2021秋①学期の質問で、ブラストミセス症に関する質問がありました。真菌感染症の中で、これまでこの真菌に関する質問がなかったので、気になり少し調べてみました。

 2020/11/07獣保2年再評価試験の解答が、期限切れ?のためかmylogに載せられません。この項目の最後に載せておきます。

 

 2020年秋①学期、獣医学専門科目として人獣共通感染症がVOD授業と組み合わせで対面授業(いわゆるハイブリッド授業)になりました。VOD授業の内容は15回分、人獣共通感染症1に載せてあるので、人獣共通感染症2では、対面授業のVODを載せておきます。第1回講義の要点と、おまけの狂犬病とペストの概要、ミニテストの解説も入っています。mylogでアクセルしにくい学生さん、復習用に利用してください。また、自宅待機の学生さんも見ておいてください。

第1回対面概論 https://www.youtube.com/watch?v=XrVuhV988dM

第2回対面疫学 https://www.youtube.com/watch?v=Ab4p5SboeQQ

第3回対面伴侶 https://www.youtube.com/watch?v=9hFZi6RIikc&t=360s

第4回対面産業 https://www.youtube.com/watch?v=w_siOMYvBAI&t=36s

5回、6回、7回は大講義棟のマイクの調子が悪かったこともあり、記録が取れませんでした。録音方法をもとに戻して、8回目は収録できました。

第8回対面鳥類 https://www.youtube.com/watch?v=nxTLqkwEVJk&t=508s

第9回対面ウイルス https://www.youtube.com/watch?v=yuqgfK-do6I

第10回対面細菌 https://www.youtube.com/watch?v=v6qnddwugAc

第11回対面真菌寄生虫 https://www.youtube.com/watch?v=AvvqZ9D6A3I

第12回対面感染経路 https://www.youtube.com/watch?v=VbESt3kO71M

第13回対面デングコロナ https://www.youtube.com/watch?v=Pmwq2xPginA

第14回対面 エボラ纏め https://www.youtube.com/watch?v=w3WTUHPOerY

第16回対面再評価 https://www.youtube.com/watch?v=w-UP37Rd1ek

15回はミニテストと期末試験なのでVODはありません。

 先日、今治獣医学部のFD(faculty development)で、人獣共通感染症学の授業の紹介をしました。これは、全教員が全ての授業内容を共有するために、1年生の春①学期の授業から6年生の秋②(獣医学科)、獣医保健看護学科は4年生の秋②までの授業概要を、それぞれ担当教員に紹介してもらうという、シリーズFDです。今回は、私の当番でした。その時に使ったスライドです。youtubeのVODアドレスは下記。

https://www.youtube.com/watch?v=DM9wO5uM9uM

 

 これまで動物のヘルペスウイルスで、ヒトに脳炎のような致命的な感染症を起こすのは、マカカ属サル類に由来するBウイルスのみと報告されてきました。しかし、2019年中国から最近、豚のヘルペスウイルス(オーエスキー病ウイルス、仮性or 偽狂犬病ウイルス、豚ヘルペスウイルス1の名前を持つウイルスがBウイルスと同様、ヒトに急性脳炎を起こすことが報告されました。今後、この種の問題の正解は、サル類のBウイルスと豚ヘルペスウイルス1の2種類になります。以下にデータの概要を提示しておきます。

 

 再々評価試験の解答です。今学期の人獣共通感染症の評価は、今回で終わります。

 再評価試験の解答と解説、約束通りアップしておきます。質問があれば、お問い合わせでメールを送ってください。

 

2019年秋①のミニテストの回答と解説をアップします。質問があれば、お問い合わせでメールしてください。回答(検討)します。期末テストの回答は、後ろに載せてあります。

人獣共通感染症13, 14回講義、ミニテスト

1,  デング熱はサル類と吸血昆虫のサイクルで維持されていたものが都市に定着し大流行を起こした。デングウイルス(DV dengue virus)のベクターの組み合わせで正しいものは?

1, ツツガムシ、シュルツェマダニ

2, ブユ、サシチョウバエ

3, ネズミノミ、シラミ

4, フタトゲチマダニ、キララマダニ

5, ヒトスジシマカ、ネッタイシマカ

ツツガムシはツツガムシ病、シュルツェマダニはライム病、ブユはオンコセルカ症(河川盲目症)、サシチョウバエはレーシュマニア症、ネズミノミはペスト、シラミは発疹チフス、フタトゲチマダニとキララマダニは熱性重症血小板減少症候群(FSTS)、ヒトスジシマカとネッタイシマカはデング熱などのベクターとして有名です。もちろん他の病原体もこれらの吸血昆虫で媒介されます。

2、DVは1本鎖RNA(+鎖)のフラビウイルス属です。この属に入らないのは?

1, 日本脳炎

2, セントルイス脳炎

3, 黄熱

4, クリミア・コンゴ出血熱

5, 西ナイル熱

日本脳炎、セントルイス脳炎、黄熱、西ナイル熱はフラビウイルス科のフラビウイルス属に属するウイルスです。フラビは黄熱(yellow fever, 黄色:黄疸がみられる)に由来しています。蚊によって媒介されます。クリミア・コンゴ出血熱はブニヤウイルス科ナイロウイルス属に属するウイルスです。マイナス鎖の3分節のゲノムを持ちます。媒介吸血節足動物はダニです。

3、DVの非構造蛋白(NS)で、ブロックされる主な生体防御系の系統は?

1, 抗体産生系

2, 細胞性免疫系

3, Toll様受容体系

4, 補体系

5, インターフェロン系

デングウイルスの非構造蛋白の多くは、主としてインターフェロンの産生阻害、STAT1あるいは2系を阻害してインターフェロン産生系をブロックします。

4、デング熱でウイルス血症が起き、血中ウイルス力価がピークとなる時期は?

1, 潜伏期

2, 発熱期

3, 出血性ショック期

4, 重症期

5, 回復期

血液中のウイルス力価がピークになるのは発熱期です。

5、デング熱で不顕性感染・発症・重症化する比率の組み合わせて正しいのは?

1,  不顕性感染 510%、発症9095%、重症化20

2,  不顕性感染1030%、発症70~90%、重症化15

3,  不顕性感染3050%、発症50~70%、重症化10

4,  不顕性感染5070%、発症3050%、重症化5%

5,  不顕性感染7090%、発症1030%、重症化2%

デング熱では半数以上(5070%)の感染者が不顕性感染で発症しません。発症するのは残りの半数以下(3050%)です。従って実際の感染者は発症者の数の倍以上います。また発症者のうち重症化するのは5%くらいといわれています。

6、感染症の自然科学要因として宿主、環境、病原体があるが、社会的要因でないのは

1, 政治的安定性

2, 経済的貧困

3, 教育水準

4, 宗教的価値観

5, 気候変動

途上国の感染症の流行には政治的安定性、経済的困窮、教育水準、宗教的慣習などが影響します。気候変動によるベクター分布の変動などは、自然科学的(環境的)要因に入ります。

7、フィロウイルスに関する記述で正しいものは?

1, マールブルグウイルスの血清型は5つある

2, エボラ出血熱のウイルス株はすべてアフリカで流行し、分離されている

3, フィロウイルスの自然宿主としてコウモリが考えられている

4, エボラウイルス株の中で最も病原性が強いのはレストン株である

5, 2本鎖のDNAゲノムを持つ細長い(filament状)のウイルスである

マールブルグウイルスの血清型は1つです。レストン株はアジアのエボラウイルスです。サルからのウイルス分離は、フィリピンから輸入されたカニクイザルで、アメリカのCDCで行われました。エボラウイルス株の中で最もヒトでの致死率が高いのはザイール株です。

フィロウイルスは一本鎖の-鎖RNAウイルスです。

8、2014年から終息まで2年間、世界を震撼させたエボラ出血熱の流行地域は?

1, 東アフリカ

2, 中央アフリカ

3, 西アフリカ

4, 北アフリカ

5, 南アフリカ

エボラ出血熱の流行の多くは、コンゴ共和国などの中央アフリカですが、2014年から2016までの大流行は西アフリカ(ギニア、リベリア、シエラレオネ)を中心に起こりました。

9、ナイジェリアがエボラ患者の侵入後に試みた有効な戦術は?

1,  ジェネラルサーベイランス (general surveillance)

2,  リスク評価(risk analysis

3,  標的サーベイランス(target surveillance)

4,  世界保健機関の支援(help of WHO

5,  接触者追跡(contact tracing

標的感染症を決めないで症候群などで監視するのが包括的サーベイランスです。リスク評価はリスク分析(リスク評価、リスク管理、リスクコミュニケーション)の一つです。標的サーベイランスは感染症を決めて監視する方法です。途上国などで大規模な流行が起こるとWHOに支援を求めます。

0, 1類感染症への対応で間違っているものは?

1,  積極疫学の実施

2,  医師の届出(7日以内)

3,  消毒、鼠属駆除、物品廃棄

4,  建物立ち入り禁止、封鎖、交通規制

5,  動物輸入禁止、輸入検疫

1類感染症の場合、診断した医師は直ちに届出る義務があります。7日以内は5類感染症です。他の4つの措置は1類感染症の対応措置です。

 

人獣共通感染症11, 12回講義、ミニテスト解説

1, 原虫(protozoa)の属性に関する記述で正しいものはどれか ?

1, 原虫は原核生物に属する

2, 原虫には多細胞のものも存在する

3, 原虫は基本的に光合成機能を持つがミトコンドリア機能は持たない

4, 原虫は従属栄養性で寄生性、病原性を持っている

5, 原虫は無性生殖し、有性生殖は行わない

原虫は真核生物で群生するものもありますが多細胞生物ではありません。原虫は動物系細胞なのでミトコンドリアを持ちます(消失したもの、マイトソームのものもいる)が葉緑体は持ちません(ミドリムシのように葉緑体を持つ原生動物はいますが、独立栄養型の光合成をする原虫はいません)。また胞子虫や繊毛虫は有性生殖をおこないます。

2、小核と大核を持ち、減数分裂した小核を一つずつ交換して接合する原虫は?

1, 大腸バランチジウム

2, マラリア

3, 赤痢アメーバ

4, トリパノソーマ

5, ジアルジア

大腸バランチジウムは繊毛虫で小核と大核を持ち、減数分裂した小核を一つずつ交換して接合する原虫です。マラリアは胞子虫、赤痢アメーバは根足虫、トリパノソーマ、ジアルジアは鞭毛虫です。

3、BSL2あるいはBSL3の病原性真菌で最も多くの属・種を占める門は?

1, 子嚢菌門:Ascomycota

2, 接合菌門:Zygomycota

3, 担子菌門:Basidiomycota

4, 不完全菌類:Anamorphic fungi

5, ツボカビ門:Chytridiomycota

BSL2あるいはBSL3の病原性真菌は、そのほとんどが子嚢菌門、ユーロチウム綱に属する真菌です。

4、抗真菌薬には真菌の独特の細胞膜や細胞壁を阻害するものが多くある。しかし、これらの薬剤の他に、核酸合成を阻害するものがあるが、それはどれか?

1, フルシトシン

2, ミカファンギン

3, アンフォテリシンB

4, ケトコナゾール

5, ミコナゾール

ここに記載された薬剤は、いずれも抗真菌薬ですが、真菌の細胞膜は独特のエルゴステロールを構成成分として持つのでこれを標的とした薬がケトコナゾール、ミコナゾールです。アンフォテリシンBも細胞膜障害を起こします。また細胞壁はβ13グルカンの重合体なのでこれを阻害するのがミカファンギンです。問われているのは核酸の合成阻害剤ですから、核酸の類似体(アナログ)が候補になります。フルシトシンはフルオロ・シトシンです。核酸のシトシンにフッ素が付いたものです。

5、3胚葉性の蠕虫には無体腔動物と偽体腔動物がある。偽体腔動物に入るのはどれか?

1, ウェステルマン肺吸虫

2, エキノコックス

3, 肝蛭

4, 犬糸状虫

5, ウリザネ条虫

扁形動物は無体腔動物に分類されます。蠕虫では吸虫と条虫に属すグループなので、ウェステルマン肺吸虫、肝蛭が吸虫に、エキノコックスとウリザネ条虫が条虫です。線形動物は偽体腔動物に分類されます。ここでは線虫は犬糸状虫(フィラリア)やイヌ回虫(トキソカラ)などが入ります。

6、感染の連関を考えるとき病原体が感受性宿主まで連なる因子でないものは?

