狂犬病の話をしようと思い、スライドを探してたら、千葉科学大学の時に、愛護センターの紹介時に使ったものがありました。割合まとまっているので、岡山理科大学の獣医法規で講義した狂犬病予防法の内容とともにアップしました。

 ①千葉県の愛護センターを見学するにあたって、社会見学マナーの授業や、愛護センターの役割に関する紹介の授業があります。キャリアー教育の導入編のようなものです。ここでは、愛護センターの業務の一つである、狂犬病をコントロールする役割について説明してあります。人類が長い間、狂犬病に悩んできた理由は?狂犬病ウイルスの特徴は?なぜコントロールが難しいのか?危機管理から見た狂犬病と愛護センターの役割は?など、新しい情報も入れて、できるだけわかりやすく示してあります。②後半は、今治キャンパスで獣医保健看護学科の学生に講義した獣医事法規の中から狂犬病予防法に関するもの、及び講義に関連したQAです。

 

 動物愛護センターは、保健所から独立して業務を開始したものがほとんどです。そのため、厚労省に関連した業務が主体を占めます。従来から行ってきた公衆衛生分野の仕事としては、狂犬病予防法に基づく犬の危害防止条例などです。野犬の収容、咬傷犬の検診、犬の譲渡・処分などがあります。また感染症法では、動物由来感染症の対策検討会、予防指導、疫学調査などがあります。総務省から環境省に所管が移った「動物の愛護と管理に関する法律」では、動物の適正飼養、愛犬教室、動物教室、ふれあい広場など市民目線での活動、及び訓練犬の育成、譲渡なども行っているところがあります。動物取扱業者の指導、登録、監視、研修(感染症法ともダブります)、特定動物飼養者の許可、監視(生物多様性条約も関係します)なども行っています。獣医事に関連する法規に関しては、このホームページの「獣医法規」に載せてあります。

 

 まず、動物危機管理から見た狂犬病の特徴をまとめてみましょう。

1、リスク管理としては、狂犬病のリスク評価と管理があります。具体的には予防措置として侵入防止策(輸入検疫、検査)、野犬捕獲、飼育犬登録、予防接種、野生動物調査、教育・啓蒙などです。

2、クライシス管理(発生時の対応)は、これまで飼育犬等で狂犬病が発見された時の現場での管理措置が具体的に示されていなかったので、追補版として新しいガイドラインが作成されました。司令塔、組織、それぞれの役割、サーベイランス、疫学調査などが加わりました。また、台湾の野生動物(イタチアナグマ)での、狂犬病の数十年にわたる維持が明らかになったため、野生動物で狂犬病が見つかったときのためのガイドライン作成が進められています。これらを含めて、リスクシナリオ作成(オペレーションプラン、人的・物的資源調査、予算化)、検査、感染動物処分、蔓延防止策、暴露後ワクチン投与、クライシス時のリスクコミュニケーション方法など

3、レジリアンス管理(resilience)、再発防止策の検討、作成、実施が必要です。その際には、他国での狂犬病症例の解析、比較、これまでのシステムの再検討とPDCAも必要です。

 

 最初に、古代から人々を悩ませ続ける狂犬病について、その長い歴史を世界、及び日本について、振り返ってみましょう。狂犬病の法的な罰則は、紀元前約2,000年(今から約4000年前)のエシュヌンナ法典に記載されていますから、記録に残っている点からみても、人類は狂犬病とは4,000年近く付き合っているということになります。

 

 まず、狂犬病の名前の由来から始めましょう。狂犬病のウイルスはなぜラブドウイルス科リッサウイルス属レィビィスウイルスと呼ばれるのでしょうか?それぞれに意味があります。

 ラブドは電子顕微鏡で見たとき、ウイルスの形が棒状(ギリシャ語のラブド:棒)であるためです。リッサは、ギリシャ神話に登場する狂気の女神です。猟師アクタイオン(王子ともいわれている)が、処女神のアルテミスの水浴を見たためシカに変えられ、気の狂った猟犬に食べられます。このとき、猟犬を狂わせた女神がリッサです。狂気の女神リッサはアルテミス(ダイアナ、ルナ:月の女神)の要請で猟犬を狂わせたました。

 またレィビィスはサンスクリット語の凶暴な(ラーバース)に由来しています。狂犬病を発症した肉食動物が狂暴化し、なんにでもかみつく様子から来たものでしょう。

 

 古典絵画でダイアナ(ルナ、アルテミス)を見分ける、その人物像のマークは、額のヘアバンドに三日月がついていること、あるいは弓矢を持ち狩りをしていることです。でも、水浴のシーンは、その逸話が劇的で画家の興味をそそっています。有名が画家たちが魅力的な作品を残しています。

 

  狂犬病の歴史は古く、エシュヌンナ法典やハムラビ法典にも書かれています。4000年にもわたり、人類を悩ましてきている動物由来感染症です。今でも、世界では、毎年約5万人くらいのヒトが狂犬病で死んでいます。日本では700年代の養老律令に「たぶれいぬ(狂犬)」の記述があります。以下に狂犬病の記録をたどってみましょう。

1.紀元前1930年頃のエシュヌンナ(Eshnunna)法典「狂犬病の症状を示した犬の所有者は咬傷の予防対策を取る必要がある狂犬病犬にかまれ死亡した場合は、所有者に罰金が科される」

2 古代バビロニアハムラビ (在位17291686B.C.) により発布されたハムラビ法典にも、狂犬病が記載され、 古くから知られていた。

3 紀元前4世紀にギリシャの アリストテレス、 本病は咬傷によって動物人に感染すること記載。

4. AD50年、 ケルススCelsus は人の狂犬病について恐水病と命名。咬傷部の焼灼を提唱し、処置を施さなければ恐水病を発症し、危険に陥ることを警告

5. ディオスコリデスDiosoridesAD40-90)は発症予防として咬傷部摘除を勧めた

紀元2世紀に Galenus AD129 -200)、 咬傷部を切除すべきと記載

.その後、オロスマリア、発病は一定せず40日後あるいは半年、1年後にも発症することがあり、 発症例は救助の方法がないことを明らかにした。

・臨床症状はこの時代に、今日と大差ないところまで明らかにされていました。

 

古代のエシュヌンナ法典には狂犬病を感染させた飼い主には、以下の罰則が決められていました。①もし犬が狂っており、②その所有者が犬を拘束しておかないで、③犬が人を噛み、死なせてしまった場合。権威者が犬の所有者にその事実を伝えたとき、犬の所有者は、④銀40 シケル(shekels を支払う、⑤被害者が奴隷の場合、銀15 shekels を支払わなければならない。

1 shekel は銀1/3オンス、あるいは3ペニーの銀重量に相当)

