2015年11月25日に東京国際フォーラムの就職懇談会で30分間、講義をすることになり、

「感染症を学ぶ」というタイトルと選びました。中身は動物由来感染症です。

2015年の活動One World, One Healthでは、マンハッタン原則(2004)の内容を紹介しています。また、人獣共通感染症3年生では、講義内容を順次公開していきます。エボラ出血熱、デング熱は3年生の感染症対策論の各論の講義内容です。

右横のコウモリと感染症のファイルは、コウモリに特化した講義です(厚労省研修会)。

 

東京大学の市民公開講座の記録がありました。

テーマは「グローバリゼーション」です。

その中の「グローバリゼーションと動物由来感染症」に関する講義です。

http://todai.tv/contents-list/lp1hp1/c3df7x/sb3l6i?p=1

http://todai.tv/contents-list/lp1hp1/c3df7x/sb3l6i?p=2

http://todai.tv/contents-list/lp1hp1/c3df7x/sb3l6i?p=3

http://todai.tv/contents-list/lp1hp1/c3df7x/sb3l6i?p=4

 

 

 北海道大学、大学院のリーディング大学院

講義の内容もPDFで残っています。

https://www.vetmed.hokudai.ac.jp/project/leading/report/seminar.html

感染症学雑誌にもPDFの総論がありました。

http://journal.kansensho.or.jp/Disp?pdf=0800020064.pdf

 

2014年7月8日 食肉フォーラムの記録です。

「動物感染症のリスクコントロール」 千葉科学大学副学長/東京大学名誉教授 吉川泰弘先生

国境を越えて動物や人の感染症を封じ込めることが持続可能な社会のためには欠かせません


口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザなど急速に国境を越えて広がる動物感染症。その脅威にどのように対処していくのか。まだ新しい学問分野である危機管理学とは。OIEをはじめ国際機関の連携で動物感染症のリスクコントロールはどこまで可能なのか。吉川泰弘先生にうかがいました。

 

感染症とは、病原体の侵入・増殖によって宿主に障害が起きた状態

人類が持続可能な社会をつくり上げていくためには、①安全な食品を安定的に供給できること、②環境の汚染を進行させないこと、③動物や人の感染症をコントロールすることが重要です。

西アフリカで猛威を振るっているエボラ出血熱などのウイルス性出血熱をはじめ、BSE(牛海綿状脳症)、SARS(重症急性呼吸器症候群)、パンデミックインフルエンザなど、近年、世界的な脅威となったヒトの感染症は、みな動物に由来するものです。また、国際的な食料供給の脅威となる口蹄疫や鳥インフルエンザは、家畜の感染症です。このような感染症のリスクをどのようにコントロールしていくべきかを考えてみたいと思います。

感染症とはいったい何でしょう。「病原体の曝露を受け、病原体が体内に侵入・増殖する状態が感染で、この感染によって宿主に障害が起こった状態が感染症」と定義されています。しかし、感染症の原因となる病原体(細菌・真菌・原虫)は、地球上に初期に出現した生命体群で、宿主(家畜やヒト)は最後に現れたグループです。私たちは、この両者の相互作用を感染・感染症と呼んでいます。

先に挙げたSARS、鳥インフルエンザ、エボラ出血熱などは、この約20年間に新しく認識された感染症で、「新興感染症」と呼ばれています。WHO(世界保健機関)は、新興感染症を「局地的にあるいは国際的に公衆衛生上の問題となる感染症」と1990年に定義しています。これまでに30 種類以上の新興感染症が知られています。

 

新興感染症の出現に呼応して危機管理学の充実が求められています

この新興感染症の出現に呼応するように、最近、よく使われる言葉が「危機管理」です。感染症の流行やパンデミック(世界的に蔓延した状態)、あるいは災害時の感染症統御等に危機管理学を導入する必要性が指摘されていますが、まだ体系だった学問にまで至っていません。私が携わっている大学の動物危機管理学科は、日本に1つしかない新しい学科ですが、今後の発展が期待される学問分野です。ここでは、危機管理という観点から感染症への対応を考察していきます。

 

危機というものは平常時にも進行している

私たちは普通、危機というのは突発的に起こるものだと思っていますが、実は、かなりのものは平常時に進行しつつある危機なのです。自然科学だけでなく、社会科学や文科系を含めた政治・経済的な危機、国際的なパワーシフトの変動、エネルギー・食糧不足、地球温暖化、環境汚染など、いま現在、進行しつつある危機で、このリスク回避に失敗してしまうと、突発的な危機につながってしまいます。

