トン必要と言われています。

 

 感染症の統御では、人・動物と物の移動の増加、生活圏の拡大、異常気象などに伴い多発する新興・再興感染症、家畜の越境感染症、人獣共通感染症の有効な統御法の開発が求められています。人の健康だけの求めるのでなく、家畜の健康、野生動物の健康、自然の健全性と生物の多様性が一つにつながっているという認識(One Health)が大事だということです。

 まとめると、20世紀の高度経済成長主義、人間中心主義、自国優先主義を見直し、人間を特別扱いするのではなく、生物の一員としてヒトを再認識し、生物の多様性と共生、協調を基本に置くという戦略、そして生命科学(ライフサイエンス)がそれを支えるというコンセプトです。

 

 こうした点から、大学教育の中の獣医学というものを考えてみると特徴があります。大学教育は人文科学の文科I類の政治学、文科II類の経済学、文科III類の教育・哲学のいずれも、「人間社会を知る」という人間を中心とした、人間のための学問です。また、自然科学の理科I類の工学、理科II類の薬学、農学、理科III類の医学のいずれも、「人間のための研究・開発」という人間を中心とした人間のための学問です。

 しかし、理科II類の理学部は、宇宙物理学、量子力学、動植物学など必ずしも人間中心の学問ではありませんし、霊長類学は文系・理系を合わせた比較社会学です。獣医学は、比較動物学を基本に置く点で、ヒトと動物を同じ視点で考えます。獣医学は、ライフサイエンスの基礎研究という21世紀の課題を担える人材の養成に最も適している学問ではないかと思います。

 

 次いで、獣医学教育の国際動向についてみてみましょう。国際獣疫事務局(OIE、国際動物保健機関)は、2009年10月に世界の獣医系大学の学部長、各国の行政獣医官を集め、「より安全な世界を形成するために進化する獣医学教育」をパリで開催しました。これが、OIEが獣医学教育に参画し、コア・カリキュラムを世界に示すきっかけでした。世界の獣医学教育の質を高め、動物感染症の制御、動物由来食品の安全性確保、野生動物保全、動物福祉などOIEの関連分野を中心に国際的通用性を持つ獣医学教育モデル・コア・カリキュラムを作成しました。その後、約2年間隔で国際会議を開催しています(2011年リヨン、2013年ブラジル、2016年バンコク)。

 バンコクで開催された第4回会議では、各地域におけるOIEが推奨する獣医学教育コア・カリキュラムの遂行状況、教育改善手法が紹介されました。

 当時の、OIEの事務局長であるバーナード・バラは第1回の会議で、「より安全な世界を形成するために進化する獣医学教育」を構築する上では、基礎となる獣医師の教育(基礎教育、専門教育、卒後教育、社会人教育)の設定が重要であること。これからの新しい獣医学教育で育った人材は、公共獣医事(Veterinary Service)を担う者として、「政策の監視、疫学調査(サーベイランスの担い手)、情報ネットワーク構築、官民のつなぎ役(レギュラトリー科学者)」などの役割を果たすことが求められていることを強調しました。

 

 他方、米国では小動物臨床に重点が偏るきらいがあるようです。公共獣医事分野やライフサイエンス分野の獣医師の養成への配慮が不足しています。そのため、米国では政府主導で獣医師の新しい人材養成と必要部署への配置体制の整備などが進みだしました。

 具体的には、人獣共通感染症、家畜越境感染症への対策、食の安全保障・食の安全・食の防衛対策、食料貿易拡大への対応、アグロテロやバイオテロへの対策などです。大統領の諮問委員会(総合監査機関、農務省、食品医薬品局等の国家機関などの委員)が基本的戦略を答申し、トップダウンでいくつかの施策が決定され、実行されています。

①獣医師の増員計画です。これまで全国に28獣医系大学が設置されていましたが、約30年ぶりに、新規に3大学を設置することとなりました(既に設置されました)。

②メリーランド州、ポート・デトリックのP4(BSL4)研究所から、新規にカンザス州に大規模な集中的P4(BSL4)施設を建設する(5か年計画)。

③感染症やバイオテロ等の危機管理対応のため、専門獣医師の不足州に獣医師を重点的、計画的に配備する。州予算でなく連邦政府(国家)予算で州に配備する獣医学生に学費支援を行う(3年間の勤務で奨学金の1/4返還免除、6年間の勤務で半額免除)。このプロジェクトは、すでに2011年より実施しています。

