危機管理学部に入学した1年生には、危機管理ゼミナールIが前期の授業として開講されています。先日、オムニバス授業の一環として、動物危機管理の受け持ちでインフルエンザの話をしました。

 鳥と豚と人のインフルエンザがどのように関連しているか?そもそもウイルスとは何か?

危機管理対応にはどのようなことが必要か?など、

1年生には少し難しすぎるかもしれませんが、ウイルス嫌いにならないように講義に気を付けました。このスライドは、竹橋の毎日新聞社の1階で社会人コースで行っている

千葉科学大学サテライト大学院の講義「動物由来感染症と危機管理」4コマの

最初の1コマにも使いました。

 

その時使ったスライドです。

最初にウイルスがとても小さい生き物であることを理解する。

でも、とても不思議な増え方(増殖様式)をする。

 

どんなに小さいかを理解するために、ウイルスと人の大きさを比較する。

 ウイルスからみた人は、人からみた地球の大きさ

 それなら、ウイルスの人への感染は、宇宙船にのった人が大気圏に突入、

 地球にランディング?

 

 

そんな小さな、目に見えないウイルスだが、地球はウイルスに満ちている?

 見えないけれどもあるんだよ、みえないものでもあるんだよ!

海のウイルスを全部つなぐと、その長さは銀河系の直径の100倍(1000万光年)

 地球の人が全部手をつないでも、太陽と地球の距離の1/100.8光分)?

私たちの周りは、見えない生き物で満ちている。

 

 

本題のインフルエンザウイルス

A型インフルエンザウイルスは、全て極地の水鳥の腸管ウイルスとして

 病気を起こさずに、水鳥と共存しています。

毎年、シベリアからオーストラリアまでも、渡り鳥にのって移動する

 人から見ると月の多きさの宇宙船(カモ、鴨)に乗って、太陽系の外から太陽系の

  30倍の距離を移動する大旅行?

人から人への感染(エアロゾルによる感染)だって

  感染できるウイルスは、1億人(10の8乗)のうち、手ぶらで

   北極から南極にたどり着く確率に等しい

マスクをつければ、乗り越える障害はヒマラヤ越えになる?簡単ではない!

 インフルエンザウイルスにとっても、感染はそんなに楽ではありません。

 

 

 

でもインフルエンザウイルスも複雑

遺伝子が染色体のように別れている(8セット)ので、2種類のウイルスが同時に

 感染すると子供のウイルスは2の8乗=256通りの組み合わせができる。

また、A型インフルエンザには16のHA亜型と9のNA亜型があるので、

 亜型の組み合わせは144通りもある!

 

水鳥のウイルスは病原性がないが、アヒルやガチョウにうつる間に弱い病原性を

 もつ、鶏で増えている間に、強い病原性のウイルスが生まれることがある。

 これが高病原性鳥インフルエンザウイルス(50年で20回以上出現)です。

 

豚は人と鳥のインフルエンザウイルスの両方に感染するので、時に2種類のウイルスの

 遺伝子組み換えが起きる(2の8乗通り)。新型のインフルエンザウイルスが誕生

 する可能性がああります。

2009年のA型パンデミックウイルスは北米の豚インフルエンザウイルスと、ユーラシア

 の豚インフルエンザウイルスが組み換えて誕生した

人のパンデミック(新型インフエンザウイルスの世界的大流行)は20世紀に3回。

 2009年のウイルスは新型ではないが、パンデミックに流行したウイルス。

 

 

最近、問題となっている2つのウイルス(H5N1, H7N9)は変わり種?

 ともに、最初から人に感染する

 H5N1は鶏に高病原性、野鳥に戻り、野鳥から流行した初めての株

 H9N7は鶏では低病原性、野鳥にも感染?