1, 食物連鎖

2, 伝播様式

3, 排出経路

4, 侵入経路

5, 自然宿主

あまり、いい問題ではなかったかもしれません。スライドに示したように病原体(ウイルス、細菌等)が自然宿主を出て(排出経路は自然宿主の体内分布により違います)、様々な伝播様式(ベクター、増幅動物、中間宿主など)を取り、感受性宿主に、いろいろな侵入経路(感染経路)で入ります。感受性宿主では急性感染、慢性感染、水平感染、垂直感染など多様なタイプがあります。食物連鎖は伝播様式の一つのツールなので、必ずしも間違いではありませんが、一応スライドに従いました。

7、節足動物(ベクター)媒介感染症は沢山ある。ダニでなく蚊が媒介する感染症は?

1, クリミア・コンゴ出血熱

2, 日本紅斑熱

3, 重症熱性血小板減少症候群

4, 西ナイル熱

5, ライム病

クリミア・コンゴ出血熱、重症熱性血症板減少症候群(SFTS)はダニが媒介するウイルス感染症です。日本紅斑熱とライム病はダニが媒介する細菌感染症です。蚊が媒介する感染症はここでは西ナイル熱です。日本脳炎の兄弟分のようなウイルスですが、日本脳炎はブタが、西ナイル熱は鳥類が主なウイルス増幅動物で、蚊がベクターになりヒトが感染します。

8、ノミが媒介する人獣共通感染症のうち間違っているものは?

1, ウリザネ条虫症

2, ネコノミチフス

3, チクングニア熱

4, ペスト

5, ネコひっかき病

ウリザネ条虫症(条虫:イヌ・ネコ)、ネコノミチフス(リケッチア:ネコ)、ペスト(細菌:野生齧歯類)、ネコひっかき病(細菌:ネコ)は、ノミが媒介します。チクングニア熱は蚊が媒介するウイルス感染症です。

9、動物性食品媒介感染症のうちウイルスによって起こる感染症は?

1,  ブルセラ症

2,  アニサキス症

3,  Q

4,  変異型クロイツフェルトヤコブ病

5,  E型肝炎

ブルセラ症、Q熱は細菌感染症で主に家畜(乳製品など)に由来するケースが多いです。アニサキス症は、もともと海生哺乳類の線虫ですが、幼虫が魚に寄生し、ヒトが感染します。変異型クロイツフェルトヤコブ病は、ウシ海綿状脳症(BSE)に罹ったウシ(神経組織)に由来すると考えられています。E型肝炎がウイルス感染症です。ブタ、イノシシ、シカなどの生か加熱不十分な肉や肝臓を食べることで感染し、急性肝炎を起こします。

0, 肉胞子虫(住肉胞子虫、sarcocystis)症に関する記述で正しいものは?

1,  ウマを中間宿主とする住肉胞子虫(S. fayeriは、-20℃では耐性で冷凍効果はない

2,  肉胞子虫は多くの場合、終宿主内で有性生殖し、スポロシストで排出される

3,  ウマを中間宿主とする住肉胞子虫(S. fayeriの終宿主はヒトである

4,  住肉胞子虫症では、容易にヒトからヒトへの感染がおこる

5,  クルーズ肉胞子虫はイノシシが中間宿主、イヌ科動物が終宿主である

原因不明の食中毒として報告されたウマを中間宿主とする住肉胞子虫(S. fayeriは、-20Cでも48時間以上保存すれば不活化されます。ウマが中間宿主ですが終宿主はイヌなどの肉食動物です。また、ヒトからヒトへの感染はほとんど起こりません。日本で比較的見られるクルーズ肉胞子虫はウシが中間宿主です。終宿主(有性生殖をする宿主)のイヌの中ではオーシストからスポロシストが出来、それが中間宿主のウシの中で成熟スポロシストとなり、終宿主のイヌに摂取されて有性生殖をおこないます。これもいい問題ではありませんでした。肉胞子虫には終宿主からオーシストで排出され、スポロシストになって中間宿主に食べられるものがあるので、全てがクルーズのように終宿主内でオーシストが孵化してスポロシストになるとは限りません。回虫などでも感染仔虫を含むオーシストを排出するもの、孵化して仔虫になって排出するもの、糞線虫のように終宿主の中で有性生殖し、オーシストで排出し環境中で仔虫になるもの、あるいは終宿主の体内で仔虫になり、そのまま同一宿主で成長するものもあります。ここはクルーズ肉胞子虫と限定すべきだったかもしれません。寄生虫の世界は複雑です。「肉胞子虫は多くの場合、終宿主内で有性生殖し、オーシストあるいはスポロシストで排出される」とすべきだったと思います。

 

人獣共通感染症9, 10回講義、ミニテスト

1.コロナCoronavirus(例:SARS)、トガTogavirus(例:chikungunya virus)、フラビFlavivirus(例West Nile virus) 、カリシウイルスCalicivirus(例:Norovirus)はどの群に入るか?

1,  環状RNAウイルス(circular RNA virus)

2,  2本鎖RNAウイルス(double strand RNA virus)

3,  逆転写RNAウイルス(reverse transcribe RNA virus)

4,  プラス鎖RNAウイルス(plus strand RNA virus)

5,  昆虫媒介RNAウイルス(vector borne RNA virus)

バクテリオファージウイルスやパポーバウイルスなど、DNAウイルスには環状ゲノムを持つものがあるが、RNAウイルスにはありません。2本鎖RNAウイルスはレオウイルスなどがあります。逆転写酵素を持つRNAウイルスにはレトロウイルスがあります。昆虫が媒介するウイルスはアルボウイルスといわれ、RNAウイルスでは、2本鎖、1本鎖のRNAウイルスが含まれます、例えばフラビウイルス、トガウイルス、レオウイルス、ラブドウイルスなどいろいろあります。

2、RNAウイルスをDNAウイルスと比較した時の特徴で正しいものは?

1, RNAウイルスの方がゲノムサイズの大小の差が大きい

2, DNAウイルスのような2本鎖のゲノムを持つものは存在しない

3, DNAウイルスに比べ、ゲノムは比較的安定で、変異頻度は低い

4, RNAウイルスではゲノムは分節していないので再集合を起こすことはない

5, RNAウイルスは宿主の複製酵素を借りず、独自のゲノム複製酵素を持っている

DNAウイルスの方がポックスウイルスからパルボウイルスまで、そのゲノムサイズの大きさには大きな差があります。レオウイルなどは2本鎖のRNAウイルスです。RNAウイルス、特に1本鎖のマイナス鎖RNAウイルスは、複製過程、複製酵素との関係で変異頻度が高いといわれています。オルソミキソウイルス、レオウイルス他、ゲノムを分節しているRNAウイルスはいろいろあります。小型のDNAウイルスには宿主の複製酵素を借りるものがいます。

3、ヘルペスウイルスは無脊椎動物から哺乳類まで分布する。ヒトに感染するウイルスは?

1,  コイヘルペスウイルス(鯉)

2,  オーエスキー病ウイルス(ブタ)

3,  マレック病ウイルス(ニワトリ)

4,  Bウイルス(マカカ属サル)

5,  カキヘルペスウイルス(牡蠣)

ヘルペスウイルスは宿主特異性の高いウイルスです。自然界で種を超えてヒトに感染することが分かっているヘルペスウイルスはマカカ属サル類のBウイルスです。

4、パラミクソウイルス(paramyxovirus)に関する記述で正しいものは?

1,  人獣共通感染症ウイルスとしてはヘニパウイルス(Henipavirus)が含まれる

2,  エンベロープ(被殻)は持たない

3,  ウイルス表面にはHA蛋白とNA蛋白の2つを持つ

4,  ゲノムは分節構造になっている

5,  DNAゲノムを持つ

パラミクソウイルス科には、パラミクソウイルス亜科とニューモウイルス亜科があります。パラミクソウイルス亜科には麻疹ウイルス、イヌジステンパーウイルス、牛疫ウイルスなどのモルビリウイルス属と、ヘンドラウイルス、二パウイルスを含むヘニパウイルス属などがあります。パラミクソウイルスはRNAウイルスでエンベロープを持ち、ゲノムは分節していません。ウイルス表面には2つの蛋白質があり、膜融合に必要なF蛋白質とHあるいはHN活性を持つ、もう一つの糖蛋白質を持っています。

5、以下のウイルスの中でゲノムが分節していないものはどれか?

1,  オルソミキソウイルス(例:インフルエンザウイルス:influenza virus

2,  レオウイルス(例:ネルソンベイウイルス:Nelson bay virus

3,  ラブドウイルス(例:狂犬病ウイルス: rabies virus

4,  アレナウイルス(例:南米出血熱ウイルス: South American hemorrhagic virus

5,  ブニヤウイルス(例:腎症候性出血熱ウイルス: HFRS virus

インフルエンザウイルス、レオウイルス、アレナウイルス、ブニヤウイルスなどのゲノムは分節していて、同じ細胞に2種類のウイルスが感染するとゲノムを再集合(リアソート:遺伝子をシャッフルして新しい遺伝子組み合わせの子ウイルスを作り出す)することが出来ます。ラブドウイルスはマイナス鎖の1本鎖の線状ゲノムで分節していません。

6、グラム陽性細菌の門は2つある。ファーキューテス門ともう一つの門は?

1,  アクチノバクテリア門(actinobacteria

2,  スピロヘータ門(spirocheta)

3,  プロテオバクテリア門(proteobacteria)

4,  クラミジア門(clamidia)

5,  テネリクテス門(tenericutes)

厚い細胞壁をもつグラム陽性菌を含む門はファーミキューテス門とアクチノバクテリア(放線菌)門です。細胞壁をもたないマイコプラズマはテネリクテス門を構成しますが、もともとはグラム陽性のファーミキューテス門の細菌に由来します。

7、ファーミキューテス門に入らない動物由来感染症の細菌は?

1,  破傷風菌(C. tetani)

2,  ボツリヌス菌(C. botulinum)

3,  炭疽菌(B. anthracis)

4,  豚丹毒菌(E. rhusiopathiae)

5,  牛型結核菌(M. bovis)

破傷風菌やボツリヌス菌のような神経毒を産生するクロストリジウム属の大型芽胞形成桿菌、細胞壊死因子などを産生し、芽胞形成する大型桿菌でバチルス属の炭疽菌、また、エリュシペロトリクス属の豚丹毒菌は比較的小型の桿菌で芽胞形成能はありませんが、ヒトに感染し類丹毒を起こします(マイコプラズマの祖先?と考えられています)。これらの細菌は、いずれもファーミキューテス門に入ります。牛型結核菌は、ヒトの結核菌やライ菌などのグループで、アクチノバクテリア門(放線菌門)、放線菌目、コリネバクテリウム亜目、コリネバクテリウム科、マイコバクテリウム属の細菌です。

8、γプロテオ細菌には非常に多くの病原菌が含まれている。γに次いで多い、αプロテオ細菌で起こる典型的な感染症は?

1, サルモネラ症、パスツレラ症、緑膿菌感染症

2, 偽結核、エルシニア腸炎、ペスト

3, Q熱、野兎病、赤痢、

4, 腸管出血性大腸菌症、チフス、コレラ

5, ツツガムシ病、エーリキア症、ブルセラ症

サルモネラ属菌(腸内細菌科)、パスツレラ菌(パスツレラ科)、緑膿菌(シュードモナス科)、偽結核菌(腸内細菌科)、エルシニア菌(腸内細菌科)、ペスト菌(腸内細菌科)、Q熱を起こすコクシエラ(レジオネラ綱・目、コクシエラ科)、野兎病菌(チオスリックス目、フランシセラ科)、赤痢菌(腸内細菌科)、大腸菌(腸内細菌科)、チフス菌(腸内細菌科)、コレラ菌(ビブリオ科)は、いずれもγプロテオバクテリア綱に属します。他方、ツツガムシ病リケッチア(リケッチア科)、エーリキア症菌(リケッチア目、アナプラズマ科)、ブルセラ属菌(リゾビウム目、ブルセラ科)はαプロテオバクテリア綱に入ります。

9、マイコプラズマに関する記述で正しいものは?