突発的に発生する危機、すなわちクライシスには、経済的・政治的な破綻、テロ、地震や台風などの災害、あるいは感染症などがあります。これに関してどう臨むかというのは、危機管理学からいうと、「想定外」とせずに、クライシス管理のプログラムを何通りも作成して、予備訓練をして検証しておくという取り組みが必要であることが少しずつわかってきました

危機管理には3つのステージがあります。①リスク管理は、危機になる潜在的可能性を

考え、その確率と社会的インパクトによってリスクレベルを想定し、リスク評価に基づいたリスク回避措置を取るという予防原則を適応します。その上で、説明と同意というリスクコミュニケーションを行います。

しかし、それでも、突破されてクライシスは起こるわけで、そのためにシミュレーションと危機管理のシナリオをつくっておく必要があります。それが②危機管理(クライシス・マネージメント)です。実際に起こった時、被害をどうやって低減するかということです。組織の機能を維持するための、指令塔と組織体制、あるいは人的・物的資源をどう有効に使っていくかが重要です。終息するための自助・共助・公助というような協力体制と、ここで最も大事な部分がクライシスコミュニケーション、つまり、情報公開と透明性ということです。

そのステージが済んだところで、③レジリアンスという、復興・復旧管理になります。これは以前に戻すという考え方と、反省学で、以前より頑強につくり直そうという考え方があります。これに加えて失敗学――私が勝手につくったのですが、失敗した経験に基づいて放棄撤退する。もはや戻さない。間違えていたのだからやめようという選択肢もあり得ると思います。東日本大震災後の、原発や高濃度汚染地域の問題もあって、この選択肢の存在に気づき始めていると思います

 

科学的な知見と安全行政の橋渡しをする科学が求められている

サイエンスとの関係で見ると、危機管理の自然科学分野はレギュラトリーサイエンスにまとめられます。その根底は政策決定です。国際的に考えた時に、政治的政策論だけでは、国家観や主義の違いなどがあって、調整が非常に難しい。あるいは調整できない。それに対して中立、科学的な評価に基づけば、この点は是正できるのではないかというのが根本的な考え方です。

特徴をまとめると、科学的知見と行政措置や規制の橋渡しをする科学です。ベースにあるのはレギュラトリーリサーチ(レギュラトリー研究)で、科学的知見と規制の間のギャップの橋渡しをするリスク科学、リスク評価、リスクコミュニケーションをベースにするサイエンスです。それをレギュラトリーアフェアーズ(行政サイド)に伝える、あるいはそれを支えるという、安全確保のための規制措置や規制の国際調和のベースをつくる科学ということです


動物危機管理学の主要テーマをカテゴリーに分ける

私の大学の3年生に動物危機管理学概論を教えることになりました。動物危機管理とは何かという定義のところで困りました。どこにも種本がなく、結局、自分でつくるしかないので、考えに考えた末、主要テーマを以下のように分類しました(図表4 動物危機管理の主要テーマ)

動物はそのキャラクターの違いによって、伴侶動物(ペット)、産業動物(家畜)、展示動物(動物園)、実験動物、野生動物の5つに分類できます。そして、危機のカテゴリーは、大きく4つに分けられます。平時に進行している危機、例えば野生動物なら絶滅危惧種の問題。さらに、突発的に起こる危機としては、事故やテロなど人為的なもの。台風、地震などの自然災害。そして流行病や新興感染症といったものです。先ほど説明したように、危機管理のステップは3つですから、5×4×3で合計60のキュービックになります。 

野生動物の平常時では絶滅危惧種、外来動物、有害鳥獣、ジビエの問題がありますし、人為的なものでは事故、ロードキル、傷病鳥獣から放射線の汚染動物処理、死体処理などもあります。災害対策やテロ。そして感染症あるいは非感染症と、それぞれの項目に分けられます。

今回は家畜と動物感染症ですから、赤線で囲った部分、越境感染症、食品由来感染症、食中毒がテーマですが、ここでは、依頼されたテーマ、「動物感染症のリスクコントロール」に的を絞りました。

 

家畜感染症のリスクコントロールに関わる国際機関

家畜感染症のリスクコントロールには、いろいろな国際機関が関与します。特に、国際的な獣医の司令塔(ヘッドクォーター)である、パリに本部があるOIE(国際獣疫事務局)と、ローマのカラカラ浴場のすぐそばにある国連の機関であるFAO(世界食糧農業機関)、この2つがかなりコミットしてきます。

