2020年の春2学期は、コロナウイルス感染症の流行を受け、1年生は分散対面授業、2・3年生は遠隔授業となりました。獣医事法規は獣医学科の3年生に、動物関連法規は獣医保健看護学科の1年生に教えるという変則的なことになりました。そこで3年生のためにVODを作り、1年生はVODで予習してから、ミニテストを含め対面授業をするという新しい試みをしました。対面授業はZoomで記録をとり、3年生にバーチャル対面授業として配信しました。学期末には、両方とも対面の期末試験をしました。1年春の進化論の再評価試験、動物関連キャリア概論の補講、千葉科学大学のZoom講義、1年生と3年生の獣医学関連法規、獣保2年生の人獣共通感染症、獣医3年生の動物感染症と大変な忙しさでした。講義が終わったので、VODを全部You tubeに載せることにしました。各回のVODと対面がセットです。
遅れました。愛玩動物看護師法の講義録が完成しました。2020年春2学期の講義には間に合いませんでした。しかし、約束だったので、スライドとVODを載せておきます。
最初に全体のレイアウトを知ってもらうため、FDで教員用に紹介したVODを載せておきます。講義全体の構成と意図が分かってもらえると思います。
獣医法規FD https://www.youtube.com/watch?v=HaKdlZtBRjk
愛玩動物看護師法:https://www.youtube.com/watch?v=RkdhoQHhVIU
1の1法規:https://www.youtube.com/watch?v=UUM5y6He3uc
1の2刑罰:https://www.youtube.com/watch?v=naIWQjjmg0I
第1回対面:https://www.youtube.com/watch?v=ZZyQPQWH9rs
2の1法と動物:https://www.youtube.com/watch?v=EGOXo8VDLGs
2の2動物と法:https://www.youtube.com/watch?v=ISxPZI88ra4
第2回対面:https://www.youtube.com/watch?v=VM9fIodv_Zc&t=144s
3の1獣医師法:https://www.youtube.com/watch?v=InGTxDVHa4A
3の2獣医療法:https://www.youtube.com/watch?v=nGRtY_RR3co
第3回対面:https://www.youtube.com/watch?v=vUg5g4Qsewc
4の1家伝法1:https://www.youtube.com/watch?v=uuk2VDaYfTk
4の2蔓延防止:https://www.youtube.com/watch?v=yZSEgHZAuG8
4の3ペット:https://www.youtube.com/watch?v=pvkGlp14naE
第4回対面:https://www.youtube.com/watch?v=qJLKExufLac
5の1感染症:https://www.youtube.com/watch?v=f5YsMXbekJA
5の2届出:https://www.youtube.com/watch?v=XAcPAJzDiss
5の3狂犬病:https://www.youtube.com/watch?v=EfJMMT02DNI
第5回対面:https://www.youtube.com/watch?v=pDsEKTOKSYk
6の1補助犬:https://www.youtube.com/watch?v=1wErzvZsoRo
6の2と畜場:https://www.youtube.com/watch?v=zhOU2u2qTp4
6の3食品:https://www.youtube.com/watch?v=W63bTnkLfZE
第6回対面:https://www.youtube.com/watch?v=4lkfjBbzwR0
7の1薬事:https://www.youtube.com/watch?v=R966ILpqCgo
7の2麻薬:https://www.youtube.com/watch?v=EP7MSeIII6U
8回:環境法:https://www.youtube.com/watch?v=bs23GWdQC0k
7回の分散対面授業では、インターネットがうまく繋がらずZoom記録が取れませんでした。
8回はミニテストのあと、期末試験でしたのでZoomの講義はありません。
次回は、バージョンアップとともに、7回、8回のZoom講義録をアップしたいと思います。
獣医法規再評価試験前の集中講義のVODです。