1,  動物からヒトへの感染にはベクター(媒介昆虫)を必要とする

2,  ミトコンドリアに近く、エネルギー産生、代謝系を持っている

3,  細胞壁をもっている

4,  通常の細菌やリケッチア、クラミジアに比べゲノムサイズが小さい

5,  すべての種類が、偏性細胞内寄生性である

マイコプラズマは、伝播に関して特にベクターを必要としません。またエネルギー産生・代謝系の多くを欠いています。細胞壁をもたない唯一の真正細菌です。通常の細菌のゲノムサイズが~4.6x106bp,リケッチア、クラミジア~1.1x106bpなのに、マイコプラズマは~0.6x106bpです。偏性細胞内寄生細菌の定義は、「真正細菌のグループに属するもので、生きた細胞を使用しないで人工的に単独で培養することが出来ないもの、リケッチア、クラミジアがその代表例」となっています。マイコプラズマの中には培地で純培養できるものがあります。

0, リケッチアに関する記述で正しいものは?

1,  ダニで媒介されるリケッチア症には発疹チフスや発疹熱がある

2,  リケッチアはプロテオバクテリア門、αプロテオバクテリア綱に属する

3,  マイコプラズマとともに、エネルギー産生系・増殖に必要な機構を欠損している

4,  リケッチアの一部は外界でも生存するので環境リケッチアといわれる

5,  リケッチアによる人獣共通感染症はオウム病のみである

リケッチアの多くはダニがベクターですが、発疹チフスはコロモジラミ、発疹熱はネズミノミが主なベクターとなります。リケッチアはミトコンドリア並みにエネルギー生産系・増殖に必要な機構を保有しています。環境リケッチアという言葉はありません。アメーバ等の原生動物に寄生して環境中で生きる細菌にはクラミジアがあります。オウム病の病原体はクラミドフィラ(かつてはクラミジア)に分類されます。

 

人獣共通感染症7, 8回講義、ミニテスト

1. メガネザル、ロリス、キツネザルが属するグループは?

1, 広鼻猿類

2, 狭鼻猿類

3, 新世界猿類

4, 原猿類

5, 類人猿類

霊長類は、最初にメガネザル、ロリス、キツネザルなどの原猿類(prosimian:マダガスカル島やアジアに生息)が出現し、真猿類が分岐した。真猿類は、さらに旧世界(アジア、アフリカ)に生息する狭鼻猿類と新世界(アメリカ大陸)に生息する広鼻猿類に分岐した。旧世界サルからはさらに類人猿(オランウータン、ゴリラ、チンパンジー)が順次分岐し、最後にヒトとチンパンジーが分岐した。

2、ヒトとサル類は近縁なため主としてヒトからサル類に感染する感染症がある。それは?

1,  Bウイルス病

2,  エボラ出血熱

3,  アメーバ赤痢

4,  マールブルグ病

5,  結核

Bウイルス(Bウイルス病は4類)はマカカ属サルのヘルペスウイルス、エボラ出血熱(1類)はコウモリが自然宿主、チンパンジーを介してヒトに感染した例がある(アイボリーコースト・コートジボアール株)。マールブルグ病(1類)もエジプトルーセットオオコウモリが自然宿主、アフリカミドリザルを介してヨーロッパで流行したのが最初。アメーバ赤痢(5類)は野生のサル類等が保有している。糞口感染をするのでヒトからヒトへの感染はまれ。人型結核(結核:Mycobacterium tuberculosis2類)は、宿主域が広く、サル類、伴侶動物(イヌ)、展示動物(アジアゾウなど)が感染する。

3、サル類の感染症で獣医師が診断した際に届出る必要のある感染症は?

1,  麻疹

2,  赤痢

3,  ポリオ

4,  サルマラリア

5,  ジアルジア症

麻疹(5類)、ポリオ(2類)、ジアルジア症(5類)は医師が診断した時に届出が必要な感染症。赤痢(細菌性赤痢、3類)はヒトでは医師が、サルでは獣医師が届出る必要のある感染症。サルマラリアはヒトに感染することが明らかになった。しかし、厚労省の定義では、「マラリア(4類)はPlasmodium属原虫のPlasmodium vivax(三日熱マラリア原虫)Plasmodium falciparum(熱帯熱マラリア原虫)Plasmodium malariae(四日熱マラリア原虫)Plasmodium ovale(卵形マラリア原虫)などの単独又は混合感染に起因する疾患」となっており、診断基準は、マラリア原虫の種の確認PCRでの遺伝子検出となっているので、サルマラリアの場合は届出なくても罰則規定は適用されない。

4、マールブルグ病が1967年、初めて欧州で流行した時、直接の原因となった動物は?

1,  カニクイザル

2,  キクガシラコウモリ

3,  ガンビアラット

4,  ヨーロッパヤチネズミ

5,  アフリカミドリザル

カニクイザル等マカカ属サルはBウイルス病、キクガシラコウモリはSARS、ガンビアラットはサル痘、ヨーロッパヤチネズミはHFRS(プーマラ株、欧州の流行性腎症)の自然宿主。マールブルグ病の自然宿主はエジプトルーセットオオコウモリだが、アフリカミドリザルを介して欧州で流行を起こした。

5、コロニーで飼育されているサル類やヒトが罹るバランチジウム症をおこす病原体は?

1,  ウイルス

2,  古細菌

3,  原虫

4,  真菌

5,  蠕虫

大腸バランチジウムは、原生動物の中の繊毛虫門に分類される。原生動物にはほかに鞭毛虫類、根足虫類、胞子虫類(アピコンプレックス類)などがある。

6、新型インフルエンザウイルスは、一般にどのような機序で起こると考えられているか?

1,  冬季に、渡り鳥が南下する際に非病原性のウイルスを排出しヒトに感染するため

2,  アヒルやガチョウに感染して低病原性になったウイルスが突然変異を起こすため

3,  鶏や七面鳥に順化し高病原性になったウイルスがヒトに感染するため

4,  ブタでトリとヒトのインフルエンザウイルスの遺伝子が再集合するため

5,  コウモリが保有している新しいHA亜型のウイルスがヒトに感染するため

これまでの新型インフルエンザウイルスは、ブタでトリとヒトのインフルエンザウイルスの遺伝子が再集合したため起きたと考えられている。鳥インフルエンザウイルスは鳥の受容体に、ヒトの季節性インフルエンザウイルスはヒトの受容体に結合する。ブタは気道上皮細胞にヒトと鳥インフルエンザウイルスの両受容体を持っているため、同時に感染すると遺伝子再集合が起こる。

7、西ナイル熱は日本脳炎と近縁で蚊により媒介されるが主なウイルス増幅宿主は?

1,  トリ

2,  ブタ

3,  ウシ

4,  ネコ

5,  イノシシ

西ナイル熱ウイルスは鳥類と蚊の間で循環する。鳥類、特にカラスは感受性が高く、ウイルス血症時のウイルス価が高い増幅動物である。ブタは日本脳炎ウイルスや二パウイルス、ウシはクリミア・コンゴ出血熱ウイルス(ダニ媒介)、ネコはSFTS(マダニも)、イノシシはE型肝炎など。

8、鳥型結核菌の特徴に関する記述で正しいものは?

1, 容易にヒトからヒトへと感染する

2, グラム陰性の球菌で抗生物質が効きにくい

3, 非結核性抗酸菌で非定型抗酸菌症をおこす

4, 糞中や土壌中で数年間(4年間くらい)生存し、熱や消毒にも抵抗性である

5, ヒトの身体では肺でしか増殖しない

非定型抗酸菌に入る鳥型結核菌はヒトからヒトへの感染は起きにくい。グラム陽性の桿菌であり、抗生物質は比較的効きやすい。環境中では生存しやすいが熱や消毒には弱い。人体のいろいろな部位で増殖する。

9、カンピロバクター症は汚染鶏肉が主な原因で食中毒を起こすが、他にどのような疾病との関連が疑われているか?

1,  パーキンソン病(PDParkinson's disease

2,  アルツハイマー病(ADAlzheimer's disease

3,  多発性硬化症(MSMultiple sclerosis

4,  統合失調症(SPSchizophrenia

5,  ギランバレー症候群(GBSGuillainBarré syndrom

いずれも神経疾患であるが、PDは黒質のドーパミン産生細胞の減少により起こる、ADはアミロイドβの蓄積と神経原繊維変化を特徴とする疾患で認知症の原因となる。ともに若年性で起こる遺伝病のケースがある。MSは神経細胞消失とグリア細胞増殖が多発性に起こる神経疾患で自己免疫病的側面がある。SPはかつての精神分裂病が含まれます(躁鬱二極性や破瓜型など)、若年(2030代)での発病が多く、多様な病型を持つ。原因は不明。GBSは末梢神経の疾患で自己免疫病的な側面がある。末梢神経の糖鎖抗原とカンピロバクターの糖脂質が抗原交差を起こすのではないかと考えられている。

0, クリプトコックスは鳥類の糞で増殖しヒトに感染するが、主な感染経路は?

1,  吸入感染

2,  創傷感染

3,  経皮感染

4,  咬傷感染

5,  昆虫媒介感染

クリプトコックスは鳥類の糞中で増殖し、通常、ヒトでは胞子を吸入感染するケースが多い。肺で増殖したのち、全身に拡散し皮膚や脳でも病変を起こす。しかし、皮膚の創傷部や経皮感染も多くはありませんが起こります。1が正解ですが,2,3も感染経路としては否定できません。不適問題かもしれませんでした。一応、今回は、1,2,3は正解とします。

 

人獣共通感染症5回, 6回講義、ミニテスト

1、齧歯類由来感染症は野生動物由来感染症の中でも、最も種類が多いと思われる。その理由で間違っているのは?

1, 哺乳類の中でも種数が最も多く、病原体も齧歯類の多様性とともに共進化した。

2, 齧歯類の適応性は高く、極地を除くほとんど世界の全地域に広く生息している。

3, 人家に住んだり人との接触も多く、比較的容易に病原体を人間社会に持ち込む。

4, 洞穴などに数十万から数百万という群を形成して生活するので、病原体を維持しやすい。

5, 哺乳類の中でも最も古く、病原体宿主として長い歴史を持っていると思われる。

の記述は、ココウモリやルーセットオオコウモリなどの群生活をする動物の生活様式であり、齧歯類には当てはまらない。

2、齧歯類が自然宿主となる人獣共通感染症は非常に多い。齧歯類が自然宿主でないのは?

1, 南米出血熱

2, ラッサ熱

3, サル痘

4, ハンタウイルス肺症候群

5, ヘンドラウイルス感染症

ヘンドラウイルスの自然宿主はオオコウモリであり、ウマを介してヒトが感染するオーストラリア東海岸(熱帯雨林地域を含む)を中心に起こる感染症。他の4つは齧歯類が自然宿主。

3、腎症候性出血熱(HFRS)及びHFRSウイルスに関する記述で正しいのは?

1, 満州で日本軍に出血と腎障害を伴う急性の熱性疾患が流行し「韓国出血熱」といわれた。

「韓国出血熱」の名称は、朝鮮戦争時の国連軍がこの感染症に悩まされたときにつけた名前であり、満州の日本軍は「孫呉熱」と名付けた。腎症候性出血熱はWHOで決められた。

2, 都市型の流行を広げる動物はトガリズミやハタネズミである。

都市型の腎症候性出血熱を起こすウイルスを保有する齧歯類は、都市で活動するドブネズミやクマネズミである。

3, ウイルスの宿主は齧歯類で親から子に垂直伝播する。ヒトからヒトへも容易に伝播する。

腎症候性出血熱ウイルスは齧歯類の親から子に伝播するが、ヒトからヒトへの感染は起こらない。

4, ピューマラ型は北米で流行する株で、アメリカヤチネズミが宿主である。

ピューマラ型はヨーロッパで流行する低病原性の株であり、ヨーロッパヤチネズミがウイルスを保有している。

5, 抗ウイルス薬であるリバビリンが有効である。

4、ツツガムシ病の病原体に関する記述で正しいものは?

