新型コロナ(COVID-19 )の危機管理対応(フェーズ6)について説明します。

15の1 コロナウイルス https://www.youtube.com/watch?v=NZsWvZ03eEY&t=0s

15の2 COVID‐19 https://www.youtube.com/watch?v=m1gxxWmOtl0&t=0s

15の3 国内対応 https://www.youtube.com/watch?v=qaxdxisXCWg&t=0s

15の4 ワクチン https://www.youtube.com/watch?v=wbTSSLYPdV0

2021/04/09野生動物疾病協会(Wildlife Disease Association: WDA)から世界保健機関(WHO)の「中国SARS-CoV-2に関する報告」へのステートメントが公表されました(一部意訳)

SARS-CoV-2に関するWHOの中国調査報告について、野生動物疾病協会の会長であるカルロス・ダス・ネベス博士は、以下のように述べています。 「野生動物は、人間の健康に深刻な結果をもたらす病原体の出現にふたたび関係してきています。持続可能な未来のために必須となる前提として、将来の研究・調査が「責任の帰属」ではなく、野生動物と生態系の健康を保護することの重要性に焦点を当てることを願っています。私たちは野生動物の使用と相互作用の方法に変革をもたらす必要があり、そのために行動する時が来ました」。

世界保健機関は中国ミッション報告書を発表しました。SARS-CoV-2の起源の背後にあるいくつかの仮説の中で、動物のレゼルボアを最も可能性の高い起源(おそらくコウモリや他のいくつかの中間哺乳類)としてランク付けしています。 WHOの報告書はまた、この発生の伝播および/または発生源の連鎖における潜在的な要素として、野生動物の商取り引きと野生動物農場に焦点を当てています。オランダでミンクから人間にCOVID19が伝播したミンク農場での最近の流行は、この問題を浮き彫りにしています。

これらの調査結果は、これまでのコロナウイルスの流行(SARSMERS)と同様に、動物集団におけるウイルスの進化を示唆しています。その後の大流行およびパンデミックの形でヒトに広がる前に、ウイルスは動物からヒトに感染し、ヒトに適応しました。 SARS-CoV-2は、個別のレゼルボア動物種がなくても人間間で感染する可能性があることは明らかです。したがって、特定の野生動物種を非難するのではなく、野生動物、家畜、人間の間のインターフェースがこの種の問題をどのように促進するかを理解することが不可欠です。 確かに、正常な生態系を維持することが野生動物から人間へのこの種の病原体の波及を防ぐのに役立つという強力な証拠があります(希釈効果)。したがって、このことは、①野生動物の自然の生息地を保護し、②生態系の安定性の回復に不可欠な野生動物の健康を維持し、それによって③病気の発生率を減らすことは、より持続可能で健康的な未来につながるインセンティブとして役立つはずです。さらに、④SARS-CoV-2は、一部の野生動物種の保護と生存に深刻な脅威をもたらす可能性があることも忘れないでください。

とりわけ人間が引き起こした土地利用の変化、集約的農業と動物ベースの食料供給体制、野生動物種の商取引と農業の拡大、およびそれらの生産物の消費による環境の持続不可能な搾取は、生態系と宿主・微生物の動態の不安定性につながります。野生動物、家畜、および人々の間の親密な接触の増加は、潜在的に新たな病原体による流行につながります。これらの問題は単一の種に限定されるものではありません。非常に回復力のある自然の動物集団でさえ、現在危険にさらされています。「野生動物の健康維持に対する積極的な姿勢は欠如しており、健康支援および疾病予防に焦点を合わせた戦略への世界的な移行を必要としています」と Machalaba et alは、最近の報告で強調しています。

人間や自然環境に高いリスクをもたらす状況を監視、予測、防止する野生動物の健康に関する国際的な規制の枠組みは、まだありません。そのような枠組みには、国際機関、国および地域当局のコミットメントだけでなく、世界中の人々の協力も必要です。環境と野生動物の健康についての教育と意識を高めることは、私たちのすべての議題の最優先事項であるべきです。 野生動物疾病協会(WDA)は、野生動物の健康に関する知識の習得、普及、応用、生物多様性、生態系の健康、One Healthの課題に対する自然に基づく解決策の促進に力を注いでいます。世界中のWDA1500人以上のメンバーは、健康な生態系をサポートし、感染症の発生を防ぎ、自然の生態系に対する健康な野生動物の重要性と、人間の健康と福祉に対する機能的で回復力のある生態系の重要な役割を強調するというこの取り組みを具体化しています。 これらは、これまで以上に社会に受け入れられる必要のある価値観です。メディア連絡先:WDA会長president@wildlifedisease.org +47 96231702 exec.manager@wildlifedisease.org 

(訳文責:吉川)

 

 学生さんからCOVID-19 について「蔓延防止等重点措置」に関する丁寧なレポートがありました。時系列の出来事も追加しておきました。フェーズ6の新しい管理体制に「経験知」が生かされるように期待しています。ヒトは学ぶ生き物だから。

 

コロナ禍に思うこと-新興感染症にどう備えるべきか?

岡山理科大学獣医学部 吉川泰弘

はじめに

学生に人獣共通感染症の講義をするようになって20年近くなる。直接のきっかけは100年ぶりに「伝染病予防法」を「感染症法」に改定した時(1999年)である。この時、人の感染症防御の法律に、人から人への伝染病だけでなく、初めて動物由来感染症を組み込むということで、厚生労働省の法改正委員会に獣医の代表として参加することになった。20世紀後半以後の新興感染症のほとんどが人獣共通感染症であったためである。感染症法は無事に成立し、獣医系の大学や獣医師会などで人獣共通感染症(動物由来感染症)の講義や講演を行った。

さて、学生に講義をしていく中で議論があった。多くのウイルスの中で動物から人へ種を超えて感染するウイルスには、ある種の特徴があるのではないかということに気が付いた。それらのウイルスを分類してZoonotic virusesとして、国際学会で紹介したのが5年ほど前であった。食品安全委員会のプリオン専門調査会で、様々なリスク評価法を勉強した。それらを応用してZoonotic virusesのランキングをしてみた。最もリスクの高かったウイルスはコロナウイルスであった。しかし、2020COVID-19 の流行が起こるまで、しばし忘れてしまっていた(HPhttps://www.ayyoshi.com/zoonotic-virus/)。

 

COVID-19 ウイルス感染症

 2020年、2月末に新型コロナウイルス感染症についての考え方をまとめてHPに公表した(HP: https://www.ayyoshi.com/covid19/)。早いもので約1年も前になってしまった。内容が専門的過ぎてわかりにくいという意見が多かった。その内容は、20202月末までに分かっていたCOVID-19について、それまでの新興コロナウイルス感染症、すなわちSARS, MERSCOVID-19 の特徴の比較を中心にまとめたものである。3つのウイルスは比較的似たゲノム構造をしているし、主として呼吸器感染症である。

 ウイルス性呼吸器感染症は、鳥のインフルエンザウイルスにみられるように一般に上部気道で増えるウイルスほど感染力が強く、病原性は低い。他方、肺を含む下部気道で増殖するウイルスほど病原性は強いが感染性は低いという傾向がある。MERSSARSCOVID-19は兄弟のようなウイルスであるが、MERSが最も病原性が強く致死率は約35%であり、実行再生産数(R0)は0.6と言われている。R01.0以下なので流行は自然に終息する。SARSは中間で致死率は約10%、R0は2~3と言われている。他方、COVID-19 は、致死率が約2%でR0は2~4くらいと考えられていた。不顕性感染が多く、実際のR0はもう少し高いかもしれない。感染症の統御から見ると、家畜の感染症でわかるように高病原性のウイルスよりも低病原性のウイルスのほうが、はるかに難しい。とはいえ、1年以上にわたって世界中を巻き込み、膨大な政治的、経済的、社会的影響を与えるウイルスになるとは考えなかった。そのため、COVID-19 のパンデミック時には、2009年のH1N1パンデミックインフルエンザの流行時に試されなかったフェーズ6という対応を試みるのも悪くはない?程度に考えていた。

 

パンデミックとフェーズ6対応

中国からCOVID-19ウイルスがアジア、欧州、米国に広がりパニックが起きた。WHOはパンデミック宣言をし、危機感を示した。ロックダウンという武漢で取られた都市閉鎖戦略がフェーズ6の実行手段となって出現した。強烈な手段であったが、新しい問題を生んだ。危機管理におけるリスクのトレードオフとトランスサイエンスという問題である。

この問題は以前から言われていたが、感染症で事例となったのは少ない。リスク管理では片方のリスクの低減策が別の新しいリスクを生むという事象が起こる。ロックダウンは感染症統御には有効だが、経済的社会的破綻のリスクを生む。感染症を統御しつつ経済活動を活性化するという出口を探さなければならない。他方、トランスサイエンスは自然科学に問題を依頼するが、自然科学だけでは問題が解けないという意味で、トランスサイエンスと言われた。ロックダウンは感染症学としては問題解決の最も有効な手段であるが、社会科学的には問題解決にはなっていない。分野を超えた、あるいは融合したサイエンスが必要であると言われて久しい。しかし、今回のフェーズ6対応で、痛切に経験することになった(この部分は市民講座で紹介したhttps://www.youtube.com/watch?v=-aW57qJfE9s)。

今後、ワクチン投与および感染性の強い変異型ウイルスの出現で、早期に集団免疫レベルに達し、流行が収まる可能性も考えられる。しかし、今回の経験に学ぶことは多いはずである。何が問題であったのかしっかりと検証する必要がある。

 

新興感染症にどう備えるか?

 残念ではあるが、これからも人類は、新興感染症に悩まされると思う。どこで、いつ起こるかはわからない。世界中でサーベイランスのネットワーク体制を強化し、パンデミックになる前に、協力して初期にいち早く抑え込む努力が必要である。

 感染症は、市中感染がおこる前にR01.0以下に抑え込めればオーバーシュートは起こらない。またR0=β(ウイルスの感染力)xC(感受性個体の接触頻度・規模)xD(感染者のウイルス排出期間)であるから、最も有効な手段はホームステイで、感染者も非感染者も潜伏期、発症期、回復期(通常23週間)を、全く他人と接しなければ(C=0)感染はストップする。ロックダウンはこれが狙いである。

しかし、Cを0にできなくても、不要不急の外出を避け、テレワーク率を上げ、必要な外出でも3蜜を避け、マスク着用、手洗い、うがい、消毒を守るだけで、通常の実行再生産数のウイルスであれば、R01.0以下になり終息する。いたずらに恐怖をあおったり、リスク管理を否定したり非難することは、感染症の統御には百害あって一利なしである。感染症の統御にはマスコミの責任も大きいと思う。科学とリスク管理に関する信頼を持つことが重要と考える。その意味では政府は国民の信頼を得る努力をすることが必要である。

追加項目:ホームページを開いているので、いろいろな人から質問が来ます。最近はワクチンに関する質問が多く来ます。いくつか本質的なものをまとめてみました。

1)ファイザー社、モデルナ社の「S蛋白遺伝子のmRNAワクチン」と違うといわれている、オックスフォード・アストラゼネカ社のワクチンの特徴は何ですか?また、新しい培養法ということですがウイルスを液体で培養するのですか?