 

 欧州では、EU圏内の獣医系大学が協調し、共に獣医学教育の質的向上と発展を目指すためにヨーロッパ獣医系大学協会(EAEVE)を設立しました。EU圏内では、事実上、国を越えて動物性食品などは自由に移動するので、安全性を監視し、品質保証をするための獣医師の教育レベルが同一である必要があります。EAEVEは、①EUの獣医師の技能を高め、EU諸国の畜産物に関するリスクを最小限に抑えること、②EAEVE認証に関しては、EU域内では、学生が認証を受けた大学教育を学修した資格として自由に移動できる点にあります。

 また、フランスではリヨン大学にOIEの唯一の「獣医教育コラボレーションセンター」を作り、獣医公衆衛生専門家の育成を進めています。既存の獣医大学の入学定員を一律増加させています。英国では既存の6獣医大学にたいし、新たに3獣医系大学を新設させています。 アジアでも台湾、香港、ネパール、マレーシア、カンボジア、シンガポールなどが獣医系大学の新設や新設計画を進めています。世界の獣医教育は、急速な勢いで動いています。

 

 国際動向に次いで、日本国内での獣医学に対するニーズの変遷と新獣医学部の設置について考えてみたいと思います。

 戦後の獣医師へのニーズとして、食料確保のための畜産振興支援から獣医学はスタートしました。そのため、家畜衛生や産業動物の個別診療技術の高度化が進みました。私の学生時代でも、学会の発表の多くは家畜等の産業動物に関するものがほとんどで、実験動物やペット動物(伴侶動物)に関する発表は稀でした。

 その後、生命科学(生化学、分子生物学、発生工学等)の著しい進展を受け、動物を個体として扱う基礎獣医学の発展が続きました。ゲノム科学の時代を迎えた現在でも、ライフサイエンス分野の基礎獣医学研究者に対するニーズは高いものがあります。

 高度経済成長を経て、核家族化や少子化が進行し、3世代家庭が崩壊し、ヒトの代替としてペット動物が伴侶動物として家族同様に扱われようになりました。そのため小動物高度獣医療技術の開発、導入が進み、獣医学生の就職希望のトップになりました。

 

 その後、飽食時代を迎え、消費者は健康ブームを反映し、食の安全性志向を強めました。そして獣医師に食の安全管理を求めました。2001年のBSE(牛海綿状脳症)の発生は安全神話の崩壊、「食品安全基本法」の制定へとつながり、内閣府に食品安全委員会が設置されました。BSE調査専門委員会をはじめ専門委員会の委員の約半数は獣医師という状況でスタートしました。国際貿易の拡大・食料自給率の低下は、この傾向を一層際立たせています。

 1999年に施行された「感染症法」に動物由来感染症が入れられました。1類から4類までの感染症のほとんどが動物由来感染症です。また、持続的な成長産業開発の一つとして期待されるライフサイエンス・イノベーションにも獣医師の活躍が期待されています。

 このように約半世紀の間に獣医師に対するニーズ、獣医師の職域は拡大の一途をたどっています新しい獣医学教育は、こうした状況に対応し、社会ニーズに応えられる新しい専門獣医師を養成する必要があります。

 

上述したように、新設獣医系大学の設置が認められなかった間に、獣医学領域の研究・教育、社会ニーズは大きく変貌しました。50年前にはほとんど存在しなかった伴侶動物医療が、今や卒業生の約半分を占めています。固定化した学生定員のために、ある職域への就職が増加すれば、他の領域は縮小するか、需要に応える供給が出来なくなります。本来であれば新しいニーズに応えるために、新しい分野を設置し、定員数を増加させ、対応する専門獣医師を養成するべきです。

国家戦略特区で新しいニーズがあるといわれる分野は、図に示すように、これまで長年にわたって獣医師の供給不足が続いてきた分野です(製薬・創薬研究者、人獣共通感染症・家畜感染症等の研究者、水際対策や危機管理の出来る防疫官、公衆衛生獣医師、産業動物臨床獣医師)。こうした分野は縮小するか、供給不足で高齢化を迎え危機状況にあります。これは獣医師の職域偏在の問題です。欧米のように新しい獣医系大学を設置し、基礎研究分野、公共獣医事分野、小動物臨床分野の3つの分野の専門獣医師を等分に社会に輩出することで職域偏在は解消されると思います。