1, 原因菌はグラム陰性であり、プロテオバクテリア門の腸内細菌科に入れられている。

ツツガムシ病の原因菌はプロテオバクテリア門のαプロテロバクテリア綱、リケッチア目、リケッチア科、リケッチア属のOrientia tsutsugamushiである。 

2, 新型のツツガムシ病は、夏季に河川敷(信濃川・阿賀野川・最上川等)で流行する。

旧型ツツガムシ病の特徴は、地方病的流行であり夏季に信濃川、阿賀野川、最上川等、特定の河川敷で発生した。

3, 野兎病(あるいはツツガムシ病)の治療には、ペニシリン系、セファロスポリン系の抗生物質が良く効く。

ツツガムシ病の病原菌(Orientia tsutsugamushi、および野兎病の原因菌(Francisella tularensis)には、ペニシリン系、セファロスポリン系の抗生物質は効かない。

4, ツツガムシの成虫は産卵のために生涯に一度だけ脊椎動物に寄生する。

ツツガムシが脊椎動物に寄生し、吸血するのは一度だけであるが、これは孵化後の幼虫のステージである。若虫、成虫は吸血しない。マダニが、各ステージ(幼虫、若虫、成虫)で標的動物を変えて吸血するのとは異なる。

5, 幼虫は野ネズミの耳に寄生していることが多い。

5、野兎病に関する記述で正しいものは?

1, 野兎病はツラレミアウイルスにより起こる感染症なので、有効な治療薬はない。

野兎病の原因はウイルスでなく細菌。偏性細胞寄生性のリケッチア属のオリエンチア・ツツガムシ(Orientia tsutsugamushiである。

2, 野兎病は感染症としては4類だが、テロに利用される危険性が高く2種病原体である。

3, 野兎病は臨床的に眼・鼻・扁桃リンパ節型、内臓型、表在型はあるが肺炎型はない。

野兎病は、臨床的に眼リンパ節型、鼻リンパ節型、扁桃リンパ節型、内臓型、表在型および肺炎型と、非常に多様なタイプがある。

4, 北米に分布する強毒型の亜種はFrancisella tularensis mediasiaticaである。

北米に分布する野兎病菌はFrancisella tularensis tularensisである。

5, 野兎病の病原体は、野ウサギや野生の齧歯類と蚊の間で維持されている。

野兎病菌は野兎や野生齧歯類とダニの間で維持されている。

6、オオコウモリに関する記述で正しいのは?

1, 1000種以上の翼手目のうちオオコウモリにはココウモリよりも多くの種が属している。

翼手目の大多数はココウモリである。

2, オオコウモリは両眼を使って立体視する。

3, オオコウモリはエコロケーション能力を有しており、超音波を発する。

超音波を発してエコロケーションをするのはココウモリ。

4, オオコウモリには魚を食べたり(ウオクイコウモリ)、吸血(バンパイア)種がいる。

ウオクイコウモリやチスイコウモリはココウモリ。オオコウモリは果食コウモリといわれるように果実花蜜を食する。

5, オオコウモリはココウモリと違い人獣共通感染症の病原体を有していない。

オオコウモリは、ヘンドラウイルス、ニパウイルス、マールブルグウイルス、エボラウイルスなど、多くの危険な人獣共通感染症の宿主である。

7、主要な翼手目由来の感染症は?

1, アレナウイルス感染症

2, ペスト

3, クリミアコンゴ出血熱

4, 重症急性呼吸器症候群

5, ラッサ熱

アレナウイルス、ラッサ熱の主な宿主は齧歯類。ペストは齧歯類とノミ。クリミアコンゴウイルスは家畜(鳥類)とダニの間で維持されている。

8、翼手目からヒトに感染する間に入った動物とウイルス感染症の組合せで正しいのは?

1, 翼手目―ラクダーSARS

SARS(重症急性呼吸器症候群)の場合はハクビシン

2, 翼手目-馬―二パウイルス感染症

二パウイルス感染症の場合はブタ

3, 翼手目―チンパンジーーエボラウイルス感染症(エボラ出血熱)

アイボリーコースト株はチンパンジーを介してヒトが感染した。

4, 翼手目―ブターヘンドラウイルス感染症

ヘンドラウイルス感染症の場合はウマ

5, 翼手目―アフリカミドリザルーMERS

MERSの場合は、初期にコウモリとラクダが候補に挙がったが、最近はラクダからヒトへの伝播のエビデンスが多くなっている。アフリカミドリザルが関係したのはマールブルグ病。

9、アジアに存在するエボラウイルスの株は?

1, ザイール株

2, スーダン株

3, ブンディブギョ株

4, アイボリーコースト株

5, レストン株

他の4株はアフリカ

0, 以下のウイルスのうちプラス鎖のRNAウイルスは?

1, SARSウイルス

2, 狂犬病ウイルス

3, マールブルグウイルス

4, ヘンドラウイルス

5, 二パウイルス

SARSウイルスはコロナウイルに属し、プラス鎖の1本鎖RNAウイルス。他の4つは、いずれもマイナス鎖の1本鎖RNAウイルスである。プラス鎖のRNAウイルスは、ゲノムがメッセンジャーRNAの形になっているので、そのまま蛋白合成されるのため、ウイルス粒子内には複製酵素を持ち込む必要がない。

人獣共通感染症3, 4回講義、ミニテスト

1、   以下の感染症で,主として伴侶動物由来の感染症に入らないものはどれか?

1, カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症:イヌやネコの口腔細菌叢の1つ。咬傷で感染。重症化すると敗血症やDICを起こして死亡することがある。

2, 猫ひっかき病:バルトネラ・ヘンゼレが病原菌。ネコやネコ蚤から感染する。げっ歯類も本菌を保有するが、多くはネコから感染する。リンパ節腫脹、化膿が起こる。時に視神経網膜炎を起こす。化膿がひどいときはリンパ節を切開し、排膿する。

3, パスツレラ症:パスツレラ・マルトシダはイヌ、ネコの口腔細菌。多くは日和見感染を起こすが、基礎疾患がある場合や免疫機能が低下していると重症化する。

4, コリネバクテリウム・ウルセランス感染症:イヌ、ネコの口腔細菌叢の一つ。通常は、ほぼ非病原性だが、ジフテリア毒素に類似した毒素を産生する菌があり、その菌は偽膜形成などジフテリア菌と類似した病変を起こす。

5, クリミア・コンゴ出血熱:1類感染症でウイルス性出血熱を起こす。家畜とダニの間で維持されている(鳥もダニを介してウイルスを運ぶ)。日本にはまだ侵入していない。

2、ペットとして飼育されているカメに由来する主な感染症は?

1, レプトスピラ症:野生のげっ歯類等が主なレゼルボア。家畜やイヌも保有している。非常に多くの株があり、水系感染が主流である。

2, サルモネラ症:爬虫類、特に幼亀が保有率が高く、しばしば幼児、小児に感染し下痢等を起こさせる。

3, 腸管出血性大腸菌症:主要な食中毒菌。ベロ毒素を産生する大腸菌で特にウシの腸管で増殖し、食肉や生レバーを介して人に感染する。

4, カンピロバクター症:カンピロバクタージェジュニ・コリは、鶏肉を介して人に感染する。家禽は本菌を保有していても発症しないが、ヒトは非常に感受性が高く、少ない菌数でも感染、発症する。ギランバレー症候群との関連が問題視されている。

5, トキソプラズマ症:トキソプラズマ・ゴンディが原因。アピコンプレックス門の原虫。ネコが終宿主で、汚染肉(豚)やネコから排出されたオーシストで感染する。妊婦が感染すると胎児に行き、水頭症などの先天性異常を起こす。

3、ヒト以外で赤痢菌に自然感染し発症する動物は?

1, サル:赤痢菌毒素(ベロ毒素)の受容体はセラミド・トリヘキソースで、ヒトとサル類のみに多量に発現しているので、赤痢菌に感染すると容易に発症する。他の動物は自然界で感染・発症することはない。

2, ネコ

3, モルモット

4, イヌ

5, ウサギ

4、伴侶動物からヒトに感染することが分かったSFTS virusを経卵(介卵)伝播する節足動物は?

1, ノミ:ネコひっかき病、ペストなどを伝播する。

2, ハエ:通常のハエは物理的に病原体を運ぶが、吸血性のサシチョウバエはレーシュマニア(原虫:鞭毛虫門)を運び、皮膚、内臓、粘膜レーシュマニア症をおこす。

3, 蚊:多くのウイルス病(デング熱)、原虫症(マラリア)、寄生虫症(犬糸状虫症)の原因となる病原体を運ぶ。

4, ダニ:SFTS(重症熱性血小板減少症候群)ウイルスはフレボウイルス属に属し、マダニの間で介卵伝播する。孵化した幼ダニ、若ダニ、成ダニが順次増幅動物となる齧歯類、鳥類・野ウサギ、大型哺乳類を吸血する際にウイルスを伝播する。近年イヌやネコも感染し、ヒトへの感染源になることが報告された。

5, シラミ:発疹チフスや回帰熱などの病原体を運ぶ。

5、鳥類の糞などで増殖してネコやヒトに感染するクリプトコッカス病の病原体は?

1, ウイルス

2, 細菌

3, 原虫

4,  真菌:クリプトコッカス・ネオホルマンスは、担子菌門、異型担子菌綱、シロキクラゲ目、科、クリプトコッカス属の真菌である。

5, 寄生虫

6、コッホが4原則を確立し、パスツールがワクチン化に成功した炭疽菌の特徴は?

1, 炭疽菌はファーミキューテス門に属する大型の桿菌である。

2, 炭疽菌はバチルス綱に属するが芽胞は形成しない。芽胞を形成する。

3, 炭疽菌は莢膜形成能を欠く。莢膜を持つ。

4, 炭疽菌は細胞壁が薄くグラム染色は陰性である。細胞壁が厚くグラム陽性菌。

5, 炭疽菌は防御因子、浮腫因子は産生するが致死因子は産生しない。3種類の因子共に生産する。因子はプラスミドにコードされており、これが欠失すると弱毒化する。

7、日本脳炎(Japanese encephalitis)に関する記述で正しいものは?

1, 日本脳炎に対するヒト用のワクチンはない。ヒト用のワクチンはある。

2, 日本脳炎ウイルスの分布を知るためのおとり動物としては、カラスが使われている。おとり動物としては豚を用いる。カラスは西ナイル熱ウイルスなどに感受性が高いので、西ナイル熱流行の監視動物として利用される。

3, 日本脳炎は日本にしか存在しない。日本以外にも広く東南アジアに存在する。

4, 日本脳炎の発症率は10.1%で、多くは無症状である。

5, 日本脳炎ウイルスは1本鎖のDNAウイルスである。フラビウイルス科、フラビウイルス属の1本鎖、プラス鎖の蚊が媒介するRNAウイルス。

8、E型肝炎に関する記述で正しいものは?

1, E型肝炎は、一般に慢性化し肝がんに至ることがある。E型肝炎のほとんどは急性肝炎である。A型肝炎も急性、他方、慢性化するのはB型、C型肝炎であり、肝癌になるケースもある。

2, 家畜伝染病予防法により豚の生レバー、生肉飲食店での提供が禁止された。食品衛生法による規制。

3, 幼豚(2~3ヶ月齢)でウイルス血症を起こし、抗体が上昇してもウイルスは持続する。抗体が上昇するとウイルスは排除される。

4, 妊婦では劇症肝炎を起こすことがあり、致死率は80%と非常に高い。妊婦では劇症肝炎を起こすことがあるが、致死率は20%。

5, 日本では豚、イノシシ、シカなどがウイルスを保有している。

9、ブルセラ症の原因菌にはいろいろな種類がある、正しいものは?

1, ブルセラ・メリテンシスB. melitensis豚が宿主である。山羊、羊(メリテンシスはマルタ島の意味)

2, ブルセラ・アボルタスB. abortusは、山羊、羊が宿主である。牛(アボルタスは流産の意味)

3, ブルセラ・スイスB. suisは、馬が宿主である。豚(スイスは豚の意味)

4, ブルセラ・カニスB. canisは、イヌが宿主である。(カニスは犬の意味)

5, ブルセラ・オビスB. ovisは、牛が宿主である。羊(オビスは羊の意味)

10、牛型結核及び牛型結核菌(Mycobacterium bovis)に関する記述で正しいものは?

