2014年9月8日(月)、白河で今年の高度技術研修が始まりました。
1週間の集中講義と実習の後に、1級の試験です。体に気を付けて頑張ってください。
約束した、今日の1限の講義のスライドをアップします。試験が終わってから、思い出して見てください。動物実験の意義と意味、技術者の役割など、折に触れて考えてみてください。
21世紀には「科学の進歩が人類の幸福につながる」といった
20世紀的な単純な楽観論は、影を潜めるだろう。
動物実験に関しても無条件に受け入れられるという時代は終わった。
Russel とBurchが提唱した3Rは、動物実験における
「科学と社会」の接点といえる。
研究は三位一体で進められるマジックである。
いつもマジシャン(研究者)が注目されるが、高品質のネタ(実験動物)と
優秀な黒子(実験動物技術者)なしには、よい研究成果は得られない。
動物実験は、動物で得られたデータを人に外挿するものである。
20世紀(1901年)にスタートしたノーベル生理学・医学賞は、第1回の
ベーリングのジフテリア抗毒素の研究から2012年の山中教授のiPSまで
約95%以上の研究成果は、動物実験や動物観察のデータに基づくものである。
20世紀に大流行を繰り返したポリオの研究は、動物実験(サルによる
患者の代替)、疾患モデル(サル)、培養細胞によるサルの代替、
ワクチン開発と前臨床試験(サル)を経て、ポリオウイルス受容体の発見と
TGマウスによるサルの代替のように、適正な動物実験の進歩を反映している。
20世紀の分子生物学を振り返っても動物実験がキーになっていることがわかる。
モルガンのショウジョウバエを用いた遺伝連鎖解析
肺炎双球菌の病原性(遺伝形質)が核酸によることを明らかにした実験
キメラマウス、ガードン教授のクローン蛙
遺伝子組み換えマウス、遺伝子治療、クローン羊(ドリー)、
再生医療研究、iPSなどなど・・・・
20世紀最後の研究であるゲノム科学も、多くの動物の比較ゲノム解析に向かった。
ゲノムと遺伝子の違い、ゲノムが持つ独自の進化戦略、冗長性・・・
ゲノムの倍加戦略(魚類、両生類)から、遺伝子の重複・転座などゲノムシンテニー
による読み取り効率の変化で環境適応を果たした。
ポストゲノムの時代を迎えて、生命科学の方向は?
網羅的、個別的、複雑系の方向性を試行錯誤している。
21世紀は20世紀に積み残した多くの問題を残している。
環境汚染防止、食糧の安定供給、感染症の統御が主要なテーマである。
21世紀を支えるライフサイエンス(生命科学)とは?
21世紀の生命科学(ライフサイエンス)は、ヒトに役立つ研究だけでなく
ヒトを知る研究が必要とされる。自然科学もまた「ヒトはどこから来たか?
ヒトは何者か?ヒトはどこに行こうとしているのか?」というポール・
ゴーギャンの疑問を共有している。そのための研究もまた、動物実験と
動物観察によるものである(生物としてのヒトの再確認)。
このような重要な動物実験を遂行するにあたっては、動物実験の意味を理解し、
新しい研究者と動物実験技術者の棲み分け(役割分担)と協力が必要である。
法の精神を順守し、社会に貢献し、社会に評価される存在となる必要がある。
2014年1月23日、24日、つくば市桜(一社)予防衛生協会で
第4回バイオセーフティー技術講習会がありました。
参加者は現場でスーパーバイザーとして活躍している人達でした。
講義、施設見学、情報交換会、実習と盛りだくさんで
とても充実した内容でした(BMSAと予防衛生協会の共催)。
動物実験のバイオセーフティや危機管理は新しい分野で
責任のある立場の人たちに是非学んでほしい領域です。
講義の内容(2014年の活動)と参加者の写真です。