    28.3 g/3=9.4g       453g/240 x35.7g

 

 日本の狂犬病に関する記録は、最も古いものは、養老元(717) 発布された 養老律令 で、 其(そ)れ狂犬(たぶれいぬ)有、所在、殺すことを聴(ゆる)せ いう狂犬を殺処分する規定があります。 これは、直接、狂犬病の発生を記載しているはありませんが 狂犬病が発生していたのではないかと思われる法律です。

 また、永(984) 撰述された 心方(いしんぼう) には、風犬の記載があります。しかし、この書物は、唐の書物を原本に著わされたものであり、 日本での狂犬病発生の有無について明らかにされてはいません

 他方、元禄5(1692) の綱吉による 生類憐みの令 狂犬つなぎをかざる所は、曲事(くせごと)たるべしいう狂犬の繋留義務に関する規定があることから、 狂犬病発生に関する記述はないが、その当時に小流行があったのではないかと推測されています 。ちなみに、曲事とは、「法に違反すること。また、それを処罰すると」の意味です。

 記録として残っている狂犬病の流行は、徳川吉宗(在職1716~1745年)の治世、享保17年(1732年)です。長崎から侵入し、江戸まで広がりました。本草学者であり、日本の蘭学の先駆者である野呂元丈(のろげんじょう:1692~1761)は、『狂犬咬傷治方』で「咬まれた傷は軽くとも、後で再び病が重くなって十中の八、九は死ぬから、瘡口は早く血を吸い出して灸をすえるがよい」と記載しています。

 また、徳川家治(在職1760~1786年)の治世に、「急病に罹った時、医師を請う時間もなく、また遠方で医師がいない土地もある。ましてや病気の治療方法も知らずに命を落とすことも多いという。そのような時に救急の方法を記した書物があれば、広く世に報いることができる。」として、家治の要請で多紀元簡たき もとやす)により編纂された『官準:広恵済急方』(1789年出版)には、「常犬に咬たるは(つねのいぬにかまれたるは)」と、「やまひ狗に噛たるは(やまひいぬにかまれたるは)」のように、健丈な犬に咬まれた場合と病い狗(狂犬病のイヌ?)に噛まれた場合を別の項目で扱って、その治療法が述べられています。

 

 このように、狂犬病は人類の文化史とほぼ同じくらいの歴史を持っていますが、今でも世界中に分布しています。病原体も明らかになり、有効なワクチンも開発されているのに、4000年以上も狂犬病を撲滅できない理由は、この病原体(狂犬病ウイルス)が野生動物の間で維持されているためです。

農水省が20121狂犬病フリーとしている指定地域は、日本以外にアイスランド、台湾、グアム、ハワイ、フィジー島、オーストラリア、ニュージーランドのみ

です。(台湾は、後述するように、イタチアナグマに狂犬病があり、フリーの国から除かれました)。

 

 それでは、狂犬病ウイルス(前に述べたように、ラブドウイルス科、1本鎖のマイナス鎖のRNAウイルスに属します)と、このウイルスが起こす狂犬病(恐水病、恐水症、hydrophobia、https://www.youtube.com/watch?v=OtiytblJzQcといわれます)の特徴について考えてみましょう。狂犬病のウイルスは、他のウイルスとはかなり異なった感染経路で侵入し、その増殖様式や体内分布も独特のものがあります。

 

 狂犬病ウイルスは、鉄砲玉(砲弾)のような形をしています。細胞からもらってくる脂質2重膜の外殻(エンベロープ)を持ち、そこには、神経細胞の受容体(ニコチン性アセチルコリン受容体)に結合することでできる糖蛋白質(GP)を埋めこんでいます。外殻の内側には骨格となるマトリックス蛋白質(M)があり、さらに、ウイルスゲノムとリボ核蛋白群(核蛋白質のNP、RNA複製酵素のL、P蛋白質)が入っています。ゲノムは3’端から5’端に向けて、NP,P,M,G,Lの順で遺伝子が並んでいます。ゲノムの大きさは1,2000塩基で、NP蛋白は1,424塩基、P蛋白は991塩基、M蛋白は805塩基、G蛋白は1,675塩基、L蛋白は6,475塩基でコードされています。

 

 狂犬病ウイルスは、狂犬病に罹った犬などの唾液中に含まれており、咬傷部位から神経終末のニコチン性アセチルコリン受容体に結合し、神経系に侵入します。抹消神経を上行して中枢神経に向かいます。脳に到達したウイルスは神経細胞で増殖し、今度は、遠心性に抹消神経に向かいます。

 神経細胞で増殖しているウイルスは、ネグリ小体という細胞質内の封入体を形成します。ネグリ小体はイタリアの病理学者Adelchi Negri(1876-1912)によ発見されました狂犬病に罹患したヒトや動物の神経細胞に形成される細胞質内封入体(intracytoplasmic inclusion body)です。概ね円形で、直径は2-10 μmの大きさです。ネグリ小体は顕微鏡で見られます。電子顕微鏡でみると、ウイルスの構成成分であるヌクレオカプシド(ゲノムRNAと核蛋白質群の複合体)の集合から成り、ネグり小体の周辺からウイルス粒子の出芽(budding)像が見られます。ネグリ小体の好発部位は動物種により異なります。ヒトとイヌでは海馬(アンモン角)の錐体細胞に多くみられますが、ウシでは小脳のプルキンエ細胞に多くみられます。

 

 狂犬病ウイルスは通常のウイルスとは異なった性質を持っています。発症したイヌなどにかまれると、唾液中の狂犬病ウイルスが咬傷部位の神経終末から神経系に侵入します。咬まれてすぐに神経終末に入るのではなく、ヒトでは平均1か月近くの潜伏期があります。長い場合には数年間も潜伏します。どこにどのように潜伏しているのかは明らかにはされていません。

 ニコチン性アセチルコリン受容体を通じて神経終末に入ったウイルスは、神経軸索流(逆流)に載って末梢から、中枢へと運ばれて行きます。このとき、ウイルスは血流には入らないので抗体はできません。中枢神経の神経細胞で増えるとネグリ小体という封入体を作ります。人では神経症状のほかに「恐水病」(ハイドロフォービア)の症状を起こします。

人、犬ともに多くは狂騒型ですが、沈鬱型もあります。症状の経過は以下のようです。

 初期発熱、頭痛、嘔吐などの症状。

 次いで筋肉の緊張痙攣幻覚など。

 ③その後昏睡状態に陥り、呼吸麻痺を起こして死に至る(発症後10日前後で死亡)。狂犬病は「恐水病」などとも呼ばれます、これは神経が過度に過敏になる結果、患者水を飲もうとすると、水の刺激で反射的に強い痙攣が起こり、水が飲めなくなるため、患者が水を飲むことを恐れることによるものです。また、こうした症状は、光や風などの刺激でも起こります。患者さんの意識自体は明瞭なため、症状対する強い恐怖を伴う悲惨な神経疾患です。