 

 これまで約半世紀(1971年~現在まで)、獣医学教育の改善・充実のために獣医系大学は、多くの試みを行ってきました。①就学期間を4年から6年へ変更し、新しいニーズに対応する教育内容の多様化の試み、②小規模国立大学の再編統合(北大、東大、東北大、九大へ再編統合する案)、③全国共通のコア・カリキュラムの整備と専門獣医師養成のアドバンスト教育の配置、④共同獣医学部、共同教育課程の設置、⑤大規模私立大学の教育充実(水増し入学定員の是正)などです。しかし、これらの試みは、いずれも成功したとは言えない状況です。

 その結果、これまで述べたように、新しいニーズに対応できる獣医師の供給不足問題がより深刻化し、獣医師の職域偏在(過剰職域と不足職域)及び地域偏在(獣医師不足の道府県)が起きています。原因は明瞭で獣医学生の定員を固定化したことにあります。新しいニーズに応えるには、新しい分野の教育を行い、新しい専門獣医師を養成する必要があります。固定した入学生数では、学生も増員できないし教員も増員できません。新しい分野の教育を行う人材の養成もできません。

 第1期、第2期の指摘から明らかなように、1970年代から既に今日の獣医学教育の弱点が明確に記載されています。読み直してみても、公衆衛生獣医師、食料の安定供給と食の安全、リスク評価、高度獣医療、ライフサイエンス分野の研究者の養成に関する社会ニーズと獣医学教育の対応の不備が述べられています。その内容は、半世紀たった今もって変わっていません。

 

 特に第2期では、新しい獣医大学(学部)を開設し、既存の獣医学科を廃止し、国際対応の出来る獣医師を養成するアドバンスト専門教育をするという構想でした。10の既存国立大学の獣医学科を廃止し、北大、東北大、東大、九州大の4つの大学院大学の獣医学部として生まれ変わる案でした。72名以上の専任教員を配置し、再編統合した国立大学でスケールメリットを生かし、スクラップ・ビルトにより、新しい分野をカバーした獣医学教育を進めようというのがコンセプトで下。しかし、成功しませんでした。

 大学基準協会案、農学部長会議、その後の文科省の協力者会議でコア・カリキュラムを決めた際の想定される教員数、大学基準協会の第三者評価の基準でも70人以上に近い教員数が想定され続けました。しかし、実現することはありませんでした。

 現在は、獣医学教育改革運動の第3期の延長線上にあるといえます。国立大学獣医学科の護送船団方式を解除した共同学部が成功したか?失敗に終わるか?はまだ明らかになっていません。5年間の文部科学省による後押しが、有効に作用したと考えたいのですが、検証・総括はまだ、行われていません。他方、新獣医学部の設置は、第2期に提案された構想の新しいバージョンと言えます。これまでとは違う戦略による、新しい獣医学教育の再編・充実の魁と考えられます。

 

産経新聞201746日と47日に新設獣医学部に関連した記事が掲載されました。愛媛大学農学部の阿部俊之助教授が、この問題を「政争の具」にしてはいけないという趣旨で発言されています。

 阿部教授は京大の農学研究科で博士号を取得し、米ネブラスカ州立大学客員教授等を経て、昭和59年から愛媛大学で研究を続けています。専門は植物の分子細胞生物学ですが、四国で畜水産分野を手がける研究者が少ない事から、この分野の研究で奔走することになりました。しかし、愛媛県には研究拠点がないため、必要な設備を求め瀬戸内海を渡り県外に出るしかなかったようです。

 そのため、産業振興のためにも四国に拠点が必要と力説しています。記事の概要を引用すると、「①文部科学省は「入学定員の取り扱いに関する基準」で獣医学部の新設を抑制してきた。愛媛県と今治市は平成19年度から15回にわたり、獣医師の定員増規制の地域解除を構造改革特区として認めるよう提案を繰り返してきた。②今治市は大学誘致を目指す「学園都市構想」を昭和50年に決定。用地は昭和58年の土地造成時から、高等教育施設を誘致する目的で、合併振興基金として40億円を積み立て、用意していた。」

