2018年11月3日、松山大学薬学部で第9回愛媛微生物学ネットワーク・フォーラムがありました。特別講演として「微生物からみた人獣共通感染症」という題ではなしました。

 ウイルスや細菌などを、感染性病原体からみて考えてみようというものです。「病原体の科学」を教えているうちに、環境の微生物、動物に感染する微生物、さらにその中で種を超えてヒトにくる微生物にはどのような違いがあるか?気になるようになりました。

 動物由来感染症(人獣共通感染症)の原因微生物として、どのような特徴を有しているかを考えてみました。これまで、あまり病原体の側から見た感染症に関する考察がなかったように思います。ここで少し、整理してみました。海外の講演では「zoonotic virus」という題で、ヒトに来るウイルスの特性をまとめました。

 最初のスライドは人獣共通感染症のイントロです。

 ここからは、各論です。「人獣共通感染症」と「病原体の科学」の授業で、学生と、もう一回、病原体としてのウイルスというものを考えてみようというので、学生にレポートを書かせ、発表させました。学生さんは素直なので、人獣共通感染症のウイルスにこだわらないでウイルスのレビューをしてきました。これが私にとっては目からうろこでした。というのは、僕らが教える人獣共通感染症の微生物は当たり前で、ウイルスも細菌も寄生虫も動物からヒトに来る病原体だけを教えるわけですから、100%、当たりくじの特性を教えているわけです。けれども、そういう考えを忘れて、もう一回、ウイルスというものを見てみたのです。

横軸がゲノムサイズです。縦軸がウイルスの粒子の大きさです。こうやって見ると、DNAウイルスというのは、物すごい多様性を持っていて、一番大きいのがポックスウイルス、次がヘルペスウイルスです。ポックスウイルスは200近い遺伝子を持った非常に大きいウイルスです。ヘルペスウイルスの遺伝子は100個くらいです。他方、一番小さいのはパルボウイルスで、粒子の大きさは25ナノメートルしかありません。遺伝子も2個です。DNAウイルスは、大から小まで、この直線状に乗っています。

一方、RNAのウイルスは、ゲノムが2本鎖なのはレオウイルスとビルナウイルスで、1本鎖には+鎖と-鎖のウイルスがいます。そのままメッセンジャーになってタンパク質に読んでいけるゲノム(+鎖)を持っているものと、一回、マイナスからプラスに読まないとタンパク質合成ができないグループがいるわけです。

プラス鎖のRNAウイルスで一番大きいのがコロナウイルスです。大体、ヘルペスウイルスの半分以下の大きさです。そして、+鎖のRNAウイルスで一番小さいのはポリオウイルスや口蹄疫ウイルスを含めたピコルナウイルスです。そこそこの多様性があるのですけれども、DNAウイルスほどの大きさの多様性はありません。他方、

驚いたことに、-鎖のRNAウイルスというのは、ほとんど多様性がなく、差がありません。一番大きいのがパラミクソウイルス、一番小さいのがオルソミクソウイルスですから、麻疹とインフルエンザのウイルスがそんなに変わるはずがありません。遺伝子は8~10個くらいです。ゲノムの構造は、ほとんど変わりません。それぞれのウイルスグループには、こんな特徴があります。

 

 DNAのウイルスを見てみると、確かに、サル痘とかパラポックスとかヤバポックスとか、ポックスウイルスが容易に動物からヒトに来るというように教えています。それから、ヘルペスウイルスを教えるときには、いつも動物由来感染症の例としてBウイルスを教えます。しかし、この2種類の大型DNAから下ですね、比較的小型のDNAウイルス、アデノウイルス、パポーバウイルス、パピローマウイルス、それからパルボウイルス、ヘパドナウイルスなど、ここに入ってくる中型から小型のDNAウイルスは、動物もヒトにもウイルスはあるにもかかわらず、動物からヒトに来るウイルスはほとんど知られていません。

これは僕にとっては非常にショッキングな結果でした。いつも教えるのは、陽性例ばかりですから、当然、これらのウイルスの中にも、大型のウイルスと同じぐらいの頻度で動物からヒトに来るウイルスがいるとアプリオリに考えていました。例えば、アデノウイルスだって、ヒトでは49種類も既にヒトのウイルスを持ったいます。かつて、これらのウイルスがヒトに来ているにもかかわらず、現時点で、サルから鳥類、魚類、その他の動物が、みな自分のアデノウイルスを持っているのに、種を超えてくるというものが知られていないというのは、どういうことなのだろうか?ということです。

 

 このルールは一般的なのかというので、今度は自分でやってみました。+鎖のRNAウイルスで一番大きいコロナウイルスは、SARSやMERSウイルスのグループで、動物由来感染症を起こします。それから、レトロウイルスは逆転写酵素を持っているので多少事情は違いますが、白血病ウイルスやエイズのウイルスのグループでやはり種を超えてヒトにきます。トガウイルス、フラビウイルスなど、この辺の中型の大きさのウイルスまでは、確かに容易にヒトに来ます。しかし、小型の+鎖RNAウイルスに入って、カリシウイルス科ではノロウイルスだけがヒトにきます。けれども、これはもともとヒトのウイルスが腸管でふえて海まで行って二枚貝で戻ってくるので、動物由来というべきではないかもしれません。それより小さい+鎖RNAウイルスは、ほとんどヒトには来ないということです。

