早いもので「獣医教育方針2018」を今治キャンパスに赴任された48名の先生方に講義したのが、丁度1年前でした。1年後の2019年4月2日に今治キャンパス(講義棟7階の会議室)で、今年度新しく赴任される先生方32名に、FD(Faculty Development) の一環として、本獣医学部の教育方針を紹介することになりました。

 昨年度のスライドを見ると、実績がないので理念を述べることが多かったと思います。また、十分に整理できていなかった気がします。かなりの部分を改訂し、「学部教育方針2019」としました。

 「合格者の方へ今治獣医」は新入生と親御さんのための紹介です。この「学部教育方針2019」は、教える側の先生方への解説です。21世紀の課題と獣医学の役割は?なぜ、獣医学部の新設が必要であったか?そのニーズは、ミッションは?どのような人材を養成するのか?そのためのポリシー(DP, CP, AP)は?新設学部の特徴は?ハード・ソフトは?この1年間の成果等を振り返って説明しました。

 最初は、21世紀と獣医学という視点で考えてみました。この獣医学部で育っていく人材は、21世紀の大部分を生き、背負っていく人材です。最初に、20世紀の振り返りと、その中で明らかにされた21世紀の課題。関連して開催された国際会議、その中で採用されたミレニアム目標(MDGs:Millennium Development Goals)及び、その改訂版としてのSDGs(Sustainable Development Goals)と獣医学の関係を考えてみました。

 20世紀は飛躍的な発展を遂げましたが、初期に想定したような科学の進歩が必ずしも平和や幸福に結びつくとは限らないこと、高度経済成長主義は、負の遺産として自然破壊や格差の拡大を生み出したこと、人間中心的な発想や、一国主義(自国ファースト)は、矛盾を拡大することなどが反省点として総括され、21世紀のゴール(目標)は「持続可能な社会の確立」となり、克服すべき課題として、環境の保全、感染症の統御、食の安定供給の確保があげられました。

 繰り返しになりますが、20世紀は驚異的に社会・文化が進みました。しかし、その分、種々の問題を産み出しました。科学の驚異的な進展は、必ずしも平和や幸福に結びつくとは限らず、また、経済活動の拡大や高度成長至上主義は自然破壊や格差の拡大を産む結果となり、人間中心主義、自己中心の一国主義は矛盾の拡大をまねきました。

 21世紀を迎えて、その目標は「持続可能な社会(sustainable society)」の確立となり、克服すべき課題として、国際的な「環境保全」「感染症統御」「食料安定供給」がメインテーマとしてあげられました。国連サミットでは、具体的にミレニアム開発目標(Millennium Development Goals, MDGs)として8つの目標が作成され、2015年に継続・改訂版としてSDGs(Sustainable Development Goals)が示されました。期間は2016年から2030年です。17のゴールと169のターゲットから構成されており、少し散漫になっている気がしますが、「地球上の誰一人として取り残さない」という誓いは、優れたスローガンと思います。この目標を達成するのに、獣医分野の専門家(獣医師DVMと獣医関連専門家VPP)がどのような役割を担い、どの様な人材として社会に送り出す必要があるのかを考えてみたいと思います。

 環境保全の重要性は、40億年の歴史を持つ生物が創生した持続可能な食料・環境・エネルギー循環を維持すること、環境汚染・環境破壊により、この循環を絶つことが最も危険であることを認識する必要があるということです。大気も土壌も水も、見えない微生物によって維持されています。動物も植物もミトコンドリア(αプロテオ菌)と葉緑体(シアノバクテリア)による物質循環(糖と酸素の供給、炭酸ガスと水の排出、炭酸ガスと水と太陽エネルギーから糖と酸素を産生する)によって生きているのです(One Worldという認識が大事)。

 ヒトはこうした40億年の歴史をもつ細菌、20億年の歴史を持つ原生生物、10億年の歴史を持つ単純多細胞生物、5億年の歴史を持つカンブリア紀以後の高等多細胞生物群とともに「一つの世界」に生きています。比較動物学をよりどころとする獣医学は、進化論と生態学を基盤とする教育から始める必要があるように思います。

 食の問題では、第一に食料安定供給(食の安全保障)、そして食の安全、食の防衛(アグロテロ)が国際的な課題であるとされました。食の問題は3階建てで、土台である食の安定供給が確保できなければ、食の安全体制は確立できませんし、食の安全が確保できなければ、食の防衛体制を敷くことはできません。食の安定供給に関しては、途上国の人口増加と動物性蛋白質の供給が問題です。途上国における人口増加により、1960年が30億人、2011年が70億人という現状です。動物性蛋白質の需要では、肉の消費が2010年で3億トン、2040年には5億トンが必要、魚介類では2010年の消費が1.2億トン、2040年が1.6億トン必要と言われています。

 感染症の統御では、人・動物と物の移動の増加、生活圏の拡大、異常気象などに伴い多発する新興・再興感染症、家畜の越境感染症、人獣共通感染症の有効な統御法の開発が求められています。人の健康だけの求めるのでなく、家畜の健康、野生動物の健康、自然の健全性と生物の多様性が一つにつながっているという認識(One Health)が大事だということです。

 まとめると、20世紀の高度経済成長主義、人間中心主義、自国優先主義を見直し、人間を特別扱いするのではなく、生物の一員としてヒトを再認識し、生物の多様性と共生、協調を基本に置くという戦略、そして生命科学(ライフサイエンス)がそれを支えるというコンセプトです。

 こうした点から、大学教育の中の獣医学というものを考えてみると特徴があります。大学教育は人文科学の文科I類の政治学、文科II類の経済学、文科III類の教育・哲学のいずれも、「人間社会を知る」という人間を中心とした、人間のための学問です。また、自然科学の理科I類の工学、理科II類の薬学、農学、理科III類の医学のいずれも、「人間のための研究・開発」という人間を中心とした人間のための学問です。

 しかし、理科II類の理学部は、宇宙物理学、量子力学、動植物学など必ずしも人間中心の学問ではありませんし、霊長類学は文系・理系を合わせた比較社会学です。獣医学は、比較動物学を基本に置く点で、ヒトと動物を同じ視点で考えます。獣医学は、ライフサイエンスの基礎研究という21世紀の課題を担える人材の養成に最も適している学問ではないかと思います。

  次いで、獣医学教育の国際動向についてみてみましょう。国際獣疫事務局(OIE、国際動物保健機関)は、2009年10月に世界の獣医系大学の学部長、各国の行政獣医官を集め、「より安全な世界を形成するために進化する獣医学教育」をパリで開催しました。これが、OIEが獣医学教育に参画し、コア・カリキュラムを世界に示すきっかけでした。世界の獣医学教育の質を高め、動物感染症の制御、動物由来食品の安全性確保、野生動物保全、動物福祉などOIEの関連分野を中心に国際的通用性を持つ獣医学教育モデル・コア・カリキュラムを作成しました。その後、約2年間隔で国際会議を開催しています(2011年リヨン、2013年ブラジル、2016年バンコク)。