 

 「③今回、獣医学部は国家戦略特区によって今治市に新設される。今治市は建設予定地として市の所有地を加計学園に無償譲渡し、開発経費として96億円を上限に助成することを決めている。④新設される獣医学部は愛媛県の支援も受け、農水産関係の公的部門がカリキュラムに組み込まれる。愛媛大学も施設の共同利用、学生の教育・研究に全面的に協力する方向で進んでいる。⑤「一部の国会議員やマスコミがこうした公的側面にふれないまま、あたかも疑わしい設立だとするように報じており、悪影響は計り知れない」。⑥現在では、獣医の扱う分野は幅広く、国際社会への貢献、家畜の感染病予防・診断、医薬品の開発、食の安全性確保などで重要な役割を担うようになっている。新設獣医学部は、愛媛大学と連携し生命科学分野の研究を進める。四国における水産・養殖漁業、動物や食品産業、新薬、医療機器といった関連企業への貢献も視野に入れている。」といった内容である。

 

 2016年11月9日に開かれた国家戦略特別区域諮問会議で、獣医師に対する国内外の新しいニーズに応えるために従来の規制を緩和し、広域的に獣医系大学の存在しない地域に限って獣医系大学を新設する方針が明らかにされました。新しい獣医学部が新設されれば、50年ぶりということになります。獣医学部の新設が、新しい医薬品開発のための創薬プロセスに必要な先端ライフサイエンスの研究を担う獣医師の育成や、国際的な家畜の感染症、動物・食料などを介して広がる人獣共通感染症の対応や水際対策をになう危機管理獣医師の育成に繋がること、それらが医療イノベーションや地方創成といった成長戦略や持続可能な社会の構築に必要なことから、新設獣医学部の立ち上げを加速し、規制緩和のための告示の改正を行うべきであるという方針です。

 

 岡山理科大学獣医学部は、私立大学の新設学部ですが、国家のミッションを受けています。それは、「世界に冠たる先端ライフサイエンス研究を行う国際教育拠点」と「感染症に関する危機管理(水際対策)人材の養成」です。

 このミッションに応えるために4つのテーマを決めました。動物からヒトへは、医学と獣医学を融合し、動物を用いた臨床研究の成果をヒトの治療につなげるOne Medicine, グローバル対応では、感染症の防御対策、食のリスク評価・管理などの国際対応の出来る獣医師養成(One Health)、危機管理学術支援拠点としてのローカル対応、及び生物多様性、環境保全、動物とヒトの健康を科学する基礎ライフサイエンス研究者養成(One World)でした。

 

 これらのことを加味して、獣医学部の理念は「動物とヒトの健康を科学する」としました。また21世紀の課題と学部のミッションを果たすためのキーワードとして、「一つの世界、一つの健康、一つの医学:One World, One Health, One Medicine」としました。

 地球上の生き物は「一つの世界」に生きているという生命科学(ライフサイエンス)、ヒトのみならず家畜、野生動物の健康、環境の健全性、すなわち「健康は一つ」という公共獣医学、動物の医学もヒトの医学も、その目的、ツール、ゴールは一緒であり、「一つの医学」であるという医獣連携獣医療です。

 

 3つのキーワードをカリキュラムに反映しようと考え、ディプロマポリシーから、専門教育分野をライフサイエンス分野、公共獣医事分野、医獣連携獣医療分野としました。

 ライフサイエンス分野は、獣医学の得意とする動物個体の特性を生かした基礎生命科学領域の研究です。創薬研究などでは、橋わたし研究(トランスレーショナル・リサーチ)で、基礎研究とともに、その成果を臨床研究に結び付けようというものです。

 公共獣医事は、家畜越境感染症、人獣共通感染症のコントロール、食料安定供給(食の安全保障)、食の安全(リスク評価と管理)、食の防衛、環境保全、国際調和とグローバル対応の出来る公共獣医師の養成を目的とする分野です。

 医獣連携獣医療分野では、ヒトと伴侶動物の超高齢化や加齢性疾患(老年性癌や認知症など)の共通性を重視し、もはやヒトと動物の医学の予防、診断、治療のツールやゴールが同一であるというコンセプトに立って、自然発症伴侶動物による医薬品や新規医療技術開発の臨床評価研究を進めようというものです。