オックスフォード・アストラゼネカ社の組み換えウイルスは、①チンパンジーのアデノウイルスのE1とE3を欠損し複製できなくなったウイルスのE1Aの部分にCOVID19ウイルスのS蛋白遺伝子とサイトメガロウイルスのプロモーターを組み込んだ組み換えウイルスワクチンです。そのままでは子ウイルスはできません。そこで、アデノウイルスのE1を発現する細胞株HEK293(E1+)などに入れると、非感染性の組み換えウイルス粒子が沢山できます。実験室ならこれでいいのです。しかし、ワクチンとなると膨大なウイルス粒子が必要です。そこで、単層細胞培養でなく、浮遊細胞培養法を使います。そのほうが何倍もの細部数の培養が可能です(浮遊培養法)。④最近は、さらに効率を上げるために下部攪拌型バイオリアクター浮遊細胞(塊)培養法といった方法も開発されています。ウイルスを溶液の中で増やすのではなく、感染細胞を溶液の中で攪拌し浮遊状態で培養する方法のことだと思います。

2)以前も変異株についてお聞きしたかと思いますが、2週間ほどで変異する可能性があったりするということだったかと記憶しています。ウイルスの増殖は人の細胞内で繰り返されると理解していますが、宿主に何らかの特徴があるのではと思ったりしています。感染経路より感染者の特徴を調べた方が何らかの変異株につがるヒントが得られるのではないのでしょうか? またイギリスの変異株は感染力が1.4倍ということであるが大丈夫ですか?

変異は、基本的に患者さんの問題ではないと思います。確かにスーパースプレッダーのように大量にウイルスを排出する人はいますが。ウイルスの変異とは直接関係しなしと思います。①もともとウイルスはゲノムを複製する際にミスを起こします(ミスリーリーディング:読み間違い)。これはクローン増殖するウイルスの性質です。こうしないと、ウイルスのゲノムは1種類になってしまうので環境に適応できません。我々は、精子や卵子が減数分裂する時にゲノムの再集合と相同組み換えを起こすので膨大な多様性を持った配偶子を作れるわけです。②変異株は、環境に応じて出来てくるわけではありません。ランダムに起こした多数の変異株の中で最もその時の状況に適した株が主流になるのです。しかし、ウイルスの増殖速度が速いので、あたかも変異した株ができるように見えるだけです。遺伝子の中立変異と環境の選択圧で選ばれるのは、人を含めてすべての生き物にあてはまります。③イギリスの変異株は、これまでの1.4倍の感染力があるようで心配です。これまでの株は、中国のデータで無対策の時のR02.5と考えられていました。そうだとするとイギリスの変異株のR02.5x1.4=3.5になります。人から人に5代感染する場合(人から人への感染が2週間?再生産期間とすれは10週間後、2カ月ちょっとで)、前者は10人から980人になります。後者は5250人になります。従って、当然イギリス変異株が主流になります。また、今は危機宣言でR00.7くらいまで落とすことができていますが、1.4倍の感染力を持つウイルスでは、R01.4倍(1.7倍という説もあるが)になってしまうのでほぼ1.0となり、今のやり方では終息しないことになります。あるいは増加する。もっと厳しい対応が必要になる?可能性があります。

さて、患者さんの特異性というなら、ワクチンが流布された場合、ワクチンの効果は発症阻止であって、感染阻止ではないこと、ワクチンの発現抗原がS蛋白だけなので、その有効性は、抗体とウイルスの受容体結合部位との反応性(アフィニティー)がキーになります。変異が起きて受容体には結合する、あるいは類似の受容体に結合出来て、抗体に反応しないようなウイルスのアミノ酸配置換が起こると、ワクチンの効かないウイルスが主流になります。見かけ上はワクチン抵抗性のウイルスに変異したことになります。抗生物質で耐性菌ができる(選ばれる)?のと同じことです。

3,聞くところによると、ロシアのワクチンの有効性が高いというのも意外な感じもしますが、一回の接種では、ファイザーのワクチンよりモデルナの方が効果は高いようでもありますが。感染者の抗体も半年は有効ということも報じられているようですね。実際のところはどうなのでしょうか?

そうですね。今のところは、S蛋白遺伝子のmRNAワクチン(モデルナ社、ファイザー社)、チンパンジーのアデノウイルスを使った組み換えワクチン(アストラゼネカ)が先行しています。ロシアのワクチンは2種類のアデノウイルスを使う組み換えワクチンです。生ワクチンと違ってベクターのアデノウイルスは増殖しないので、理論的には問題ないのですが、1種類だとアデノウイルスに免疫を持っている人には効果が低い可能性があるように言われています。抗体によって組み換えアデノウイルスが細胞の受容体に結合できなければ、mRNA翻訳皿ません。もし、ロシアのワクチンの有効性が高いとすれば、そこが影響しているかもしれません。

中国製のワクチンは全ウイルス粒子の不活化ワクチンです。経験的にはこれが最も防御効果は高いと思います。S蛋白以外のウイルス蛋白も種々の抗原分子(エピトープ)を有しています。これらも異物として抗原提示され、免疫記憶細胞が誘導されます。本物のウイルスが感染し増殖する際には、これらの抗原も感染細胞表面にMHCクラス1分子に乗って表現され、免疫記憶細胞の標的になります。他方、不活化ワクチンは副作用も大きいと思います。

もちろん、弱毒生ワクチンができれば、ウイルス量は少なくて済みますし、液性免疫も細胞性免疫も誘導され、最高の効果が期待できますが、コロナウイルスのゲノムは大きく、遺伝子の数も多いので、弱毒生ワクチンを作るには相当時間が必要です。現状での、ワクチン効果は、不活化ウイルス>アデノウイルス組み換えワクチン>mRNAワクチンでしょう。しかし副作用の危険性も不活化ワクチン>アデノウイルス組み換えワクチン>mRNAワクチンの順になるでしょう。

 

2020年10月31日の今治キャンパスで行われた市民公開講座です。これまでの講義とは少し違う観点でまとめてみました。フェーズ6という新型インフルエンザのために建てた行動計画を実行した結果どのような課題がみえたのか?基本再生産数を1.0以下にする手段はトップダウンのロックアウトか個人の自主防御(personal protection & stop propagation: PPSP)というボトムアップか?R0という数字の使いかたをかんがえてみました。また、大学シェルター化というロックアウトを避けるコンパートメンタリゼーションについても紹介しました。ユーチューブに載せました。

https://www.youtube.com/watch?v=-aW57qJfE9s

 先日(2020年6月26日)、今治市の商工会議所で「新型コロナと社会」といった内容の講演をしました。2月末に完成した資料が難しすぎるという返事が多かったので、少しは分かりやすくしたつもりです。講演記録とスライドをアップしておきます。

講演記録はYou Tubeに載せてあります。

https://www.youtube.com/watch?v=7y8DTyDPN_Y&t=3s

 

 先日、本学部のミッションとして、感染症対策のできる獣医師の養成があること。そのため、特に人獣共通感染症について、現在問題となっている「新型コロナウイルス感染症」など、学生に教えるように求められました。期末試験も終わったので、来年度の学生さんに担当している「人獣共通感染症」を教えるにあたり、もう一度「新興コロナウイルス感染症」について考えてみようと思い、スライドを作りました。現在進行中の感染症なので、新年度で教える頃には、もう少し整理してプレゼンテーションできると考えています(2020 /03/01)。学生さんにとっても、かなり難しい内容かもしれません。

 内容的には、かなり専門的で難しいかもしれません。そのため、簡単にスライドの説明を入れておこうと思います。

 最初のスライドは、このホームページの「zoonotic virus」「動物由来ウイルス」に書いてあることの復習です。人獣共通感染症では動物からヒトに来る感染症だけを教えるのですが、全ての動物由来の病原体がヒトに感染するわけではありません。特殊なウイルスや細菌、真菌などが動物から自然宿主の動物種を超えてヒトに感染します。

 ここでは、どの様な特徴を持ったウイルスが動物から種を超えてヒトに来やすいのかを考えてみたものです。「spill over:あふれ出ること,流出.」というのは, 感染症学では種の壁(species barrier)を超えるという意味でも使います。

 種を超えやすいウイルスとしては、大型のウイルスであること、ゲノムが不安定であること、ウイルス独自の複製酵素を持っていること、ゲノムが分節していること(複製中にゲノムが分かれ、遺伝子が再集合するものを含む)、自然宿主がヒトに近いものの5つが挙げられます。

 小型よりも大型のウイルス、DNAの2本鎖よりも1本鎖、DNAよりもRNAウイルスということで、1本鎖のRNAウイルスで遺伝子が再集合しやすいもので、自然宿主がヒトに近いものということになり、リスクの最も高いグループにコロナウイルスが入りました。

 次いでDNAウイルスではポックス、ヘルペス群、RNAウイルスではレオ、アレナ、ブニヤ、トガ、フィロ、ラブドパラミキソ、オルトミキソ群ということになります。

 ここからは、コロナウイルスの各論です。コロナウイルスはニドウイルス目に入ります。ウイルスのmRNAが、nested set方式という独特のやり方で合成されます(後述)。このネスト(巣)のラテン語がニドです。コロナは電子顕微鏡でみたウイルスの形態が王冠(コロナ)のように見えるのでこの名前になっています。コロナウイルス亜科には4つの属(α、β、γ、δ)があります。SARSやMERSウイルスはβコロナウイルスに入ります。

 βコロナウイルス属には、さらにABCD系統があり、B系統がSARS, C系統がMERSです。

今度のCOVIDー19は、どちらかといえばB系統に近いグループです

 コロナウイルスの分岐をもう少し生態学的にみると、コウモリによって拡散したグループ

(α、βグループ)とによって拡散したグループ(δ、γグループ)に分かれます。

 今回、問題となっているグループ(属)は、コウモリを中心としたβコロナウイルスのBCD系統?ということになると思います。

 もう少し詳しくβコロナウイルス属の系統図を見ると、最初にC系統(MERS,自然宿主タケコウモリ?など)が分岐し、次いでB系統(SARS,キクガシラコウモリなど)とD系統(ルーセットオオコウモリ)が、同じ系列から分岐し、最後にA系統が分岐したように思われます。

 コウモリは1系統で、小型コウモリが世界中に分布しており、オオコウモリは亜熱帯と熱帯にのみ分布しています。コウモリの系統樹では小型コウモリからオオコウモリが分岐しているので、これらコウモリの進化に合わせて、βコロナウイルスも共進化したと思われます。

 コウモリの特性については「コウモリと感染症」「人獣共通感染症1」に書いています。

 各コロナウイルス属のゲノム構造です。基本的な遺伝子としては、RNA複製酵素など(L)と宿主の受容体に結合するスパイク蛋白(S)とエンベロープ(外殻)に埋まっている蛋白(E)、ウイルス粒子の骨格を形成するマトリックス蛋白(M)と核蛋白(N)が共通要素です。各属のコロナウイルスを特徴づけている主要な要素は、アクセサリー遺伝子といわれる付加的な遺伝子群と細胞受容体に結合するS遺伝子の特性です。

 問題となるβコロナウイルスのゲノム構造を見ても非常に多様性に富んでいます。A系統は、独自にHE遺伝子(赤血球凝集素とエステラーゼ遺伝子)を持っています。HE遺伝子はBCD系統にはありません。アクセサリー遺伝子としては4,5,Iを持っています。B系統(SARSグループ)は多くのアクセサリー遺伝子を持っています3,6,7,8,9bなどです。C系統(MERSグループ)は、3a,b,c,dを持っています。D系統は3,7a,bを持っています。

 コロナウイルスは+鎖のRNAウイルスなので、ゲノムはそのままmRNAとして機能します。従ってRNA複製酵素は、細胞内で翻訳され蛋白となるので、-鎖のRNAウイルスのようにウイルス粒子には入っていません。ウイルス粒子の構造蛋白としては、S,HE, E,M,N蛋白と、一部のアクセサリー蛋白が含まれています。

 コロナウイルスは、RNAウイルスでは最大の球形RNAウイルスで、宿主細胞由来の脂質2重層のエンベロープ(外殻)を持ち、花弁状の長い突起を持つS蛋白とHE蛋白が外殻蛋白として、ウイルス粒子の外に突き出しています。E蛋白はエンベロープに埋まっており、M蛋白がウイルス粒子骨格を形成し、中央にゲノムRNAとN蛋白がヌクレオカプシドを形成しています。ゲノムサイズは、約30Kb(3万塩基)、粒子サイズは100~200nmです