 RNAのマイナ鎖ウイルスは、パラミクソウイルスからラブドウイルス、ブニアウイルス、アレナウイルス、フィロウイルス、オルソミクソウイルス、知られている全ての科のウイルスが動物からヒトに来ます。 

だから、僕らがウイルスによる人獣共通感染症を教える時は、ほとんどは、ここのウイルスグループに集中しているのです。教科書の大半はこのグループのウイルスの紹介です。-鎖のRNAウイルスは極めて均一で、ゲノム構造は多様性がなくて、ほとんど8個~10個くらいの遺伝子で、分節しているものもありますが、NP-P(V,W)-M(M1,2)-GP(H,N.HN,F)-L(PA,PB1,2), NSなどからできています。基本的にはゲノム構造が類似しており、全ての科のウイルスがヒトに来るという特性を持っています。

これは何だろうか?ということを考えてみました。人獣共通感染症を起こすウイルスの特性というのを自分なりに、もう一回、誰もこんなことを考えたことがなかったので、分かったことをルール化してみようと考えました。

そうすると、まず1番目はゲノムの大きさが問題だということです。大きいウイルスのほうが小さいウイルスよりも種を超えやすい。当たり前で、200の遺伝子を持っているポックスウイルスと2個しか遺伝子を持っていないパルボウイルスを比べれば、ウイルスは生きた細胞からタンパク質合成系を借り、また細胞の蛋白質をかりて増殖するわけですから、もし2個の遺伝子のウイルスが種を超えようとすると、198種類のタンパク質をAの動物からBの動物に乗り換えても使えなくてはいけないということになります。これを考えると、小さいウイルスは宿主からの借り物のタンパク質が多くなればなるほど、一旦、その宿主に適応したら宿主を変えにくいだろうというルールは成り立つかもしれないと思います(大>小)

 また、ウイルスが種を超えるためには変異が必要なので、ゲノムの安定性に関しては、安定なほど逆に言えば種を超えにくいわけで、変異の少ないウイルスは新しい環境に適応しにくいから宿主を変えない。そうすると、2本鎖のゲノムを持つウイルスよりも1本鎖のゲノムのほうが不安定ですから種を超えやすいし、DNAウイルスよりもRNAウイルスのほうが有利になるだろうということになります(1本鎖>2本鎖、RNA>DNA).

それから、独自の複製酵素を持つほうが自由度が高いと考えられます。小型のDNAウイルスなどでは、自分の複製酵素を持ちません。この場合は、ヒトのウイルスならヒトのDNAの複製酵素を借りているので、これはもうほとんど、宿主が定着したら、その宿主の動物種にはまってしまうことになります。種を超えて感染することは非常に難しい(独自の複製酵素を持つ>持たない)

それから、ゲノムが分節して遺伝子ごとに分かれているウイルスは、インフルエンザウイルスみたいにリアソート(遺伝子再集合)しますから、点突然変異だけではなくて突然遺伝子を丸ごと入れかえることができるので、全く新規のゲノムを構成できます。そのため、場合によったら宿主の動物の分類で、綱、目、科などを超えても、かなり離れても一気超えていく可能性があります(分節ゲノム>非分節ゲノム)

最後に、自然宿主とヒトの遺伝的距離を考えると、ウイルスの増殖過程では、それぞれの宿主細胞内の種々の蛋白や酵素、脂質、代謝系などを利用するので、ヒトと自然宿主の遺伝的距離が近い動物を宿主に持つウイルスは、当然、ヒトに感染しやすいという特性を持っています(自然宿主がヒトに近い>ヒトから遠い)

 

 

この5つルールを考慮して人獣共通感染症のウイルスのリスクを考えてみようと思ったのが、上の図です。まだ完成域ではないのですけれども。横軸には、DNAのほうがゲノムがより安定で、RNAのほうが不安定なので、そのように並べてあります。縦軸はゲノムサイズの大きいものからサイズの小さいもの、自分の複製酵素を持っているものから自分の複製酵素を持っていないものなどを含めて、はめ込んでみました。原点に近いほど宿主を換えられないということです。原点から離れるほど、リスクが高いわけです。 

そういう形で宿主域を含めて表をつくってみると、トップにいるのが、現存している限りは①コロナウイルスです。それから、次に来るのが②ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、それからレオウイルス、プラス・マイナス鎖のRNAウイルスではアレナウイルスとかブニアウイルス、オルソミクソウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レトロウイルス、ラブドウイルス、フィロウイルスです。この辺がいつも登場する人獣共通感染症の病原体です。それより少し来にくいのが③アデノウイルス、ヘペウイルス、カリキウイルス、アストロウイルスです。ほとんど種を超えて来ないと思われるのが④ヘパドナウイルス、パルボウイルス、パポーバウイルスといったウイルスだろうということになりました。

 

妻と作った人形。

娘の修学旅行の写真をもとにしました。

妻と作った人形。

娘の修学旅行の写真をもとにしました。

オリジナルの写真です

 

娘のドイツ時代のカーニバルの写真です。大家さんは子ネズミちゃん「モイスヒェン」といっていました。

下の人形は妻の作品です。

先日、妻の作品が創刊700号記念家庭画報大賞の佳作に入りました。

題「何して遊ぼう」です。

 

妻が、稽古に通い、粘土で作った作品です。昨年、東京フォーラムで、他の生徒さんと一緒に展示されました、「仙人草」

(水やり不要です)。

妻の人形作品です。

ドイツ時代の香代の幼稚園の友達です

ある夏のスナップです。妻の父母、娘、甥たちの集合写真から作りました。