 

 狂犬病の特徴をまとめてみると、すべての陸生の哺乳が感受性を持っているという非常に広い宿主域を持っています。当然、人獣共通ウイルス感染症に入ります。

 ウイルスは、咬傷部位から、神経系に入り、神経系を上行し中枢神経に達しますが、ウイルス血症を起こさないので、抗体は産生されません。神経症状が出てしまった後では、有効な治療法はないので、発症した犬などに咬まれた場合は、暴露後ワクチンを投与します。

 コウモリ(翼手目)や肉食類がウイルスを伝播します。リッサウイルス群の宿主と考えられるコウモリでの狂犬病ウイルスの振る舞いは不明です。長期間、発症しないでウイルスを保有している可能性があります。

 狂犬病ウイルスは、神経細胞で増殖し、神経系を下行し、発症したイヌなどの唾液中に排出されます。

 ヒトでは、神経過敏で水が飲めない(恐水病)、知覚過敏、狂騒状態となる(狂騒型)、あるいは、沈鬱型があります。狂騒状態の肉食動物(イヌ、キツネ、アライグマなど)は

動くものに咬みつき、ウイルスを伝播します。

 

 下のスライドは、典型的なヒトとイヌの沈鬱型と狂騒型の症例です。イヌでは狂犬病の70~80%のケースは狂騒型と言われています。ヒトでは麻痺型が30%と言われています。(スライドはフィリピンの熱帯病研究所の提供です)。筆者がエボラレストンウイルスの自然宿主を探してフィリピンで共同研究をしていた頃、この研究所の前には、毎日数十人が暴露後ワクチンを打ってもらうために並んでいましたし、研究室の横の小部屋では、イヌに脳のウイルス検査をしていました。

 

 古くからある狂犬病ですが、この病気に対する本格的、科学的な人類の戦いが始まったのは、わずか百数十年前です。ロベルト・コッホにより感染症の病原体が細菌という目に見えない病原微生物であることが分かった(1876年)時代です。パスツールが狂犬病のワクチンを開発した(1885年)のは、まだ狂犬病がウイルスによる感染症であることはわかっていない(ウイルスの存在さえ知られていない、ウイルスの分離は1892年にタバコモザイクウイルス、1898年に口蹄疫ウイルスが分離されました)時で、免疫も抗体もわかっていない時代です。血液中の抗体(抗毒素)で毒素が中和されることが分かったのは、1889年~1990年の破傷風とジフテリアです。

 

 ワクチンは1796年に、ジェンナーが牛痘を天然痘のワクチンとして使用した時が始めです。もちろんこの時代は、天然痘がウイルスによるものだとは知られていません。経験的に乳しぼりの女たちが天然痘に罹らないという伝承を科学的に検証した結果です。

 約100年後(1876年)に、ロベルト・コッホがコッホの3原則(ヘンレの3原則に1原則加えた4原則)を炭疽菌で証明し、炭疽が炭疽菌により起こる病気であることを証明しました。ついで、天才的な科学者であるルイ・パスツールが、人工的にワクチンを作成することを考案し、家禽コレラ、炭疽、狂犬病のワクチンを開発しました。パスツールが狂犬病ワクチンを作ったのは1885年で、病原体としてのウイルスが発見される10年以上も前です。

 ワクチンが免疫(抗体等)による抵抗性の付与であることは、エミール・べーリングと北里柴三郎がジフテリアの抗毒素血清の実験に成功したことにより、少しっずつ明らかになってきました。北里柴三郎は、ジフテリアの前に破傷風菌の培養系で、既に抗毒素血清の有効性をみていました。今なら、第1回のノーベル生理学・医学賞(1901年)は、ベーリングと北里の2人が共同受賞したでしょう。また、パスツールが20世紀まで生きていれば、まず最初にノーベル章を受章したことでしょう。Louis Pasteur, 1822年12月27日 - 1895年9月28日。

 

 発症すれば、ほぼ100%死亡する狂犬病に挑んだ科学者が19世紀、フランスのルイ・パスツールです。彼は、家禽コレラワクチンの成功例から、人工的に病原体を弱らせた弱毒生ワクチンという戦略を立てました。病原体を不活化してワクチンに使うことを考えず、生ワクチン、それもウイルスという存在を知らずに、宿主を変えることでウイルスが弱毒化する可能性を考えるという思考は、パスルール以前にはなかったと思います。

 パスツールは狂犬病ウイルスをウサギの脳に順化した弱毒(したうえで、デシケータで不活化あるいは力価を落としたウイルス?)を使って狂犬にかまれた後のワクチン(曝露後ワクチン)を試み、成功しました。人工的な弱毒生ワクチンの開発、及び病原体への暴露後のワクチン投与という発想は、驚くべきものでした。

 パスツールはこの時、家禽コレラワクチン(1879年)、炭疽ワクチン(1881年)、狂犬病ワクチン(1885年)と立て続けに、誰も考えなかった実験室で開発したワクチンを作りました。現在では、狂犬病ウイルスワクチンは、細胞培養によるワクチンが使われています。

 

 

 パスツールの発想は、①病原体は症状から脳や脊髄にいると考え。②狂犬病で死んだイヌの脊髄を取り出し、ウサギの脳に接種しました。2週間後にウサギは発症し、死亡しました。③そのウサギの脊髄を取り出し別のウサギの脳に接種すると、ウサギは発症・死亡します。これを21繰り返しました(ウサギ順化)。④同じ動物に継代するとウイルス病原性高まります。ウサギでは発症までに1週間程度まで短縮しました。パスツールはこの重要な事実を確認しました。⑤ウサギに順化したウイルスは、ウサギに対する病原性高まるのに、別の動物に対しては弱くなる(弱毒化)。この方法は、その後種々のウイルスで行われました。今でもウイルスの弱毒化に利用されています。これは重要な発見でした。⑥ウサギで継代した病原体はヒトには弱いことになります。

 最初に狂犬病ワクチンを受けたのはジョセフ・メイステルという少年です。狂犬病に感染した野犬に襲われて負傷したメイステル少年は、当時完成したばかりの狂犬病ワクチンを頼りにパスツールを訪ねました。人間へ の有効性がまだ確認されていなかったことから、パスツールは接種を 躊躇しましたが、責任問題を恐れず最終的に接種し、メイステル少年は11日間の暴露後ワクチン治療に耐え一命を取りとめました。メイステは、その恩に報いるため、成長した後パスツール研究所の門衛 として一生をささげました。