1, 牛型結核菌はプロテオバクテリア門に属し、肉眼病変としては結核結節が認められる。結核菌のグループは放線菌門に分類される。牛型結核菌は、放線菌門、放線菌綱、放線菌目、マイコバクテリウム科、マイコバクテリウム属のマイコバクテリウム・ボビス。

2, 海外では、M.bovisに汚染した食品特に乳製品を介した感染が報告されている。

3, 反芻動物は感受性が高いが、ヒトを含む霊長類は感染しない。人を含む霊長類は感受性が高く、感染・発症する。

4, 英国でM.bovisを媒介する野生動物はオポッサムが知られている。アナグマが感染保菌する。

5, ニュージーランドでM.bovisを媒介する野生動物はアナグマが知られている。オポッサムが感染保菌する。

 

人獣共通感染症1回、2回講義、ミニテスト

人獣共通感染症(Zoonosis)という言葉を作った人はだれか?

1, 北里柴三郎:ロバートコッホ研究所に留学、嫌気性菌である破傷風菌の純培養、ジフテリアの抗血清療法等を開発。帰国後は日本の微生物学、公衆衛生学分野で活躍した。

2, ロベルト・コッホ:炭疽菌等、多くの病原性細菌の純培養法を確立し、感染症の病原体を確定するための、コッホの4原則を定めた。

3, ルイ・パスツール:発酵が微生物によること、微生物は自然発生するものではないこと、研究室で人工的にワクチンを作成する方法を開発し、狂犬病、家禽コレラ、炭疽等のワクチンを作成。

4, ルドルフ・ウィルヒョウ:ドイツの病理学者。病気の原因は細胞が病むことであるという細胞病理学を提唱した。公衆衛生分野の発達に政治家としても貢献。医学と獣医学の連携と説き、zoonosisという言葉を作った。

5, カルビン・シュワーベ:獣医疫学の祖。群れを扱う家畜衛生学と人の公衆衛生学は共通のツールとゴールであるという視点からOne medicineを提唱した。

2、1959年「人獣共通感染症」を定義した合同委員会は、どの機関に属するか?

1, 世界貿易機関(WTO)と国際獣疫事務局(OIE):国際貿易、特に畜産品や動物製品の安全性基準等について協働視点から相互に協力している。

2, 世界保健機関(WHO)と食糧農業機関(FAO):ともに国連の機関で、国際的な保健衛生、食品衛生等の課題について合同委員会で検討している。コーデックス委員会も同様の仕組み。

3, 世界銀行(WB)と国際通貨基金(IMF):国際的な金融問題やプロジェクトへの資金提供等に取り組んでいる国際機関。

4, 国際労働機関(ILO)と国際原子力機関(IAEA):ともに国連の機関で労働基準、国際的な原子力の使用問題などについて検討している。

5, 世界気象機関(WMO)とユニセフ(UNICEF):ともに国連の機関。それぞれ、地球温暖化を含む環境問題、国際的な児童問題を検討している。

3、感染症のサーベイランスに入らないものはどれか?

1, 包括的監視(general surveillance):標的となる感染症を決めないで、広い枠(例:症候群レベル)で行うサーベイランス。

2, 標的監視 (target surveillance):標的となる感染症を決めて行うサーベイランス

3, 受動的監視 (passive surveillance):死亡例や重症例などを集めて、受動的に調査するサーベイランス

4, 能動的監視 (active surveillance):おとり動物や、不顕性感染群などを含め、あるいは新しい検出法などを使い積極的に行うサーベイランス

5, 内部監視 (internal surveillance)感染症のサーベイランスではなく、組織や機関の内部の安全性などをサーベイランスすること。

4、感染症のR0(アールノートR naught)に関する記述で正しいものは?

1, 感染症の流行がおこった場合の最初の患者のこと:ペイシャントゼロあるいはペイシャント・オー(エイズ)という。(patient zero)

2, R0が2よりも小さければ、その感染症は終息する:R0=1以下であれば終息する

3, ヒトの感染症でR0が最も大きいのはインフルエンザである:麻疹(はしか:measles)

4, 1人の患者から次に平均何人に感染するかという数字:R0のもとの意味は基本再生産数のこと。感染症では伝播の拡大を示す。

5, 家畜の感染症でR0が最も大きいのは豚コレラである:口蹄疫(FMD)

5、狂犬病に関する記述で正しいものは?

1, ヒトの狂犬病はその症状から「恐水病」ともいわれる:神経過敏になり、水が飲めなくなり、水を怖がるようになる。(hydrophobia)

2, 動物用のワクチンはあるがヒト用のワクチンはない:動物用もヒト用もワクチンがある。

3, 狂犬病ウイルスはDNAウイルスに属する:マイナス鎖、一本鎖のRNAウイルス。

4,  狂犬病ウイルスはリンパ節や脾臓で増殖する:脳(神1経細胞)で増殖する。ウイルス血症やリンパ流には乗らないで、神経軸索を上向し、脳に達する。

5, 狂犬病の大半はヒトでも犬でも沈鬱型である:狂騒型が多い。沈鬱型は少ない。

6、細菌の構造に含まれないものは?

1, リボソーム:ある、mRNAから蛋白への翻訳を行う

2, 細胞膜:ある

3, 細胞壁:ある。グラム陽性菌は厚い細胞壁をもち、グラム陰性菌の細胞壁は薄い。マイコプラズマは例外的に細胞壁を欠損している。

4, 核膜:真核細胞になってから出現。真正細菌や古細菌は核膜を持たない。ゲノムは細胞質にむき出しの形で存在する。

5, 線毛:ある。運動には鞭毛を使うが、線毛には性線毛をはじめ宿主細胞への付着などいろいろな役割を果たすものがある。

7、感染症のうちステージ1で、動物間でのみ病原体が伝播しているものは?

1, エボラ出血熱:コウモリからヒトからヒト

2, エイズ:ヒトからヒト(もとはチンパンジー、スーティマンガベイ)

3, デング熱:サルから蚊からヒト、多くはヒトから蚊からヒト

4, 狂犬病:野生動物(食肉動物)やコウモリなどからヒトへ

5, 豚コレラ:ブタからブタ、ブタからイノシシ、イノシシからブタ

8、20世紀の新興感染症出現と直接的に関係しないものは?

1, 航空機輸送による人と動物の短時間の移動:輸入感染症といわれる。MERS,ラッサ熱

2, 途上国の急速な都市化・人口集中と貧弱なインフラ:チクングニア熱、デング出血熱

3, 高度経済成長と世界金融恐慌:新興感染症とは、直接関係しない

4, 開発途上国の熱帯雨林開発:エボラ出血熱、マールブルグ病、ニパウイルス感染症

5, 生産性向上に伴う齧歯類の繁殖と生態系の撹乱:ラッサ熱、南米出血熱

9、ペスト菌の祖先と考えられている細菌は?

1, 仮性結核菌:エルシニア・シュードツベルクローシス(Yersinia pseudotuberculosisに新しいプラスミドが入ったものがペスト菌

2, 大腸菌:大腸菌症をおこす。食中毒の原因にもなる。

3, 肺炎球菌:高齢者の肺炎の原因

4, サルモネラ菌:下痢症、食中毒の原因菌

5, 破傷風菌:神経毒素産生の土壌菌、牙関緊急を起こす。(lock jaw)

10、中世のペストの流行を機に始まった検疫(quarantine)の語源は?

1, 隔離:感染症の伝播を阻止するための封じ込め措置(isolation

2, 鼠(ネズミ、齧歯類:):ペスト菌の保有宿主(reservoir: 草原に住む齧歯類でも比較的低感受性で自然宿主となるendemic hostと、高感受性でアウトブレイクの原因となるepidemic hostがいます)

3, 40日:ベネチアでペストに汚染した船の入港を阻止するために40日間海上に停泊させたことが起源となっています。

4, 蚤(ノミ):ペスト菌のベクター(vector:節足動物門、昆虫綱、ノミ目(隱翅目)、ヒトノミ科、ネズミノミ属には、ケオプスネズミノミ(xenopsylla cheopis), メクラネズミノミ(Leptopsylla seqnis)、ヨーロッパネズミノミ(Nosopsyllus fasciatus)、ヤマトネズミノミ(Monosyllus anisus)などがあります。

5, 疫病:通常ペストと同義(英語ではplagueです)

 

  人獣共通感染症の講義は、スライドが多すぎて1項目に入りませんでした。9回までを人獣共通感染症1、とし第10回からを人獣共通感染症2としました。

 第10回は、ウイルスに続き人獣共通感染症を細菌からまとめ直してみました。細胞壁のない唯一の細菌であるマイコプラズマが固い細胞壁をもったファーミキューテス門の細菌由来であったこと、リケッチアがα―プロテオバクテリアでミトコンドリアの祖先に近いこと(偏性細胞内寄生という点では共通性がある)、哺乳動物のクラミジアが環境クラミジア(アメーバ―等に寄生する古いクラミジア)のゲノムサイズの半分くらいの大きさであること(高等動物の免疫系から逃れるためエピトープとなる遺伝子や細胞内寄生により必要としなくなった遺伝子等を欠損)。そして29門ある真正細菌のうち、大半はヒトの生活と関係ない世界で生きており、ヒトや動物、あるいは動物由来感染症を起こす細菌は、プロテオバクテリア門など、少数の細菌群であることがわかりました。

 

 

 BSL2の細菌には、沢山の種があります。通常はアルファベット順やアイウエオ順などになっています。しかし、細菌から見た生物分類を基準に、細菌の門、綱、目、科などに沿って分類する必要があると思います。そのほうが全体像が見えてきます。いつか、時間をみて整理してみたいと思います。

 

 

 真正細菌の分類は、ゲノムによる系統樹が基本ですが、グラム染色性、水棲・陸棲、呼吸(嫌気性、好気性)、独立栄養・従属栄養、形態などいろいろな分類法があります。動物由来感染症の病原体やベクター媒介(吸血昆虫による)の病原体等も分類の特徴の一つです。

 

 モネラ界(真正細菌、古細菌)の中で、真正細菌だけでも28門(29門?)におよぶ膨大な世界です。例えば人は、通常動物界、脊索動物門、哺乳綱、霊長目、ヒト科、ヒト属、ヒト(Homo sapiens)であり、1つの門、脊索動物門(脊索動物:前索動物、後索動物、脊椎動物の無顎類、顎口類:魚類、および両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類)に入ります。ほとんどの多細胞高等動物がこの1門に入りますが、この規模の多様性が30門弱あるというのが、細菌です。よく考えると、とてつもない世界です。

 

 第11回の講義は原虫(病原性原生動物)、真菌類、寄生虫です。真菌類ではほとんどの病原体は子嚢菌です。何故、子嚢菌が主流なのかは、まだ不明です。真菌類からは除かれましたが卵菌類及び水カビ(ツボカビ門)の多くが水棲であったのに対し、デボン紀からシルル紀にかけて、植物、動物が陸上に上がった時、真菌類も植物、動物とともに陸上に上がったと思われます。ツボカビ、接合菌、子嚢菌の一部が、皮膚や腸内菌として動物と共に生活し、担子菌などは環境や植物と共に生活するようになったからかもしれません。もう少し突っ込んで調べてみる必要があります。

 

 

 次回は、人獣共通感染症の事例研究として、デング熱を取り上げます。これまでに習った病原体分類ではウイルス、自然宿主はサル類及びヒト、媒介ベクターは蚊です。それぞれの生態学的特性の組み合わせはどのようになるのか?なぜヒトー蚊ーヒトという感染経路が成り立つのか?R0は?対処法および予防、診断、治療方法は?などを考えています。

 