 ウイルスゲノムにはリーダー配列(ACGAAC)があり、ORF1(1a,b:RNA複製酵素や蛋白分解酵素を含む)が読まれます。S, E, M,N, アクセサリー遺伝子の前にはやはりリーダー配列(AACGAA)?があり、順次、ネツティッド・セットの形で(後述)mRNAが翻訳されるようになっています。

 これまで、コロナウイルスのmRNA合成は、Aのように、+鎖を鋳型としてー鎖が合成され、リーダーから順次OFR1a,bが翻訳され、次いでリーダーからS遺伝子に飛んで2番目のORFが翻訳され、以下ORF3、・・・・・というように、フルサイズから順次短いmRNAが合成され、各mRNAの最上流の遺伝子が翻訳されるというネツティッド・セット方式といわれていました。しかし、最近、Bのような複製様式が提唱あれるようになりました。-鎖を合成するときに、途中からリーダーに飛んでしまう、ネスティッドセットの-鎖RNAが合成されるというものです。これが起こると、同一細胞に2つのコロナウイルスが感染すると、分節ゲノムを持つウイルスのように遺伝子の再集合(不連続遺伝子組換え)が起こる可能性があります。

 すなわち、相補的-鎖ゲノムRNAから、リーダーが個々の+鎖mRNAを合成するA方式では、個々のmRNAに相補的な-鎖RNAは存在しないことになります。しかし、個々のmRNAに対する-鎖RNAが見つかったことで、B方式が考えられるようになりました。この場合、2種のコロナウイルスが同一細胞に感染すると、不規則的な遺伝子再集合?(不連続遺伝子組換え?)が起こりやすいと考えられます。アクセサリー遺伝子の複雑性やウイルスゲノム中の一部の欠失や挿入が起こりやすいことと関連するかもしれません。

 本来の遺伝子以外?に加わったアクセサリー遺伝子の機能を見てみると、大きく3つくらいの特徴がみられます。まず目立つのが、インターフェロン産生あるいは誘導機能に対する阻害因子です(3b,6など)。アクセサリー遺伝子がインターフェロン系など自然免疫系の誘導を阻害するのは、初期のウイルス増殖にとって有利に働くからだと思います。逆に言えば自然免疫系は、このウイルスに対する初期の有効な防御手段かもしれません。サイトカイン・ディシーズ(サイトカイン病)で言われるようような、免疫系の攪乱因子です。サイトカイン産生誘導?(3a,7a?)に働く因子群は、炎症細胞浸潤を促し症状を悪化させ、かえってウイルスの持続的な増殖に寄与する可能性があります。ウイルスそのものの構成蛋白に関連する安定化作用、蛋白の開裂、活性化のしやすさなど、ウイルスにとって付加的に有利に働く因子です。

 ここからは、SARS,MERS,COVIDの順で、それぞれの「コロナウイルス新興感染症」の特徴を比較してみたいと思います。SARS(重症急性呼吸器症候群)は、2002年11月中国の広州で発生しました。一般に知られたのは、2003年2月(広州の研究所の2002年7月の認知からすれば、半年以上後になります)の香港、メトロポールホテルでの拡大です。

 クラスター感染が起こり、わずか数カ月で世界中に伝播しました。ペイシャント・ゼロ、スーパー・スプレッダーなどの疫学専門用語が、定着しました。世界中に広がったSARSは、2003年7月に制圧宣言が出され、その間8098人が発症し、774人が死亡しました。

 2002年11月の広州から2月の香港での拡散まで約3か月で、SARS有症者は500人以下なので、アウトブレイク以後の感染拡大からすれば非常にゆっくり進行していた感じがします。今回のCOVID19同様、流行の主体は中国です。全体の2/3(5327/8098人:65.8%)の患者と45%の致死者(349/774人)を占めています。初期は香港(ピークは4月中旬、海外の巻き込まれた国々)、最盛期は中国本土(2003年5月中旬)、後期は台湾(ピークは5月末)の順で流行が拡大し、2003年7月初旬には流行は、ほぼ終息しています。

 潜伏期は2~10日、30~50歳代に好発で、症状としては発熱、悪寒、筋肉痛、頭痛、乾性の咳、喀痰、咽頭痛、下痢、リンパ球減少、血小板減少がみられます。COVID19 とよく類似していますが、重症例が多いのと、COVID19よりも好発年齢が低い点が、少し違います

レントゲンでは胸水はなく、肺炎が広がる点は類似しています。SARSでは、病理組織学的に肺胞上皮の破壊、硝子膜形成とウイルス増殖に伴う融合巨細胞形成がみられています。

 SARSの定義としては、①38℃以上の高熱咳・呼吸困難・息切れのいずれか。②レントゲンで肺炎、③ウイルス検査(PCR)で陽性(水様性下痢の例もある)、④感染経路は飛沫や接触(濃厚接触)です。潜伏期は平均が4~6日、最長は10~14日。ウイルスの排出部位は、SARSの場合、呼吸器系以外に、消化器系や泌尿器系が意外と高くなっています。

発症期:発熱> 38で始まり、しばしば高熱、悪寒伴い、頭痛、倦怠感、筋肉痛などを伴う。発症時に、軽度呼吸器症状を示す場合がある。発疹、神経症状、胃腸の所見は通常見られない(少数例では下痢が報告)。リンパ球減少がある。

有症期:発症3〜7日後で、下部呼吸器障害期になり低酸素血症を伴う乾燥した咳または呼吸困難。症例の10〜20%では、挿管と人工呼吸器を必要とする(COVID19では約5%といわれている)呼吸障害期初期の肺局所浸潤から、斑状の間質浸潤に拡大。後期には、肺の硬結(consolidation)領域がみられる。呼吸器障害期のピークには半数の患者が白血球減少症および血小板減少症(50,000 – 150,000 /μl)を示す。CPK, GOT,GPTが上昇する。

隔離期間解熱後、10日以降に感染伝播が起こった報告は無い。通常は、発熱の解消から10日後(呼吸器症状がなくなるか解決するまでとされる。

 新興ウイルス感染症の疫学調査は、有症者のPCRによる確定診断に基づいて始まる(パッシブ・サーベイランス)ので、初期は重症例が多いが、診断体制が確立しPCR検査体制が確立すると、疑い例も含め軽症例なども明らかになる。抗体調査が始まれば、無症状の感染者(不顕性感染者)が明らかになり(アクティブ・サーベイランス)、感染症の全体像が理解される。最終的な調査結果はないが、SARSについて不顕性感染例について考えてみる

 香港全体で、19,386人の家族と濃厚接触者で監視下にあった者のうち223人がSARSを発症した(1.2%)。1,158人の自宅隔離したケースの家庭内接触者中28人(2.4%)が有症例となった。有症者以外のケースには、ウイルスに曝露された(ほとんどのケース)が①感染しなった群と、②感染したが発症しなかった(不顕性感染)群がある。

 その他、不顕性感染例のエビデンスとしては、アモイ・ガーデンの例が報告されている。

患者に接触した者のうち無症状者316名中32名はPCR陽性(10%は明らかな不顕性感染)。香港の休暇村の隔離者では抗体調査?で1名陽性(161人中)、この抗体陽性者との接触者が1例PCR陽性となっている(1.2%が不顕性感染?)。

 香港をモデルにして考えてみると、①母集団はSARS患者と接触があり、ウイルスに曝露された可能性があり、調査対象となった19,386人。R0を3.0とすれば、感染の終息まで非感染のままでいる人の人数はn=N-N(1-1/R0)で、6,362人(32.8%)。残りの13,024 人中の発症者(顕性感染でウイルス陽性)は223人(1.2%)。残りの12,801人(66%)は不顕性感染?ということになる。

②自宅隔離者(濃厚接触者)1,158のケースではSARS発症者は28人。同じ確率で計算すると、非感染が386人となり、残り772人のうち発症者が28人なので残りは744人となり、不顕性感染は64.2%となる。実際には、無症状者(非感染+不顕性感染)1130人から316人(非感染105人を含む)を抽出しているので、この集団で感染した可能性は211人で、検査陽性32名(陽性率は15.2%)ということになる。③抗体調査をしなければわからないが、検査時に既にウイルスが排除されていたケースが多かった?ウイルスの採取方法を含め検出感度が悪い?あるいは自宅隔離での再生産数(R0)が、3.0よりも低い?可能性がある。

 母集団に外挿すると、1,158人中、SARS発症者は28人(PCR陽性)不顕性感染者は744人(うちPCR陽性者は113人、631人は抗体陽性、ウイルス陰性?)、非感染者は386人と推定される。

 SARSウイルス感染症を纏めると、R0は2~3でそれほど高くない。しかし、医療関係者の犠牲率が非常に高い(中国では18.2%:危険は感染症)。有症者数は8098例、人工呼吸器の必要な重症化率は10~20%。死亡者数は774例(致死率9.6%)。国際的には2003年2月に始まり、2003年7月に終息した。

 SARSのサーベイランスの全体像のモデルを図示すると以下のようになる。実際に監視データとして、明らかになるのは死亡例の774例SARS発症患者例(PCRで陽性)の8,098例のみである。60~80%近くが不顕性感染(PCR陽性率15~20%)であるとすれば、感染しているが発症しない人数は40,000人くらいいたかもしれない。曝露されたが感染を免れた者は、その10倍近く36万人?と推定される?

 SARSウイルスの起源は、いろいろと想定されたが、現在ではキクガシラコウモリ、horse shoe bat (Rhinolophus cornutus)と考えられている。またSARSウイルスの受容体はヒトではACE2分子Angiotensin converting enzyme 2)と同定されている。しかし、ACE2分子のアミノ酸配列は、動物種により異なっており、実験室レベルでは、自然宿主のキクガシラコウモリのACE2はSARSウイルスの受容体として機能しないのに、ルーセットオオコウモリやハクビシンのACE2はヒトのACE2と同じようにSARSウイルスの受容体として機能するという不思議な現象がみられた。

 SARSウイルスのS蛋白と、受容体分子ACE2の結合に重要なアミノ酸配列(ACE2分子のα1,3とβ5ドメイン)を比較すると、SARSウイルスに感受性を示すヒト、ハクビシン、ルーセットオオコウモリには共通のアミノ酸配列がみられるのに、自然宿主のキクガシラコウモリや感受性のないラットのACE2は違うアミノ酸配列となっている。

 想像をたくましくすると、自然宿主のキクガシラコウモリが発症しないでウイルスを維持できるのは、ACE2を受容体としないで、別の分子を受容体として(例えば大腸あたりで発現する受容体など)利用するために感染しても発病しない。他方、デマレルーセットオオコウモリやハクビシンなどはACE2を受容体としているためにSARSウイルスに感染する。ウイルスの増幅動物として発病し、ウイルスを人に感染させる可能性があります。

 特にルーセットオオコウモリは、他のオオコウモリと異なり小型コウモリのようにエコロケーション(echolocation:反響定位)が可能で、小型コウモリとともに洞窟に共生できる一方、オオコウモリのように樹上生活も可能です。ウイルスの運び屋としては最も適した位置にいるかもしれません。SARSrCOVはβコロナB系統で、ルーセットオオコウモリのβコロナD系統とは非常に近い遺伝的距離にいます。MERSウイルスはβコロナC系統ですが、B・D系統とは、やや離れた距離にいます。

 これまで上述したように考えていました。しかし、驚いたことに、SARS関連ウイルス(SARSrCOV)の多様性が、最近明らかになってきました。中国で一つの洞窟のコウモリから分離された11株のウイルスの全長ゲノムが解析され、単一の洞窟で異なるSARS関連ウイルスが維持されていることがわかりました。特に、S、ORF3、ORF8で多様性が強いことが明らかになりました。そのうち超可変N末端と受容体結合ドメイン(RBD:receptor binding domain)がSARS-CoVと高い遺伝的類似性を持つ株が見つかり、これらのSARS関連コロナウイルス間の連続的組換えによりSARSウイルスが直接生じた可能性が示唆されました。