 バンコクで開催された第4回会議では、各地域におけるOIEが推奨する獣医学教育コア・カリキュラムの遂行状況、教育改善手法が紹介されました。

 当時の、OIEの事務局長であるバーナード・バラは第1回の会議で、「より安全な世界を形成するために進化する獣医学教育」を構築する上では、基礎となる獣医師の教育(基礎教育、専門教育、卒後教育、社会人教育)の設定が重要であること。これからの新しい獣医学教育で育った人材は、公共獣医事(Veterinary Service)を担う者として、「政策の監視、疫学調査(サーベイランスの担い手)、情報ネットワーク構築、官民のつなぎ役(レギュラトリー科学者)」などの役割を果たすことが求められていることを強調しました。

 他方、米国では小動物臨床に重点が偏るきらいがあるようです。公共獣医事分野やライフサイエンス分野の獣医師の養成への配慮が不足しています。そのため、米国では政府主導で獣医師の新しい人材養成と必要部署への配置体制の整備などが進みだしました。

 具体的には、人獣共通感染症、家畜越境感染症への対策、食の安全保障・食の安全・食の防衛対策、食料貿易拡大への対応、アグロテロやバイオテロへの対策などです。大統領の諮問委員会(総合監査機関、農務省、食品医薬品局等の国家機関などの委員)が基本的戦略を答申し、トップダウンでいくつかの施策が決定され、実行されています。

①獣医師の増員計画です。これまで全国に28獣医系大学が設置されていましたが、約30年ぶりに、新規に3大学を設置することとなりました(既に設置されました)。

②メリーランド州、ポート・デトリックのP4(BSL4)研究所から、新規にカンザス州に大規模な集中的P4(BSL4)施設を建設する(5か年計画)。

③感染症やバイオテロ等の危機管理対応のため、専門獣医師の不足州に獣医師を重点的、計画的に配備する。州予算でなく連邦政府(国家)予算で州に配備する獣医学生に学費支援を行う(3年間の勤務で奨学金の1/4返還免除、6年間の勤務で半額免除)。このプロジェクトは、すでに2011年より実施しています。

 欧州では、EU圏内の獣医系大学が協調し、共に獣医学教育の質的向上と発展を目指すためにヨーロッパ獣医系大学協会(EAEVE)を設立しました。EU圏内では、事実上、国を越えて動物性食品などは自由に移動するので、安全性を監視し、品質保証をするための獣医師の教育レベルが同一である必要があります。EAEVEは、①EUの獣医師の技能を高め、EU諸国の畜産物に関するリスクを最小限に抑えること、②EAEVE認証に関しては、EU域内では、学生が認証を受けた大学教育を学修した資格として自由に移動できる点にあります。

 また、フランスではリヨン大学にOIEの唯一の「獣医教育コラボレーションセンター」を作り、獣医公衆衛生専門家の育成を進めています。既存の獣医大学の入学定員を一律増加させています。英国では既存の6獣医大学にたいし、新たに3獣医系大学を新設させています。 アジアでも台湾、香港、ネパール、マレーシア、カンボジア、シンガポールなどが獣医系大学の新設や新設計画を進めています。世界の獣医教育は、急速な勢いで動いています。

 国際動向に次いで、日本国内での獣医学に対するニーズの変遷と新獣医学部の設置について考えてみたいと思います。

 戦後の獣医師へのニーズとして、食料確保のための畜産振興支援から獣医学はスタートしました。そのため、家畜衛生や産業動物の個別診療技術の高度化が進みました。私の学生時代でも、学会の発表の多くは家畜等の産業動物に関するものがほとんどで、実験動物やペット動物(伴侶動物)に関する発表は稀でした。

 その後、生命科学(生化学、分子生物学、発生工学等)の著しい進展を受け、動物を個体として扱う基礎獣医学の発展が続きました。ゲノム科学の時代を迎えた現在でも、ライフサイエンス分野の基礎獣医学研究者に対するニーズは高いものがあります。

 高度経済成長を経て、核家族化や少子化が進行し、3世代家庭が崩壊し、ヒトの代替としてペット動物が伴侶動物として家族同様に扱われようになりました。そのため小動物高度獣医療技術の開発、導入が進み、獣医学生の就職希望のトップになりました。

 その後、飽食時代を迎え、消費者は健康ブームを反映し、食の安全性志向を強めました。そして獣医師に食の安全管理を求めました。2001年のBSE(牛海綿状脳症)の発生は安全神話の崩壊、「食品安全基本法」の制定へとつながり、内閣府に食品安全委員会が設置されました。BSE調査専門委員会をはじめ専門委員会の委員の約半数は獣医師という状況でスタートしました。国際貿易の拡大・食料自給率の低下は、この傾向を一層際立たせています。

 1999年に施行された「感染症法」に動物由来感染症が入れられました。1類から4類までの感染症のほとんどが動物由来感染症です。また、持続的な成長産業開発の一つとして期待されるライフサイエンス・イノベーションにも獣医師の活躍が期待されています。

 このように約半世紀の間に獣医師に対するニーズ、獣医師の職域は拡大の一途をたどっています新しい獣医学教育は、こうした状況に対応し、社会ニーズに応えられる新しい専門獣医師を養成する必要があります。

上述したように、新設獣医系大学の設置が認められなかった間に、獣医学領域の研究・教育、社会ニーズは大きく変貌しました。50年前にはほとんど存在しなかった伴侶動物医療が、今や卒業生の約半分を占めています。固定化した学生定員のために、ある職域への就職が増加すれば、他の領域は縮小するか、需要に応える供給が出来なくなります。本来であれば新しいニーズに応えるために、新しい分野を設置し、定員数を増加させ、対応する専門獣医師を養成するべきです。

国家戦略特区で新しいニーズがあるといわれる分野は、図に示すように、これまで長年にわたって獣医師の供給不足が続いてきた分野です(製薬・創薬研究者、人獣共通感染症・家畜感染症等の研究者、水際対策や危機管理の出来る防疫員、防疫官、公衆衛生獣医師、産業動物臨床獣医師)。こうした分野は縮小するか、供給不足で高齢化を迎え危機状況にあります。定年後の再雇用などで、みかけの総数は変わらないように見えますが、若手の供給がないので、再雇用者の年齢が上限に達すると、後継者不足が一気に問題となります。これは獣医師の職域偏在の問題です。欧米のように新しい獣医系大学を設置し、基礎研究分野、公共獣医事分野、小動物臨床分野の3つの分野の専門獣医師を等分に社会に輩出することで職域偏在は解消されると思います。

 これまで約半世紀(1971年~現在まで)、獣医学教育の改善・充実のために獣医系大学は、多くの試みを行ってきました。①就学期間を4年から6年へ変更し、新しいニーズに対応する教育内容の多様化の試み、②小規模国立大学の再編統合(北大、東大、東北大、九大へ再編統合する案)、③全国共通のコア・カリキュラムの整備と専門獣医師養成のアドバンスト教育の配置、④共同獣医学部、共同教育課程の設置、⑤大規模私立大学の教育充実(水増し入学定員の是正)などです。しかし、これらの試みは、いずれも成功したとは言えない状況です。