 また、モンパルナスにあるパスツール研究所の入り口には、仲間の少年5人を助けるため、狂犬に立ち向かい負傷 し、ワクチン治療で一命を取り止めたジュピエ 少年が狂犬と戦うシーンをモチーフにした像が建っています。

 

 パスツールのワクチンは脊髄を、他のワクチンは脳の成分を含んでいました。免疫系は胎児期に出会った自己の抗原には反応しませんが、その時出会わなかった抗原は異物と認識します。脳や脊髄の白質(ミエリン鞘)の蛋白質(MBP:塩基性ミエリン蛋白)は、胎児期の後期から新生児期に発現するので、自己抗原ですが、胎生期の途中で完成してしまう免疫系は異物として反応します。脳や脊髄でウイルスを増やして不活化したワクチンでは、時に副作用としてアレルギー性脳炎を起こすことがありました。近年、先進国では非神経系の細胞で培養したウイルスを用いることにより、この問題を解決しました。

 前述したように、海外では狂犬病が存在します。日本の安全常識は通用しません。狂犬病流行地(アジア、東欧、アフリカ、南北米)に行く場合には、ワクチン接種が望ましいです。しかし、予防用の狂犬病ワクチン接種は、任意接種であり自己負担となります狂犬病ワクチンはLEP-Flury株をさらに弱毒化したHEP-Flury株が用いられています

Low Egg Passage (LEP), High Egg Passage (HEP))

予防接種は初回接種を0日とすると0日、28日、1803回接種が普通です。抗体が陽転するのは2回接種後の2週後であるため初回接種から6週目となります

 

 この項目の最後に、暴露後ワクチンについて述べておきます。

通常、ワクチンはウイルス感染防御や発症防御の目的で、感染する前に打つものです。狂犬病ワクチンも、予防ワクチンとしてウイルスに暴露される前に接種します。

 しかし、狂犬病の場合は、発症した動物に咬まれた後、ウイルスは咬傷部位から血流にのらず、神経系に侵入し、神経軸索を上行性に(逆流して)、脳に到達します。そのため、通常1~3ヶ月後に発症します(発症後は10日前後で~100%死亡)。ウイルスが抹消神経から侵入し、中枢神経で増殖する前に免疫を賦与すれば発症しないで済みます(ウイルスに暴露された後でもワクチンが有効です:暴露後ワクチン)。

 暴露後ワクチンの接種スケジュールは接種した当日を0日として、0日,3日,7日,14日,30日(場合によっては90)です。また、抗狂犬病γグロブリンがあれば投与する(受動免疫)こともあります。

 

 ここからは、狂犬病の流行疫学について説明します。狂犬病の統御が何故難しいのか?その点について説明します。

 

 世界中の狂犬病による死亡者は、毎年3万人~5万人と言われています。

 アジア・アフリカが多く、世界の狂犬病死亡者の90%以上を占めています。2006年のデータでは、特にインド(19,000人)、中国(3,200人)、パキスタン(2,490人)、バングラディッシュ(2,000人)、ミヤンマー(1,100人)などが多い国々です。アジア、アフリカでは、狂犬病に罹ったイヌからの感染が多くを占めています。スライドは2007年発表のものですが、最近の世界保健機関(WHO)の統計では、狂犬病の死亡者数は著しく減少しているという報告がされています。

 2015年の現状報告では、WHOの地域事務所からの報告では、中国が854人、フィリピンが236人、ベトナムが67人です。他方、会議や協議会で公表された国のデータ(2015年)では、バングラディッシュ96人、インド20,000人、アフガニスタン104人となっています。国際獣疫事務局(OIEのWAHISでは)の集計では、インドネシア119人、ミヤンマー126人、スリランカ27人、中国1,361人、フィリピン199人、ベトナム66人、エジプト52人、コンゴ22人、モザンビーク40人となっています。

 また、2015年12月には、WHOとOIEにより、国際連合食料農業機関(FAO)と狂犬病制御世界同盟(GARC:Global Alliance for Rabies Control)と共同で、2030年までに狂犬病による死亡者ゼロに到達させる世界的な枠組みが立てられました。

 

 狂犬病による死亡者数に関しては興味深い世界地図がありました。スライドは、その引用ですが、上段は、世界地図を人口で補正したものです。アジア諸国の人口密度が非常に高いことが分かります。特にインドや日本が高く、南北米大陸、アフリカがやや低く、カナダ、オーストラリアが非常に低いことが分かります。

 1995年から2004年の10年間の狂犬病死亡者数で補正してみると、インド、中国、フィリピン、東南アジアの国々の死亡者数が非常に多いことが分かります。

 

 狂犬病のコントロールが難しいのは、ウイルスを保有する動物の多くが野生動物(キツネ、スカンク、アライグマ、コウモリ、コヨーテ、マングース・・・)のためです。

 近年では、米国のアライグマでの狂犬病が問題になりました。米国南部のフロリダから北に向けて狂犬病ウイルスの汚染がひろがりました。おそらく、アライグマが高速道路や道路の物質輸送の経路をたどって北上したためと推測されました。また、散発的ですが、コウモリからの感染が報告されており、南米ではコウモリが多様な株の狂犬病ウイルスを保有している報告があります。欧州ではキツネが主要な狂犬病の保有動物とされています。台湾では中高地に生息するイタチアナグマが長い間にわたり、狂犬病ウイルスを保持していたことが報告されました。

 狂犬病の流行は、大きく分けて「都市型の流行」と「森林型の流行」の二つのタイプがあります。アジアなどに広く見られる「都市型の流行」では,野犬や飼い犬が主な感染動物で、ヒトへの感染例が多く発生します。WHOやOIEに報告される多くの例はこのケースです。他方,欧米に見られる「森林型の流行」では,主な感染源は肉食類のキツネやアライグマなどの野生動物ですが,散発的な流行源としてはコウモリもあります。

 ヨーロッパやオーストラリアなどで報告されるコウモリリッサウイルス感染症は、狂犬病ウイルスと非常に近縁なコウモリリッサウイルスによる感染症です。

 

 狂犬病予防法の見直しが1999年と2004年にありました。その際、輸入動物の法定検疫制度も見直しました(1999年)。その時に参考にしたのがスライドのデータです。少し古いデータですが、ヒトに狂犬病ウイルスを伝播する動物としては、圧倒的にイヌの頻度が高い(全体の20~40%)。次いでキツネ(ほぼ16%)、アライグマ(ほぼ10%)、ネコとスカンク(それぞれ5~6%)といった順です。コウモリも多いですが、コウモリは狂犬病以外にも危険な病原体の宿主なので、感染症法で輸入禁止となりました。