 一人の学生さんから、質問メールをもらいました。沢山の質問で答えるのに丸々1日かかりました。でもミニテストの回答書きよりもずっと勉強になりました。1新興感染症について:新しく認識された感染症で、局地的にあるいは国際的に公衆衛生上問題となる感染症と定義されていますが、新しく認識されてからどれぐらい経つまで新興感染症なのでしょうか?50年間ぐらいですか?考えたことがありませんでした。特に厳密な期限はありませんが、最初の流行が収まって(国際的には数年かかる?)しまえば、行政的には新興感染症とは言い続けないでしょう。感染症法の新感染症は基本1年です。国際的には10年くらいかな?そのあと大流行が起これば再興感染症になるかもしれません。昨年、今年のインフルエンザは2009年に新型?として大騒ぎになったH1N1(最初はスペイン風邪、その後ロシア風、2回目は2009年のパンデミックインフルエンザの名がついたブタインフルエンザH1N1)ですが、今は季節性インフルエンザの扱いになっているようです。

新興・再興感染症について:最近になって新たにヒトや動物の集団に出現した感染症、また以前から存在していたものが急激に発生が増加して再出現した感染症とありますが、HIVの新種亜型が発見されたというニュースを見ました。HIVは再興感染症に値するのでしょうか?https://www.afpbb.com/articles/-/3253723 HIVのニュース)。HIVにはチンパンジー由来のHIV1とスーティ―マンガベイ由来のHIV22つの型があり、世界的に流行しているのはHIV1です。インフルエンザで言えばA型インフルエンザとB型インフルエンザのようなものです。HIV1には、カメルーンで流行しているNP亜型、中央アフリカのO亜型の他に、世界的に流行しているABCDFGHJKの亜型があり、それに今回L亜型が見つかったというものです。インフルエンザAHA亜型が1~16としてスペイン風邪のH1から100年くらい16まででしたが、コウモリから突然H17, H18亜型が新しく見つかったことと類似しています。再興感染症というほどのものではないと思います。ゲノム解析のホモロジーから亜型として分類されたということです。コウモリについて:人獣共通感染症といえばコウモリが媒介するイメージがあり、加えて強力な感染症を引き起こすように思えます。なぜ数多くいる動物種のなかでコウモリはヒトにとって強力なウイルスを媒介できるのでしょうか?哺乳類としてヒト共通の受容体を持つことが多い(家畜やペットもそうですが、彼等とは長い付き合いで、彼等からくる致命的な感染症はなくなった。あるいはヒト化ウイルスとなった。ヒトが抵抗性になったか、危険な動物は排除された)。コウモリの特性ですが巨大な群れをつくる(数百万匹からなるコロニー、病原体が持続し、共進化しやすい)。ヒトの生息域が拡大し、野生のコウモリとの接点が増えた・・・などでしょう。

狂犬病ウイルスについて:狂犬病ウイルスには遺伝子型が7個ありますが、ヒトに感染するのは遺伝子型1だけなのですか?また、なぜモコラウイルスだけげっ歯類が自然宿主なのでしょうか?このウイルスは、コウモリにはかからないのですか?狂犬病ウイルスはリッサウイルス属に入り、ここには7つの血清型があり、1型が狂犬病ウイルスです。リッサウイルスの遺伝子型は、すでに1ダースを超えています。これからも増えるでしょう。リッサウイルスの多くは、狂犬病と類似の致命的感染症を起こします。「モコラウイルスはナイジェリアでトガリネズミ(食虫)からジンバブエで人間・猫から分離されました。狂犬病ワクチンは、狂犬病ウイルス、ラゴスコウモリウイルス、ドゥベンヘイジウイルス、欧州コウモリリッサウイルス1型・2型、豪州コウモリリッサウイルスに対して有効ですが、モコラウイルスに対しては無効と考えられています。」ということで、このリッサウイルスだけは違う方向で分岐したようです。ラブドウイルス群は、自然界では広く分布し、魚類、節足動物、哺乳類などが宿主です。ココウモリの多くが食虫であることを考えると、モコラは昆虫と関係するリッサウイルス?かもしれませんね。また、モコラウイルスの本当の自然宿主はまだ不明のようです。

2回:ウイルスの感染について:ウイルスはウイルス同士にも感染するほど多くの種に感染することができますが、絶滅してしまった恐竜などからもウイルスが感染した痕跡などは見つかっているのでしょうか?恐竜の化石の骨の異常などからレトロウイルス感染?(大理石骨症、骨化石症 osteopetrosis)を疑うような報告がありますが、ゲノム解析は難しいようです。現存する化石動物群?無脊椎動物や脊椎動物の魚類、両生類、爬虫類からもウイルスが取れるので恐竜にウイルス感染がなかったはずはないと思います。

ペストについて:ペストは、プロテオバクテリア門、γプロテオバクテリア綱、パスツレラ目、腸内細菌科、エルシニア属に属し、血中で増殖可能なプラスミドを持つことによって容易に敗血症を起こすようになりました。症状として腺ペスト、敗血症ペスト、肺ペストとありますが、腺ペスト→敗血症ペスト→肺ペストのような順番で症状が進行する病気と捉えて良いのでしょうか?基本的にはそうです。最初から肺ペストを発症したり、敗血症ペストを発症することないという認識で間違いないでしょうか?そんなことはありません。よく考えてみてください。ヒトーヒト感染では、肺ペストが怖いのは、肺ペスト患者が咳などのエアロゾルで菌を排出すると、別のヒトが吸入し気道感染(飛沫感染)で肺ペストとして広がることが怖いわけです。ペストに限らず感染経路や病原体の暴露量により、臨床症状や病態の進行は異なります。

伝染病について:伝染病は、ヒトや家畜などの特定の動物種の集団内で同じ症状を示す個体が短時間に多発した状態になるものですが、ROがどれぐらいなら短時間で多発する状態になるのでしょうか?また、他の動物から他の動物へ感染するものも伝染病という定義で良いのでしょうか?(例えば、鳩からブタなど):R0は普遍的なものではなく、現実的には種々の因子により容易に影響されます(特に感受性集団の規模、行政対応や公衆衛生レベル、教育、情報提供・・・により)、そのためR0がいくつ以上なら伝染病(contagious disease)という定義はありません。感染症(infectious diseases)の中で比較的短時間に集団内に広がる感染症を伝染病といっているわけです。種を超えても構いません、あくまでアウトブレイクを起こした宿主での流行パターンを言うのであって、病原体が異種動物から来たかどうかは問題ではありません。

3猿について:新世界猿と旧世界猿のちがいはなんですか?真猿類のうち、アメリカ大陸に生息するサル類が新世界ザルで広鼻猿類になります。アジア・アフリカ大陸に生息するサル類は旧世界ザルで狭鼻猿類です。旧世界ザルの方は圧倒的に多様性があり、類人猿などヒトに直結する共通祖先は旧世界ザルのグループです。新世界ザルは、アメリカ大陸とアフリカ大陸が分かれた(約1億年前)よりもずっと後になって、アメリカに渡ったサル類と考えられています。コリネバクテリウム・ウルセランスについて:コリネバクテリウム・ウルセランスは本来常在菌ですが、ジフテリア毒に似た毒素が基本的に作られているということですか?そうです。それとも免疫機能障害などにより日和見感染症を起こしやすくなった状態または、起こしている状態のときに感染がおきるのですか?また、扁桃や咽頭に偽膜が形成されますが、偽膜とはどんなものですか?毒素を産生するようになった常在細菌の1つなので、細菌が増えると、産生された毒素により病気が起こります。特にウルセランス菌の感染様式が変わるわけではありません。O-157 が大腸菌なのにベロ毒素を産生するようになったのと同じです。大腸菌であることには変わりはないのです。偽膜は、ジフテリア様毒素により「糜爛(びらん)を起こした粘膜表面などに、フィブリンや白血球が凝固し、壊死に陥った上皮とともに形成された膜様に見えるもの」のことです。

感染様式について:吸入感染と飛沫感染の違いはなんですか?飛沫感染(droplet infection)は病原体を含む体液による感染で、病原体側の排出(感染)様式です。飛沫粒子が小さいと(PM3以下)空気中を浮遊し、いわゆる「空気感染(airborne infection)」を起こします。飛沫粒子中の病原体は、目、粘膜や呼吸器系、時に創傷部などから侵入します。吸入感染は感受性宿主の側から見た侵入(感染)様式です、空気を吸入する際に鼻粘膜、上部気道(気管、気管支)、下部気道(肺)から感染を起こします。他にもエアロゾル感染(aerosol infection)という言い方もあります。エアロソル(エアゾール、アエロゾル)の定義は、「気体の中に微粒子が多数浮かんだ物質」となっています。

エキノコックスについて:エキノコックス症は道民からしてもかなり怖い病気の一つです。その怖い病気が最近埼玉県などでも出ているそうで、どんな対策行っているのでしょうか?埼玉県では、数年間野犬のサーベイランスを続けましたが、陰性だったので、それ以上はやっていないと思います。北海道では一部の町が、駆虫薬を混ぜたペレットを撒いて野生動物が食べることによって駆虫を行う取り組みがあることを知ったのですが、野生動物の間で媒介する分、完全に取り除くことは厳しいように感じます。そうですね、ベイト(駆虫薬を含む餌)を散布している間は陽性率が下がりますが、やめると、またキタキツネの陽性率(糞便の陽性率)は上がってしまいます。

4回:伝播方式について:経卵伝播と介卵伝播のちがいはなんですか?卵を介して親から子に病原体が伝播する様式です。垂直感染の1様式で、違いはありません。同じだと思います。ちなみにインターネットで見ると、経卵感染、(ツツガムシ病)、経卵伝染(イネ萎縮ウイルス)、経卵伝播(ツツガムシ病、リケッチア)、経卵性伝搬(SFTS)、介卵伝播(バベシア)、介卵感染(サルモネラ)、介卵伝達(リフトバレー熱)のように勝手に使っているようです。

コロナウイルスについて:MARSは、ヒトコブラクダでは症状が出ないのでしょうか?幼齢のヒトコブラクダでは風邪様の症状が出るようです。また、フタコブラクダではMARSがないのはヒトコブラクダとフタコブラクダにどのような違いがあるからですか?ラクダでは、ほとんど野生種は絶滅しているようです。飼育ラクダのうち90%はヒトコブラクダで、西アジア原産でインド、中央アジアからアフリカまで広く分布しています。フタコブラクダ(10%)は中央アジア原産でトルコ以東からモンゴルまでが飼育地帯です。両者のF1が出来ること、MERSウイルスの受容体DPP4は両ラクダでアミノ酸配列は同一なので、単にMERSの流行地帯にいるのがヒトコブラクダだから?ではないでしょうか。なぜ若いラクダではウイルス分離の成功率が4歳上のラクダに比べて高いのですか?成獣では、ウイルスに暴露され、抗体陽性になっているのでウイルス保有率は低くなります。また、幼齢のラクダ(初感染)の方が感受性は高く、ウイルスを取りやすいと思います(ヒトでも、多くの感染症は、同じですね)。診断について:アスコリー沈降反応はどのような沈降反応ですか?炭疽菌以外にも有効な診断が行える菌はありますか?基本的には試験管の中で行う抗原抗体反応です。炭疽に感染した疑いのある動物の血液あるいは脾臓(炭疽菌を含む)を乳剤とし、30分間沸騰水中で加熱したものを濾過する。この濾過液と診断用抗炭疽血清を用いて重層法による沈降反応を行うものです。抽出抗原、抽出方法を選べば、寒天ゲルによるゲル内沈降反応も可能と思いますが、沈降反応の方が早く、簡単です。アスペルギルスなどの真菌でも沈降反応は可能のようです。

5回目:アンビセンスRNAについて:アレナウイルス科がもつアンビセンスRNAはどのように両側からRNAを複製・転写をおこなうのですか?アレナウイルスのゲノムは、L分節もS分節も、中央にジャンク配列を持ち、-と+にコードされた遺伝子をそれぞれ両側に持っている。もともとマイナス鎖のRNAウイルスだったが、複製している間に、ジャンク部分を挟んでキメラ状態になり、-鎖と+鎖の遺伝子が繋がって、それぞれL分節とS分節ゲノムを作るようになった。末端部にRNA複製酵素の結合部があるので、両側から読むことが出来る。しかし、ゲノムの+鎖遺伝子は、そのままmRNAとしては機能しない(+鎖のRNAウイルスとは違う)。もう一度読み直して(マイナスからプラスへ)mRNAとして働く必要がある。