 

 新設獣医学部には、他の獣医系大学にない4つの特徴があります。

1つは、獣医師(DVM)とそのパートナーとなる獣医関連専門家(VPP)を同時に育てるというものです。そのため獣医学部は2つの学科を同時に開設しました。基礎科目とアドバンスト科目の約1/3は、獣医学科と獣医保健看護学科で共通です。

2つ目は、獣医師、獣医関連専門家ともに3つの分野を明示し、それぞれ全国共通のコアカリキュラムの上に、3分野のアドバンスト教育科目群を配置しました。

3つ目は、教育と研究を調和させる新しいシステムとして、タコつぼ型の研究を廃止しました。教育は講座制、研究は講座をこえたプロジェクト制とし、個々の講座に研究室を置かないで、共通のオープンラボを作りました。

4つ目は、国内最大級の専任教員数を配置しました。研究業績を重視した教員任用を行いました。獣医学科75名、保健看護学科12名です。87名の専任教員でDVMとPVVを養成しようというものです。

 

 獣医関連専門家(VPP)は、獣医系の国際政府機関である国際獣疫事務局(国際動物保健機関、OIE,WOAH)が、国際的な獣医学コアカリキュラムを提示したあと、5年を経過して新たに獣医関連の職域として人材の養成を各国に求めたものです。

 獣医師(DVM)と獣医関連専門家(VPP)の関係を見てみましょう。両者は互いにパートナーです。

 例えば、公共獣医事分野でいえば、DVMは国家公務員、地方公務員(家畜保健衛生所)、産業動物臨床(NOSAI)、農場・養殖場等の指導員を、VPPは、食品安全等の公衆衛生分野で食品衛生管理者、食品衛生監視員、あるいは家畜防疫官(検疫所)などです。

 ライフサイエンス分野では、DVMは製薬企業、ワクチン製造メーカー、食品企業、国立研究機関、医薬品開発受託機関の研究者、VPPは、ライフサイエンス研究機関での実験動物管理者、技術者、支援者、研究者などです。

 医獣連携獣医分野では、DVMは小動物臨床、実験動物研究施設の実験動物獣医、中央競馬会の臨床医などです。VPPは獣医診療施設、動物園、動物愛護センター等の動物看護師です。

 

 

教育研究上の目的は、獣医師(DVM)あるいは獣医関連専門家(VPP)の職務関する知識技能を基盤とし、実践的応用的な教育を通して高い生命倫理と豊かな人間性、国際的視野を備え生命科学の発展動物とヒトの健康と福祉に貢献する人材養成です

 

教育目標は、獣医領域が①動物医療、②開発ライフサイエンス研究、③国際家畜感染症、人獣共通感染症の対応等、多岐にわたっていること。そのため、この獣医領域を、ライフサイエンス分野、公共獣医事分野、医獣連携医療3分野に分け、社会で活躍できる獣医師(DVM)獣医と協働する獣医関連専門家(VPP)を養成することに置きました。新しい獣医学教育で養成される学生は、専門分野の獣医師及び獣医師と親密なチームを組む優秀VPPでなければならない。そのために、導入科目、基礎科目、アドバンスト科目において

獣医学科と獣医保健看護学科共通の学科共同教育

国際的視野を備えるために、初年次から英語のステップアップ教育

3分野に対応する専門上級科目(アドバンスト科目行うこととしました。

本学部の教育を通じて、「ひとり、ひとりの学生が持つ能力を最大限に引き出し、獣医領域で専門家として持続可能な社会の確立に貢献し、人類の福祉に役立つ人材」として社会に排出することを目標としました

 

 卒業の認定と、学位授与の方針(ディプロマポリシー)は以下の通りです。

A 科学的根拠に基づき動物に関する基礎的知識と技能を修得し、専門分野活躍・貢献できる能力を身につけていること。

B 獣医学に関する知識VPP関する専門的な知識を基盤として、ライフサイエンス分野公共獣医事分野獣連携医療、VPP分野への応用力を身につけていること。

 専門知識を平易な言葉で伝えることができる能力を身につけていること。

D 獣医療に携わる者としての生命倫理、科学倫理、動物福祉に基づいた行動規範を身につけていること

 