 SARSウイルスとCOVID19ウイルスは、広い意味では、こうした多様性を持つ小型コウモリのβコロナウイルス群の2種類といえます。その意味では、残念ながら、自然界にはまだまだ、きわめて多くのコウモリ由来SARS関連ウイルスのプールがあるといえます。

 同一の洞窟に住む種々のコウモリが消化管に多様な亜型?のSARS関連コロナウイルスを保有し、糞口感染を繰り返し、遺伝子組換え(再集合)を行い、ヒトで重症急性呼吸器症候群を起こすシナリオは、まるで極地の水禽類がA型インフルエンザの全ての亜型を腸管に保有し、遺伝子再集合を起こし、ブタなどを介して、ヒトの新型インフルエンザ流行を起こすパターンと非常に類似しています。自然界のウイルス生態の一つのパターンかもしれません。

 図のように、同一の洞窟に生息するコウモリのSARS関連コロナウイルスのほとんどの遺伝子が90%近い相同性を持つのに、細胞の受容体と結合するS遺伝子の相同性は50%以下ORF8は80%以下。3aは90%以下という多様性を持っています。これはコロナウイルスが細胞に侵入する受容体を変えられるカセットを持っていることを示しています。鳥インフルエンザウイルスのように、SARS関連コロナウイルスも、いろいろな動物にウイルスを感染させ、変化した組換えウイルスを持ち帰ってくるような特性があるのかもしれません。

 ここからはMERS(中東呼吸器症候群)について考えてみようと思います。

MERSコロナウイルスは、βコロナウイルス、C系統の新種ウイルスです。クレード(Clade:系統群、共通の祖先から進化した生物群。分岐群とも言う)は、初期のウイルスがクレードA,その後の後のものがクレードBに分岐しています(最近は3つ)。タケコウモリ、アブラコウモリのコロナウイルスと密接に関連しています

 MERSウイルスの祖先は、小型コウモリに存在し、1990年代半ばにラクダに広がり、2010年代初頭にラクダからヒトに広がったと考えられています。240近い分離株から、コドン(遺伝暗号)の使用頻度、宿主、および地理的分布から3つのクレードに分岐したと考えられます。

 マーズウイルスのゲノムの特徴は、アクセサリー遺伝子として3, 4a,b, 5, 8bを持っています。また、SARSウイルスの受容体がACE2分子であったのに対し、MERSウイルスの受容体はヒトのCD26(T細胞マーカ―の一つ、DPP4:Dipeptidyl Peptidase 4)です。ヒトやラクダなど偶蹄類のCD26はMERSウイルスの受容体として機能します(ウサギ、齧歯類、フェレットなどのCD26は機能しない)。

 アクセサリー遺伝子のうち、4a,4b、5はインターフェロン抑制、自然免疫系の抑制に作用します。3はウイルスの病原性に、8bは細胞内ウイルスセンサーであるMDA5を介した細胞反応(NF-κB)の活性化を阻害します。

 MERSは、2012年9月にサウジアラビアで初発例が報告されました。中東地域で感染がゆっくりと広がっています(一部は輸出感染症として欧州にも広がっている)。

潜伏期は2~14日、肺炎が主症状で致死率が高いのが特徴です。ウイルスの感染力は低い。

2013年12月 感染者数166人、  死亡者数71人(致死率43%)

2014年 5月  確定症例635人、  死亡者数193人(致死率31%)

2015年 6月  確定症例1289人、死亡者数455人(致死率35%)

 2015年1月21日、感染症法2類感染症に指定

2016年 3月 患者数1728人、死亡者数624人(致死率36%)

2018年 5月 患者数2220人、死亡者数790人(致死率35.6%)

2019年11月  患者数2494人、死亡者数858人(致死率34.4%)です。

 MERSの累積患者数、死亡者数はグラフのようにゆっくりと増加しています。致死率は35%前後と非常に高いままです。これは経過が早いこと、症状が容易に重篤な肺炎に発展するためです。

 MERSの臨床経過パターンを考えてみます。

①無症状(不顕性感染は?):よくわからない。疫学的には、ヒトコブラクダと高頻度で接触する者は、当然、一般人よりもMERS-CoVに対する抗体陽性率が高いといわれています。MERSの最大発生国であるサウジアラビアで2012~13年に採取された1万人の血清調査では抗体陽性者は15人(0.15%)でした。サウジアラビアの人口が3400万人ですから、外挿すると51000人が抗体陽性となります。ラクダの飼育頭数は47万頭なので、ラクダの濃厚接触者(抗体陽性者)は、1人で平均9.2頭を飼育している?ことになります。

②軽度の呼吸器症状:発症後、約1週間の経過で回復(多くは疫学調査対象にならないかもしれません?)

③重症急性呼吸器疾患:肺炎に進展し、呼吸不全となる。腎不全、多臓器不全、敗血症性ショックを併発することもある。嘔吐や下痢が約1/4の患者に認められる。

報告されている約2500人のうち軽症を含めると重症化率は4.9%?、明確な有症者では30~40%が重症化する)。

④致死率:36%と非常に高い(858人)

 MERSの特徴は、①呼吸器感染が肺を含む下部気道で容易に肺炎を起こし、致命的になること、他方②ウイルスの伝播力が低く、ヒトーヒト感染は起きにくいこと(R0<1.0:通常、感染は拡大しない)、③実際の感染は、ほとんどがラクダからヒトへの感染(人獣共通感染症)であることです。④MERSの常在国以外では、輸入感染症となる。

 下部気道検体のウイルス量が10の6乗(100万コピー/ml)であるのに対し、上部気道の検体では5000コピー/ml(下部の約200分の1)です。肺炎が重篤であるのに対し、感染力が弱いのは、こうしたウイルスの部位による増殖の違いによるものです。COVID19ウイルスは、丁度MERSウイルスの反対で、上部気道で良く増殖しますが、下部気道ではそれほど増殖しません。そのため感染力は強いのですが、重篤化し肺炎を起こして死亡するケースは、高齢者や持病のある人など、比較的稀です。

 MERSウイルスの自然宿主と考えられる小型コウモリのMERSr-CoV(MERS関連コロナウイルス?)とヒトのMERSウイルスのゲノムの比較では、S蛋白の相同性が非常に低いのに、ラクダとヒトのMERSウイルスではほとんど差がない。このことは、①コウモリからラクダへウイルスが順化する(spill overする)間に、ウイルスに対する強い選択圧が働いた可能性と②ラクダとヒトの間では、ウイルスの行き来がある?可能性が考えられる。

 また、幼若なラクダの方がウイルスの分離率が高いことから、ラクダでは、幼若期の方が感受性が高く、容易に感染することが考えられる。また、ヨーロッパでは小型コウモリとハリネズミ(headgehog)の間でウイルスの行き来があった?(bat MERS-Cov, headgehog MERS-Cov)と考えられている。

 MERSは、中東以外の国々ヘも輸出感染症として出て行っています。しかしR0=0.6 が示すように、通常は2次感染以内でアウトブレイクになることはありませんでした。2015年5月20日、韓国で初めてのMERS症例が見つかりました。7月末に流行が終息するまでに感染者186人、死亡例36人というアウトブレイクが起こりました。

 原因はよくわかりません。①MERSウイルスが変異した可能性(これまでのMERSウイルスと99%以上の相同性があり否定的です)、極東アジア人がレセプター発現が多い(高感受性)?②初発者(patient zero)がスーパー・スプレッダー、③感染症対応の不備。病院のバイオセーフティ教育不備、ベンチレーション不備などが挙げられています。

 韓国の流行株ではS遺伝子に4個のアミノ酸置換が起こっていました(S137R, I529T, V530L, and R629H)が、2個S137R、V530Lは細胞培養中におこったものです。R629H受容体結合ドメイン(RBD)の外でした。また、I529Tは、S蛋白と受容体(CD26)の相互作用には関係しないと思われます。

 韓国でのMERS流行の防御体制の詳細を見ると、かなり対応のまずさが目立ちます。日本と同様にSARS流行の際に実際に巻き込まれなかったため、エマージェンシー対応の準備ができていなかったことが影響したと思います。

 病棟での対応のまずさ、病院でのクラスター感染、コンタクト・トレーシングの遅れなどが影響したと思われます。それにしてもR0が1.0以下と考えられるMERSが、韓国でこのようなアウトブレイクになったことは不思議な気がします。

 ここで、SARSとMERSの比較を纏めておきたいと思います。どちらもβコロナウイルス属ですが、SARSはB系統、MERSはC系統です。どちらのウイルスも小型コウモリ由来と考えられています。ウイルスの調査では、どちらの系統も沢山のウイルス株が存在し、それぞれの系統(SARS関連コウモリ由来株群、MERS関連コウモリ由来株群)の中で遺伝子組換えを行っているようです。ヒトへの橋渡し(ウイルスの増幅動物)としてはSRASはハクビシン?MERSはヒトコブラクダです。

 発生地域はSARSが中国、MERSは中東(主にサウジアラビア)。感染経路はともに飛沫感染ですが、SARSは消化器系(糞)、泌尿器系(尿)からもウイルスが排出されるようです。

MERSウイルスは、肺を中心とした下部気道で増殖し、経過が早く、重篤(高い致死率)ですが、ウイルスの感染力は比較的低い(ヒト-ヒト感染は稀で、主に増幅動物のラクダからヒトです)。他方、SARSは肺だけでなく上中部気道でも増殖し、感染力はMERSよりも強く、しばしばヒト-ヒト感染を起こします。致死率はMERSの1/4くらいです。

 コロナウイルス感染症の特徴は、小児の発症者が少ないこと(SARS5~7%, MERS2%)

です。高齢者、基礎疾患の持ち主、免疫不全者では、発症・重篤化が顕著です。小児では不顕性感染?軽症感染?、あるいはウイルスに暴露されても感染しないのかは不明ですが、この傾向は、SARS, MERS, COVID19のいずれにも見られます。発症から人工呼吸器管理までの日数、発症から死亡までの日数はMARSのほうが短い(急性)経過です。市中感染はSARSではまれ、MARSでは通常、起こりません。

 ここからは、今回の流行の原因となっているCOVID19について考えてみます。2019年12月中国湖北省武漢市で流行が始まり、12月下旬には市中感染レベルまで拡大したと思われます。12月31日に武漢で原因不明のウイルス性肺炎が確認されたことが正式に発表されました。「華南海鮮市場」で働く人に患者が多く、1月1日市場は閉鎖されました。

 1月7日にウイルスが分離され、新型コロナウイルスが原因と判明しました。1月12日原因ウイルスのゲノム(RNA配列)が明らかにされました。しかし、感染は拡大し、1月23日には武漢で交通機関が停止され、武漢市は封鎖されました。中国では1月24日から30日までが春節で、多くの人の移動が起こりました。武漢でのアウトブレイクと、中国全土へのウイルスの拡散が起こったと思われます。春節休暇は2月2日まで延期されました。1月31日には世界保健機関(WHO)が緊急事態宣言をおこないました。

 1月31日現在では、中国の感染者は9,692人、死亡者は212人でした。わずか1か月で、約1万人の感染者と200人を超す死亡者の流行は、これまでの新興コロナウイルス感染症「SARS」、「MERS」に比べると、非常に速い流行の拡大です。ただし、丁度このころに米国で起きていた2019年末~20年初頭の季節性インフルエンザでは患者総数が1900万人、1月19~25日までの1週間で新規の患者数が400万人増でした。18万人が入院、死者数は1万人を超えていました。COVIDの発表とよく比較して報道されていました。

 2月3日には、中国の死亡者は361人となり、2003年のSARSによる中国の死亡者数を超えたと発表されました。しかし、感染者の推移をみると、武漢の感染者数は2月中旬でほぼ横ばいとなり新規の患者数は減り始める傾向がみられます(赤線、第I期)。しかし、中国の患者総数は増加し続けており武漢以外の中国本土で感染の拡大が起きていることを示しています(青い棒、第II期