 その結果、これまで述べたように、新しいニーズに対応できる獣医師の供給不足問題がより深刻化し、獣医師の職域偏在(過剰職域と不足職域)及び地域偏在(獣医師不足の道府県)が起きています。原因は明瞭で獣医学生の定員を固定化したことにあります。新しいニーズに応えるには、新しい分野の教育を行い、新しい専門獣医師を養成する必要があります。固定した入学生数では、学生も増員できないし教員も増員できません。新しい分野の教育を行う人材の養成もできません。

 第1期、第2期の指摘から明らかなように、1970年代から既に今日の獣医学教育の弱点が明確に記載されています。読み直してみても、公衆衛生獣医師、食料の安定供給と食の安全、リスク評価、高度獣医療、ライフサイエンス分野の研究者の養成に関する社会ニーズと獣医学教育の対応の不備が述べられています。その内容は、半世紀たった今もって変わっていません。

 特に第2期では、新しい獣医大学(学部)を開設し、既存の獣医学科を廃止し、国際対応の出来る獣医師を養成するアドバンスト専門教育をするという構想でした。10の既存国立大学の獣医学科を廃止し、北大、東北大、東大、九州大の4つの大学院大学の獣医学部として生まれ変わる案でした。72名以上の専任教員を配置し、再編統合した国立大学でスケールメリットを生かし、スクラップ・ビルトにより、新しい分野をカバーした獣医学教育を進めようというのがコンセプトで下。しかし、成功しませんでした。

 大学基準協会案、農学部長会議、その後の文科省の協力者会議でコア・カリキュラムを決めた際の想定される教員数、大学基準協会の第三者評価の基準でも70人以上に近い教員数が想定され続けました。しかし、実現することはありませんでした。

 現在は、獣医学教育改革運動の第3期の延長線上にあるといえます。国立大学獣医学科の護送船団方式を解除した共同学部が成功したか?失敗に終わるか?はまだ明らかになっていません。5年間の文部科学省による後押しが、有効に作用したと考えたいのですが、検証・総括はまだ、行われていません。他方、新獣医学部の設置は、第2期に提案された構想の新しいバージョンと言えます。これまでとは違う戦略による、新しい獣医学教育の再編・充実の魁と考えられます。

産経新聞201746日と47日に新設獣医学部に関連した記事が掲載されました。愛媛大学農学部の阿部俊之助教授が、この問題を「政争の具」にしてはいけないという趣旨で発言されています。

 阿部教授は京大の農学研究科で博士号を取得し、米ネブラスカ州立大学客員教授等を経て、昭和59年から愛媛大学で研究を続けています。専門は植物の分子細胞生物学ですが、四国で畜水産分野を手がける研究者が少ない事から、この分野の研究で奔走することになりました。しかし、愛媛県には研究拠点がないため、必要な設備を求め瀬戸内海を渡り県外に出るしかなかったようです。

 そのため、産業振興のためにも四国に拠点が必要と力説しています。記事の概要を引用すると、「①文部科学省は「入学定員の取り扱いに関する基準」で獣医学部の新設を抑制してきた。愛媛県と今治市は平成19年度から15回にわたり、獣医師の定員増規制の地域解除を構造改革特区として認めるよう提案を繰り返してきた。②今治市は大学誘致を目指す「学園都市構想」を昭和50年に決定。用地は昭和58年の土地造成時から、高等教育施設を誘致する目的で、合併振興基金として40億円を積み立て、用意していた。」

 「③今回、獣医学部は国家戦略特区によって今治市に新設される。今治市は建設予定地として市の所有地を加計学園に無償譲渡し、開発経費として96億円を上限に助成することを決めている。④新設される獣医学部は愛媛県の支援も受け、農水産関係の公的部門がカリキュラムに組み込まれる。愛媛大学も施設の共同利用、学生の教育・研究に全面的に協力する方向で進んでいる。⑤「一部の国会議員やマスコミがこうした公的側面にふれないまま、あたかも疑わしい設立だとするように報じており、悪影響は計り知れない」。⑥現在では、獣医の扱う分野は幅広く、国際社会への貢献、家畜の感染病予防・診断、医薬品の開発、食の安全性確保などで重要な役割を担うようになっている。新設獣医学部は、愛媛大学と連携し生命科学分野の研究を進める。四国における水産・養殖漁業、動物や食品産業、新薬、医療機器といった関連企業への貢献も視野に入れている。」といった内容である。

 2016年11月9日に開かれた国家戦略特別区域諮問会議で、獣医師に対する国内外の新しいニーズに応えるために従来の規制を緩和し、広域的に獣医系大学の存在しない地域に限って獣医系大学を新設する方針が明らかにされました。新しい獣医学部が新設されれば、50年ぶりということになります。獣医学部の新設が、新しい医薬品開発のための創薬プロセスに必要な先端ライフサイエンスの研究を担う獣医師の育成や、国際的な家畜の感染症、動物・食料などを介して広がる人獣共通感染症の対応や水際対策をになう危機管理獣医師の育成に繋がること、それらが医療イノベーションや地方創成といった成長戦略や持続可能な社会の構築に必要なことから、新設獣医学部の立ち上げを加速し、規制緩和のための告示の改正を行うべきであるという方針です。

 岡山理科大学獣医学部は、私立大学の新設学部ですが、国家のミッションを受けています。それは、「世界に冠たる先端ライフサイエンス研究を行う国際教育拠点」と「感染症に関する危機管理(水際対策)人材の養成」です。

 このミッションに応えるために4つのテーマを決めました。動物からヒトへは、医学と獣医学を融合し、動物を用いた臨床研究の成果をヒトの治療につなげるOne Medicine, グローバル対応では、感染症の防御対策、食のリスク評価・管理などの国際対応の出来る獣医師養成(One Health)、危機管理学術支援拠点としてのローカル対応、及び生物多様性、環境保全、動物とヒトの健康を科学する基礎ライフサイエンス研究者養成(One World)でした。

 これらのことを加味して、獣医学部の理念は「動物とヒトの健康を科学する」としました。また21世紀の課題と学部のミッションを果たすためのキーワードとして、「一つの世界、一つの健康、一つの医学:One World, One Health, One Medicine」としました。

 地球上の生き物は「一つの世界」に生きているという生命科学(ライフサイエンス)、ヒトのみならず家畜、野生動物の健康、環境の健全性、すなわち「健康は一つ」という公共獣医学、動物の医学もヒトの医学も、その目的、ツール、ゴールは一緒であり、「一つの医学」であるという医獣連携獣医療です。

・整理すると学部の理念は「動物とヒトの健康を科学する」

・その目的は「一つの世界」「一つの健康」「一つの医学」を実践すること

目標は、全国共通のコアカリキュラムの上にアドバンスト教育を置き、目的の実践に対応するライフサイエンス分野(一つの世界)、公共獣医事分野(一つの健康)、医獣連携獣医分野(一つの医学)の専門教育を施し、専門獣医師を養成することです。