 それまでのイヌの検疫に加えて2000年からネコ、キツネ、スカンク、アライグマが検疫対象となりました。

 

 狂犬病ウイルスは、リッサウイルス属に含まれます。血清型1が狂犬病ウイルスです。リッサウイルスには、ほかに血清型2(ラゴスコウモリウイルス)、3型(モコラウイルス)、4型(デュバンハーゲウイルス)、5型(ヨーロッパコウモリ・リッサウイルス1,2とオーストラリアコウモリ・リッサウイルス)があります。遺伝子型では、11の型があります。狂犬病ウイルスは、こうした多くのコウモリリッサウイルスの中で、食肉類を通して世界中に広がった特別の型といえます。

 他のコウモリリッサウイルスも狂犬病ウイルスと類似した病原性を持っています。しかし、ヒトへの感染は極めてまれです。3型のモコラウイルスの宿主がアフリカトガリネズミであるのを除くと、他のリッサウイルスは、いずれもコウモリが宿主です。

 アジアでは、タイとフィリピンでリッサウイルスに抗体を持つコウモリが報告されました。また、最近の情報では、アジアでも新しいコウモリリッサウイルスが分離されています。遺伝子型も16種類になっています。台湾では2016、2017年にアブラコウモリからリッサウイルスが分離され、2018年には、新しいコウモリリッサウイルスが分離されたという報告が出ています。

 

 狂犬病の統御に関しては、イヌだけでなく、野生動物用の遺伝子組み換えワクチンも開発されています。日本の対策の骨子は飼い犬の登録、予防接種、野犬捕獲、輸入検疫です。

愛護センターは野犬の収容、動物由来感染症の教育・啓蒙、動物の適正飼育、動物業者の指導、監視等、狂犬病統御に関連する多くの仕事をしています。我が国は、この体制で半世紀以上も狂犬病フリーという世界でもまれな国です。

 国際的に野生動物へのワクチン投与が試みられています。①弱毒生ワクチンを、餌に混ぜて食べさせる方法(経口投与)は、スイスのフランツ・ステック博士が開発しました。狂犬病ウイルスのマウス順化株SADを細胞培養し、弱毒SAD Bern を作成しました。これを餌(鶏の頭)いれ散布する方法を考案したものです。1978からこの方法が実際に応用され、スイス・アルプス地方犬病の狐の数は激減しました。

その後、ワクチニアウイルスベクターに狂犬病ウイルスのG蛋白(エンベロープ糖タンパク)遺伝子を組み込んだ組換えワクチンを餌(ベイト)に入れて散布する方法が普及しました。南米や東欧での狂犬病ウイルス統御に使用されました。

 

 

 ここからは、わが国で実施されている狂犬病対策について説明します。世界でも珍しく、半世紀以上も狂犬病の発生がないので、本対策(ワクチン投与の義務化など)を評価し持続させるべきであるという意見と、狂犬病アウトブレイクのリスクから見て、ワクチン投与は必要ないのではないかという意見があります。

 

 明治30年(1897年)から昭和10年(1935)にかけて、狂犬病は全国的に流行しました。スライドに示すように、日本での狂犬病の流行ピークは1921年(大正10年)~1930年(昭和5年)です。この間、1923年(大正12年)には、関東大震災が起き、国内の衛生管理は打撃を受け、各種感染症が蔓延しました。その後、1936年(昭和11年)には、一部の地域を除き、ほぼ狂犬病を制圧できました。しかし、第2次大戦末期から、終戦後にかけて再び、国内の公衆衛生状態は悪化し、狂犬病の流行も再発しています。1941年(昭和16年)~1950年(昭和25 年)。狂犬病予防法が議員立法で単独法として成立し(昭和25年)、1956年(昭和31年)の神奈川県の6頭の犬の発症(1957年のネコ陽性例)を最後に、国内における狂犬病の流行はおわりました。

 

 狂犬病予防法に基づく、日本の対策は平常時(リスク管理)とアウトブレイク時(クライシス管理)に分かれています。通常は、①飼育犬の登録義務、②飼育犬へのワクチン接種、③野犬の捕獲処理、④輸入動物の検疫です。発生時の対応は、狂犬病予防員を中心とする蔓延防止ですが、現実的な対応処置については、後述するように、ガイドライン(2013年、追補版)が示されました。感染犬の検査、診断、処置、疫学調査、封じ込め対策などが書かれています。

 

 2013年に追補されたガイドラインの概要は、以下の内容です。

適切な対策を講ずるための疫学調査として、I.狂犬病と確定診断された犬への感染源に関する調査II.狂犬病発症犬等との接触犬および接触者の調査III.対策を講ずる地域の区分設定などについて具体的に書かれています。

②次いで、調査結果にもとづく狂犬病発生の拡大防止(蔓延防止)のための措置として、 IV.狂犬病発症犬等との接触者への対応V.狂犬病発症犬等との接触犬への対応VI.対策を講ずる地域における対応が具体的に提示されています。

③最後に、清浄化に向けての調査および措置(レジリアンス対応)として、 VII.清浄化までの対応、から構成されています。

 

 

 日本の狂犬病に対する法令対応は、歴史的な経緯もあり現状でもかなり複雑です。動物から見た狂犬病関連法について整理してみました。

 最初に、狂犬病は「家畜伝染病予防法(旧法)」に組み込まれていたこともあり、「家畜の狂犬病」は農水省の管轄です。また、動物の輸出入も農水省の所管なので、「犬、ネコ、キツネ、スカンク、アライグマ」の法定検疫は農水省の所管です。

 狂犬病予防法が単独で議員立法により法制化されたので、平常時の犬、野犬の管理は、厚労省が所管しています。イヌの飼育者の義務(登録、ワクチン接種など)、狂犬病予防員の役割、都道府県知事の役割等についても書かれています。さらに追補のガイドラインには野生動物の狂犬病についても記載されているので、狂犬病に関しては野生動物の場合は厚労省の所管(環境省も関連する?)となると思います。展示動物も狂犬病予防員の対象動物が犬等となっているので、狂犬病発生時に獣医師あるいは飼育者からの届け出があれば、狂犬病予防員が対応し、厚労省の管轄に入るものと思います。

 ヒトについては、感染症法の4類に入っているので、医師の届け出義務となります。原因動物の調査、対物処置、消毒等についても書かれていますが、これらの対応は、狂犬病予防法に基づいてなされると思います。

 

狂犬病予防員と狂犬病予防技術員

狂犬病予防法(適用範囲)312:都道府県知事は、当該都道府県の職員で獣医師であるもののうちから狂犬病予防員(以下「予防員」という。)を任命しなければならない。第2項、予防員は、その事務に従事するときは、その身分を示す証票を携帯し、関係人の求めにより、これを提示しなければならない。