 2月5日には、ダイヤモンド・プリンセス号における集団感染が明らかになり。①高齢者集団から構成される、豪華客船という閉鎖空間内での新型コロナウイルス感染症という想定外のシナリオになり、こうした事例における感染症危機管理の難しさが、明らかにされました。また、武漢では①急遽(1週間~10日で)建設した病院に、高齢の重症感染者のみを集中させるという方法をとりました。インフラの伴わない医療崩壊した病院に過剰な重症者のみを集中させることはウイルスの濃度を上げ、致死率を上げるだけで、有効な対処法ではないことを示したと思います。このようなケースは、新興感染症のクライシス・マネージメント(危機管理対応措置)を検討するのに重要な事例です。

 この感染症は、WHOから2020年2月11日にCOVID-19と命名され、日本では2020年1月28日に「新型コロナウイルス感染症」とされ、2月1日に「指定感染症」とされました。

 COVID19の経緯を新規患者数の変遷で見てみると。1月初頭から武漢で流行した新型コロナ感染症は2月初頭がピークで、2月中旬には終息に近くなっています(第I期)。他方、春節を契機に中国全体に拡散したCOVID19は初旬~中旬ををピークに(この時期に患者の範囲(定義)を変えて調査をしたために、患者数は不連続になっている)2月末には減少しているように見える(第II期)。2月末から韓国、日本をはじめ、中国以外でもCOVIDのアウトブレイクがはじまった状況です(III期)

 SARS, MERSに比べると、COVID19はインフルエンザに似た上部気道感染を主流にする流行パターンであり、ウイルスの不活化法も類似していることから、①季節性インフルエンザの封じ込めの上図な国では大規模な流行は起こさないかもしれない、逆に言えば、インフルエンザの抑え込みの下手な国、医療インフラの脆弱な国では大きな流行になる危険性が高い。②また小児や若齢者の多い途上国では、新興コロナウイルスの感染症の特性から(小児、若齢者は軽症ですむ?)、小児が重症化するインフルエンザのような深刻な感染症にならず、見た目には軽い感染症ですむかもしれない。③他方、高齢者や超高齢社会の先進国の方が死者の多い深刻な感染症の様相を呈するかもしれない。

 COVID19ウイルスの由来については、中国が早期にウイルスゲノムを公表したために、急速に分析が進められた。アクセサリー遺伝子としては3a, 6, 7a, 7b, 8,10 を持っている。βコロナウイルス属であるが、C系統のMERSとはかなり遠く、B系統のSARSやSRASrCoVに近い、特に2013年に分離されたナカキクガシラコウモリのコロナウイルス(RaTG13)に最も近い。これは2013年に中国の雲南Yunnanの墨江Mogiangの洞窟でキクガシラコウモリの糞から分離したウイルスである。

 またこれまでのアクセサリー遺伝子の機能から見ると、3aと7aはサイトカイン産生の誘導?ORF6はSTAT1を介したインターフェロン産生系を阻害、7bは膜蛋白?、ORF8はウイルス構成蛋白との相互作用、細胞内ウイルスセンサー蛋白(MDA5)の阻害が考えられます。ORF10 の機能は、まだ不明です。

 ナカキクガシラコウモリのRaTG13に比較して、COVID19ウイルスには、S蛋白(スパイク蛋白)に非常に特徴的な変異が見つかっている。COVID19ウイルスが細胞受容体と結合する際に重要なS蛋白の2つの部位O糖鎖結合部位と細胞受容体ACE2との結合ドメインの配列で変異がみられる。糖鎖結合部位では、ヒトのCOVID19ウイルスは、コウモリやセンザンコウのウイルスにくらべ、塩基性アミノ酸配列が付加されている(蛋白分解酵素で開裂しやすく、活性化しやすい配列になっている?)。ACE2結合部位では、ナカキクガシラコウモリのRaTG13ウイルスよりもセンザンコウpangolinのウイルスの方がヒトCOVID19ウイルスに相同性が高い

 SARSの場合、自然宿主の小型コウモリのACE2でなくオオコウモリのACE2がウイルス受容体活性を持っていた、COVID19も自然宿主の小型コウモリ(RaTG13?)→増幅動物(センザンコウ?)→ヒトという可能性もあるかもしれない。

 COVD19ウイルスの感染性及び病原性について考えてみましょう。COVID19 による死亡者の多くは、SARSあるいはMERSと同様に高齢者、基礎疾患を持つ者、免疫不全者などです。中国の報告では80歳以上の患者の致死率は14.8%であり、循環器系疾患の患者では10.5%でした。

 医療従事者の感染は72,000人中約3,000人(4.2 %)以上ですが、PCRで陽性になったのは1,716(2.4%)でした。SARSの21%、MERSの26%に比べると、約1/10であり、COVID19ウイルスは、一般にヒトに対する感染力が強いわりに病原性が低く、医療関係者の巻き込みが少ないことは、この感染症の蔓延防止がSARS・MERSに比べ、プロテクション(感染防止)に注意すれば、比較的容易であることを示しています。COVID19の医療関係者の致死率は約0.3%で、SARSの2.2%に比べ、やはり低いです。

 COVID19では、約80%以上の患者が軽度の症状で回復しているようです。有症者の14%が肺炎・呼吸切迫となり、5%が呼吸障害、敗血症ショック、多臓器不全を起こし、致死率は高齢者に多く2%です

 今後もコロナウイルス新興感染症が起こりうることを考え、想定外のシナリオであったダイヤモンド・プリンセス号の事例について考えてみたいと思います。

 通常の感染でのCOVID19のR0を2.5としたとき、豪華船という限られた空間で個体密度、濃厚接触頻度共に高いこと(Cが2倍)、高齢者が多く、重篤化し、ウイルス量が多く・排出期間が長い(Dが2倍)とすると、新しいR0=10となる。これで推定すると、非感染者は360人となり、残りは感染者となる。このうち80%が軽症~不顕性感染とする。次いで有症者、重症化患者、死亡者を推定すると以下のようになります。

 非感染者360人、軽症・無症状?2592人、PCR陰性?1656人、有症者648人、肺炎91人、人工呼吸器32人、死亡13人です。あくまでモデルですので、あてはめた数字は、精査すれば、いろいろ変わりますが、全体像は理解しやすいと思います。

 頭を整理するために、ここでMERS, SARS, COVID19 の特徴について簡単な比較をしてみようと思います。呼吸器系を標的にするウイルス感染症では、一般に下部気道(肺)でのみ増殖するウイルスは重篤な肺炎を起こし致死率は高いが、排出されにくいので伝播力は、比較的弱い。他方、主に上部気道(気管、咽頭・喉頭)で増殖するウイルスは伝播力は強く、容易に拡散し、アウトブレイクを起こすが、症状は軽い(不顕性感染が多い)傾向があります。コロナウイルス新興感染症では、感染力はMERS<SARS<<COVID19の順です。他方、病原性はCOVID19<SARS<<MERSの順になります。

 今回のCOVIDの流行から学ぶべきことは、多くあります。

天然痘、エボラ出血熱、SARS,ニワトリ高病原性鳥インフルエンザなどは、重篤で感染性の強いウイルス病ですが、統御は比較的容易です。臨床的に感染個体を識別でき、流行パターンを読みやすいからです(流行初期の濃厚接触者追跡が有効)。他方、H1N1パンデミックインフルエンザ、季節性インフルエンザ、ニワトリ低病原性インフルエンザは、統御が困難です。確定診断がむずかしい。初期には有症状者・重篤化した患者のPCR診断のみ。不顕性感染が多く、濃厚接触者追跡に限界があることです。

 今回のCOVID19は、後者のタイプです。初期には濃厚接触者追跡で感染系統図を試みたが限界があり、市中感染化したステージで武漢からの関係者等からクラスター感染防止に切り替えた。大規模なイベント自粛などの蔓延防止と、クラスター感染追跡は、限界があるが、市中感染拡大阻止には適切な手段と思われる。ただ、対策の有効性評価は、対策後1~2週間後になることを理解しておく必要がある。

 感染症の封じ込めに必要な措置は、当然ステージによって違います。

今回のCOVID19の封じ込め対応を見ていると、新型インフルエンザ用に準備された行動計画がかなり役に立つとおもいました(ダイヤモンド号と武漢の重症患者集中病院は想定外)。 一般に感染者のウイルス排出量とその期間は、無症者が最も少なく・短い。反対に重症者は最も多量のウイルスを長期間排出する可能性が高い。従って、重症者や高齢感染者は、トリアージし、出来るだけ医療体制の整った感染症病院で早期対応をとる必要がある。市中感染期には、医療崩壊防止と蔓延防止のために重症者の入院・治療、および軽症者の在宅医療が基本となる。

 たとえば、もし感染していたとしても(R0=2.5であれば、2.5人に感染を拡大する危険性がある。)、咳をした時に飛沫が飛ばないようにマスクをすればリスクは0.5?減少する。不要な外出を避け自宅療養すれは、さらに0.5減少?、家庭内の濃厚接触を避ければ0.5減?、手洗い・消毒をまめに行えは0.5減少する?とR0=0.5となり、R0は1以下なので感染は終息する?また、解熱し、呼吸が改善され10日もたてば、ウイルスは排除されるので、外出も大丈夫になるのではないでしょうか?軽視しなしいで、しかし必要以上に恐れないで、何よりパニックに陥らないことが重要です。

 下の新型インフルエンザ行動計画図からすると、現在は第1紀の武漢での流行、国内発生早期(武漢滞在者の発病、屋形船・・・)から、クラスター感染・市中感染の感染拡大期さらに蔓延期に向かっているところで、封じ込めれるか否かの瀬戸際になりつつある。科学的エビデンスに元ずく政治判断が必要なステージであろう。

 COVID19感染症対応の特徴は、新型インフルエンザ対応のフェーズ5,6の実行体制をとったことである。2009年のパンデミック時には、大阪で実施する寸前で止まった。WHOも機械的にパンデミック・フェース6を表明したが、各国にフェーズ6の封じ込め対応は求めなかった(感染力と病原性が別の物であると判断したため)。

 フェース6対応は、科学よりも政治判断が重要であり、社会・経済的影響が非常に大きい。大きな混乱を生むことは間違いないが、いつかは本当にフェース6対応が避けられない感染症が来るであろう。フェーズ6体制下で社会・経済・生活を維持するためのあらゆる分野でのBCP(Business Continuity Plan)を準備するよい機会であると思われる。

 COVID19感染症を無事に乗り越えられた時は、どの様なタイミングで規制を緩和するかという政治的、科学的判断が必要になる。BSEの時には何度も経験したが、規制を強めるよりも緩和するときの方が難しい。

 日本の新型コロナウイルス感染症について、もう一度、時系列で整理してみました(3月8日)まで。2月末(25日、27日)に出された方針・規制措置の有効性が評価できるのは半月後くらいになるでしょう。

 おまけ(2020年3月1日以後の経過):パッシブサーベイランス(感染系統図による濃厚接触者で有症状者の確定診断)から、アクティブサーベイランス(発熱者検査、疑い例?)にPCR検査が拡大すると、これまで軽症・無症状あるいは対象外であった真の感染者が陽性者に加わる。「時間経過から見ると下の図のようになる。封じ込め措置が有効になっていても、陽性数は遅れて一気に増加するように見えるので注意が必要」、と書きましたが、この仮説は、検査数とPCR陽性者数の相関を調べると、間違っていました。すみません。

 以下のHP(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covis19)に、毎日の(新規の)有症者数(患者数)、陽性者数(PCR陽性者)、および報告された検査数(有症者と濃厚接触者、疑似症者)のグラフが載っていました。詳細な数字も見られます。2月6日から3月18日までのデータがありましたので、これを対象に調べてみました。