アレナウイルス科以外にもアンビセンスRNAをもつウイルスでヒトに危害を及ぼすものはありますか?あります。ブニヤウイルスの中のフレボウイルス(S分節)がそうです。トスポウイルス(M分節、S分節)もアンビセンスですが、植物ウイルスです。フレボウイルスはS節のみアンビセンスRNAですが、このようにいくつかの分節のなかでアンビセンスRNAを利用しているものは多いのですか?あまり多くないと思います。アンビセンスRNAは両端から複製・転写が行えますが、なにかRNAに変化が起きたときに他のRNAウイルスよりも変異が起こりやすいことはありますか?特にないと思います。特にブニヤウイルスは、下図のようにアンビセンスのもの、そうでないものが混在しています。

6回:SARSウイルスの起源について:キクガシラコウモリのACE2発現細胞ではVSV-SARSの感染は認められませんが、オオコウモリのACE2発現細胞ではVSV-SARSの感染が認められ、その感染率はヒトと同じです。ヒトの感染は、R0はどの程度なのですか?SARSコロナウイルスは統計学的モデルから、ひとりの感染者から約3人に感染すると推定されており(R24)、他のほとんどの呼吸器疾患に比べ、やや感染伝播の確率は低いとされています。

エボラ出血熱について:エボラウイルスには、ザイール株、スーダン株、レストン株、アイボリーコースト株、ブンディブヨ株がありますが、どれも猿類の病原性は重篤なものを示します。一方、ヒトへの伝染性がレストン株のみ無症状となっています。他の株と違いレストン株だけが重篤な症状を示さない原因はなんですか?わかっていません。エボラウイルスの病原性にはウイルスが引き起こすサイトカインの攪乱(cytokine disease)が強く影響するので、レストン株はヒトに対してサイトカインの誘導を起こす能力が弱いのかもしれません。また、細胞内に入っても増殖しにくいのかもしれません。

コウモリについて:日本では感染症法で輸入禁止動物であるコウモリですが、吉川先生は好きなコウモリはいますか?私はハイガシラオオコウモリが可愛いと思いました。ココウモリよりオオコウモリのほうが可愛いコウモリが多いように感じました。動物園などでヒトなつくコウモリもいるようなので、危険なウイルスの保有者・媒介者ではなければ、ペットとしても人気が出そうです。僕はエジプトルーセットが好きですが、オオコウモリの多くは気品があって格好いいです。輸入禁止にするまでは愛玩動物として結構人気がありましたよ。コウモリカフェやコウモリオフィスもあったように思います。

7回:ヒトからサル類へ感染する病原体について:結核や赤痢、麻しんなどがヒトからサル類へ感染する感染症ですが、結核での感受性が高い猿は旧世界猿であり、赤痢や麻しんは、新世界猿の方が感受性は高くなる理由はなんですか?旧世界サルのほうが感染症に対して強いようなイメージがあります。新世界ザルが比較的隔離された状況で熱帯、亜熱帯の樹林に生息しているのに比べて、旧世界ザルの方がヒトとともに広域に分布し、多くの病原体に触れてきたためでしょう(感染症の選択圧に耐えてきた)。ヒトでも新大陸に旧大陸の人類が乗り込んだ時(大航海時代以後)、天然痘、麻疹、風疹・・などの感染症で新世界の文明が滅んだことがあります。

8クリプトコッカス症について:クリプトコッカス症は吸入感染のイメージが強いのですが、経皮感染もおこるのですか?鳩の糞にさわったりすると感染する要因となるということですよね?基本的には糞中で増殖した真菌が経気道感染するものですが、皮膚の創傷部位からの感染もあります。ユウカリから胞子としてクリプトコッカスが放出される機構がよくわかりません。ハトのフンからクリプトコッカスに感染してユウカリから胞子を出せるようにするのですか?そうではないです。ハトの糞にあるクレアチニンはクリプトコックスの増殖に必要なのでハトの糞のリスクが高いのです。ユウカリはハトとは直接関係しません。クリプトコックス属には300種あります。その中で、ヒトの感染症の原因となるのは、Cryptococcus neoformansCryptococcus gattiiが主です。ハトの糞由来のクリプトコックスは、C. neoformansです。他方、C. gattiiは、北米やオーストラリアでアウトブレイクを起こしています。C. gattiiのリザーバー(自然宿主)は樹木とされ、特にオーストラリア産ユーカリが生息樹木とされています(人獣共通感染症ではない)。樹木の葉や種子及びその腐敗物の中でC. gattii が有性生殖し、胞子をつくると考えられています。C. neoformansと同様に空中に胞子が飛散し、浮遊した胞子の吸入により感染すると推測されています。

高病原性鳥インフルエンザと低病原性鳥インフルエンザについて:H5H7の亜型が世界で幾度となく流行を繰り返してきたことは理解したのですが、インフルエンザには他にもH1から現在ではH18までの亜型が存在しており、H5H7の以外の鳥インフルエンザはヒトに影響を及ぼすことは無いのでしょうか。それともヒト以外の動物の間で流行がおこり、現在でもウイルスが動物種内で保持されているということなのでしょうか。H5,H7以外でもヒトに感染する亜型がでてきました。H1~H16亜型は渡り鳥の間では保有されていますし、時々ウマやブタやアザラシ、クジラでも流行します。ただ、鶏ではこれまで、HA遺伝子が変異して高病原性になった亜型がH5H7で、それ以外の亜型がなかっただけです。ヒトの新型インフルエンザは、歴史的にH1N1のスペイン風邪、ホンコン風邪HN2, アジア風邪H2N2です。今は季節性インフルエンザになっています。

高病原性鳥インフルエンザはトリからブタに感染を起こし、ヒトにも感染できるウイルスへと変化していくという認識であっていますか?いいえ違います。高病原性というのはあくまでも鶏の話です。鶏で高病原性ということとヒトへの病原性は関連しません。ヒトの新型はヒトのウイルスと鳥のウイルス(高病原性である必要はない、そのためこれまでのもH1,H2,H3です)がブタで再集合したと考えられてきました。今回(H7N9)は、鳥の低病原性でブタを介さないで、直接ヒトを発症させる亜型が出てきたという話です。低病原性鳥インフルエンザではブタを介さずトリから直接ヒトへの感染が起こったのでもともとヒトにも感染できるようにヒトのレセプターに反応する変異を持ち合わせていたということですよね?今回の例(低病原性H7N9)はそうですが、H5N1は鶏に高病原性で、やはりブタを介さないでヒトに感染しています。少しずつ例外が出てきているようです。

9回:逆転写DNAウイルスについて:マイナス鎖DNAを鋳型としてプラス鎖DNAが合成されるが、完全な二本鎖になる前に細胞から放出されるため、ビリオンに含まれるゲノムは不完全な二本鎖DNAとなるとありますが、ビリオンとはなんですか?ウイルスが共通して持つものですか?ビリオンとは、細胞外に放出されるウイルス粒子のことです。B型肝炎ウイルスのゲノムの複製はとても複雑です。基本は環状の2本鎖DNAですが-鎖DNAを鋳型とした+鎖DNAの一部が欠損しています。転写後(+RNA)、逆転写酵素でDNAに読まれます(-DNA)。複製過程で+鎖が途中で止まったままウイルス粒子として放出されます。

ロタウイルスについて:ロタウイルスは内殻タンパクの抗原性によりAからG群の7個のうち5個がブタに感染します。なぜブタだけ感受性が広いのか?わかりません。ロタウイルスの哺乳類、鳥類への適応拡散においてブタ(イノシシ?)が最も古いのかもしれません。そこから他の動物に広がっていったために、ブタでもっとも多様性ができたかもしれません?あくまで推測です。フラビウイルスについて:ウエストナイル熱や日本脳炎の原因ウイルスであるフラビウイルスは、蚊-トリのサイクルで維持されており、夏から初秋にかけて発生します。西ナイル熱の増幅動物はトリですが、日本脳炎はブタ、イノシシです。この季節おそらく蚊が活発に行動する時期だからだと思うのですが、蚊がいない冬になるとトリしか保菌できないのでトリの中で感染が拡大することはないのですか?(トリ-トリ)冬季にどのように維持されるかわかっていません。北半球が冬の時は、南半球は夏なので、季節によりウイルスが両半球を移動する(熱帯、亜熱帯では蚊は一年中生息する)可能性、また冬季は、爬虫類や無脊椎動物、冬眠する哺乳類などで維持されているという仮説もあります。抗体が産生されるとウイルスは排除され、持続感染は起こらないので、冬季に鳥類でウイルスが維持されることは考えにくいです。

DNAウイルスとRNAウイルスについて:RNAウイルスはRNA自体不安定なものであって、なおかつ複製酵素に校正機能が無いので変異がおこると復元が困難になることは理解したのですが、DNAウイルスは、自らのDNAに変異が起きたとき修復機構が備わっているのですか?修復機能を持っているようです、また、DNAウイルスは2本鎖のものが多いので、どちらかで変異が起こっても修復できます。

ポックスウイルスについて:脊椎動物は7属とありますが11属ではないですか?昆虫も3属あるような気がしました。そうですね。最近、昆虫ポックスウイルスなども見つかり、また核細胞質性大型DNAウイルス( NCLDV)のグループに入れられ、解析が進んでいますし、まだまだ見つかると思います。ありがとう。

脊椎動物:オルトポックス(サル痘)、パラポックス(ヤギ・ヒツジ・ウシで人に感染)、アビポックス、カプリポックス、レポリポックス、スイポックス、モラスキポックス、ヤタポックス、セルビドポックス、センタポックス、クロコダイリドポックス

昆虫:アルファエントモポックス、ベータエントモポックス、ガンマエントモポックス(-)ssRNAウイルスについて:(-)ssRNAには、狂犬病ウイルスであるラブドウイルス科であったり、クリミア・コンゴ出血熱HFRSSFTSといった感染症の原因ウイルスであるブニヤウイルス科、ラッサ熱南米出血熱のアレナウイルス科、マールブルグ病エボラ出血熱のフィロウイルス科など感染症法で一類に分類されるものが勢揃いしています。これもやっぱり(-)ssRNAウイルスが不安定が故に変異しやすいから強力な感染症を引きおこすことが多いということなのでしょうか?変異しやすいために種を超えて感染しやすい(人獣共通感染症を起こしやすい)ことはそうだと思いますが、4類までみても-鎖のRNAウイルスが多いです。1類だけというわけではないように思います。

10回:Mycoplasma fermentansについて:ヒツジの性器からヒトに感染するそうですが、ヒトに感染したときの病名はなんですか?またこの細菌はヒツジにもなにか害を及ぼす人獣共通感染症ですか?まだないと思います。通常であれば、マイコプラズマファーメンタンス感染症となるでしょう。羊などで性器感染症の時に他の微生物とともに分離されるようです。

Mycobacterium tuberculosisについて:結核はヒト由来ですが、ゾウにも感染するケースがあるので人獣共通感染症という認識で間違いないでしょうか?ペットやサル、類人猿、その他多くの動物に感染します。ヒトと動物で行き来をする感染症の定義からして人獣共通感染症に入れていいと思います。動物由来という点では牛型、鳥型結核などが典型的と思いますが。

人獣共通感染症と動物由来感染症について:NIID 国立感染症研究所のサイトに人獣共通感染症の種類について載っています。しかし、結核や炭疽症の名前はありません。炭疽は4類にのっています。人獣共通感染症です。まだまだ記載されていない人獣共通感染症はあるのでしょうか?結核は2類ですが、感染症法ではヒト-ヒト感染に入れているかもしれません。また、動物由来の感染症であっても人獣共通感染症ではない細菌の区別が困惑します。野兎病は人獣共通感染症だと思っていたのですが、動物由来感染症ですよね?あたまがごちゃごちゃになります。最初に講義したように、人獣共通感染症は学術的用語、動物由来感染症は厚労省用語、人畜共通伝染病は農水省用語、ヒトと動物の共通感染症は獣医師会用語、海外ではZoonosisですが、全て一緒です。ただ、ヒトから動物に行くもの、ヒト-ベクター-ヒト(マラリア)などを除くこともあります。それから行政的にはすべてを網羅しません、公衆衛生上重要なもので、行政対応の必要なものを選んでいます。