狂犬病予防法(抑留)62予防員は、前項の抑留を行うため、あらかじめ、都道府県知事が指定した捕獲人を使用して、その犬を捕獲することができる。

狂犬病予防法施行規則(狂犬病予防技術員)第14条:法第6条第2の捕獲人を「狂犬病予防技術員」と称し、同条第6項において準用する法第3条第2項の規定によるその身分を示す証票は、別記様式第6(略)による。

 

狂犬病が日本で発生した場合の対応に関するガイドラインは

2013年に追補版として厚労省から出されました。

インターネットで「狂犬病ガイドライン、2013、厚労省」で

検索すれば、PDFが出ます。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou18/pdf/guideline2013.pdf

 

世界の国々は狂犬病対策をとっていますがなかなか狂犬病フリーにできません。

また、フリーの国でも、再び狂犬病に侵入されます。

最近では、フランス、バリ島や今年、52年ぶりに台湾で狂犬病が発生しました。

こうした事例から学び、危機管理体制を確立することが重要です。

 

 

 おまけです:2018年、2019年春②学期、岡山理科大学獣医学部の獣医保健看護学科の1年生に「獣医関連法規」第5回で狂犬病予防法の講義をした時のデータと、学生さんたちの質問と回答を載せておきます。

 

狂犬病:狂犬病の起源が知りたいです。狂犬病の始まりはどこからですか?おそらくコウモリに リッサウイルスが入った頃でしょう。コウモリの分岐とウイルスの発生が同じころなら7千万年~5千万年くらい前になるかも?歴史的にはエシュヌンナ法典やハムラビ法典に狂犬病で人が死んだ場 合の所有者への罰則規定が書かれているのが最も古いです。

狂犬病予防法は昭和25年8月、家畜伝染予防法は昭和26531日に改正されたそうですが、それより前から伝染病の予防をしていたと思うのですがその頃はどのように管理していたのでしょうか?家畜伝染病予防法の前身である「獣疫予防法」に狂犬病と犬を追加したのは、古く、明治29年(1896年)です。レフレルらが、初めて動物のウイルス(濾過性病原体)を口蹄疫で発見したのが1897ですから、本当に古いです。

 

明治41871)牛疫(シベリアで流行)の日本への侵入のリスクを米国領事マグガワンが本政府に警告。明治46月太政官布告。第276号で 「牛疫予防に関する件」公布。 
明治92月内務省、牛疫処分仮条例、3伝染牛疫予防法を公示。
患畜発見,届出,検診,移動制限,隔離,消毒,焼埋却,殺処分(今とほとんど変わらない)手当金,獣医技術者の動員などの予防措置を網羅

明治19年(1886915,農商務省令「獣類伝染 病予防規則」公布。対象:牛,馬,羊,豚。伝染病:牛疫に炭疸,鼻疸、皮疸,牛肺疫,口蹄疫,羊痘6種類追加。農商務次官名により獣医師が診療,届出など防疫の第一線に立つ責務を負う

明治22年(18895月、農商務省告示第18号「獣類伝染病予防心得」公布。家畜伝染病予防法の基礎となった。

明治291896)家畜防疫強化の必要性から、法律第60号「獣疫予防法」を公布。対象にを追加、疾病に気腫疸,豚コレラ,豚丹毒,狂犬病を追加。輸入検疫強化。

明治34年(1901)法律第35号により「畜牛結核予防法」制定,19037月施行。

大正11年(19224月法律第29家畜伝染病予防法」公布。対象に鶏,あひるを追加,羊を緬羊と山羊に区分。疾病に牛伝染性流産,馬・緬羊・山羊の疥癬,カナダ馬痘,家禽コレラを追加。以後、19271935に一部改正

昭和2319487月法律第188号で「家畜伝染病予防法」の大改正。多くの家畜・家禽疾病の追加と見直しを行い、その後一部改正を繰り返し、現在に至る。

 

スライドからわかるように、狂犬病は今でいうなら、明治6年に東京府の条令で出来た。

明治29年(1896年)の「獣疫予防法」で、狂犬病が法定伝染病となり、イヌが追加された。

明治30年、狂犬病発症イヌの撲殺。潜伏期中は係留、兆候発現時には撲殺。

「家畜伝染病予防法」(1922年)で野犬の捕獲・係留と処分が決められた。となります。

 

日本は約60年間、狂犬病が発症した事例がないのですが、昔は多くの野生動物が狂犬病を保有していたと思うのですが、それらをどうやって根絶したんですか?また、日本の野生動物は 狂犬病に感染していない確証はありますか?絶対的な確証は無理です。狂犬病予防法の成立後、法律に基づくリスク回避措置を続けた結果なくなったのが実情で、特に野生動物について狂犬病の撲滅を図ったことはありません。日本の野生動物での狂犬病の再生産率(R0)が1以下であったためと思います。

 

獣類伝染病予防規則が明治4年施行?それを前身として発展的に家畜伝染病予防法が昭和26年法律第166号。この法律で、と殺義務まで定めながら狂犬病も法定伝染病(犬除外)(届出伝染病には犬も含む)の一つに入れている。一方、ほとんど犬に特化しながらも猫牛等も適用した内容、しかし登録義務は犬だけの狂犬病予防法が昭和25年法律第247号。狂犬病予防法が家畜伝染病予防法に対する特別法なら法律年が逆であるべき?当時の背景で狂犬病予防の緊急性が高かったから?

家畜伝染病予防法は非常に古い歴史を持っています。狂犬病は家畜よりもヒトの病気として重要でしたが、当時、人の伝染病は人から人に来る感染症と定義されていたので、家畜伝染病に入れられていました。

その後、狂犬病の流行を考え、狂犬病の管轄を農水省(農商務省)から、ヒトの恐水症として厚労省(内務省)に移すかで激論がかわされ、最終的に内務省の管轄になりました(大正末からの議論で、閣議決定て内務省へ(昭和元年))。

第2次大戦末から戦後の狂犬病流行を受け、農水省と厚労省の対立を避け?議員立法で独自に狂犬病予防法ができました(昭和25年)。従って今でも狂犬病予防法の主管は厚労省です(そのため、家畜伝染病予防法の改正、昭和26年では、家畜を残し、イヌは除かれました)。その後改正された感染症法ではヒトの狂犬病が4類に入っています。感染症法の改正時と同時に進められた狂犬病予防法の改正では、輸入動物の検疫は農水省管轄(サル類の法定検疫も厚労省から農水省に委託)なので、狂犬病予防法対応で、輸入検疫動物を犬だけから、ネコ、キツネ、スカンク、アライグマに拡大しました。