 その結果、有症者(患者)とPCR陽性者は見事な相関をします。しかし、驚いたことに検査総数とPCR陽性者は、全く相関しません。毎日の検査総数とPCR陽性率(陽性数/検査数)を調べれば、当然逆相関になります。このことは、約80%が軽症あるいは不顕性感染というデータを考慮すれば、現在の検査材料の採取方法では、PCR法では検出できないということになります。他方、ウイルスゲノムを検出できないということは、ウイルスを感染させるリスクは低いということにもなります。

 検査総数を増やせば、PCR陽性者数が増え、流行の全体が分かるということはないようです。流行データとしては遅くなります(とった対策の有効性評価を迅速に知るには、あまり有効な手段ではありません)が、やはり流行の全体を知るには抗体調査が必要です。

 PCR陰性の濃厚接触者や疑似症者が、新型コロナウイルスに感染しているとすれば、現在の検体採取法ではPCR陽性にならないので、(採材時に)鼻腔や咽喉頭にはウイルスはいない。従って、ヒトに感染させるリスクは、有症者(患者)より低いということになります。

 他方、有症者とPCR陽性者の相関は非常に高いので、①患者臨床診断の確定診断としてはPCR検査は非常に有効であること、②PCR陽性者は、検査日にウイルスを排出している患者で、感染を広げるリスクが高いことになります。③ただし、新規のPCR陽性者が、実際に感染したのは、検査発表の約10日~2週間くらい前(平均潜伏期5日、発症後検査まで平均4日:4日間の発熱?検査結果の判明2日、報告・集計・発表2日?)のことになるでしょう。

 累積患者数のデータは、流行初期には意味を持つ(拡大傾向が読める)が、流行が広がり、対策が取られ始めた後は、あまり意味を持たない。流行の変動を敏感に読めないからです。特に対策の有効性の有無を判断するには、累積数でなく、新規の陽性者数の方が事態を理解しやすい。しかし、陽性数だけを切り離して考えるのは正確ではありません。本当は、検査した母集団の規模を考える(補正する)必要があります(上の図で説明しました)。新規陽性者数の変動は、新規感染数ではないことを理解することが必要です。平均潜伏期と発症後の疑いまでの日数(10日~2週間?)を考慮すると、新規陽性数は感染時から10日~2週間後に見ている数字です。特に、とった対応の有効性を評価するには、このタイムラグを考慮して、新しい対応を考える必要があります。そのことを考えて、グラフを作ってみました。これは、BSEの時、一般の方に理解してもらうのに苦労しました(あの時のタイムラグは5年という長いものでした)。

 封じこめ対策が、それなりに効果を示している様子で?新規陽性者数がやや減少し始めたように見える。しかし、日ごとのPCRの検査数が大きく変動しているので(検査数が非常に多い日は、陽性率が一桁下がっている。)、一定の傾向を読むにはもう少し時間がかかるように思われる。

 3月後半のデータが出てきましたので、日本における流行の全体からその推移を概観してみようと思います。日本におけるコロナウイルスの侵入は、潜伏期・発症期から考えると、1月のかなり早い時期に起こったと思われます。第1期は中国旅行者、武漢滞在者、チャーター機帰国者などによるウイルス侵入期。第2期は2次感染、濃厚接触者による流行の拡大期で、注意喚起や自己防疫のための注意が喚起されました。第3期はクラスター感染(追跡可能?)、と市中感染(追跡不可能?)の混合したステージで、イベントの中止要請、全国休校、あるいは北海道のようホットスポットでは外出禁止要請のような危機管理対応がとられ、あ内ブレイクを避ける措置が取られました。小康状態ですが、新たに海外でのオーバーシュート?(アウトブレイク)を受けて、欧米などからの帰国者や旅行者が、新たにウイルスを持ち込むシナリオが加わりました(第4期?)。

 ここまで頑張って見てこられた方は、今回のウイルス感染症がどのようなものか理解されたと思います。毎日のサーベイランスデータの読み方についても、モーニングショーで詳しく説明されるようになるので、それ程、間違った解釈には進まないのではないかと思います。従って、コロナウイルス感染症の分析は、この辺で終えようと思います。これからはこのウイルス感染症にどのように対応し、つきあって?行くかについて、自分たち自身で考えようと思います。

 ただ、前に書いたようにフェーズ6という人間の経済活動を無視した非常事態体制において、社会をどのように統御して行くか?ということは、自然科学よりも社会科学的な課題であると思います。「エボラ出血熱」のところで書いたように、感染症の統御は、あるレベルからは自然科学よりも社会科学的側面の方が大きくなります。全世界?が初めて本格的に経験するフェーズ6の封じ込めがどのようになるか?試行錯誤しながら、今後の経験に活かせるよう対応すべきでしょう。新型コロナ以上の感染症が来る機会は、まだまだあるでしょうから。

 

     安全なキャンパス運営に向けて、サーベイランス

 4月になりました。入学式は、中止になりました。新学期に向けて、3月23日に新入生を含む全学生と教職員を対象にアクティブ・サーベイランスを始めることにしました。既に10日が過ぎ、上級生は90%近い学生さんから報告をもらいました。(4月1日で全学生から回答をもらいました、教員は90%の報告でした。)症状の有無やリスクのある場合の3月中の行動等を調査し、フローチャートを作って、ケースに応じた対応策を検討しました。

 今治に戻ってくる学生さんが増えています。どのように感染リスクを免れるか(大都市で待機するよりはまし?)。今治での生活の仕方、オリエンテーションを含め大学への登校におけるリスク回避の方法など、走りながら考えている状況です。

 大都市をはじめ、3月20日からの3連休で緩んだ行動のツケが、今、明らかになりつつあります。心配していたように急速に拡大したことが明らかになりました。その後の引き締めの効果が読めるのは、これからです。今治に戻った学生さんについても、健康状態を再度調査する必要があります。大学活動の事業継続計画(BCP: Business Continuity Plan)を立てなければなりません。不安の中での計画になります。あくまで科学的評価に基づいて、行動計画を立てていこうと考えています。

 データが出てきました。都知事による3月末の危機勧告は遅れてしまいました。東京をはじめとする大都市では、新しいステージに入ったようです。クラスターの多発から、本格的な市中感染に入ったようです。コンタクト・トレーシング(接触者追跡)が効かなくなり、大半が感染経路不明となりました。感染様式がヒトーヒトから、それ以外にヒトーモノーヒトも考慮しなければならなくなるかもしれません。不要不急の外出を避け、他人との接触頻度を下げ、3密を回避し、各自がリスクを低減するしかないレベルにきているようです。

 回収したデータをもとに、問題のあるケース、回答が不十分なケースについて問い合わせを行うとともに、リスクのある場合の対応措置のためのフローチャートを作りました。チャートは種々のケースを検討しながら、少しづつ進化していったものです。

 検査の必要な発熱(37.5℃以上、4日)、強いだるさ(倦怠感)、息苦しさ(呼吸促迫)に該当する者はありませんでしたが、乾いた咳、3月中に海外旅行をした学生・教員、あるいは家族が海外旅行したケースがあり、これらについては14日間の臨床的異常の有無や味覚異常の有無などの追加調査等を行いました。

      

         オリエンテーションを終えて

 4月4日、無事に新入生のオリエンテーションを終えました。今日のオリエンテーションは出来るだけ短時間にすること、事前の全教室の消毒、入室時のマスク着用、手の消毒をしてもらい、6つの大教室をフルに使って、同時映像で行いました。健康チェックと、必要な事務手続きのみにしました。距離をとること、換気を行うことは予定通りできました。アクティブ・サーベイランスに回答できた新入生は、約85%でしたが、6教室をリスクのカテゴリーに分け、配分しました。未提出の学生には、回答してもらい。最終的には全員の状況を把握できました。幸い、今治市は、未発生地域なので、健康を確認し、下宿とシェルターとしての大学を利用して、4月20日からの授業に臨む方が、学生さんを全国に散らしておくよりもリスクが低いと考えたからです。

 オリエンテーションから4月20日までの、リスク回避生活モデルを作り上げること、4月20日以降の、リスクを低減する授業のプランを立てること、4月20日までの健康管理を行うことが、次のゴールです。その一環として、これまでのアクティブ・サーベイランスから前向き調査のフォワード・サーベイランス(prospective surveillance)に変えました。そして生活のガイドラインの目的を学生さん達に理解してもらいました。

 

             授業開始に向けて 

 オリエンテーションの後は、シェルターとしての大学と下宿との間の生活でリスク回避する生活が過ごせることを保証するために、第2次のサーベイランスに入ります。新1年生については、4月7日に大学とのインターネット接続の際に、例題として、もう一度、健康状態等に関する質問に答えてもらいます。新2,3年生は、4月5日にもう一度健康状態等に関する質問に答えてもらっています。再リスク評価のあと、4月8日、9日にオリエンテーションを行います。その後は履修届けや大学生活のための通常のオリエンテーション、教科書購入などを始めますが、毎日の健康チェックのデータを大学に送ってもらいます

 異常が感じられた時は、登校は自粛し、迷わずに大学に連絡して下さい。ZOOMなどのインターネットツールを通じて情報を共有化し、対応等について検討し、サジェストしたいと思います。これから、4月20日まで約2週間のフォワード・サーベイランス(前向き監視)を終えた後、リスク評価を終え、問題がなければ、予定通り4月20日に授業を開始する予定です。現状を考慮して、リスクを減らすために、遠隔授業、遠隔実習なども含めた授業にしようと思います。

 また、非常事態宣言の出るハイリスク地域に行った場合、帰った場合、あるいはその地域から身内の方が会いに来た場合は、5日間(平均潜伏期)は、登校を自粛してもらいます。その期間の代替の学習方法等については、検討を進めています。心配しないで下さい。

           

          ノアの箱舟とモーゼの十戒

 旧約聖書にはノアの箱舟とモーゼの十戒のエピソードが載っています。嵐と大洪水を乗り越えたノアの箱舟の話、シナイ山で神から十戒を与えられたモーゼの話を、今回のキャンパスシェルターの運営にあてはめでみました。ノアの箱舟では船から放ったハトがオリーブの葉を咥えて戻ってくるところで、この航海は終わります。この感染症の終焉は?これまでの感染症のルールで言えば、新規感染症患者が95%タイル潜伏期の2倍(14日とすれは28日間、約1か月間、一人もでなくなった時かもしれません。越境家畜感染症では3か月というルールもあります)。モーゼの十戒は、みだれた民に対して、ヒトとしての10の戒めを神がモーゼを介して示したものです。法律で言うなら「自然法」に近い成文法?である可能性があることを、獣医事法の授業(獣医法規1、獣医法規2)で教えました。

 今回の今治キャンパスのSDGs(sustainable development goals) は、感染症の蔓延の中での安全を確保した大学の教育・研究機能の継続が可能かどうかが問われています。

 

 フォワード・サーベイランス(prospective surveillance)に切り替え、毎日の健康管理データが得られるようになりました。1年生から3年生まで、新型コロナウイル感染症についての説明、アクティブ・サーベイランスの体制・リスク評価・管理の説明、オリエンテーションを経て4月20日までの安全確保のガイドラインとフォーワード・サーベイランスの意味を説明しました。600人近い学生さんのデータをチェックして、迅速に対応する体制をzoom会議を介して確立しようと努めています。

   キャンパスシェルター理論(コンパートメンタリゼーション)

                              2020/04/13              

                                                                         岡山理科大学獣医学部長 吉川泰弘

学生諸君へ

  自宅(下宿)とシェルターである大学とのシャトル生活にも慣れ始めたことと思います。大学はフォワード・サーベイランス(prospective surveillance)により、知らされる個々の学生のアラームに対して、迅速に対応しています。

 4月20日まで1週間弱になりました。大部分の諸君は、いま行っていることの意味を理解し行動してくれていると思います。一方で、オリエンテーションで説明したガイドラインに対して真摯に向き合っていない学生の話も耳に入ってきました。諸君と地域の皆さんの安全を確保するために考えたガイドラインです。厳守してください。

