岡山理科大学獣医学部の最初の授業の一つである現代人の科学「生物の進化」が始まります。合計8回で40憶年の生物の進化と多様性について学習します。講義の内容は、70歳を過ぎた私が自分で理解できた範囲で編集してあります。従って、これといった教科書はありません。また、その内容は、容易ではありません。

 

 個々の事象を覚えるよりも、全体として生物がどのように進化してきたかを理解してください。環境に適応するために、各時点でどのように複雑化したか?また、どのように地球を作り変えたのか?日頃見ることのできない微生物の存在と、原核細胞が真核細胞へ、単細胞生物が単純多細胞生物へ、そして高度に複雑化した多細胞生物の爆発的拡散、霊長類から人へのつながりが理解できればそれでいいです。進化と多様性は、決して単純ではないことが理解できれば十分です。最後の8回目に、内容を振り返ってみましょう。

 

第1回は、生命の誕生と原核生物(真正細菌、古細菌)の世界です。20億年をかけてどのように細菌が進化と多様性を確立したか?また、細菌の多様性が生み出された機序、その結果が地球に与えた影響、あるいは呼吸、代謝、運動、性といった生物の基本要素がすでに細菌の時代に確立されたことを理解してください。

 

 太陽と地球は、ほぼ同時期、約46億年前に誕生したと考えられています。45億年前には海ができ、原始生命は約40億年前に誕生したと思われます。最初の生命体は原核生物(細菌)です。地球上に存在する無機物を代謝し、エネルギーを生産する化学合成独立栄養細菌でした。約38億年前には真正細菌から古細菌が分岐しました。生物界では真正細菌と古細菌はもネラ界を形成しています。

 

 細菌を最初に記載したのはオランダ人のレーウェンフックです(17世紀)。桿菌、球菌、螺旋菌や運動する細菌をスケッチしています。細菌をバクテリウム(ギリシャ語の小さな杖)と命名したのはエーレンベルクです(19世紀前半)。19世紀後半、当時考えられていたように細菌が空中の無から生まれるのではないことを証明したのは、フランスのパスツールです(有名な白鳥の首フラスコを用いた実験)。また微生物が感染症の原因であることを明らかにしたのはドイツ人のロバート・コッホです。最初の細菌治療薬(サルバルサン)を開発したのは、20世紀にはいってからです。ドイツ人のエールリッヒと秦佐八郎でした。抗生物質(ペニシリン)の発見はフレミングによりなされました。

 

 細菌は、現在では29門に分かれています。40億年前から約20億年間(真核生物が出現するまで)は、地球上には細菌しか存在しませんでした。細菌は環境に合わせて多様な進化を遂げてきました。最初は化学合成の独立栄養細菌群が現れ、次いで独立栄養菌が生産する有機物を栄養源とする嫌気性従属栄養細菌群が繁栄しました。利用できる地球上のエネルギー源が減少し始めた時、太陽エネルギーを利用する光合成細菌(独立栄養細菌群)が出現しました。その中に、太陽エネルギーを利用して炭酸ガスと水から酸素と糖を合成する細菌が出現し、大気中の酸素濃度が上昇し、従属栄養の好気性細菌群が増殖するようになりました。

 

 古細菌は、最初真正細菌よりも古いと考えられましたが、ゲノム解析等の結果から、真正細菌から分岐した群で、真正細菌よりも真核生物に近い存在です。しかし、現在の地球での生息分布は、塩湖、源泉、強酸、強アルカリのような極限状態の領域に追いやられています。また、メタン合成や高熱菌、石油生産に関連すると思われるものなどがあります。病原細菌としては、ほとんど知られているものはありません。

 

 原始生物(細菌群)が自然栄養源を食べつくす前に、新しい栄養源を作りだした生物が嫌気性光合成細菌です。太陽のエネルギーを利用して有機物を産生する独立栄養細菌が生まれ、その後好気性の独立栄養細菌が光合成により酸素と糖を作り出すようになり、大気中の酸素を含め、地球の環境が大きく変わっていきます。

 好気性光合成細菌(シアノバクテリア)は、真核生物では葉緑体に、αプロテオ菌はミトコンドリアとして、真核生物細胞の主要な細胞内小器官になっていきます。

 

 細菌同士の食物連鎖の中で、相手に打ち勝つ武器として発達したのが、抗生物質です。現在では、抗生物質として、細菌のDNA合成(ゲノムの複製)阻害、転写(DNAからRNAの合成)阻害、蛋白合成(リボゾームでの翻訳)阻害、代謝阻害、細胞膜障害、細胞壁合成阻害など様々な種類の医薬品が開発されています。しかし、抗菌剤を使用するとともに薬剤耐性菌が選択されてきます。これらは、もともと細菌群が矛と盾の関係として持っている遺伝子群と考えられます。適正な抗生剤の使用をしない限り、耐性菌が選択されたり、耐性遺伝子がプラスミドや性交による遺伝子組み換えで、他の細菌に移っていくことになります。

 

 最後に、細菌の構造、代謝(呼吸)、運動性、性についてまとめておきます。

鞭毛は細菌運動、移動の原点です。鞭毛は我々の精子に至るまで、細胞の運動を担っています。繊毛はやがて移動や異物などを排除する機能も持ちますが、細菌の線毛は標的細胞にくっついて縮みながら接近したり、遺伝子交換のためのパイプ役を果たします。

 細菌の時からすでに性に相当する因子を獲得し、より新しい環境に適応するため、遺伝子交換(受精?)により、生物は多様性を獲得していきます。

 

 

 

第2回は、単細胞性真核生物(原生生物)の話です。真核生物と原核生物の違い、真核生物はどのようにしてできたか?1次共生と2次共生、特にミトコンドリアと葉緑体の起源は興味深いものです。原生生物の進化と多様性はとても面白いです。また、医学や獣医学の病原微生物にも深く関連します。単細胞生物の持つ細胞内器官はその後の、多細胞生物の臓器の原型です。最後に、単細胞生物から多細胞生物への橋わたしについて説明します。

第1回、第2回の講義の宿題をやってください。

 

妻と作った人形。

娘の修学旅行の写真をもとにしました。

オリジナルの写真です

 

娘のドイツ時代のカーニバルの写真です。大家さんは子ネズミちゃん「モイスヒェン」といっていました。

下の人形は妻の作品です。

先日、妻の作品が創刊700号記念家庭画報大賞の佳作に入りました。

題「何して遊ぼう」です。