春②学期の授業が始まりました。獣医保健看護学科、VPP分野(獣医関連専門家分野)で、獣医法規を教えることになりました。個人的には、感染症法の制定、狂犬病予防法の大改正に委員として関わってきましたし、食品安全委員会では食品安全基本法にも関係してきた経験から、獣医師および獣医関連専門家には獣医(事)法規の理解が必須であることを痛感しました。また、しばしば獣医の関連する法律の多さに戸惑ったこともあります。
我々の学生時代には、大学で獣医事法規を学ぶ機会は全くありませんでした。新しい学生さんたちは大変ですが、1年生から獣医事法規を学ぶ機会があることは幸いです。なるべく学生さんたちが興味を持つようなプレゼンテーションができればと思います。動物看護学教育標準カリキュラムに準拠した「動物医療関連法規」をもとに、自分の体験した関連事例などを加えて講義します。退屈しないように。
現代人の科学「生物進化」に習って、学生さんたちと授業後にメールで、「わかった単語3つ」、及び「理解できなかった単語3つとその理由」を送ってもらいました。自分でも理解しにくい単語があり、大変勉強になりました。学生さんたちの質問と回答もアップしておきます。第1回は「そもそも法とは何か?」から始めます。具体的な問題ではないのでわかりにくいと思います。しかし、実際の法律の各論をやっていくうちに、この回の法の概念や意味の重要性が理解できます。各論に入ってからも、第1回の講義を振り返ることが重要です。
アナーキーとは?国家などの社会集団において支配や統制が無い状態のことです。1840年にピエール・ジョゼフ・プルードンが新しい政治思想であるアナキズム(無政府主義)の用語として使用しました。
内乱罪(言葉の意味自体がよくわからなかった):以下の犯罪を行うこと。①国が統治しているシステムを破壊する。あるいは、②国が支配する領土において国権を排除し、新規の権力を行使する、③憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動を起こすこと。
規律と規範は、規律は人の行為の基準として定められたもので、ルールではない。規範は人と人との関係に関わる判断・評価などの基準のことで、見本となるようなものでルールである。であっているでしょうか。「規」は正しい円形を描く道具に由来する言葉です。正しいという意味に使われます。「範」は物事をきまった形につくるための型のことです。従って規範は「正しい習うべき型」のような意味、見習うべき(should be)になります。「律」は「物事を行う基準となるおきて」ですから、規律は「正しい基準となる掟」、守らねばならない、のようなニュアンス(must be)になると思います。
「政令」→法律に次ぐ効力を持っているもの、なのに獣医療法施行令は政令。上の方じゃないのって何でですか?そういうもの、ならそれで納得します。政令は内閣(閣議)で決定する法令で、立法府の国会で決めた法律よりは下位になりますが、省庁で決める省令(規則)よりは上位です。法律の内容は一般に漠然とした書きぶりなので、それを実行するために内閣で法律を施行するための命令を出すのが政令です。それを該当する省庁がうけて、さらに細かく規約をきめて出すものが省令です。多くの法律は省令レベルでやっと現実に実行できる具体性が出てきます。通常はそれに、いろいろなケースを想定して解釈本や解説書が付きますし、地方自治体に投げられると条例になります。
「類推解釈」→近い物事の2つから1つの規定と同じ趣旨の規定が他にあるものとして解釈すること。これは両方似てるけど両方当てはまるって事ですか。この説明文は、正しいでしょうが、非常にわかりにくい説明文です。文字通り「類推して解釈する」ことです。この場合は、法文で規定されている内容と、その法文の適用が問題となっているがその法規には含まれない事実との間に、類似ないし共通の性質があることを理由として、前者(法文)に関する法規を後者(事実)に適用することです。類推解釈が成り立てば、両者は似ている(共通性がある)ということになります。
制定法を説明されていた際の成文法が具体的にどんなものなのかわかりませんでした。文章として明示された法で、日本では憲法、法律、政令、省令、条例等、ほとんどすべての法規は成文法です。
独裁主義は徳治主義か法治主義ではどちらの要素があるのですか。どちらの要素かと言えば徳治主義は性善説的(自然法的?)、法治主義は性悪説的な要素があります。独裁主義は法というよりも、政治形態の一つで、法に基づくこともありますが、一般的な社会ルールを基盤に置くという法の精神を無視するやり方でしょう。しいて言えば、法に基づく行政を否定するアナーキー(無政府主義)の対極にある法治主義の最も悪い例になるのではないでしょうか?