 

獣医師会の記載には以下のよう書かれています(猫は家伝法の狂犬病には入りません)

 

大正11 (1922) 年制定の旧家畜傳染病豫防法と昭和26 (1951) 年改正の家畜伝染病予防法のなかでの狂犬病予防に関する事項について、旧法で犬の狂犬病予防に関する事務について、 法律上は家畜伝染病の中に含まれていても内務省で所管し、犬以外の家畜の狂犬病予防については農商務省で所管することになっていた。しかし、 狂犬病予防法が単独法として公布されたことにより、 犬の狂犬病については家畜伝染病の種類の中から除外され、改正家畜伝染病予防法の中では、 牛、 水牛、 馬、 めん羊、 山羊、 豚のみがその対象家畜とされた。

 

狂犬病が発生した時、獣医師は診断や検案、届け出提出、また予防員として働くとなっていますが、VPPにできることは何ですか?有能であれば、国家公務員となって狂犬病発生時の措置の司令塔として働く。あるいは地方自治体の首長のもので封じ込めの指令を出すことも可能と思います。感染症、病原体、疫学、法律、社会学などをこなす必要はあると思いますが。

 

狂犬病が発生した時の予防員の役割に「予防員は隔離について必要な指示をすることができる。」とありましたが、具体的な指示内容はどのようなものがありますか?感染した可能性のある犬を繋留あるいは抑留により隔離するように飼養者あるいは診療獣医師に指示します。その後、発症するまで監視し、発症した時点で殺処分し、確定診断します。ウイルスは神経系のみを移動して、血液中に出ないので抗体が上がりません。脳まで到達し発症した時点で、確定診断が可能になります。

 

繋留と抑留の違い:繋留(係留)は綱などでつなぎとめる行為です。抑留は捕獲した犬などを檻等に 入れ拘束する行為です。ちなみに、勾留は、逮捕された被疑者or 被告人を刑事施設に留置して拘束することで、逃亡や証拠隠蔽を防ぐために行います。拘留は既決の受刑者を刑事施設に拘置する刑罰です。

 

狂犬病予防法に記載されていることを守らなかった場合、飼い主等には罰則はありますか?また、ある場合はどのような罰則になりますか。登録を受けた犬の所有者は、犬が死亡したとき又は犬の所在地その他厚生労働省令で定める事項を変更したときは、30日以内に、厚生労働省令の定めるところにより、その犬の所在地(犬の所在地を変更したときにあつては、その犬の新所在地)を管轄する市町村長に届け出なければならない。」(狂犬病予防法44項)同条に違反した場合、20万円以下の罰金を定めています(同法27条)。予防接種の義務については、同法51項で「犬の所有者(所有者以外の者が管理する場合には、その者。以下同じ。)は、その犬について、厚生労働省令の定めるところにより、狂犬病の予防注射を毎年1回受けさせなければならない。」違反した場合は、同法27条で20万円以下の罰金刑が適用されます。罰則規定一覧がありました。第26条でどれも30万円以下の罰金です。27条は20万円、28条は科料または拘留です。

 

 狂犬病予防員の仕事は多岐にわたっています。狂犬病予防法に従って、都道府県知事は、当該都道府県の職員で獣医師であるもののうちから狂犬病予防員(予防員)を任命しなければならない(法第3条)。とあり、狂犬病予防員は獣医の業務の独占に対応しますそして、その職務は、

法第6条以降に書かれています。①未登録犬、予防注射非接種犬等を捕獲し、抑留すること、②犬を抑留したときは、所有者に引き取るべき旨を通知し、所有者不明犬は捕獲場所を管轄する市町村長に通知しなければならない。③市町村長は、通知を2日間公示する。④公示期間満了の後、1日以内に所有者がその犬を引き取らないときは、予防員は政令の定めるところにより、これを処分する、と書かれています。

他方、狂犬病が発生した時の予防員の役割? ①診断した獣医師又はその所有者は、直ちに、その犬等を隔離しなければならない。②予防員は隔離について必要な指示をすることができる。③隔離された犬等は予防員の許可を受けなければ殺してはならない(法第11条)。④犬等が死んだ場合には、その所有者は、死体を検査又は解剖のため予防員に引き渡さなければならない(法第12条)。⑤予防員は、病性鑑定のため必要があるときは、都道府県知事の許可を受けて、犬等の死体を解剖し、又は解剖のため狂犬病に罹った犬等を殺すことができる。⑥公衆衛生又は治安維持の職務にたずさわる公務員及び獣医師は、狂犬病予防のため、予防員から協力を求められたときは、これを拒んではならない、と書かれていいます。狂犬病発生時の狂犬病予防員は、検察官並みの権限と責任を持ちます。

 

昭和には犬だけではなく馬や羊、豚が狂犬病にかかっているが、今はどのように対策している のか(ワクチン以外で)コウモリなどの野生動物からの感染をどのように防いでいるのか。現在 の日本では、狂犬病は国内には存在しないという考えなので、動物の輸入検疫時に狂犬病に罹っていないことの証明書の添付と、家畜等では輸入時の生体観察で行っています。

 

オーストラリアやアイスランド等も狂犬病が発生していないが日本のような対策をとっているのか。どちらも日本のような毎年のワクチン接種はしていません。アイスランドは、ヨーロッパ大陸から隔絶した島国という特殊な地勢条件から特異な生態系が存在しています。アイスランドは、生態 系保護と狂犬病対策のために、2000年に国内全域で、野良猫根絶事業を行いました。そのような 理由からアイスランドでは、海外からの犬猫などの持ち込みは大変厳しく、無許可持ち込みの場合は、即時殺処分されます。オーストラリアも生態系の保護のため生きた野生動物の輸入には非常に厳しい体制をとっています(原則禁止)また、オーストラリアの狂犬病対策の中心は検疫です。オーストラリアではイヌの輸出国をリスクに応じて3 カテゴリーに分け,段階的な輸入条件を課しています。

 

マイクロチップ:犬の個体識別のマイクロチップの耐久年数はどれほどなのか:30年は持つようで す。マイクロチップの耐久年数は30年程度で、作動に電池は必要ありません。マイクロチップの 耐用年数に関しては、設計上は最低でも30年は持つように作られていると思います。経年劣化の 心配はしなくても大丈夫でしょう。一度入れてしまえば、電池なども不要で生涯に渡って使用で  きます、耐久年数は30年程度。

 