 君らは大学生です。一人のいい加減な行動が、自分自身、他の学生、大学および地域の人々の生活にどのような重大な影響を与えるか考えてください。何か個別の事情がある場合には大学に連絡して下さい。対応を考えます。

 4月20日からの授業に関しては、従来型の対面式授業ではなく、オンライン授業(オンディマンド型、リアルタイム型)やローテーション型や分散型の実習などにより行おうと思います。大学からの連絡に注意してください。

 大学では、しばらくの間は遠隔授業が主流になります。PCに強い先生方がいろいろなツールを紹介してくださいますが、なんとなくハードルが高そうで、従来通り、講義の資料としてパワーポイントやPDFをアップしていました。他方、昨年からVOD(video on demand)に挑戦していました。しかし、記録をとるには高い機械がいること、90分講義では2~3ギガになり、サイズが大きくてうまく扱えませんでした。やっと、簡単にできる方法を聞きかじって自分でやってみました。うまくいったので、箇条書きにしました。これで十分VODとして使えます。もちろんmylogの部分は、大学により異なるので、自分の大学のシステムmoodleとかmoocとか?(専門でないのでよくわかりませんが)になります。

注:コロナウイルス感染症の項目が大きくなりすぎたようで、ファイルが入らなくなりました。仕方がないので、以下にあったVODの作り方は「遠隔授業VOD」に移動します。

 

     ジェネラルサーベイランスとターゲットサーベイランス

 4月20日から授業がはじまりました。4月9日から始めたフォワードサーベイランス(prospective surveillance)では、教職員と学生合わせて700人近い人の毎日の健康チェック(サーベイランスでいうなら、感染症の標的を絞らないで行う、どちらかというとジェネラルサーベイランス:general surveillanceに近い)でやってきました。このサーベイランスは、やってみると非常に大変でした。事務職員の方々の獅子奮迅の努力で何とかやってきましたが、長期的には無理かもしれないと考えています。しかし、この約20日間の調査で、日頃の状況を把握することはできましたし、突発的に起こる異常への対応もトレーニングできました。連休明けからは、状況をみて、長期戦になるので、これまでのデータをもとに、感染症の標的サーベイランス(target surveillance:特定の疾病だけを対象に監視する)に切り替えようと考えています。

 

 9日のオリエンテーションから20日までにやった補講(11名を対象とした集中講義)の再再評価試験も昨日(25日)無事に終わりました。On demandでやった再評価に比べ、対面・少数でやった補講では、ほぼ全員合格点でした。On demandと、対面の何が違うのか?zoom授業で可能か考えさせられる結果でした。

 授業にかんしては、1週目は、いくつかの講義(ほぼ1割以下)で、Mylogでの授業の進め方に関して、大学でオリエンテーションがありました(これらの授業も2週目からは遠隔授業に入ります)が、ほとんどの授業は、VODかzoom、mylog授業など、遠隔授業に切り替えられ、テレワークに入る先生方もでてきました。1週目は、何とか無事に乗り越えられました。食堂はお弁当販売になりました。大型連休が心配ですが教職員、学生が本学部の戦略を理解して行動してくれることを期待します。これから、自宅で次週以降のVODの作成。

 

           登校自粛の観察期間について

 大型連休を前にして、教職員と学生に①不要不急の外出は避けること、②今治の外に出ないように要請しました。また、今治から外に出る場合は、従来からとっていたルールであるところの「大学はオープンではあるが、行った都道府県により、今治に帰った後、7日間、あるいは14日間の登校自粛を要請する」ことを再確認しましたが、その根拠について質問がありました。新型コロナウイルスに関して十分な科学的エビデンスを求めるのは、現時点では困難です。しかし、リスク管理者としては、管理措置を行うには、それなりのよりどころが必要と考え、定量的なリスク評価を試みました。その結果、観察期間は発症までの潜伏期間というだけでなく、総合的リスク評価として、7日と14日にしていると考えました。そのため、潜伏期の他に、暫定的な地域別リスク数(定量化)とウイルス排出のリスク期間という考えを入れました。以前に食品安全委員会でデータ不足のまま、事務局とBSEのリスク評価を進めたことを思い出します。

                 観察期間の意味1

今回のサーベイランスは、集団のリスク管理のための調査です。

これまで、観察期間(登校自粛期間:発症した場合は隔離・入院)を感染者、偽感染者、濃厚接触者等の発症までの潜伏期間考えて7日、14説明してきましたが、科学的根拠があるのだろうか?という意見がでました。これまでの研究報告から、患者について7日は平均潜伏期が約 5日、95%信頼限界が約7日です。信頼限界95%をとるということで、それなりに意味はあります。14日は、95%タイルの潜伏期間とし、国際的に採用されています。

しかし、これでは、登校自粛期間を7日と14日を分ける理由を説明するのが難しいことも確かです。通常の感染症の様に、ウイルスへの濃厚曝露のヒトの方が発症までの日数が短いなら?この7日と14の観察期間は正反対になる可能性があります。市中感染状態にある現在、観察期間は、不顕性感染者あるいは軽度の感染者がウイルスを排出し、他者にうつす可能性のある期間(流行の拡大を止める。高齢者、基礎疾患を持つ人、高感受性者?が致死的感染を起こすことを避ける)と考えてみました

              感染リスクレベルの定量的考え方

リスク評価は単純な方がいいということは、BSEで学びました。新型コロナウイル流行地域のリスク

レベルをラフに①高汚染②中等度汚染、③低汚染かフリーに分けて考える。

A:対象地域の感染者数(とりあえず過去を含む総数)。

B:対象地域の総人口、Bによる補正 患者?人/万人。

C:曝露頻度 単位面積当たりの人口 人/平方Kmで補正

曝露リスク指数は市中感染を考慮して濃厚接触のヒト-ヒトだけでなく不顕性感染者とのヒト-ヒト接触、あるいはヒト-モノーヒト接触も考慮するものと考える。 R=A/B)XC となる

                 観察期間の意味2

①高汚染②中等度③低汚染かフリー

感染リスクレベルの定量的考え方と曝露当然、曝露リスクは、本人の行動、行動範囲、その他

様々な条件で異なります。個人レベルで3密を考慮すれは、CC’=C x3密頻度)の様になるかもしれません?どのようにでも式を変えることは可能です。例えば80%減少出来れば、リスクはC'=Cx0.2でいいわけです。また、マスク着用でリスク半減、手洗いで半減、外出自粛で半減なら、リスクは8分の1になる?もしその地域の全員が14日間、これを維持できれば、さらに10分の1になる、などと考えればいいわけです。しかし、ここは、とりあえず集団(ポピュレーション)で考えます。

例題:①東京、②愛媛県、③今治市で考えてみると。

東京:感染者数3,836人(2020425日現在)。直近の傾向を読むなら、過去14日間の総感染者数を使うこともいいかもしれません。とりあえず、総人口は13,953,577人(202021日現在) A/B=2.75(人/万人)。東京都の人口密度C6,355/km2ですからR=2.75x6355=17475です。

愛媛県:感染者数47総人口は1,338,811 A/B=0.35(人/万人)愛媛県の人口密度C236/km2ですからR=(47/133.9x236 =83です。

今治市:感染者数0人(計算が出来ないので1を代用)総人口は151,632 A/B=0.066(人/万人)

今治市の人口密度C362/km2ですからR=1/152x236 =2以下となります。

注:リスクレベルは「直接感染するリスク」や暴露される「ウイルス量」を示すものではなく、試みに行った概念的なリスク数です

                   観察期間の意味3

新型ロナウイルス感染症とウイルス排出期間現在不明です次第にわかってきたことは発症前(23日?)にウイルスを排出すること、不顕性感染でもウイルスをある期間排出する可能性があることくらいです。

しかし、新型コロナウイルスといえども、通常の呼吸器感染ウイルスとその生態は、それほど変わらないと思います。

①重症者は高濃度のウイルスを比較的長期間排出する。

②濃厚接触者が、大量のウイルスを吸い込むと、上部気道とともに肺までウイルスが到達し、後に肺炎に発展する危険性が高い。

③高濃度ウイルス曝露を受けた場合の方が、発症までの潜伏期は短い可能性はあるが、一般に不顕性感染者も顕性感染者もウイルス排出開始時期はそれほど変わらない? 

④発症前の数日(2~3日?)は、上部気道で増えたウイルスを排出する(PCR陽性となる)⑤不顕性感染者では、重症者に比べ、ウイルスの排出量は少なく?その期間も短い?と考えられます。

陽性との濃厚接触、あるいはリスクレベルの高い地域にいた期間、3密状態でいる場合の頻度、プロテクションレベル(手洗い、マスク、自宅待機、消毒他)・・・・などにより、個々人のウイルスの曝露量は異なります

 

大量のウイルに曝露された場合。重症例(イメージ)or 高齢者、基礎疾患のある者?

 

 

集団のリスク管理でいうなら、当面、現在の青の線の分布を維持し、赤の線にならないように努力したいということです。また個々の学生で言うなら、ガイドラインをまもり全員がリスクレベルなしの群を維持することが重要です。現状を理解して、安全な連休を過ごしてください

                大型連休に向けて

 4月20日の授業開始から、早くも2週間が過ぎました。先生方の素早い対応で1~3年生(600人)全ての春①の授業・実習は基本的に問題なく遠隔授業にかわりました。もちろん第1回目の講義には、遠隔授業のやり方をオリエンテーションする科目もありました。また、全学生の5%位、特に1年生はインターネット環境が悪く、大学で三々五々授業を受けるケースもありますが、支障なく遠隔授業に慣れてきましたし、zoomの遠隔会議も日常的になってきました。ヒトの適応力の強さには驚くばかりです。

 いよいよ大型連休に入ります。シェルターとしての大学の役割りを果たすために、連休中も自主的に自習する学生には大学をオープンし続けることしました。5月6日を過ぎても「全国緊急事態宣言」は継続しそうなので、長期戦に備えて、サーベイランス方式を進化させようと思いました。すなわち、ジェネラルサーベイランスからターゲットサーベイランスへの変更です。

 

2020年5月1日

学生・教職員の皆様へ

57日以後の新型コロナウイルス感染症への対応

―フォワードサーベイランスの継続依頼―

                                          獣医学部長 吉川泰弘 

2020年度春①学期が420日にスタートして第2週目が終わり、大型連休に突入しました。連休中の人の移動等のリスクを考慮し、政府は全国緊急事態宣言を56日まで実施することを広報しました。

 本学部では、3月にスタートしたアクティブサーベイランスで、それまでの状況や今治に来てからオリエンテーションまでの基盤情報を入手できました。そこで、4月7日、皆様に「獣医学部の新年度開始における新型コロナウイルス感染症への対応」(一斉メール)で、4月20日(月)からの安全・安心な講義開始を目指してフォワードサーベイランス(前向き監視)の依頼をしました。皆様のご協力の結果420日から講義を開始する事ができました。

このフォワードサーベイランスは、一般監視(ジェネラルサーベイランス)に近いもので、コロナウイルス感染症の発生・流行リスクをできるだけ早く捕まえたいという多項目にわたる(呼吸器系、消化器系、神経系などの)異常を把握するものでした。その結果として、今治キャンパスで起こる感染症等のベースになる情報を得られたと思っています。しかし、この大型連休中の生活が、遠隔授業とはいえ開校期の生活とは異なることを考慮し、56日までは、この一般監視で進めて行こうと考えています。明日(52日)からは、講義が無い日が続きますが、シェルターである大学施設(管理棟2階食堂、学部棟2階教室)は9時から17時まで開放していますので利用してください。

いろいろ取沙汰されていますが、新型コロナウイルス感染症の拡大を抑えるために、政府による緊急事態宣言が全国的に延長される可能性が出てきました。これにより56日までの期間としていたフォワード・サーベイランス(前向き監視)をもうしばらく延長したいと考えています。他方、57日からは、サーベイランス内容を変更しようと考えました。それは、長期戦になること、一般監視により総合的なベース情報が得られたこと、愛媛県での新規感染者が1週間ほどないこと、今治市では依然として感染者ゼロを維持していること、およびアンケート回答の負担等を考慮し、質問内容を下記のとおり簡略化しました。  これはサーベイランスを一般監視(症候群監視 or ジェネラルサーベイランス)から、目標を定めたターゲットサーベイランス(標的監視)に変更するものです。毎日の回答は大変だとは思いますが、新型コロナウイルス感染症の封じ込め・拡散(クラスター感染)防止には重要な事と再度認識をいただきご協力くださいますようお願いします。ゴールデンウィークが終わって5月7日からは第3週目です。当面、先が見えない日が続きますが、健康に留意しつつ修学に勉めましょう。

                            記

注:すみませんが大型連休中は以下の質問にも答えてください(大型連休中)。

問1 今どこにいますか?