法と法律の違いは、法は社会的な決まりごとのことで、法律は国家によって制定される決まりご
と。であっているでしょうか。いいと思います。法は広い意味で使われます。憲法、法律、政令、省令、条例などすべてを包含している表現です。法律は国会で決められた法です。
一般慣行、慣習国際法(国際慣習法)なのにどうして慣行なのか?国際法は条約のように成文化されたもの以外は、慣習国際法になります。国の違い、文化の違い、生活習慣の違いなどを調和して国際的に受け入れられるには、長い間不文法として法規範性を持つ必要があります。国際社会では、国内の議会のような立法機関はなく、国際法の拘束力は国家間の合意によります。一定の行為(行動様式)について、国際的に行われている慣行(一般慣行といいます)が多数の国によって法的に義務的又は正当なものとして認められる(法的確信がある)ときには、慣習国際法が成立し、原則として国際社会のすべての国家を拘束することになります。「国際(一般)慣行法」といってもいいですね。きっと日本の法源の時に「慣習法」という言葉を用い、「慣行法」と言わないので、「国際慣習法or 慣習国際法」というのではないでしょうか。
慣習(国際)法は、国内法として効力をもつと書いてありますが、国の立法機関で制定しなかったのかのはなぜか?(国際)社会に存在する一定の慣習のうち、それが一般に法的拘束力があるものと意識されているもの(法的確信)であるので、わざわざ国会で成文化した法律にする必要がなかったと思われます。
慣習国際法と条約の違いは何ですか? 国際法には条約と慣習法があります。条約は成文法で
す。慣習法は不文法で、長年、多数の国家間で遵守されてきたルールは、それが明文化されてなくても「国際慣習」として、みんなが守るべきルール(慣習国際法)になり得ます。
変型方式:「国際条約」は成文法なので、文章として明示されています。批准した国がそれを実行する場合、国内法として整備する必要があります。条約をそのまま受け入れる方法と、もう一度国内法として作り直して自国の法規にする方法があります。変形方式は、国際法に直接的な国内的効力を認めず、国内に合うように国内法で別個の新しい法として立法措置をとる方式です。英国やカナダがこの方式をとっています。
内閣府令は少し理解するのが難しかった:そうですね。法律を施行するために閣議で決定する命令(政令)、さらに関係省庁が決める省令の関係はわかりやすいと思います。しかし、内閣府自体は他の省庁と同じ扱いなので、内閣府令は省令と同等になります。法形式上の優劣関係は以下のようになります。憲法 > 条約 > 法律 > 政令>内閣官房令・内閣府令・復興庁令・省令・外局の規則(庁令)>条例>地方公共団体の規則です。
慣行、慣習の違いがいまいちわからない。慣習よりも狭い社会でのルールのことなのか?習慣と慣習は、通常の生活において繰り返し行われる行動様式のうち、どちらかと言えば習慣が個人的な、慣習がより広い社会的な行動様式として使い分けられています。他方、慣習と慣行はそれほど、明瞭な違いが無いようです。しいて言えば、慣行は一定の地域や集団において、一定の生活目的のために特定の機会に行われる行動様式(例:婚姻慣行、葬送慣行、取引慣行、労使慣行)を指して用いられます。やや硬いルールで、規律的な要素があるように思います。他方、慣習は、ある社会で古くから受け継がれている生活上の習わしのように、特定の目的というよりは様々な機会に適用できる言葉で、より広範に用いられるようです(例:大晦日には年越しそばを食べるのが慣習です。お祭りには提灯を飾るのが慣習です。など)。
慣習の意味はわかりましたが慣習法がよくわかりません:社会に存在する一定の慣習のうち、それが一般に法的拘束力があるものと意識されているもの(法的確信を伴うもの)を判決の根拠(法源)にする場合を慣習法といいます。
