2018年10月17日今治キャンパスで本学部の先生方に、新設獣医学部における獣医師、獣医関連専門家(VPP)の養成に関する戦略を説明しました。内容は、「21世紀の課題と獣医師、VPPの役割」、「日本の獣医教育改革運動の歴史」、「OIE、欧米の国際教育基準・認証」、「海外の獣医学教育の動向」、「獣医学部の3つのポリシー」、「本獣医学部教育の特徴」です。

 

 21世紀に入って、既に20年になろうとしています。ミレニアムの時に建てられた21世紀の目標は高度経済成長ではなく、「持続可能な社会の確立」でした。そして、その時に挙げられた克服すべき課題は、「環境保全」、「感染症統御」、「食料の安定供給」であったと記憶しています。

 

 環境保全では、土壌、大気、水及び海の汚染の防止と生物多様性の維持が喫緊の課題とされました。環境汚染の最大のリスクは、今も地球を支えている40億年の歴史を持つ微生物が創生した、持続可能な食糧、環境、エネルギーの循環を絶つ危険性があるということです。感染症の統御では人と物の移動の増加、生活圏の拡大、異常気象などに伴い多発する新興・再興感染症、家畜越境感染症、人獣共通感染症の有効な統御法の開発が求められています。食の問題では、第一は食料安定供給(食の安全保障)、そして食の安全、食の防衛が国際的な課題であるとされました。食料の安定供給なしには、食の安全は図れません。食の安全体制なしには食の防衛は不可能です。

 20世紀の高度経済成長、人間中心主義、自国優先主義を見直し、人間を特別扱いするのではなく、生物としてヒトを再認識し、多様性と共生、協調を基本に置くという戦略がたてられ、科学では生命科学(ライフサイエンス)がそれを支えるというものでした。

 この視点で考えると、文科I類からIII類までの、政治、経済、教育・哲学は、いずれもヒトを中心としたヒトのための学問です。理科I類からIII類までの工学、薬学・農学、医学も、やはりヒトを中心としたヒトのための学問です。しかし、理科II類の理学部だけは、人間中心の学問ではありません。また獣医学部も比較動物学を基礎に置く点で、ヒトを特別扱いする分野ではありません。環境、食料、感染症のいずれに関しても、獣医学は21世紀の課題を担える人材を養成できる学問分野と考えられます。学生さんたちに、こうした視点をはぐくめるような教育をしなければならないと思います。

 

 我が国の獣医学教育改革運動の歴史を振り返ってみましょう。これまで約半世紀、獣医学教育の改善・充実のために獣医系大学は、多くの試みを行ってきました。

①就学期間を4年から6年へ変更し、新しいニーズに対応する教育内容の多様化の試み、

②小規模国立大学の再編統合(北大、東大、東北大、九大へ再編統合する案)、

③全国共通のコア・カリキュラムの整備と専門獣医師養成のアドバンスト教育の配置、

④共同獣医学部、共同教育課程の設置、

⑤大規模私立大学の教育充実(水増し入学定員の是正)などです。

しかし、これらの試みは、いずれも成功したとは言えません。その結果、新しいニーズに対応できる獣医師の供給不足問題がより深刻化し、獣医師の職域偏在(過剰職域と不足職域)及び地域偏在(獣医師不足の道府県)が持続し、問題は解決困難な状況です。原因は明瞭で獣医学生の定員を固定化したことにあります。

 新しいニーズに応えるには、新しい分野の教育を行い、新しい専門獣医師を養成する必要があります。固定した入学生数では、学生も増員できないし教員も増員できない。新しい分野の教育を行う人材の養成もできないことになります。固定した獣医学教育の講座数で水増し定員を取れば、特定の既存分野に学生が集まり、新しい分野は育ちません。50年以上にわたる定員の固定化は、日本の獣医学教育の改善・充実を阻害した要因の一つであると考えます。

 半世紀前の、改革運動の趣旨を見ると、獣医学教育として「①畜産経営規模の拡大・多様化・合理化を基盤とする食料動物資源の確保、②量産される化学物質の生物影響の評価、③精神生活充実に必要な伴侶動物の健康確保など、人類生存に係わる領域としての獣医学に向けられた社会養成に応えなければならない」と、されています。こうしてみると獣医学教育に指摘される問題の本質は、50年前と変わっていません。今風にいえば、①はpublic health、One Healthの問題、②はlife scienceの課題、③はOne medicineと言えるでしょう。また、21世紀のミレニアムの課題ともオーバーラップします。

 

 現在にも続く第3期の獣医学教育改革は、ボトムアップ方式で行い私立大学も含めること、これまでの、全ての獣医系国立大学を一緒に改革するという護送船団方式を解消し、先に進められるところから始めることにしました。そして、大学、学部を超えた再編をめざしました。その基本に据えたのが、モデル・コアカリキュラムです。

 コアカリは一連の獣医学教育改善の柱としてスタートしました。それまでの伝統的な個別化した授業を体系化し、共通のテキストで共通の評価の可能な授業にすること、社会のニーズに応える人材を養成するために欠けている科目を追加すること、実学としての獣医学の強化のために新しい分野の実習科目を充実させること、各大学の独自性を発揮するためにコアカリキュラムの上にアドバンスト教育を置くこと、などを骨子として作成されました。そして、ハードウェアとして共同学部、共用試験、第三者評価システムなどを導入しました。

 

 これまでの獣医学教育改革の運動をまとめてみると以下のようになります。

1の獣医学教育改革運動では、1970年代から既に今日の獣医学教育の弱点が記載されています公衆衛生獣医師の養成、食料の安定供給と食の安全、リスク評価、高度獣医療、ライフサイエンス分野の研究者養成に関する社会ニーズと獣医学教育の対応の不備が述べられており、その内容半世紀たった今もって変わっていなません。獣医学教育課程を4年制から6年制に変えることで終焉。

期の獣医学教育改革運動はトップダウン方式で、国立獣医系大学の再編統合を目指しました。専任教員の定数72名などの基準設定とともに、獣医系大学の新設と既存の獣医学科の廃止が提示されました北大、東北大、東大、九州大の大学院大学獣医学部構想は、結局、国立大学法人化の波にのまれて実現化できませんでした。

現在は、獣医学教育改革運動の第3期の延長線上にあるといえます。国立大学獣医学科の護送船団方式を解除した共同学部が成功したか?失敗に終わるか?はまだ分かりません。5年間の文部科学省による後押しが、有効に作用したと考えたいのですが、検証・総括はまだ、行われていません。他方、新獣医学部の設置は、第2期に提案された構想の新しいバージョンと言えます新しい獣医学教育の再編・充実の魁と考えられます。

 

 

 

 

妻と作った人形。

娘の修学旅行の写真をもとにしました。

オリジナルの写真です

 

娘のドイツ時代のカーニバルの写真です。大家さんは子ネズミちゃん「モイスヒェン」といっていました。

下の人形は妻の作品です。

先日、妻の作品が創刊700号記念家庭画報大賞の佳作に入りました。

題「何して遊ぼう」です。