    □今治市内  □愛媛県内の自宅  □上記以外

問2 問1で「上記以外」と回答された方は、現在いる都道府県及び市町村名を教えてください。

    [                             ](自由記述欄) 

 

新型コロナウイルス感染症のターゲットサーベイランス(57日以降)

問1 現在の健康状態は如何ですか?

    □良い    □悪い

問2 問1で「悪い」を回答された方は、該当する項目にチェックをつけてください。(複数回答可)

    □発熱がある(37.5℃以上)  □強いだるさ(倦怠感)  □息苦しさ(呼吸困難)がある

    □味覚や嗅覚に異常がある

問3 上記の質問以外で異常がある場合には下記にチェックしてください?

    乾いた咳、 頭痛、 鼻づまり・喉の痛み、 腹痛、 下痢

    [                             ](自由記述欄)      以上

 

       コロナウイルスの型に関する質問

新型コロナウイルスのS型とL型について質問がありました。前から気になっていたので少し整理してみました。 さてS型とL型の件ですが、ウイルス学者から言わせるとSLは、通常SmallLargeです。ウイルスの増え方が早くてCPE(細胞変性効果や細胞融合活性)の大きいのがL型、増えにくく小さいのがS型と本能的に考えてしまいます。

しかし、3月の初めに、中国からの報告で、8番目の遺伝子(orf8, アクセサリー遺伝子です。ゲノムでは28144番目の塩基)がCからTに変わってアミノ酸がセリン(STCA)からロイシン(LTTA)変わったウイルスがいるという報告がでました。これが新型コロナウイルスのS型とL型です。

S型はコウモリのウイルスに近いのでより祖先型と考えられます。17日までのウイルスでは96%の分離株がS型でした。その後中国でL型がメインになり、武漢以外ではS型が30%、L型が70%近くになりました。L型は中国から周辺のアジア諸国と欧州に拡散し、欧州のほとんどはL型です。欧州の流行で株はさらに、ABC型に分けられましたA型から2塩基変化したものがB型、さらに1カ所変異したのがC型となりました。武漢でも後半はL型・B型が多く、調べられた93人の調査では74人が武漢、16人が米国、カナダとなっています。

A型はS型、B,C型はLです。C型は欧州でドミナントな型です。簡単な見分け方はゲノムの第8782番目の塩基(ORF1ab遺伝子)、28144番目の塩基(ORF8遺伝子)、29095番目の塩基(N遺伝子)の並び方が順にTCCTCTS型でA型です。CTCL型でB型・C型です。4月末ではすでに111種類を超える塩基置換が出ているので、系統樹を追うのは面白いですが、それが本当に感染力や病原性と関連するかはまだ分かっていないようです。

今のところ、L型の方がS型より新しくメジャーになった型で、感染頻度が高いようです。またA型のオリジナル株がB型となり武漢、米国、カナダに拡散し、C型がヨーロッパで拡散し、シンガポールや香港に広がったようです。

日本についていえば、侵入はとても早かったので最初はS型・A、その後、中国からのルートを閉鎖したのでL型・B型は少ないかもしれません。さらに、その後の欧州や米国の大流行でL型・Cがメインになっているのでしょう。ウイルスの場合は、条件が整うとウイルスは宿主を数代継代するだけで流行のマジョリティは変わります。従って、A型の抑え込みに成功したが、C型では失敗したというよりも、単にマジョリティが変わったということなのではないでしょうか?

インフルエンザなどでも1つの亜型の流行がメジャーになると、他の亜型は消えたように見えます。亜型の特性に、ちょっとした差があってもウイルスの場合は、比較的簡単にポピュレーションが入れかわります。単純にヒトに順化した、とか、変異して高病原性になったというものではありません。冷静な分析が必要です。なお、イベルメクチンに関する質問も多くもらいました。そちらは「イベルメクチン」の項目で回答?しました。

 

       ゾーニングとコンパートメンタリゼーション

 家畜の国際感染症(越境感染症)の封じ込めは、従来、動物及び動物由来製品を国境で封じ込める(検疫あるいは輸入禁止対象国に指定する)方法でした。従って、国別の汚染評価を行い、汚染国(発生国)からの輸入を禁止するというものでした。

 しかし、最近の高病原性鳥インフルエンザ(鶏、野鳥を含めた)や口蹄疫のようなパンデミックを起こす越境感染症の流行時に、ゾーニングとコンパートメンタリゼーションという新しい概念が導入されるようになりました。これは流行時に国を地域に分割する(ゾーニング)、あるいはハード・ソフト的に施設単位で封じ込める(コンパートメンタリゼーション)という考え方です。学生さん達にも授業で教えています。

 今回のコロナウイルス感染症を例に考えると、これまで危機管理対応のBCP(business continuity plan)として、大学シェルター論を展開してきました。しかし、パンデミック感染症コントロールとしてみると、海峡を挟んで四国4県をゾーニングエリアと考えてプランを立て、今治キャンパス獣医学部をコンパートメンタリゼーションを適応するという考え方もできました。本学部のキャンパス設置が認められた時、前愛媛県知事の故加戸守行先生に四国のゾーンディフェンスの危機管理学術支援拠点たれといわれたことを思い出しました。

 

                緊急事態宣言解除に関して

                                                  2020年5月11日

                  獣医学部学生・教職員の皆様へ

          新型コロナウイル感染症対策ガイドライン・今治キャンパス版について

        獣医学部長 吉川泰弘

 「全国緊急事態宣言」の影響と思われますが、新規感染者数は全国的に減少傾向にあります。また、行政的には経済活動の復活を急ぐ必要があり、規制緩和あるいは規制解除の動きが急速に拡大しています。しかし、韓国などの例を見ても、拙速な規制解除は、危険であることは明らかであると思います。

今治キャンパスは、新型コロナウイルス感染症の統御に時間がかかることを想定していました。そのため、3月以来アクティブ・サーベイランスをはじめ様々な対応を行い、大学をロックアウトしないで、持続的活動を行えるような努力をしてきました。今般、行政対応に従って、規制緩和に踏み切ろうという意見もありました。しかし、本大学・学部の運営に関しては、これまでも特に行政指導はありませんでした。大学人が独自に考え、リスク評価をし、リスク回避のための独自のプログラムで対応してきました。

 連休後の規制緩和の影響が読めるのは、新型コロナウイルス感染症の潜伏期からすれば、95%タイルが14日間ですから、5月20日頃までの推移を見てから、必要であれば新しいガイドラインを示したいと思っています。それまでは、今のガイドラインで行きたいと思います。

  これまでの反動があるのか、ムードに流されているのかわかりませんが、サーベイランスに対する回答率が下がっています。ターゲットサーベイランスに変えたので、労力はそれほど必要ないと思います。毎日の入力をお願いします。危機管理からすれば、今が一番大事な時です。サーベイランスは、大学という組織を維持するに必要な情報を集めるシステムです。気を緩めないで今少し、協力をお願いします。

 

               春2学期に向けて

学生の皆さんへ                                       2020/06/02   

                                              獣医学部長 吉川泰弘

 欧米における新型コロナウイルス感染症の経過から心配された全国規模での感染のオーバーシュートは避けられました。各自が政府および自治体の要請に従って感染症の拡大防止に取り組んだ成果であると思います。しかし、わが国におけるコロナウイルスが撲滅されたわけではなく、第2次、3次の流行も起こる可能性はあります。他方、行政はコロナウイルス感染の拡大防止とともに、休止させていた経済活動の再開を考慮した施策をとらざるを得ず、人々の経済活動が活発になるとともにクラスター感染が再発しています。

 本学部においては、今後も教育活動の充実とコロナウイルス感染のリスクのバランスを考えながら進めていくことになります。特に、コロナウイルスへの対応が長期化することを想定して、徐々に新しい教育体制を作り上げていかなければならないと考えています。

520日頃に、新しいガイドライン及び春2学期の授業体制についてお知らせるする予定でしたが、行政による経済活動自粛の要請の解除が思っていたよりも早く実行されたため、その影響がどのようになるかを、もう少し監視する必要があると思い状況を見ていました。611日からは、春2学期が開始されるので、その前に新しいガイドライン、授業計画等を知らせる必要があると考え、ここに提示します。詳細に関しては、各通知を見てください。

1、   新型コロナウイルス感染症対策学生用ガイドライン今治版については、全面的に改訂しました。特に「全般的注意事項」、「食堂・食品を扱う売店でのマナー」、「課外活動について」、「アルバイトについて」などは、内容が変わっています。また、「新しい生活様式の実践例(厚生労働省抜粋)」が追加されています。

2、   春2学期の授業体制については、以下の点を重点的に直しました。

春1学期の授業体制と変えた点。1年生の専門科目講義を分散型対面授業にしました。これは春2学期まで、遠隔のみにすると、半年間大学での生活を体験できない学年が出来てしまうことになり、これは避けたいということです。大学での学びには、やはり、対面での学習により学生と教師が作り出す学問の場が必要であると思います。また、新入生にとっては、学生同士の連帯感の育成や大学への帰属意識の養成などに対面授業が有効と考えたからです。

2,3年生は、すでにこれまで経験しているので、当面、分散型対面の3密を避ける授業体制で実施できる可能性から1年生を対象としました。しかし、2年生以上についても3密を避けることのできる曜日で、分散型対面授業が必要な授業についても可能な範囲で実施することとしました。

春2学期の実習には、分散型対面実習を増やしました。獣医学は学年が進行するにつれ実学的要素が増えます。特に、3年生秋から始まる臨床実習を含め実体験による技術の習得が必要になります。長期的なコロナウイルス感染への対応を考慮しながら、分散型対面実習も取り込み、実の上がる実習体制を模索していく必要があると考えました。

他方、春1学期で試みた遠隔実習も、やってみるとそれなりに有効であることがわかりました。当然、これはそれぞれの実習内容によって異なってきます。長い間、獣医学実習スタイルはこうであるとして、固定化され維持されてきました。今回、コロナウイルス感染症への対応のため、緊急避難的に遠隔型実習を実施しましたが、両方の利点を生かした新しい実習方法も可能ではないかと考え、当面、両方のスタイル、あるいは両スタイルの組み合わせなど、多様な試みを行う必要があると思いました。春2学期の実習が多様化しているのは、そのためです。

 

妻と作った人形。

娘の修学旅行の写真をもとにしました。

妻と作った人形。

娘の修学旅行の写真をもとにしました。

オリジナルの写真です

 

娘のドイツ時代のカーニバルの写真です。大家さんは子ネズミちゃん「モイスヒェン」といっていました。

下の人形は妻の作品です。

先日、妻の作品が創刊700号記念家庭画報大賞の佳作に入りました。

題「何して遊ぼう」です。

 

妻が、稽古に通い、粘土で作った作品です。昨年、東京フォーラムで、他の生徒さんと一緒に展示されました、「仙人草」

(水やり不要です)。

妻の人形作品です。

ドイツ時代の香代の幼稚園の友達です

ある夏のスナップです。妻の父母、娘、甥たちの集合写真から作りました。