高次元の規範とは?自然法は普遍的な正しさと妥当性を持つ、他方、実定法は、その時点に適合する限定的な正しさと妥当性しかもたないとする考え方。そのため自然法のほうが実定法よりもより高い原理であるとして、高い次元の規範と位置付ける考え方。
交布と施行はなぜ同じタイミングで行われないのか。いきなり施行するのはいけないのか。実例のほうが分かりやすいです。選挙権の年齢が18歳に引き下げられる法律ができました。平成27年6月に公布され28年6月19日に施行されました。法を執行するのに、これまで選挙権のなかった18歳、19歳の人、次の選挙で投票権を持つ可能性のある17歳(以下)の人にも選挙の意味、投票の意義、投票方法等、高校の授業などを通してわかってもらう時間(周知期間)が必要です。
後法優位の原則:カテゴリーを同じくする複数の制定法が適用可能な事象では,後法優越の原理と特別法優先の原理が存在します。後法優位の原理は〈後法は前法を破る〉ということであり,たとえば,同じことがらについて後から別の規定を有する法律が制定された場合には前法より後法が優先するというものです。判例法は不文法ですが、基本的には後法優位の法と言えるのではないでしょうか。
自然法、「自然法とは時を超え場を超え普遍的に妥当とする正しい法律」とありますが、憲法もこのようなイメージをもちます。それはどのような差があるのでしょうか。自然法の哲学は憲法よりも根源的と思います。自然科学でいえば法則(質量普遍の法則とかいったもの)に近い考え方ですが、法が人間社会の規律であることを考えると、自然法というのは少し観念的すぎるようにも思います。自然科学で自然法的なものが成り立つのは、必ずしもヒトを根底に置いていないからでしょう。
自然法について、細かくお教え願いたいです。自然法の具体的な法律もお願いいたします。自然法は法の理念のようなもので、実際の法律として成文化されている例はないかもしれません。法源でいうなら条理的なもの?自明の理?あるいは、文としてあるのであればモーゼの十戒?のようなものでしょうか。モーゼの十戒のうち、最初の神との契約事項等を除く、後半の五戒~十戒は人としての戒めにあたります。「あなたの父と母を敬え。あなたは、殺してはならない。あなたは、姦淫してはならない。あなたは、盗んではならない。あなたは、隣人について、偽証してはならない。あなたは、隣人の家をむさぼってはならない。」です。
実定法、「実定法とは現実に人間社会で定立され行われている法」とされていますが、これはその
時代で議員の判断により変化を繰り返すものなのでしょうか?法を改正すれば代わっていきます。実定法は実際に実行されている法ですから、議員にかかわらす、また成文法、慣習法、判例法のいずれでも変化し得ます。相対的に考えると条理や自然法は変わりにくいとは思います。
実定法は、普通の法令や憲法とはまた違う種類の法律なのか。いいえ、分類の仕方の違いです。実定法の対語(対義語)は自然法です。法は実定法と自然法に二分されます。普通の法令(政令、省令、条例)や法律、憲法はすべて実定法です。また、慣習法も判例法も実定法です。自然法は普遍的な正しさと妥当性を持つのに、実定法は、その時代に適合する限定的な正しさと妥当性しかもたないとする考え方があります。そのため自然法のほうが実定法よりも高い次元の規範と位置付けられています。
実定法と自然法についてですが、実定法は現実に人間社会で定立され行われている法律と教えていただきました。実定法の分類を説明していただいた際に具体的な法律もいくつか紹介していただきましたが、獣医・動物に関する法律の具体例はどのようなものがありますか。獣医師法、獣医療法、家畜伝染病予防法、感染症法、動物愛護と管理に関する法、ペットフード法、狂犬病予防法、と畜場法、食品衛生法・・・・その他これから習う各論の法律はすべて実定法です。