人で定着すると、いろいろな危険性が出てくる

 人の中でのウイルス変異(小変異)

 季節性インフルエンザウイルスとの組み換え(大変異)

 豚の中での遺伝子組み換えウイルス(大変異)

 

 

新型インフルエンザの危機管理

新型インフルエンザへの国の対応指針はある、国際指針もある

2009年のパンデミックでは対応を間違えた

 病原性と伝搬力を総合して考えなかった(病原性は弱く、伝搬力は強かった)。

実際に強い病原性の新型インフルエンザが出現するとほとんど対応できない

 抗ウイルス薬(間に合えばワクチン投与)で流行が終わるのを待つ

 伝搬力がR0=2くらいで、DT=5日で、1000人の患者で初動するとすれば

  ピークは3か月、6カ月で流行は終息する?

 

一番いい対応は野鳥から鶏に行くのを抑える。

 次は、鶏から豚に行くのを抑える。

 最後は豚から人に来るのを抑える。

 最悪は、上のシナリオになる。人から人に行くのを抑える。

 

恐れすぎず、でも、安心しすぎずが大切。

 

 

昨年と今年、コウモリから新しいインフルエンザウイルスが見つかりました。

宿主は南米の小型コウモリです。

新しい亜型で、それぞれH17N10とH18N11です。

 

 

 

微生物検査の教科書を書いた際に、コラムに書いたものです。

授業をしながら、なんとなく考えていたことを短文にまとめました。

 

「感染症とは?」

 

新しい大学で、「病原体科学」「感染症概論」「生体防御論」を教えることになり,プリオン、ウイルス、細菌、原虫、真菌、寄生虫など各種病原体をもう一度勉強し直した。感染症概論は疫学から家畜感染症やヒトの感染症、動物由来感染症について整理する機会をもった。生体防御については,系統発生から見た進化免疫論を論じた。

 

これまで、学生時代に先生から聞いた話に,自分の研究や学会などで聞いた話を付け加え講義をしてきた。しかし、インターネットという強力な武器を手に入れ,これらの学問を,もう一度自分の頭で考え,整理してみると全く違うものがみえてきた。その一部は本書(微生物検査の教科書)で担当した項目で述べた。わかったことは,当たり前のことだが,これらの学問は人間を中心に作られたもので,ヒト,特に医者の目でみた学問だということである。

 

例えば「感染症」とはいったい何であろうか?その病原体(細菌,真菌,原虫など)は地球上に初期に出現した生命体群で,一方,宿主(家畜やヒト)は,最後に出現したグループである。我々はこの両者の相互作用を感染症という。

 

しかし、地球の生命史の約半分の時間(20億年)は原核生物(真正細菌と古細菌)の世界であった。残りのさらに半分(10億年)は単細胞生物(真核生物のうち、原生生物や単細胞真菌)の世界で,気の遠くなるような長い時間,原虫群と細菌群の相互作用(感染)があったことだろう。約10億年前に多細胞生物が出現するが,高等生物はカンブリア紀(約5~6億年前)にやっと出現した。初期の生命体は新しい宿主をみつけることとなった。特に鳥類や哺乳類のような恒温動物は,病原体にとっては格好の培地であり,豊富な栄養源と安定した体温は、微生物の増殖には最適といえる。他方、また宿主もそれに対応して、より複雑な免疫系を確立することとなった。だが我々ヒトが登場するずっと前から,いや地球上に生命体が出現した時から,生命体間の相互作用(感染症)は存在したはずである。

 

生物学においては微生物(肉眼でみえない病原体群),原虫(病原性のある原生動物群?),寄生虫(宿主と共生する多細胞生物群?)という分類は存在しない。これは、生物学が生物の視点に立ち、医学が人の視点に立っていること、生物学と医学の視点が違うためであろう。動物由来感染症や家畜感染症の統御を考えると,ヒトの視点とは異なる生物学的な視点で、病原体の生態学的振る舞い(生命体の相互作用)を知る必要があるのではないだろうか(コウモリと感染症で、ヒトからみたコウモリ由来感染症でなく、コウモリから見た感染症を論じたいといったのは、この考えの入り口である)。

 

 

 

妻と作った人形。

娘の修学旅行の写真をもとにしました。

オリジナルの写真です

 

娘のドイツ時代のカーニバルの写真です。大家さんは子ネズミちゃん「モイスヒェン」といっていました。

下の人形は妻の作品です。

先日、妻の作品が創刊700号記念家庭画報大賞の佳作に入りました。

題「何して遊ぼう」です。