・そのためのプロセスとして、DP(ディプロマポリシー),CP(カリキュラムポリシー),AP(アドミッションポリシー)を決め、PDCAを回しながら進めて行くとい う戦略(ストラテジー)になります。

・1年から6年までの全ての科目をランチョンセミナーで公開し、共有するFD、教育の質保証のための自己点検・評価、各種委員にヨコグシを入れるQAUのWGの設置などは、戦略を具現化するための戦術(タクティクス)といえます。

 3つのキーワードをカリキュラムに反映しようと考え、ディプロマポリシーから、専門教育分野をライフサイエンス分野、公共獣医事分野、医獣連携獣医療分野としました。

 ライフサイエンス分野は、獣医学の得意とする動物個体の特性を生かした基礎生命科学領域の研究です。創薬研究などでは、橋わたし研究(トランスレーショナル・リサーチ)で、基礎研究とともに、その成果を臨床研究に結び付けようというものです。

 公共獣医事は、家畜越境感染症、人獣共通感染症のコントロール、食料安定供給(食の安全保障)、食の安全(リスク評価と管理)、食の防衛、環境保全、国際調和とグローバル対応の出来る公共獣医師の養成を目的とする分野です。

 医獣連携獣医療分野では、ヒトと伴侶動物の超高齢化や加齢性疾患(老年性癌や認知症など)の共通性を重視し、もはやヒトと動物の医学の予防、診断、治療のツールやゴールが同一であるというコンセプトに立って、自然発症伴侶動物による医薬品や新規医療技術開発の臨床評価研究を進めようというものです。

 新設獣医学部には、他の獣医系大学にない4つの特徴があります。

1つは、獣医師(DVM)とそのパートナーとなる獣医関連専門家(VPP)を同時に育てるというものです。そのため獣医学部は2つの学科を同時に開設しました。基礎科目とアドバンスト科目の約1/3は、獣医学科と獣医保健看護学科で共通です。

2つ目は、獣医師、獣医関連専門家ともに3つの分野を明示し、それぞれ全国共通のコアカリキュラムの上に、3分野のアドバンスト教育科目群を配置しました。

3つ目は、教育と研究を調和させる新しいシステムとして、タコつぼ型の研究を廃止しました。教育は講座制、研究は講座をこえたプロジェクト制とし、個々の講座に研究室を置かないで、共通のオープンラボを作りました。

4つ目は、国内最大級の専任教員数を配置しました。研究業績を重視した教員任用を行いました。獣医学科75名、保健看護学科12名です。87名の専任教員でDVMとPVVを養成しようというものです。

 獣医関連専門家(VPP)は、獣医系の国際政府機関である国際獣疫事務局(国際動物保健機関、OIE,WOAH)が、国際的な獣医学コアカリキュラムを提示したあと、5年を経過して新たに獣医関連の職域として人材の養成を各国に求めたものです。

 獣医師(DVM)と獣医関連専門家(VPP)の関係を見てみましょう。両者は互いにパートナーです。

 例えば、公共獣医事分野でいえば、DVMは国家公務員、地方公務員(家畜保健衛生所)、産業動物臨床(NOSAI)、農場・養殖場等の指導員を、VPPは、食品安全等の公衆衛生分野で食品衛生管理者、食品衛生監視員、あるいは家畜防疫官(検疫所)などです。

 ライフサイエンス分野では、DVMは製薬企業、ワクチン製造メーカー、食品企業、国立研究機関、医薬品開発受託機関の研究者、VPPは、ライフサイエンス研究機関での実験動物管理者、技術者、支援者、研究者などです。

 医獣連携獣医分野では、DVMは小動物臨床、実験動物研究施設の実験動物獣医、中央競馬会の臨床医などです。VPPは獣医診療施設、動物園、動物愛護センター等の動物看護師です。

 教育研究上の目的は、獣医師(DVM)あるいは獣医関連専門家(VPP)の職務関する知識技能を基盤とし、実践的応用的な教育を通して高い生命倫理と豊かな人間性、国際的視野を備え生命科学の発展動物とヒトの健康と福祉に貢献する人材養成です

教育目標は、獣医領域が①動物医療、②開発ライフサイエンス研究、③国際家畜感染症、人獣共通感染症の対応等、多岐にわたっていること。そのため、この獣医領域を、ライフサイエンス分野、公共獣医事分野、医獣連携医療3分野に分け、社会で活躍できる獣医師(DVM)獣医と協働する獣医関連専門家(VPP)を養成することに置きました。新しい獣医学教育で養成される学生は、専門分野の獣医師及び獣医師と親密なチームを組む優秀VPPでなければならない。そのために、導入科目、基礎科目、アドバンスト科目において

獣医学科と獣医保健看護学科共通の学科共同教育

国際的視野を備えるために、初年次から英語のステップアップ教育

3分野に対応する専門上級科目(アドバンスト科目行うこととしました。

本学部の教育を通じて、「ひとり、ひとりの学生が持つ能力を最大限に引き出し、獣医領域で専門家として持続可能な社会の確立に貢献し、人類の福祉に役立つ人材」として社会に排出することを目標としました

 卒業の認定と、学位授与の方針(ディプロマポリシー)は以下の通りです。

A 科学的根拠に基づき動物に関する基礎的知識と技能を修得し、専門分野活躍・貢献できる能力を身につけていること。

B 獣医学に関する知識VPP関する専門的な知識を基盤として、ライフサイエンス分野公共獣医事分野獣連携医療、VPP分野への応用力を身につけていること。

 専門知識を平易な言葉で伝えることができる能力を身につけていること。

D 獣医療に携わる者としての生命倫理、科学倫理、動物福祉に基づいた行動規範を身につけていること

獣医師(DVM)あるいは獣医関連専門家(VPP)の職務関する知識技能を基盤とし、実践的応用的な教育を通して高い生命倫理と豊かな人間性、国際的視野を備え生命科学の発展動物とヒトの健康と福祉に貢献する人材養成を行うという教育目的に沿って、カリキュラムポリシーを以下のようにしました

 社会人としての基盤を築き、総合的な判断力を身に付ける教養教育科目を配置する。教育にあたっては、講義、演習、実習を適切に組み合わせ、自発的学習を促す

 国際的な視野を涵養し、基礎的なコミュニケーションに必要な英語を中心とした外国語を継続的に学修するため外国語教育科目を配置する。学生の能力に配慮した効果的な指導を行う

 大学における学びへの適応を図り、当該学問分野への興味を持たせ、初年次よりライフサイエンス分野、公共獣医事分野、医獣連携医療分野の特性を理解させるために学部共通導入科目、基礎科目を配置する。講義、演習、実習を適切に組み合わせ、自発的学習を促す