特別法優先の原則?質問はなぜ特別法が一般法に優先されるのか?一般法と特別法とで法が異なった規律を定めている場合、特別法の適用を受ける事象は一般法の規律が排除され、特別法の規律が適用されるとなっている。普通に考えると一般解のほうが特別解よりも広く適用できるので特別解を含むと思われるが?ということでしょう。しかし、実際を考えると、特別法を定める理由はさまざまですが、一般的にいえば、特別な分野に対しては一般的な法律の他にその分野特有の規律が必要であることから、特別法が定められるのが通例です。例外的な事象を特別法で定めると、その事象については、判決は一般法よりは特別法に従うほうが適切ということになります。
不文法もどんなものなのかわかりませんでした。慣習法、判例法、条理など、文章として明示されていない法体系です。法規として成文化されていなくても、社会で慣習として法的なレベルまで受け入れられている行為に基づくもの、すでにこれまでの類似の事象について判決が下りているものを基本とするもの、どれにも当てはまらないが、人としての道理として広く認められているものなどに基づいて判決を下すための法です。
「条理」→条理とは道理のことであるのに判決を出す時は条理に基づく?(条理=道理って事ですかね?) そうですね。道理(人としての「ことわり」を説いた道ですから)でもよかったと思いますが、法学者が少し難しい言い回しを、「法律用語」として考えた?のかもしれません。
商法(一般法にも特別法にも当てはまるのはなぜか):商法は成文法の中の制定法です。基本的には、個人間の私的生活関係を規律する「私法」に分類されます。ここには。「民法」と「商法」が入ります。民法は、対象となる人、場所、事柄を具体的に限定しないで、一般的に適用されることが多く、一般法に入ります。他方、商法のカバーする範囲は広く一般法的な側面と、事例によっては、特定の人、地域、事柄について限定的に適用される法としての特別法的な側面があります。例えば、商法の一般法的事例は手形法、商法の特別法的な事例は、会社法です。
私法とは?私法は、私人の間の関係を規律する法で民事実体法とも言います。国家等の公権力と私人の関係を規律する法である公法に対置される概念です。
強行法規と任意法規:当該事象において、関係する当事者の意思にかかわりなく適用される法が「強行法規」です。刑法や行政法などの公法がこの適用例になります。他方、当事者の意思が法の規定と異なる場合、当事者の意思が優先する法が「任意法規」です。民法のような私法では任意法規の適用が多いことになります。
供託法:供託に関する法律です。明治32年法律第15号という古くからの法律です。「供託」は、お金や有価証券などを国家機関である供託所に提出します。差し出した財産の管理を供託所に委ね,供託所を通じて,それらの物を権利者に払うことにより,債務の弁済や裁判上の保証などにあててもらうために設けられた制度です。
実刑→拘留で、執行猶予を付すことができないので実刑となる、とあるが、実刑とは何をするのか。実刑判決は猶予期間がなく、実刑判決が出た時点で保釈の効力もなくなり直ちに収監(監獄、刑事施設)に収容されます。刑の重さにより「死刑」「懲役」「禁錮」「拘留」が実行されます。
自由刑:自由刑は、受刑者の移動の自由を制限する刑罰です。具体的には、「懲役」、「禁錮」、「拘留」があります。刑事裁判の判決結果のほとんどを占める「懲役」と、「禁錮」には執行猶予が付きますが、「拘留」には執行猶予は付かず実刑判決のみです。
人事院、 主に何を行うところか?人事院(National Personnel Authority)は、国家公務員法第2章に基づいて設置された「中央の人事行政を行う機関」です。①国家公務員に関する人事管理の公正中立と統一を確保すること、②労働基本権の制約をうける代償機能を果たすため、a:行政委員会として人事院規則の制定改廃, b:不利益処分審査の判定, c: 給与に関する勧告など、広汎な人事行政を行っています。