 当然、WHO(世界保健機関)もWTO(世界貿易機関)も関連しますが、OIEの立場からすれば、動物疾病の統御と、それを介した家畜由来の食料の安定供給や安全保障という点で、FAOと連携しています。また、安全基準については、コーデックス委員会※1も絡みますが、WTOの世界貿易のほうの世界基準を作成しますし、ズーノーシス(人獣共通感染症)の、ヒトに来る前の調査という点ではWHOとのコラボレーションを要求されるという立場にあります(図表5 国際機関とOIEの関係)


 コントロールするべき家畜感染症は89種類にのぼっています

OIEがコントロールしなければならない感染症として挙げているのを見ると、すごいものです(図表6 OIEの家畜感染症リスト)。リストA、これは非常に深刻で、国境に関係なく伝播していって、国際貿易にとっても最重要というグループで、15種類あります。鶏の場合は高病原性鳥インフルエンザとニューカッスル病、豚も牛も山羊も羊もありますし、馬のアフリカ馬疫もあります。

リストBは、リストAよりもワンランク下ですが、国際的に封じ込めが必要というのが74種類あり、国内の社会経済や公衆衛生に重要で、国際的にも貿易にとって重要というものです。187カ国、約200近いさまざまな国で絶えず起きている感染症を、それぞれの国の事情を含めて対応し、何とか国際協力で抑え込んでコントロールしていく必要のある国際的な感染症です。

100近いそれぞれの感染症についてのルールは、OIEが定めるテレストリアル・アニマル・ヘルス・コード、陸生動物衛生規約と訳しますが、ここにすべて書かれています。この規約は国際基準です。それとWTO2国間のSPS(衛生植物検疫措置)協定※2があります。コードは動物衛生と人獣共通感染症の国際基準にしようとスタートしたもので、毎年、すべての感染症について見直しがあり、大体2年に1回、非常に分厚い改訂版が出ています。

コードには、家畜感染症のリストABが発生した際、各国がとらなければならない義務としての通報、情報交換、動物あるいは畜産物の輸出入のための衛生基準、そのための措置がすべて書かれています。また、移動時に必要な健康証明書を含め、獣医がサインする証明書の様式から輸送、病原体の撲滅法、疫学調査、その他ワクチンについて、あるいは最近は、それぞれの感染症のリスク分析法まで載っています。われわれにとっては教科書以上の戦略本です。

※1 コーデックス委員会 食品の公正な貿易を促進するため、食品の安全性と品質について国際基準をつくる政府間組織。ローマのFAO本部内に事務局がある。

※2 SPS措置 輸入される農産物や植物に病害虫が付着したり、人体に有害な物質が含まれている可能性がある場合、国内での流通を制限できる。


いつどこで何が起こっているかを共有できる情報システムWAHIS

感染症は情報が非常に大事です。いつどこで何が起こっているかを、誰でもわかるようにしようと開発されたのがWAHIS(世界動物衛生情報システム)です。基本的に各国に1人ずつ置かれている首席獣医官は、先ほどのリストABの家畜感染症が出たらOIEに即報告しなければいけない。また毎年1回、上半期と下半期に分けて、それぞれの感染症が起きた時、流行の出現規模、どのように診断したか、どう終息できたかをレポートにして提出することになっています。それらが本部に上がってきて、すべてデータ処理され、ホームページで検索できます。例えば2004年から2009年にかけて流行したニューカッスル病は、どこで、どのくらいの規模だったかが世界地図でわかるのです。

アクセスは簡単です。OIEのホームページを開き、トップページから「animal health in the world」をクリックする。その中の「world animal health information system」、つまりWAHISを開き、さらにWAHIDを選ぶとデータベースにアクセスできます。知りたい疾病の国別か、疾病別か、あるいは管理措置かを選んで入力すると、発生疾病地図で出したければ、例えば「炭疽・牛・発生期間」を入力すると、いつ、どこで、炭疽がどういう流行状況だったかを誰でも知ることができます(図表7 データ入手方法の手順)

 

国境を越える感染症を封じ込める、隔離するという考え方

最近、家畜感染症をコントロールする1つの方法としてOIEが提言し、各国で検討しているのがゾーニングとコンパートメンタリゼーションという考え方です。これは容易に国境を越える越境性感染症に巻き込まれた国が、国内で地域的に、あるいは施設的に感染を封じ込める、あるいは隔離するという考え方です。