狂犬病予防法のことを薄っすらと知ってはいたが、対象となる動物にアライグマやキツネ、スカンクがいることを知り驚いた。今まで自分は犬猫だけだと思っていたからである。同じような感想がありました。狂犬病予防法で対象となる動物では犬は法令、猫やアライグマ、キツネ、スカンクは政令となっていますが、なぜ、この動物たちは全部狂犬病にかかるのに分かれているのですか?ヒトの狂犬病のほとんど全てはイヌによるものです。イヌは従来から輸入する際には法律で検疫が義務化され、国内飼育でも毎年のワクチン接種が義務化されていました。しかし、海外、特に米国などではアライグマからの狂犬病が増えました。またヨーロッパではキツネからの狂犬病感染が見られます。こうした理由から、ネコ、アライグマ、キツネ、スカンクは海外から輸入する際の法定検疫対象動物として政令で追加されたものです。また、ワクチン接種に関してはイヌとネコはワクチン効果が科学的に評価されているので、ワクチンを打つことは可能です。しかし、他の動物(キツネ、スカンク、アライグマ)は、ワクチンの有効性がわからないので、ワクチン接種はしません。係留期間は6カ月(180日)です。

 

狂犬病予防法の適用範囲には犬以外(猫その他政令で定める、狂犬病をひとに感染させるおそれが高いものとして)、とりわけ、ペットとして頭数が多い猫が含まれているにも関わらず、犬の所有者にだけ登録義務や予防接種を義務付けているのは何故?犬と猫はワクチン効果が確認されているので、ワクチンを打つことは可能です。法定検疫対象のキツネ、スカンク、アライグマはエビデンスがないのでワクチン接種対象にはなりません。また、ヒトへの感染リスクは圧倒的にネコよりもイヌであること、ネコまでワクチン接種しなくても狂犬病がコントロールできていることが理由ではないかと思います。もし、今後、日本で狂犬病ウイルスが常在するような事態が起これば、ネコもワクチン接種やその他の義務づけが起こるかもしれません。

 

狂犬病予防法及び狂犬病について調べました(学生さんの回答)狂犬病発症がない通常時では、飼育犬の登録、狂犬病予防注射、鑑札と注射剤票の装着があり、これらの規定に反すると罰則がある。飼育犬の登録に関しては、犬を取得した日から30日以内に所在地の市町村に登録申請を行い、鑑札をもらう。そして、その鑑札を犬に身につける義務がある。また、狂犬病予防注射は年一回(4月から6月)受けさせ、注射済票をもらう。鑑札同様に犬につけておく義務がある。この2つを守られていなければ、狂犬病予防法に違反したことになり、罰金が発生するので下手をすると獣医師は行政処分や免許取り消しとなる可能性もある。忘れがちだが、しっかり行うようにしていかなければならない。狂犬病についてyoutubeで実際どんな症状がでるのかを確認していたところ狂犬病から生還した女子高生の話があった。今まで100%狂犬病に罹ったら死ぬと思った居たのだが、そうではなかったことに驚いた。(ケタミン治療として注目されましたが、なかなか再現性がない様子です)脳の機能を弱めると狂犬病ウイルスも増殖しなくなるという話だったのだが、なんでそんなことが起こるのかよくわからなかった。でも一人でも助かった人がいるとこれからもしかしたら治療法ができるかもしれないという希望が持てるような気がした。そうですね、狂犬病は通常のウイルス病のように脳炎を起こすのでなく、脳機能を異常化させるので(脳症)、治療法も脳炎を抑えるのでなく、脳機能を変化させウイルス増殖を抑える安定化した方法が見つかれば治療できるかもしれません

  https://www.youtube.com/watch?v=O4IjtWLfRE (女子高生世界初の狂犬病からの生還)

 

厚生労働省結核感染症課が近隣以外の県に通報・指示とありますが、どこまでが近隣の県でどこまでが近隣以外の県になるのですか?また、地震などの災害で狂犬病の発生が確認されたとき行方不明者、救助を待っている方と狂犬病の犬などの捕獲はどちらが優先なのです か?狂犬病の動物が見つかった場合の、厚労省が知らせる近隣県以外の県は事実上日本全 体でしょう。実際には知事が近隣県に知らせたと同時にメディアが日本中に知らせるでしょうor インターネットですぐに広がるでしょう。人命救助は警察や自衛隊が担うでしょう。もし、同時に狂犬病が広がれば、そちらは野犬捕獲員が動員されるでしょう。狂犬に咬まれて発症すれば、ほぼ100%死ぬわけですし、狂犬が他の犬を咬めばウイルスを感染させてしまうのですから、全ての人 員をどちらかに投入するよりは、それぞれの専門家をそれぞれの専門職域に動員するのが賢明と思います。

 

狂犬病についてです。ヒトの狂犬病は感染から発症するまで(噛まれた部位にもよりますが、)数ヶ月かかることもあるようですが、待機期間と係留期間をみると最大潜伏期6ヶ月と書いてありました。犬も犬種によってだいぶ大きさには違いがありますが、ヒトと同じくらい大きな超大型犬がもし感染していても6ヶ月以内に発症するのでしょうか。犬の場合は、狂犬病に感染すると2週間から2カ月程度で発病します(中には早いもので3日、遅いもので5カ月もかかって発 症した例もあります)。ウイルスが体内に侵入してから症状が出るまでの間を潜伏期間といいま すが、犬で38週間です。犬は、狂犬病に感染すると12週間の短期間で発病します。In dogs, the incubation period is typically two weeks to four months.The incubation period between exposure to rabies virus and clinical evidence of disease varies from 7 days to many months (average, 3 to 8 weeks) in dogs. Most cases in dogs develop within 21 to 80 days after  exposure, but the incubation period may be considerably shorter or longer.といった具合です。犬は人よりは感受性が高く、潜伏期は短い。平均潜伏期で多いのは3週から12週くらい、最大で16週 から20週です。6カ月は少し安全を見て長めにしているのでしょう。

 

狂犬病が人に移った場合はどうしているのか。ヒトからヒトへは感染しないので、入院させ暴露後 ワクチンを接種し発症を阻止します。ガンマグロブリンを投与する方法もありますが、日本では行わ れていないようです。また、感染源となった動物(犬?)を繋留し、狂犬病に罹っていることを確認します。

 

妻と作った人形。

娘の修学旅行の写真をもとにしました。

妻と作った人形。

娘の修学旅行の写真をもとにしました。

オリジナルの写真です

 

娘のドイツ時代のカーニバルの写真です。大家さんは子ネズミちゃん「モイスヒェン」といっていました。

下の人形は妻の作品です。

先日、妻の作品が創刊700号記念家庭画報大賞の佳作に入りました。

題「何して遊ぼう」です。

 

妻が、稽古に通い、粘土で作った作品です。昨年、東京フォーラムで、他の生徒さんと一緒に展示されました、「仙人草」

(水やり不要です)。