遅れてしまいましたが、全15回のデータを全て入力しました。免疫学は日々進歩しているので、その時はデータを修正させていただきます。

 2年生前期には「生体防御学」の講義があります。病原体の科学が病原体から見た世界、生命史という視点であったのに対し、生体防御学は免疫学を基礎に置いた宿主の側の対応を進化論的視点から論じるもので、その意味では「進化と免疫学」とでもいうものです。系統発生が理解できれば、免疫反応の理解は比較的簡単です。神経系、ゲノムと同様に「過去のシステムを消さないで、進化途上の体制を残したまま上に積み上げた系が免疫系です」。免疫系の理解にはこのキーワードが非常に大切です。概論のあと、免疫の特性、感染症と免疫の歴史をたどりながら総論を終わります。

 各論では自然免疫、獲得免疫(細胞性免疫、液性免疫、ネットワーク)を講義します。生命科学における免疫現象の生化学、分子生物学、遺伝学、ゲノムという、最も面白い分野です。最後に自己免疫病、アレルギーといった免疫現象の負の側面、遺伝性免疫不全と感染による免疫不全症で講義は終わります。

第1回は、生体防御の概論です。15回分のエッセンスをまとめてあります。

 

 第2回は、免疫現象の基盤となる特性について講義します。特異免疫応答の特徴は、①一度感染症にかかり回復すると二度がかりなし(疫病を免れるという意味で免疫という)、②自己の組織には反応しないが、他者の組織は拒絶するという、自己と非自己の認識です。③もう一つの特徴は、無限に近い種類の抗原に、1対1の対応ができる多様性がどのようにして生まれるか?です。これらの生物学的問題を解いてきたのが免疫学という学問です。


 第3回からは、人類が経験した感染症の中で、二度がかりなしという免疫現象がどのようにとらえられて来たかを、紀元前から18世紀まで振返ります。人類の脅威となったペストと天然痘の流行の影響は非常に大きいです。今回はジェンナーが二度がかりなしを種痘というワクチンの発想法で、再現性を持つ疫病の回避(天然痘ワクチン)を試みたところまでです。途中には病原体の発見につながる微生物(顕微鏡の開発により、初めて認識された生き物たち)の話も出てきます。

 第4回は、いよいよ19世紀後半の病原体の発見と、人工的なワクチンの開発です。ドイツにロバート・コッホ、フランスにルイ・パスツールという二人の巨人の出現により、感染症の原因と感染症の統御手段が開発されました。

 感染症が病原体によって起こること、ワクチンによって発症が阻止されることが明らかになりました。しかし、何故、パスツールは、不活化ワクチンでなく、より開発の困難な弱毒生ワクチンにこだわったのか?ワクチンを作りながら、なぜ免疫現象や抗体という概念にたどり着けなかったのか?これは第5回の講義に続きます。


 今回は、ついに特異免疫応答の担い手が抗体であるという概念に行きつきます。

 弱毒微生物と強毒微生物が互いに栄養素を取り合って干渉することで感染症を免れるという化学者の考え方から、不活化ワクチンに方向転換します。脱臭剤から消毒剤、消毒で微生物や毒素を不活化し、毒性がなくても抗原性を持つということ、そして、誘導された抗毒素(血清)が毒素を中和するという医学的発見は、ついに2度かかりなしの機構の解明に向かいました。しかし、抗体の本質を考えたのは、医学者でなく化学者のポール・エールリッヒでした。彼の抗体側鎖説はベンゼン環の修飾から生まれたといわれています。

 ルーとシャンベルラン、レフレルと北里・ベーリングそしてエールリッヒと次々に天才が現れ、19世紀末から20世紀初頭に免疫学の基礎概念が成立します。


 第6回は20世紀の生命科学、分子生物学をリードした免疫学の流れを中心に、100年間の進歩を1コマ(90分)で振り返るという、かなり無理のある講義です。免疫学はワクチン、抗血清療法(ベーリング、北里、エールリッヒ)から始まりますが、後の細胞性免疫の路線を敷いたウイルヒョウとメチニコフも重要です。

 何故100年間の免疫学の進歩は「抗体構造から始まり、T細胞(細胞性免疫)、NK細胞、TLR、樹状細胞」のような自然免疫系へという具合に、系統発生(進化免疫)の反対方向で進んだのでしょうか?

 そこには「初期発生の単純系の持つ融通無碍という複雑性、逆に、高度に複雑なシステムの持つユニットの1対1の関係という単純さ」というパラドックスがあります。分子生物学は解きやすいもとから解くという戦略であり、個別の解答を積み上げて全体を解くという帰納的アプローチです。単純系から複雑系に向かうという方法は、実際には決して楽なアプローチではありません。かなり哲学的、演繹的なアプローチになります。

 