獣医師(DVM)あるいは獣医関連専門家(VPP)の職務関する知識技能を基盤とし、実践的応用的な教育を通して高い生命倫理と豊かな人間性、国際的視野を備え生命科学の発展動物とヒトの健康と福祉に貢献する人材養成を行うという教育目的に沿って、カリキュラムポリシーを以下のようにしました

 社会人としての基盤を築き、総合的な判断力を身に付ける教養教育科目を配置する。教育にあたっては、講義、演習、実習を適切に組み合わせ、自発的学習を促す

 国際的な視野を涵養し、基礎的なコミュニケーションに必要な英語を中心とした外国語を継続的に学修するため外国語教育科目を配置する。学生の能力に配慮した効果的な指導を行う

 大学における学びへの適応を図り、当該学問分野への興味を持たせ、初年次よりライフサイエンス分野、公共獣医事分野、医獣連携医療分野の特性を理解させるために学部共通導入科目、基礎科目を配置する。講義、演習、実習を適切に組み合わせ、自発的学習を促す

D 当該学問分野に必要な知識と技術を修得する専門科目を体系的に配置する。講義、演習と実習の連携を密にし、実用的な知識と技術を身に付けることができるよう配慮する

E 新たな課題に対応する能力を養うため、アドバンスト科目に3つの分野の科目を配置する2割の英語を用いた講義、演習、実習を適切に取り入れ、知識と理解の定着を図るとともに、アクティブ・ラーニング等の方法を適切に取り入れ、課題解決能力を身につけさせる

  学生自らが課題を探求し、解決する姿勢や、その過程と結果を論理的に説明する能力を涵養   するため、総合科目(卒業論文)配置する

 

 以上のディプロマポリシーとカリキュラムポリシーに基づき設定したアドミッションポリシーが以下のものです。獣医学部は教育研究上の目的、目標を実践するため、以下の資質を持つを国内外から幅広く求める

A.生命、獣医療、動物とその環境に好奇心、探究心を持ち、これらの知識技能を活かし社会に貢献したいと考える人

B.広く動物とヒトの健康と福祉に貢献したいと考える人

C.物事を多面的に考察、理解し、要点をまとめることができる人

D.新たな課題について、積極的に取り組む意欲のある人

獣医学の教育体系は非常に広範で複雑です。

 まず動物倫理、福祉、法規を学びながら、各種の動物(イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、トリなど)について正常な形態・機能から始めます。比較動物学として各種動物に共通する側面と各種動物がもつ特殊性を学びます。組織、解剖、生化学、生理、遺伝学などです。

 次いで、動物個体が異常になった状態(各種疾病、感染症)を学びます。感染症であれば病態、病理、原因となる感染性微生物(ウイルス、細菌、真菌)や原虫、寄生虫学です。また宿主の反応としては生体防御学や免疫学です。各種疾病の予防、診断、治療は薬の面からは薬理学、医薬品の有効性、安全性の観点等から毒性学、実験動物学が、臨床面からは沢山の分野に分かれた内科学、外科学があります。

 獣医の場合は、特にこうした個体の学修とともに、群れ(個体群)としての動物学があります。疫学、動物衛生、家畜感染症、家禽疾病、魚病、野生動物学などです。

 最後に、これら動物個体と動物群、及びその生産物等と人との関係を図る学問分野があります。これらは公衆衛生、食品衛生、環境衛生、人獣共通感染症学です。医学に比べて、多種類の動物を扱うこと、個体と同時に群れを扱うアプローチが多いこと、動物で完結しないで動物とヒトとの関係を学ぶことなどが、医学と違う点です。

 

妻と作った人形。

娘の修学旅行の写真をもとにしました。

妻と作った人形。

娘の修学旅行の写真をもとにしました。

オリジナルの写真です

 

娘のドイツ時代のカーニバルの写真です。大家さんは子ネズミちゃん「モイスヒェン」といっていました。

下の人形は妻の作品です。

先日、妻の作品が創刊700号記念家庭画報大賞の佳作に入りました。

題「何して遊ぼう」です。

 

妻が、稽古に通い、粘土で作った作品です。昨年、東京フォーラムで、他の生徒さんと一緒に展示されました、「仙人草」

(水やり不要です)。