D 当該学問分野に必要な知識と技術を修得する専門科目を体系的に配置する。講義、演習と実習の連携を密にし、実用的な知識と技術を身に付けることができるよう配慮する

E 新たな課題に対応する能力を養うため、アドバンスト科目に3つの分野の科目を配置する2割の英語を用いた講義、演習、実習を適切に取り入れ、知識と理解の定着を図るとともに、アクティブ・ラーニング等の方法を適切に取り入れ、課題解決能力を身につけさせる

  学生自らが課題を探求し、解決する姿勢や、その過程と結果を論理的に説明する能   力を涵養するため、総合科目(卒業論文)配置する

 以上のディプロマポリシーとカリキュラムポリシーに基づき設定したアドミッションポリシーが以下のものです。獣医学部は教育研究上の目的、目標を実践するため、以下の資質を持つを国内外から幅広く求める

A.生命、獣医療、動物とその環境に好奇心、探究心を持ち、これらの知識技能を活かし社会に貢献したいと考える人

B.広く動物とヒトの健康と福祉に貢献したいと考える人

C.物事を多面的に考察、理解し、要点をまとめることができる人

D.新たな課題について、積極的に取り組む意欲のある人

新設獣医学部の基本的な教育体制を紹介します。

 ソフトウェアとしては、全国共通のコア・カリキュラムの上に、上級専門教育(アドバンスト)科目群をおき、87名の多彩な専任教員が教育します(2020年には89名になります)。アドバンストの3分野は、ライフサイエンス、公共獣医事、医獣連携獣医療です。これらを支えるハードウェアとして、大型の実験動物センター、国際獣医教育研究センター、獣医学教育病院、オープンラボ等を設置しました。

 上級専門教育では、ライフサイエンス分野、公共獣医事分野、医獣連携獣医分野ともに、それぞれ約10講座を置き、各講座に6~7名の学生を所属させ、各分野60~70名の学生を専門家として活躍できるように養成します。

 ライフサイエンス分野の獣医師(DVM)は、ライフサイエンス研究者等を、獣医関連専門家(VPP)は、実験動物研究支援者、実験動物管理者を目指します。公共獣医事分野のDVMは公衆衛生獣医師、産業動物獣医師を、VPPは国家公務員、地方公務員、食品監視員等を目指します。医獣連携獣医分野のDVMは医獣連携獣医師を、VPPは小動物看護師等を目指します。

獣医学の教育体系は非常に広範で複雑です。

 まず動物倫理、福祉、法規を学びながら、各種の動物(イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、トリなど)について正常な形態・機能から始めます。比較動物学として各種動物に共通する側面と各種動物がもつ特殊性を学びます。組織、解剖、生化学、生理、遺伝学などです。

 次いで、動物個体が異常になった状態(各種疾病、感染症)を学びます。感染症であれば病態、病理、原因となる感染性微生物(ウイルス、細菌、真菌)や原虫、寄生虫学です。また宿主の反応としては生体防御学や免疫学です。各種疾病の予防、診断、治療は薬の面からは薬理学、医薬品の有効性、安全性の観点等から毒性学、実験動物学が、臨床面からは沢山の分野に分かれた内科学、外科学があります。獣医の場合は、特にこうした個体の学修とともに、群れ(個体群)としての動物学があります。疫学、動物衛生、家畜感染症、家禽疾病、魚病、野生動物学などです。

 最後に、これら動物個体と動物群、及びその生産物等と人との関係を図る学問分野があります。これらは公衆衛生、食品衛生、環境衛生、人獣共通感染症学です。医学に比べて、多種類の動物を扱うこと、個体と同時に群れを扱うアプローチが多いこと、動物で完結しないで動物とヒトとの関係を学ぶことなどが、医学と違う点です。

獣医保健看護学科では、獣医看護学をはじめとする基礎科目を獣医学科と共に学び、その後アドバンスト科目を学修させ、獣医師と連携できる実践能力を持つ獣医関連専門家(VPPを養成します。獣医保健看護学科にとって獣医学科の併設は、大きなアドバンテージです。獣医学科と獣医保健看護学科の同時開設と導入教育で行われる両学科共通教育は国内初といえます。60人の学生を獣医学部89名の教員が面倒を見る獣医学科と一体教育、高度で最新の獣医学教育病院、国内最大級の規模の実験動物センターを有し、共同研究型のオープンラボでの卒業研究ができます。

 3年次後半から始まるアドバンスト教育では、3分野のうち、実験動物科目群を選択した者は、「遺伝子工学」「獣医病態モデル学」などを学修し、ワンヘルス・サイエンティストとなるべく、実験動物技術者1級、実験動物指導員、実験動物管理者等を目指します。公衆衛生科目群を選択した者は、「人工授精学」「バイオセーフティ学」などを学修し、家畜人工授精師、食品衛生管理者・監視員、公務員(家畜防疫員、家畜防疫官等)を目指します。高度獣医療看護科目を選択した者は、「チーム獣医療学」「高齢動物看護学」などを学修し、国家資格を獲得したのち、将来の職場環境となるチーム獣医療を学生時代から体験し、愛玩動物看護師、大動物看護師等を目指します。また、VPPとして、国家公務員、地方公務員を目指す学生には、公務員キャリア指導教員を置き、充実したサポート体制を整えています。準正課教育で公務員キャリア教育を進める予定です。

 獣医関連専門家(VPP)の想定される進路としては、3分野で異なります。

 ライフサイエンス分野(創薬、医療機器、ディバイス開発など)では、実験動物施設における動物のケア、実験動物管理者など、医科学研究機関では、生命科学研究の技術者、研究支援者など、他に医薬品(動物用医薬品、生物製剤を含む)の開発企業、あるいは医薬品開発受託機関では、GLP(good laboratory practice)の専門家などです。

 公共獣医事分野では食の安全管理や感染症コントロールが主になります。国家公務員としては、一般職や専門技術職として家畜防疫官や農水省、厚労省、環境省の本省あるいは専門機関(検疫所など)で活躍します。地方公務員としても、畜水産系技術職、動物愛護行政、公衆衛生分野での活躍が期待されます。また食品衛生監視員や畜水産振興、農場GAP指導員など、いろいろな職種があります。

 獣医看護分野は、議員立法により「愛玩動物看護師法」が成立し、2年後から施行され国家資格となります。3年課程で受験可能、資格を取れるので、4年生大学ではアドバンスト教育に力を入れ、動物看護師をベースにより広い範囲で活躍できるように養成する必要があります。想定される進路としては、動物病院(1.5~2次病院)、ペット保険会社、ペットフード、ペットケア関連企業、獣医関連出版企業などです。また、将来は、動物臨床検査技師や人手の足りない産業動物の獣医療看護師、野生動物管理者(監視員)の養成も、この分野で必要となると考えています。

 獣医保健看護学科では、学部共通導入科目、基礎科目(講義・実習)では、約1/3の科目を獣医学科と獣医保健学科の学生が履修します。教養・基礎科目では、生きる基礎・学ぶ基礎・獣医関連専門家としての基礎を身につけることが目標です。