 第7回からは、免疫学の各論です。進化に従って獲得した生体防御システム、すなわち自然免疫から順次獲得免疫へと展開します。第7回、8回は自然免疫系の説明です。

 第7回はレクチンと補体を中心に説明します。真核細胞のうち動物細胞はαプロテオ菌に由来すると考えられるミトコンドリアを保有しています。ここで糖を利用してTCAサイクルを循環させることでエネルギー生産(ATP合成)をおこないます。動物の活動エネルギーは、基本的には、全てこの系によっています。従って、体内に糖を取り込むということは動物にとって最も基本的で必須の行為です(もっとも、糖鎖認識分子であるレクチンは、原核生物の時代から存在します。生物にとって糖は最も基本的なエネルギー源です)。

 こうしたレクチンの中で、生体防御系に組込まれたレクチン群があります。パターン認識受容体の原型のような役割を演じています。また、植物のレクチンの中にはリンパ球を非特異的に活性化するものもあります。これらは免疫機能の診断にも利用されています。


 第8回は自然免疫系の後半です、レクチンが糖鎖を、補体がレクチン系、副回路系、抗体系を介して活性化したのに対して、今回は受容体を介した初期の生体防御系である、抗微生物ぺプチチド、パターン認識によるToll様受容体(主として細胞表面の異物認識、リスク管理)、Nod様受容体(主として細胞内の異物認識、クライシス管理)とインターフェロンについて講義します。これらの受容体は外界に接する上皮細胞や、実質臓器の細胞、循環器系内皮細胞、マクロファージや好中球、あるいはリンパ球など、体内の多くの細胞に表現されています。

 

 

 第9回からは、特異免疫に入ります。特異免疫(獲得免疫)の担い手はリンパ球です。特異免疫には液性免疫(B細胞)と細胞性免疫(T細胞)がありますが、特異免疫反応の基盤となる細胞は、細胞性免疫を担うT細胞(ヘルパーT細胞)です。NK(ナチュラルキラー)細胞からNKT細胞を経て、T細胞受容体を遺伝子再編により作り出す過程、調節性T細胞、免疫記憶T細胞等について説明します。


 第10回は液性免疫です。分子生物学としての免疫学の花形です。抗体の構造、特異性、多様性の秘密、免疫記憶の機構などが明らかになります。また、母子免疫(移行抗体)は、胎盤構造等により、動物種差があります。

 免疫現象が進化の中でどのように適応してきたかも興味ある課題です。人とマウスの免疫機構だけでなく、出来れば、それぞれの動物種の免疫機構の比較も学べるといいですね。


 第11回は特異免疫のまとめを兼ねて、免疫ネットワークの話です。ネットワークの担い手は樹状細胞(抗原提示細胞)から始まり、共通言語はサイトカイン(インターロイキン)です。クロストークする細胞はリンパ球やマクロファージです。またインターアクションする受容体分子や細胞表面分子にはCD分子や組織適合抗原(MHC分子)があります。

 今回は、この辺の事情をまとめて説明します。何故組織適合抗原はH1でなくH2であったのか?スネルとゴーラの戦略の違いと、科学の真理は別の方向からせめても、一致するという感動の物語があります。ゴーラが若くして死んだためにノーベル賞をもらえなかったのは残念でした。


 

免疫応答はその攻撃(防疫)力のため、侵入する病原体に対しては非常に有効な武器ですが、自己認識に異常が起こると、自らを攻撃したり(自己免疫病)、また、過剰な防衛(変わった反応:アレルギー)が起こると、免疫反応自体が宿主にとって傷害となります。その意味では「両刃の剣」的存在です。第12回と13回は、自己免疫病とアレルギーについて講義します。


 第13回はアレルギーです。スギ花粉症やアトピー性皮膚炎、食物アレルギーやアナフィラキシーに代表されるように、今や国民病の一つになってしまった免疫疾患です。アレ(変わった)エルギア(反応)という語源のように、異常なあるいは過敏な免疫応答です。現在では免疫反応自体が宿主に害を与える場合は、全てアレルギーに含まれます。そのため、自己免疫病もアレルギーに含まれます。アレルギーには、その発生機序によりI型からIV型まであります。代表的なものを例に説明します。


 第14回は遺伝的な免疫不全症です。自然免疫系の遺伝的な不全症、特異免疫(T,B細胞)の免疫不全症などいろいろあります。その機構は、主に実験動物であるマウスで明らかにされてきました。ベージュマウス、ヌードマウス、SCIDマウス等が有名です。


 第15回は感染症と免疫不全です。もっとも代表的な例は、エイズ(AIDS: 後天性免疫不全症候群)です。レトロウイルスの中のレンチウイルス感染による特異免疫不全症です。ウイルスが引き起こす免疫不全により、日和見感染症が暴発し、死に至る病です。レトロウイルスなので、一度感染するとウイルスゲノムは染色体に組込まれ、一生ウイルスを持っていくことになります。エイズウイルス以外にも、免疫系を標的にする感染症はいろいろあります。代表的な例を紹介します。期末試験は英語でやりましょう。


妻と作った人形。

娘の修学旅行の写真をもとにしました。

オリジナルの写真です

 

娘のドイツ時代のカーニバルの写真です。大家さんは子ネズミちゃん「モイスヒェン」といっていました。

下の人形は妻の作品です。

先日、妻の作品が創刊700号記念家庭画報大賞の佳作に入りました。

題「何して遊ぼう」です。