ゾーニングは、封じ込めの地域を確立するもので、大陸の国がメインですが、渓谷や大河など自然的な区切り、人工的な地理的区切り――高速道路で止まった感染症もありますから――、あるいは県境、州境で汚染地域と清浄地域を分けて考えようというものです。

コンパートメンタリゼーションは、バイオセーフティレベル※3とコンテインメント、封じ込めの手段を適用して施設内の家畜の清浄化を維持することです。野鳥のインフルエンザウィルスから家禽を隔離して、それがきちんと成功していれば、そこの鶏は清浄区と考えていいのではないかという考え方です。

当然、疫学調査が必要で、サーベイランスやトレーサビリティなど個体識別のシステムを確立しなければいけないし、こういう要件は疾病ごとに異なるため、100に近いすべての感染症に使える戦略ではないまでも、国際貿易を維持する観点から、導入が必要ではないかということで議論が進んでいます。

※3 細菌・ウイルスなどの微生物・病原体などを取り扱う実験室や施設の格付け。危険度に応じて4段階のリスクグループが定められている。


疑わしい症例は報告する文化を育てる必要があります

OIEとは別にFAOも家畜感染症のコントロールに対するリコメンデーションを出しています。これに関して、日本が危機管理の面で比較的弱い部分を洗い出してみました。

1つは責任と命令系統で、首席獣医官というのは事前準備をして、現場で管理のすべての責任を取る。大臣は最終責任を取るために存在します。発生してしまった時、情報は直接ヘッドクォーターから現場に行き、現場から直接ヘッドクォーターに戻る。また、すべての下部組織は指揮体制下に置かなればならないという、かなり厳しいリコメンデーションです。

もう1つは、疑いの段階です。感染を疑った人は誰でも届け出なければならない法的義務があり、確信が持てない状況で症例を見逃してしまうと、特に口蹄疫はアッという間に拡がり ます。拡大再生産率R naughtR0: アールノート)は、40ですから、ヒトでのR0の最大であるはしか(麻疹)152倍以上のスピードで広がっていくので、大惨事になります。ですから間違えてもいい、届出なさいとなります。さらに、本当に当たりくじを引いた人(初発農家、初発例の発見者)には、国を挙げて謝意を表明して、疑わしい症例でも報告する文化を育てないと、リストAにあるような感染症はコントロールできないということです。

さらに、資金をきちんと準備しておく。資金の投入が遅れると疾病はどんどんと広がってしまうので、特別基金をつくって、あらかじめ使う状況を特定しておく。この辺は日本の感染症対策としては不十分です。

 

 

厚生労働省のホームページに「動物由来感染症を知っていますか?」という項目があります。動物危機管理の一つの大きなテーマは、新興・再興感染症のように世界が悩んでいる 動物から来る感染症のコントロールをどのように実行するか?ということです。

 

大学教育では、こうした問題に取り組んで活躍できる人材を育成することも、危機管理上、重要な役割と考えています。3年生の授業には「人獣共通感染症学(動物由来感染症学)」や「動物感染症対策論」の講義があります。野生動物(サル類、コウモリ、野鳥、齧歯類など)に由来する感染症や家畜、伴侶動物(ペット)から来る感染症を学ぶとともに、

国際機関がどのように取り組んでいるか?

国内での対応はどのようになされているか?

どんな研究がおこなわれているか?などを学びます。

 

 

 

動物由来感染症については、
厚生労働省のホームページに

「動物由来感染症ハンドブック2013」として

わかりやすく説明されています。

 

今年2013年版が新しく作成されました。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou18/pdf/handbook_2013.pdf

に載っています。

 

OIE(世界動物保険機関)の野生動物WG(WDWG)で報告した、

 アジア・中近東地域の野生動物に関連する新しい感染症の概要です。

2013年11月4日から7日までパリの本部で開催されました。

 

妻と作った人形。

娘の修学旅行の写真をもとにしました。

妻と作った人形。

娘の修学旅行の写真をもとにしました。

オリジナルの写真です

 

娘のドイツ時代のカーニバルの写真です。大家さんは子ネズミちゃん「モイスヒェン」といっていました。

下の人形は妻の作品です。

先日、妻の作品が創刊700号記念家庭画報大賞の佳作に入りました。

題「何して遊ぼう」です。

 

妻が、稽古に通い、粘土で作った作品です。昨年、東京フォーラムで、他の生徒さんと一緒に展示されました、「仙人草」

(水やり不要です)。

妻の人形作品です。

ドイツ時代の香代の幼稚園の友達です

ある夏のスナップです。妻の父母、娘、甥たちの集合写真から作りました。