 その後、VPPの基礎系科目、及びVPP専門系科目を学びます。コアカリキュラムとしては動物看護学を用い、そのほかにアドバンスト科目群に繫がる専門科目を学びます。ここでは全ての学生が共通で学びます。

 主に3年次後半から4年にかけて3つの分野(実験動物科目、公衆衛生科目、高度獣医療看護科目)に分かれてアドバンスト科目を学びます。これらの科目は必修選択です。また、約1/3は、獣医学科と共通の科目群です。

 この学部の獣医学科が養成する専門獣医師は3分野に分かれます。

 ライフサイエンス分野で(生命を科学する、よりよく生きる)トランスレーショナル研究者を目指す獣医師には、微生物からヒトまで「一つの世界に生きている」というコンセプトをもち、薬学・医学などと連携した基礎ライフサイエンス研究を推進する研究者として活躍することが求められます。

 公共獣医事分野で働く獣医師は、「健康は一つ」(ヒト、家畜、野生動物の健康と環境の健全性は繋がっている)というコンセプトをもち、国際対応のできる公共獣医師として、感染症の統御、食の安定供給や食の安全を管理する(よりよく食べる)専門家としての活躍が期待されます。

 動物とヒトの「医学は一つ」というコンセプトを持つ医獣連携獣医分野(臨床獣医師)は、応用ライフサイエンス(臨床研究)分野で、動物とヒトをまもり、よりよく暮らすことをゴールに、新しい獣医臨床を実践し、動物とヒトの健康と福祉に貢献できる専門家となることが求められると思います。

 獣医学科の学生の想定される進路は、以下のようになります。

 ライフサイエンス分野は、製薬企業、ワクチン製造メーカー、食品企業などの研究所。国立研究機関(動物医薬品検査所、国立感染症研究所、国立医薬品食品研究所など)、独立法人研究機関(動物衛生研究所、理化学研究所、産業総合研究所など)、医薬品開発受託機関(CRO)など

 公共獣医事分野は、国家公務員(農水省、厚労省、環境省、内閣府食品安全委員会など)、地方公務員(県、政令指定都市の行政職:公衆衛生、動物衛生、生活衛生、環境衛生分野、と畜場、動物愛護センター、県衛生試験所、家畜保健衛生所など)、産業動物臨床(農業共同組合NOSAI、個人開業)など

 医獣連携獣医分野は、小動物臨床(1.5次病院、2次病院が目標)。実験動物研究施設(CROを含む)、中央競馬会、動物保険企業など。

 獣医学科でも、学部共通導入科目、基礎科目(講義・実習)では、約1/3の科目を獣医保健看護学科の学生と一緒に履修します。教養・基礎科目では、生きる基礎・学ぶ基礎・獣医関連専門家としての基礎を身につけることが目標です。

 その後、獣医の基礎系科目、及び獣医の専門系科目を学びます。モデル・コアカリキュラムとして(51講義科目、19実習科目)の他に、水産系、畜産系などの科目が加わっています。4年終了後に、CBTとOSCEの試験があり、これを通過しましと、5年次の総合参加型臨床実習を履修できません。5年次春②には、個別のインターンシップ(キャリアスキルアップ研修)があり、1人ずつ別の機関で現場の体験をします(2週間から最大3か月まで)、秋①②、6年次には3つの分野(ライスサイエンス科目、国際公共獣医事科目、臨床獣医科目)に分かれてアドバンスト科目を学びながら(これらの科目は必修選択です。また、約1/3は、獣医学科と共通の科目群です)、卒業研究を進めます。

 アドバンスト科目による教育は、新しい獣医学部の特徴です。

 ライフサイエンス分野では、キャリアー・スキルアップ研修、実習と共に、創薬科学の専門家等を専任教員に配置し、「トランスレーショナル・リサーチ」「創薬科学」「国際ライフサイエンス産業政策論」「病態動物モデル学」など、コアカリキュラムを発展させた専門教育を行います。実験動物を用い基礎研究の成果をヒトの治療に繋げる教育研究を推進します。千葉科学大学薬学部と連携協定を結んでいます。

 公共獣医事分野では、国際獣医事科目を設定し、キャリアー・スキルアップ研修、実習と共に国内外で対応できる公衆衛生獣医専門家を養成するため、「国際獣医事概論」「国際動物疾病学」「セキュリティ学」「グローバル食品管理科学」「国際動物資源学」「動物危機管理学」「産業動物疾病予防管理学」などの科目を配置しました。

 医獣連携獣医分野では、キャリアー・スキルアップ研修、実習と共に医学部や薬学部で教育経験を積んだ教員を配置し、「抗菌バイオロジー」「トランスレーショナル・ベテリナリーメディシン」「免疫関連疾病学」「チーム獣医療学」「エキゾチックアニマル学」「国際展示動物疾病学」などの科目を配置しました。また、愛媛大学医学部等と連携協定を結びました。

 獣医学科の学生を主体に充実した英語教育のステップアップ・プログラムを組みました。 1・2年次は、一般英語ですが、3年次には海外で研究あるいは教育に関与した先生方に、専門分野に関する記事や原書論文の読み方、理解の仕方をアクティブ・ラーニング様式で担当してもらいます。アドバンスト科目の約20%は英語教育として、3分野それぞれに到達目標を定めてあります。

 ライフサイエンス分野では、研究は国際性をもったものです。専門用語もほとんどは英語になります。そのため専門分野に関する記事、原著論文を理解し、発表、議論できる。英語で論文を作成できることが目標となります。

 公共獣医事分野では専門分野の用語は日本語と英語では互換性が低いので、公衆衛生に関する記事、原著論文を理解し、発表、議論できるとともに、専門分野に特化した語彙について、日本語と英語両方の言語で理解し、相互に翻訳できることが目標となります。

 医獣連携獣医分野では、臨床用語は主に英語になります。そのため専門分野に関する記事、症例報告を理解し、発表、議論できるとともに、外国のクライアントに臨床診断の概要を説明できることが目標となります。

VPPの学生さんを中心に公務員になるためのステップアップ教育を組みました。

 一般教養科目では、政治・経済・法律などの教教科目、キャリアー導入科目を理解することを目標とし、獣医学科の学生とともに公共獣医事に関する講義(VPcamp)等をオンディマンドで利用し学習できる体制を整備しようとしています。

 専門科目(畜水産)では、公務員として活躍できる専門科目を実学的に理解することを目標に、夏休みを利用したインターンシップ(家畜保健衛生所、NOSAI、水産研究施設など)あるいは実務実習のため、学生が訪問できるように連携協定を結んでいます。

 アドバンスト科目及び準正課教育(正課教育と正課外学習の中間)では、畜水産、獣医などに関するアドバンスト教育科目の他に、公務員になるための、教養、専門、英語などのゼミ形式での学修(キャリアー教育)、学生が独自に問題を作成し、公務員模擬試験を実施する、公務員試験模擬面接体験など、種々の教育体制を組んでいます。

 教育研究施設としては、各講座室とは独立して、プロジェクト型研究を推進するために、オープンラボを設置しました。教員等が実験・研究のため共同で使うスペースです。動物臨床例からBSL3の病原体が分離された時に対応するため、BSL3の実験室を設置しました。