レジオネラ症について:1998年にイタリアの農場で肺炎により死亡した子牛からLegionella pneumophilaが検出されました。これは、レジオネラが動物に感染した唯一の報告例らしいのですが、レジオネラ症は人獣共通感染症と言えるのでしょうか?レジオネラ属菌には60種以上が知られているようです。環境中には様々なレジオネラ属菌がいます。死亡した子牛から検出されたからといって1例で人獣共通感染症というのは無理があります。子牛の中でアウトブレイクを起こし、ゲノム解析でヒトからいった菌でヒトに戻ってくるようなケースが報告されれば人獣共通感染症に入れられるかもしれません。 エクセルで細菌と人獣共通感染症をまとめてみたのですが、こんなに少ないものでしょうか。動物由来感染症をふくめると結構量が増えそうな気がしますが・・・。そうですね、レジオネラの例もそうですが、環境で生きている微生物が、ヒトと動物に感染したとしても、それで人獣共通感染症というのは、多少問題があります。最低、同じ菌がヒトと動物の間で行き来する必要はあります。ヒトでほとんど病気を起こさないが、抗体が上がるので動物由来感染症に入れるケース、免疫不全者のように防御系が機能しないケースで巻き込まれる感染症をご個まで含めるか?いろいろ基準が難しいです。少ないのは、人獣共通感染症の中で重量なものをリストしあるので網羅してあるわけではありません。同属に沢山の種がある菌は個別に挙げると切りがないので代表として挙げてあります。繰り返しになりますが、リストをあげるなら人獣共通感染症の方が多いです。動物由来感染症は厚労省が行政対応を中心に作っているリストですから。獣医の場合は国家試験によく出る病原体を中心にリスト化されています。

 別の学生さんからの質問がありました。ここに回答を載せておきます。5回:スライドの11ページ目の「症状として朝夕に39-41℃の高熱」とありました。朝と夕方の時間だけの症状が奇妙に思えました。これは何らかの目的でアレナウイルスが活動した結果にこのような症状が現れるのでしょうか。それとも他の要因によってたまたま朝と夕に高熱がでるようになったのでしょうか。朝夕の1日に2回の発熱がみられる感染症としてはラッサ熱に記載がありますが、多くの熱性感染症は発熱期の稽留熱か2峰性(2相性)、あるいは回帰熱のような記載になっています。日内のリズムにはサーカディアンリズムがあります。免疫機能もこの影響は受けるので、関係するかもしれませせん。朝のコルチゾールのピークは免疫抑制に影響します。夕方はウイルス感染による発熱がピーク(疲れによる免疫機能低下?)のようです。感染症では、発熱は発熱期のパターンに関する記述がほとんどで、一日の日内パターンに関する記載はあまり見当たりません。

11回のスライド20ページ目の「分類群は基本的にrRNA配列によって分類される」とありましたが、細かい分類は他のゲノムの部分などで分類されるのでしょうか?プロテオバクテリア門は形態の多様性から見た目(表現型)よりもゲノムの部分で判断されるのかと思いました。そう思います。大きな分類は保存性の高いrRNAで分類されます。これまで細かい分類は遺伝子で比較してきましたが、各遺伝子は環境に適応して変異が入っているので、どの遺伝子を比較するかで違いが出ます。やはりゲノム全体の相同性(ホモロジー)で比較することになりますし、それが可能な時期に来ていると思います。13回のスライド20ページ目のデングウイルスがICAM3に結合するとありました。免疫学では免疫グロブリンスーパーファミリーのヒトKIRNK細胞にとって抑制性レセプターであると学習しました。免疫グロブリンスーパーファミリーは抑制性レセプターなのかと思っていたので(違います、免疫グロブリンスーパーファミリーは広い概念です)ICAM3が抑制性レセプターであるならば、デングウイルスがその受容体に結合するのは非常に不利な戦略ではないかと思いました違います)。免疫グロブリンスーパーファミリーに属するものなら必ずしも抑制性レセプターであるというわけではないのでしょうか?そうです。免疫グロブリンスーパーファミリーは様々な蛋白群を含みます。特徴的な構造としてはシステインループの繰り返しを有する分子群です。免疫グロブリン群をはじめNCAMCD31抗原L1ICAMファミリーネクチンSALMContactinTAG-1NrCAMNeurofascinNeclなど、他にもあります。

ICAM3ICSM3は、別名CD50で、分子量120-130kDaの糖鎖に富む型膜タンパクです。活性化の如何に関わらず全ての系統の白血球に発現しますが、血小板、赤血球には発現しません。Intercellular adhesion molecule-3ICAM-3)として知られており、細胞の接着の際にLFA-1と相互作用し、細胞の接着に働きます。ちなみに、LFA1については、以下の記載があります。「血液中を流れるリンパ球は、体内に侵入した病原体などの異物を攻撃して排除する役割を担っている。この過程で、リンパ球は血管内皮細胞や樹状細胞などとの接着が厳密に制御されている。それが動物の免疫監視の根幹をなす。リンパ球がほかの細胞に速やかに接着するには、LFA1という接着因子が細胞前方に集中的に出てくる必要がある。LFA1はリンパ球の細胞膜に散在するほか、多数の予備群が細胞内部にある小胞にくっついている。 この小胞の細胞内輸送に関わるタンパク質を調べた。その中で、Rab13が不活性型から活性型に変わると、それが「荷札」となってLFA1の集中的な輸送が起きている。この輸送には細胞内のモータータンパク質のミオシンが複合体を形成して機能していた。リンパ球の免疫機能の発現には、Rab13 が機能してLFA1が細胞内で輸送され、細胞膜の局所への集積が欠かせないことがわかった。」デングウイルスの蛋白はLFA1に類似したリガンドとしてICAM3に結合しエンドサイトーシスで細胞内に取り込まれ、白血球を含む免疫系細胞で増殖し、免疫機能を低下させるとともに攪乱するのでしょう。

ブニヤウイルスとトガウイルスについて

ブニヤウイルス科のブニヤってどういう意味ですか?何故かブニヤウイルス科が覚えにくいです。トガウイルスのトガの意味も知りたいです。フィロウイルスはフィラメントのフィロでフラビウイルスのフラビは黄色という意味とウイルスの特徴がなにかあるような名前がついていると思うのですが。New Latin, from bunya- (from Bunyamwera, locale in western Uganda where the virus was isolated in 1943)。ブニヤは新しいラテン語で、1943年にブニヤウイルスが分離された西ウガンダのブニヤムウェラという地名に由来しています。トガウイルスが厚い外被膜をもつので、ウイルス名は「マント:toga」という意味のラテン語に由来しています。

高病原性鳥インフルエンザについて

高病原性鳥インフルエンザは水禽類の段階では病原性を持っておらず、アヒル・ガチョウに感染すると低病原性になり、そのあと鶏・七面鳥に感染して高病原性になるという基本ルールがあるとおもうのですが、非病原性のウイルスがアヒル・ガチョウにきたら低病原性に変化をおこすことは再集合が起こるからですか?それとも感受性の違いによるものですか?アヒル・ガチョウから鶏・七面鳥も同様です。これらはいずれも再集合ではなく、点突然変異によるものです。これまでのルールではH5H7の亜型のウイルスが、点突然変異により、病原性が高くなるものです。基本的にはHA蛋白が解列する部位(HAHA1HA2に解列する)に塩基性のアミノ酸が配列すること、あるいは立体構造的に、変異により解列しやすくなるためです。肺以外の部位でもHAが解列できるようになると全身感染が起き、ウイルス血症を起こしやすくなる(ウイルス増殖率が上がり、病原性が高くなる)と考えられています。

マールブルグ病について

エジプトルーセットからアフリカミドリサルにきて感染源にとなりますがこれは旧世界ザルのほうがマールブルグ病の感受性が高いのでしょうか?自然宿主のルーセットオオコウモリに比べ、ヒトやサル類は感受性が高いと考えられます。特に旧世界サル類(アカゲザルやカニクイザル)は、非常に高い感受性を示し、実験感染ではほぼ100%死亡します。

エネルギー産生・代謝について

マイコプラズマはTCA回路、脂質合成系、アミノ酸合成経路を欠損しています。クラミジアは、代謝系の一部を欠損となっていえるが、何を欠いているのでしょうか?以下の記載がありました。「クラミジア科の菌は,エネルギー代謝を自分自身で完結させることがなく,増殖に必要な各種の物質代謝の能力を欠損しています.エネルギー寄生体であり,ATP産生を宿主細胞に依存しています.したがって,偏性細胞内寄生性病原体として,培養細胞の中でのみ生活環が完結しています.」

 遅くなりましたが第12回以降のスライドをアップします。第12回は感染経路です。

感受性宿主と自然宿主という表現ですが、ウイルスや細菌は基本的にクローン増殖系で一部の原虫や寄生虫のように有性生殖をおこないません。従って、寄生虫感染症などで使用される無性生殖ステージの中間宿主や有性生殖(受精、接合と減数分裂、次世代の種虫)ステージの終宿主という考え方は適合しません。強いて言えば、鞭毛虫や根足虫などのように無性生殖で宿主を変える2宿主性、3宿主性などというべきでしょう。ウイルス感染症では、ウイルスが自然状態で共存している宿主が自然宿主、自然宿主からウイルスが伝搬し、発症する宿主が感受性宿主になるのでしょう。

 

 2020年春2学期の遠隔授業は獣保の2年生でした。いくつか出した課題の中に、以下の課題がありました。ここで紹介した蚊、ダニ、ノミ以外で①主な人獣共通感染症(獣医の学生に教えていた家畜感染症・動物感染症も含む)を媒介する節足動物、②運ばれる病原体と③感染症の概要を表に纏めなさいというものでした。いろいろな形式の表を作ってくれました。PPで提出してくれたデータを纏めて1枚にしたものが以下のものです。図入りでわかりやすいです。牛白血病、水疱性口炎、小型ピロプラズマはヒトには来ません。家畜の感染症です。インフルエンザは通常は、飛沫・空気感染です。ロイコチトゾーンは家禽の感染症でやはり人には来ません。クリプトコックスはコウモリの糞、住血吸虫は中間宿主(巻貝など)からなので、節足動物ではありません。

 第13回は、感染症事例の最初として、ベクター(この場合は蚊)媒介感染症であるデング熱を取り上げます。ベクターが単に、機械的にウイルスを運ぶのか?ベクター中で増殖可能であるか?は、ウイルスの拡散にとって非常に重要な点です。感染経路におけるベクターの特性というものを整理して考える必要があります。

第14回はエボラ出血熱です、西アフリカでの初めての大流行は、世界を震撼させる規模でした。今回の流行では、何例かは西アフリカの3カ国以外にも患者が拡散しました。アメリカやスペインでは感染者が帰国し、2次感染を起こしましたが、西アフリカのような流行には至りませんでした。途上国における人獣共通感染症の事例として、先進国での流行とどのような違いが出るのか考えてみようと思い、このテーマを取り上げました。

 

 次回は、いよいよ15回で最終回の講義です。最後の事例として西日本で発生したマダニが媒介する新興ウイルス感染症である、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について分析します。特に、ネコがヒトと同じくらいの高感受性動物で、関係した飼い主さんや、診断・治療した獣医さん、動物看護師さんが感染・発症し問題となっています。マダニの生態や節足動物とフレボウイルスの関連などを含めて、この感染症について学びます。

 

妻と作った人形。

娘の修学旅行の写真をもとにしました。

妻と作った人形。

娘の修学旅行の写真をもとにしました。

オリジナルの写真です

 

娘のドイツ時代のカーニバルの写真です。大家さんは子ネズミちゃん「モイスヒェン」といっていました。

下の人形は妻の作品です。

先日、妻の作品が創刊700号記念家庭画報大賞の佳作に入りました。

題「何して遊ぼう」です。

 

妻が、稽古に通い、粘土で作った作品です。昨年、東京フォーラムで、他の生徒さんと一緒に展示されました、「仙人草」

(水やり不要です)。

妻の人形作品です。

ドイツ時代の香代の幼稚園の友達です

ある夏のスナップです。妻の父母、娘、甥たちの集合写真から作りました。