動物危機管理学概論第1回のスライドです。 動物危機管理をどのように考え、どのように進めていくかを提示しています。 そのため第1回は動物危機管理学原論としました。他の大学で、実験動物学、毒性学、家禽疾病、魚病学や人獣共通感染症学など教えてきました。また、2年生には病原体の科学、動物感染症学、生体防御と免疫学を教えてきました。それなりに大変でしたが、いずれもこれまでの経験でまとめることが出来ました。
しかし、動物危機管理概論はこれまでに講義したことのないものなので、すべてオリジナルです。参考のために、全スライドを公開します。2016年、春学期の講義を終えました、随分と内容が進化しました。徐々に古いものを入れ替えていきます。
動物危機管理学概論第2回は野生動物で平常時に進行している危機をどのようにとらえるか?また、その管理方法をどのように考えていくかについて講義しました。
生物多様性の意義、絶滅危惧種の保護、野生動物との共存計画などです。
野生動物の危機管理は1回の講義では無理でした。今後、他の場面でも形を変えて登場する予定です。
スライド後半で紹介する、野生動物との共存は可能か?の内容は、厚労省の研究班で調査した「ジビエの食肉の安全確保」に関するものです、これに関しては、2014年春の国会質疑で討議されました。研究班のガイドラインの成果が採用されるといいのですが。
第3回は産業動物の平時の危機管理を取り上げました。
学術会議の第2部講演会(2014年8月5日名古屋、同8月10日三島:市民公開シンポジウム)で講演したように、世界と日本の畜産は食料の安全保障では重要な役割を背負っており、また岐路に立っている状況です。
どのような課題解決方法があるのか?考えていきたいと思います。
日本の畜水産業の課題と展望は市民公開シンポジウム2014に詳しいデータがあります。
動物危機管理概論第4回は、残りの動物カテゴリーの危機管理です。
実験動物(科学と倫理)、伴侶動物(輸入動物のリスク評価)と展示動物(絶滅危惧種の生息域外の保全・繁殖)を取り上げて講義をしました。
動物危機管理学概論の第5回からは、平常時に進行している危機から、視点を変えて
事故時などの対応をメインに講義します。野生動物の輸入検疫、家畜診療と保険制度、動物園動物の感染症回避案の例をとって説明します。
第6回は動物病院を取り上げ、総合的な危機管理のマニュアルを作成する手順を紹介
します。これは、サテライト大学院の一期生、本田三緒子さんの修士論文発表の
スライドを改変しました。本田さんは3月に本学の修士課程を無事に終了しました。
第7回は危機管理の必要な病原体の取扱いについて講義しました。疾病管理の感染症法とバイオテロ防止のための病原体取扱いの考え方の違い。実験室での病原体取扱いとリスク管理のためのバイオセーフティーと物理的封じ込め手段。P3動物実験のやり方及び震災時を想定した動物施設の危機管理を説明しました。少し専門的すぎて3年生でも難しいと思いました。
第8回は東日本大震災に続く福島第一原発事故を受けて、放射線被曝の問題と管理区域の埋却被曝家畜の安全な処理方法(危機管理方法)について述べます。研究指導をしているサテライト大学院修士2年生の宮原さんの実験データをまとめたものです。このような事態のリスク回避のためのエビデンスの収集とマニュアル作成は、全く前例のないケースです。危機管理の専門家の使命は自分で考え、確かめ、新しいレギュレーションをしていくためのリサーチです。これは一つのモデルです。
第9回は、生物兵器、バイオテロの危機管理をはなします。悪意の攻撃に対してどのような対応が取れるのかとても難しいテーマです。
性善説に基づく社会体制や国際協調とは異なる考え方が必要となります。第三者委員会の座長をつとめた、冷凍ギョーザ事件を例に、その取り組みと対策について説明します。生物兵器条約に関しても、性悪説の事例を、性善説で封じ込めることが出来るのか?とても難しい課題です。有効なリスク回避措置、クライシスマネージメント、頑強な体制の構築は可能でしょうか?考えてみてください。
第10回は、野生動物の感染症と危機管理です。
これから3回は野生動物、産業動物、伴侶動物、動物園・実験動物の感染症と対策、危機管理について講義します。
第11回は産業動物の感染症と危機管理を講義しました。
テーマとしては高病原性鳥インフルエンザ、BSE、口蹄疫のどれを事例として取り上げようかと迷いましたが、今回は「口蹄疫」を選びました。インフルエンザは2年生の動物感染症と1年生の教養ゼミナールで一部説明しました。BSEは、3年生後期の動物感染症対策論で取り上げようと思います。
講義(2014年6月27日)のあと、2014年7月24日に、韓国で口蹄疫が再発生しました。前回からの韓国の危機管理の経緯を説明する機会があったので、そのデータも組み込みました。全群淘汰かワクチン接種で生存させるか?リスク管理として議論の分かれた問題です。
第12回は伴侶動物の感染症と伴侶動物に由来する人の感染症の紹介と危機管理について講義しました。講義の内容は、2014年9月から2月まで9回にわたって行う、千葉県の動物取扱者への講演内容とほぼ同じです。以下の感染症統御に関しては、別途の項目に記述しました。動物取扱者、動物感染症論の伴侶動物などです。
第13回は実験動物と展示動物の感染症と危機管理です。ここでは主にサル類の疾病を対象に講義しました。実験用のマウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギなどは、ほとんどがSPF(特定病原体フリー)で、人の脅威になるような病原体はもっていません。やはり、人との共通性の多い霊長類の感染症統御が問題です。
第14回は非感染症による動物の大量死の事例を検証します。動物の大量死は感染症でも起こりますが、感染症以外の様々な原因で起こる可能性があります。自然毒(トキシン)、人工毒(トキシカント)、あるいは環境汚染や地球温暖化、それらの複合要因などです。
動物危機管理学概論は、今回で一応終了です。15回はこれまでのまとめ(振り返り)と試験問題の説明です。選択科目でしたが、よく付き合ってくれました。
15回はまとめのスライドです。