 獣医学部棟1階には、実験動物センター(約2000平方メートル)を設置しました。齧歯類のクリーン動物、SPF動物、遺伝子改変動物、感染動物飼育区域と中動物の飼育、実験区域、水産養殖の飼育実験区域を有しています。

 もう少し詳しく紹介すると、実験動物センターは、2,000㎡近くの大きさで講義棟の1階に置きました。34年後にはAAALACインターナショナル(国際実験動物管理公認協会)の認証を受けられるというハード・ソフトのデザインにしました。他に特徴としては、普通の獣医系大学にはありませんが、四国の水産養殖が非常に盛んであることを考慮しました。国際的には証明書を出すのは食品の安全性等に関して畜産・水産動物、その加工品も獣医が管轄しなければいけないという形になっています。日本は水産庁と農林省で分けていましたから、獣医がそこに顔を出すということがありませんでした。しかし、これからの獣医はそこもカバーしなければいけないと思います。大きな水槽も含めて水産系の研究施設もつくりました。水産系の先生3名にも来ていただきました。

 獣医学教育病院3階には国際獣医教育研究センターを設置しました。獣医に関連する国内外の情報を収集、分析、加工し、学内LANを用いて教育研究用に利用できるシステムを整備すると共に、アジアを中心に獣医学教育研究の情報拠点として、ネットワークを構築する予定です。

 実習室は、獣医学部棟に5室設置し、獣医学科・獣医保健看護学科の共用です。90人収容可能です。獣医学科の実習は2クラスに分けて行います。また、獣医学教育病院に3室設置(外科実習、内科実習、動物看護実習)し、大動物については、大動物実習施設を設け、大動物臨床実習室、大動物解剖室、病理解剖室等を置きます。

 全講義室、演習室には視聴覚設備、無線LANを設置します。スモールグループ教育のために演習室等に稼働机を置きます。また、ICTを用いた教育を充実するためコンピュータ室を設けています。

今治獣医学部(今治キャンパス)には、今治というだけではなく、千葉科学大学・倉敷芸術科学大学、岡山理科大学を含めて生命医科学検査研究センターを作ることになりました。3大学には共通して、臨床検査コースがあり臨床検査のウェット施設が必要なこと、やはり3大学には共通して動物コースがあること、医療検査、獣医療検査、食品検査、環境検査などは共通のツールで分析できることから、今治キャンパスの拠点となる検査センターを置こうということになりました。

新しい先端検査機器は、今度の備品で全部入れてもらいました。その上で検査の対象は違っても、ヒトでも食品でも、動物試料でも分析する機器はほとんど同じなので、統合的に検査しようというものです。今までのヒトの医療検査の分野では、ヒトの検体しか扱いませんでした。ここでは、獣医は伴侶動物、産業動物それから今回、水産養殖魚類の検査も引き受けることになりました。その他にも食品、野生動物を含めて、病理、微生物、生化学、その他公衆衛生の専門家などが機械で分析します。臨床の分野であれば町の病院から来た材料を検査して返す、あるいは水産の方でHACCPの問題で病原体の検査をしてくれと言えばそれも扱う、あるいは感染症の病原体を分析するということになります。既にスタートしています。

 医学と違って獣医学には、動物用の薬学部や医学検査部門及び動物法医学部門に匹敵する組織がありません。今治キャンパスに創薬部門、検査部門及び検死(遺体科学)分野を置こうと考えたのはこのためです。

管理棟の2階~4階は、市民の公共施設として「市民の方の利用」ができます。

図書館の下(2階)は食堂になっているのでここも市民の方の利用が盛んです。多分大学に来る業者さんにとっても、やり甲斐があるというふうに思います。大学は、学生さんたちが休みのときは、食堂は開店休業になってしまうので、市民の方も是非利用していただきたいと思います。動物病院の方に来られるクライアントの方も当然利用していただけます。

 ほかに広場の中庭のところには、ずっと1階の方から移動できる、ウッドデッキでつながっています。中に憩いの広場というものがあって、大きな池というか、水場があります。そこからはしまなみ海道も見れるところがあるので是非、春になって気候が良くなれば、訪れてください。街から2㎞もありません、健康がてら坂をあがってきていただければ楽しいのではないかと思います。

 図書館(管理棟3,4階)は、10万冊の図書が収容可能です。1年目は1万3千冊が導入されました。色々な雑誌、本がはいっています。学生も市民の方も、ここで交流が持てたらいいのではないかと思います。また、350人収容の大講義棟も完成しました。授業、市民講座や国際シンポジウム、種々の学会講演等、できるだけ広範囲に使っていきたいと考えています。

 図書館には、本だけでなく素晴らしい骨格標本や今治市の情報、今治キャンパスの情報展示コーナーもあります。また、30台のPCや、フリーに議論できる場もそろっています。

 講義棟の1階は動物センター、2階は大型の講義室と中型サイズの演習室、3階と4階は講義室、演習室と実習室、5階と6階はオープンラボ、7階は教授会等のための大会議室となります。また、200人の講義には2階の大型講義室とともに350人収容の大講義棟も利用します。特に外部の講師を招いて行う企業特論、キャリア教育などは大講義棟が適しています。

 1年生の実習は講義棟の実習室で獣医学科、獣医保健学科の学生が合体して実習を受けます。獣医保健看護の3年生、獣医学科の3,4年生の病院実習は、獣医教育病院で行います。卒業研究は、講義棟のオープンラボ、病院の研究ラボ、実験動物センターなどで行い、データ整理や論文書きは、各棟の学生室や図書館のラーニングコモンズ等を利用して行います。もちろん、共用試験や国家試験の演習も組まれています。

 獣医学教育病院は4階建てで、一階が受付と診療室(独立した診療室が8つあります)及び中央に共通の広い処置室、そして放射線やMRI,CTあるいはリニアックに繫がる治療室があります。2階は外科になっており、一般外科手術室、陽圧手術室、顕微手術室、眼科手術室などとともに、隔離室、集中治療室などが設置されています。3階は学生(獣医学科と獣医保健看護学科)のための内科及び外科実習室、臨床ラボ、検査センター、カンファレンスルーム、教員居室などがあります。4階は学生室、公衆衛生関連教員の居室、会議室などがあります。

 多くの専門診療科を持つ獣医学教育病院の目的は、学生の臨床教育、動物患者の診断・治療研究、高度獣医療(2次病院、地域基幹病院)、卒後研修などです。

 獣医学教育病院(4階建て、約3900平方メートル)には、多くの診療スタッフ(臨床教員26名と動物看護師・技術職員を置いています。また最新の医療機器をそろえました。X線CT, MRIや陽圧手術室、眼科手術室、ICUユニットおよび放射線治療用のリニアックを導入し、教育と共に二次病院としての機能を果たしています。

これまでの教育成果の特徴を挙げてみました。

1準正課教育(通常の正課教育と部活動のような正課外学習の中間)による学生主体の地域貢献、地域コミュニティー交流プログラムの実施。

 獣医学部は、特区制度を利用して設立された学部であり地域と深い関係がある。地域の一員として地元と融和して大学生活を送るという意識が大切。また、将来、より良き専門職業人・地域リーダーとなるため教育効果を期待して、①地域住民を対象とした公開講座地元高校の生物系クラブとの交流や③地域ボランティア活動等を学生が主体となって企画する教育制度です。伯方島イノシシプロジェクト、今治馬プロジェクト、獣医学部伴侶動物同行避難プロジェクトの開始などです。

2、動物関連キャリア概論による導入教育の成果。獣医学科では、1年生ながら、夏休みにNOSAI家保等の研修に参加(20名)春休み(20192月、3月)研修(北海道NOSAI研修事業に5名の学生がエントリー)。また、既に愛媛県をはじめ数県から獣医師奨学金の貸与を受けています。

3、獣医保健看護学科のアンケート調査(進みたい分野について:導入教育の評価)

ライフサイエンス12名:ライフサイエンス研究・支援(10)、実験動物(2)

公共獣医事12名:大動物看護(4)、野生動物保全(2)、動物園・水族館員(2)、公務員、 

 人工授精師、水産、感染症関連

医獣連携獣医療11名:獣医療看護(9)、画像診断、動物訓練師でした。

開設以後の獣医学部今治キャンパスの主な出来事を振り返ってみました。

42日 新採用者研修(教員説明会、最初のFD:faculty development)  

43日 入学宣誓式、4日新入生オリエンテーション

467日 大三島1泊研修(履修指導、1枚目のスライド写真

49日 授業開始 (講義、演習、実習スタート)

5830日 動物関連キャリア概論で、14班に分かれて獣医職域の25カ所を見学

511日  韓国ソウル大学で新設獣医学部の戦略を紹介

 (東アジア3か国:日本、台湾、韓国の第1回獣医系大学会議:Strategy of 

    New Veterinary School in Japan)

514日  モンゴル国生命科学大学獣医学部の協定 

521日  オーストラリア クイーンズランド大学、水野哲夫博士講演

7月16 今治西高生物クラブ発表

719日  新設台湾アジア大学 林子恩教授講演

845日 今治「おんまく祭り」参加

921日 中四国支部会、農学部長会議に会員として参加

107日  獣医学部開設シンポジウム、リヨン大学O.ファージア博士他

10月24~28日 モンゴル大学創立75周年記念式典に参加

    日本の新設獣医大学について講演(Mongolianの項目)

112122日 アジア獣医学系大学協議会に会員として参加

11月29日 オーストラリアクイーンズランド大学学部長来校

122日 第1回学園祭「ゆめいこい祭」

    岡山理科大学と今治市の包括協定

    獣医学部と今治市、愛媛県獣医師会と災害時避難拠点協定

    (グラウンド、体育館、大講義棟を災害時同行避難の拠点とする)

 学生生活(動物関連キャリア概論の訪問先)、講義・実習風景です。施設・設備は今治獣医紹介の項(動物を学びたい学生のために)に載っています。動物園、農場、県庁とパワーポイント発表時の風景です。

 講義や学外見学だけでなく、語学や教養教育などの基盤教育は獣医学科と獣医保健看護学科の学生さんは、同じ講義を受けます。また、1年生から生化学実習、生命科学実習、組織学実習など、講義とともに専門基礎の実習が行われます。これも獣医学科・獣医保健看護学科の学生は合同で実習を受けます。将来獣医師(DVM)と獣医関連専門家(VPP)は、3つの分野でチームを組んで働くことになるので、学生の時から協働作業を経験させたいという思いでカリキュラムをくみました。

 12月2日には、第1回目の学園祭「ゆめいこい祭」が開催されました。学生さんが自分たちで作ったプログラムで行われました。1年生しかいない状況では難しいのではないか?という意見もありましたが、獅子奮迅の働きで学園祭を成功させました。その努力と才能には驚きました。また、今治市や市の企業や公的機関等の温かい支援も大きなものでした。

 想定外の盛り上がりで、多くの食べ物は午前中で売り切れという状況でした。参加者は2,000~3,000人を想定していましたが、1万人という桁外れのものでした。日ごろから、図書館や食堂を市民の方々に公開し利用してもらっていたこともプラスに働いたと思いますが、何より市民の方々に興味をもたれ、愛されているキャンパスたということがわかり、うれしかったです。

 学生さんたちの展示物も、沢山の子供さん達に受けていました。本当に忙しいが楽しい学園祭でした。実行委員の学生さんをはじめ参加された学生さん達、授業の時とは違う面も垣間見ることができ、伸びしろの多い若い力を再認識しました。本当にご苦労様でした。

このアンケート調査結果は、決してやらせではありません。先日、逆風に耐えて来てもらう90人近い教員にアンケートを取りました。4月の開学以降動いていかなくてはいけない大学の委員会は色々あります。どれに興味をお持ちか主体的に参加してもらえるか?というアンケート調査の結果です。このほかにも、まだ細かい委員会はあるが、大きくこのような委員会が4月から動いていかないといけません。

 アンケート結果で注目されるのは、本当にアンケートをまとめてびっくりしたんですが、「地域貢献・連携」が25人ですから、90人なので1/4強です。4人に1人以上の教員はこの委員会に参加したいと言う意見を述べてくれています。次の世代の教員たちが、グローバル対応とともに、大学は地域コミュニティーの拠点(COC, Center for Community)となるべきであるという意識が非常に強いということを感じた次第です。

 以上述べたように、本学部の理念は「動物とヒトの健康を科学する」です。そのための目的は、One World, One Health, One Medicine」の実行です。そして、目標として「獣医学教育モデルコアカリキュラムを軸にアドバンスト科目群を配置し、3分野に特化した専門獣医師を養成する」を設定しました。

 これからは、半世紀ぶりにできた獣医学部として、国際レベルの教育・研究をすすめ、文部科学省の「獣医学教育改善充実に関する協力者会議」でデザインしたモデル・コカ・カリキュラムとアドバンスト科目からなる教育を実践し(そのために、90人近い先生方に集まってもらいました。)、社会に貢献できる専門獣医師と、日本で最初に取り組んだ獣医関連専門家(VPP)の養成を進めて行きたいと思います。

 頑張りましょう!ご清聴ありがとうございました。

妻と作った人形。

娘の修学旅行の写真をもとにしました。

妻と作った人形。

娘の修学旅行の写真をもとにしました。

オリジナルの写真です

 

娘のドイツ時代のカーニバルの写真です。大家さんは子ネズミちゃん「モイスヒェン」といっていました。

下の人形は妻の作品です。

先日、妻の作品が創刊700号記念家庭画報大賞の佳作に入りました。

題「何して遊ぼう」です。

 

妻が、稽古に通い、粘土で作った作品です。昨年、東京フォーラムで、他の生徒さんと一緒に展示されました、「仙人草」

(水やり不要です)。