親告罪→どういうものか分からない。親告罪は、検察官が起訴を起こす時に被害者の告訴があることを必要とする種類の犯罪です。言い換えれば、被害者からの告訴がなければ検察が起訴することができない種類の犯罪です。この場合、捜査機関は単独で逮捕や捜査を進めることができません。例えば、強制的な猥褻(わいせつ)や強姦(ごうかん)による犯罪は、被害者にとって非常に屈辱的なことです。刑事手続きや裁判で、繰り返し事情聴取に応じたり、公の前で証言することは精神的にも負担が大きいものです。性犯罪での親告罪は、このように被害者の意思を尊重して設けられています。
民事責任で、私法上負う責任とはどういうことですか?民事責任とは、民法(私法)上の不法行為責任です。不法行為は、加害者が故意または過失により被害者の権利or 法律上保護される利益を侵害することです。このような加害者の被害者に対する不法行為は、同時に加害者の犯罪となる場合もあり、民事責任と刑事責任との区別が問題となります。刑事責任は、加害者がその行為の社会に対する責任を問われる(公法で裁かれる)のに対して、民事責任においては、加害者は被害者に対する責任(私法で裁かれる責任)を問われます。
行政法、内閣法などとあるが内閣法も分からない。内閣法は、内閣の職務権限、組織、行政事務の管理の分担や、行政関連の各部に対する指揮監督の大綱を規定した日本の法律(国会で立法
した法律です。行政法は「行政に関連する特殊で固有な法」ですが、行政法は「民法」や「商法」のように単独の法典が存在しているわけではありません。行政に関連する法律の総称をいいます。分かりにくいですね。
極刑の場合、「執行まで拘置される」とありましたが、執行猶予とは違うのですか?違います。執行
猶予は、刑の執行を一時的に保留にするという意味で、刑事裁判の被告人に対する判決中に一 定の期間、他の刑事事件を起こさないことを条件として、判決の執行を猶予する制度です。そのた め拘置はされません。また、当該条件をクリアすると判決の効力が消滅することになります。極刑 はいつ執行するかは法務大臣が決定します。それまでの間、拘置されるもので、拘置期間が長く ても極刑という判決はそのままです。消滅しません。
併科:犯罪に関して、同時に二つ以上の刑に処せられること。
責任(刑事責任と民事責任が同時に当てはまる犯罪が起きた場合にはどちらの責任を負わせる
のか):同時に当てはまる犯罪なら、当然両方で裁かれます。民事では被害者が、刑事では検察
官が 告発します。
付加刑→なぜ単独で科すことができない刑があるのか。付加刑は没収のことです。没収は、刑法 において、犯罪に関係のある物(例えば凶器)の所有権を、犯人から国に移し、国庫に帰属させる 司法処分のことです。刑法では没収のみを付加刑と定めています。従って、刑法における司法処
分では、没収は主刑に付加してのみ科すことのできる刑となります。
刑、執行猶予はどのような仕組みなのか?執行猶予は、刑の執行を一時的に保留にするという意
味です。刑事裁判の被告人に対する判決中に一定の期間、他の刑事事件を起こさないことを条件 として、判決の執行を猶予する制度です。そのため拘置はされません。また、当該条件をクリアす
ると判決の効力が消滅することになります。従って、この場合には、最終的に刑は執行されませ
ん。
第2回は、総論の続きで、獣医(獣医師及びVPP)に関連する動物と法規の関係を紹介します。最初は法規から見た動物のカテゴリー、後半は動物カテゴリーからみた法規という裏表の両面から見てみましょう。それぞれの法律に関しては、第3回の獣医師法、獣医療法から始める各論で、法の解釈を基本に解説します。できるだけ退屈しないように、図表を多用して教えるつもりです。分からなかった単語を送って下さい。各論に入ってからも、頭を整理するには、この第2回に講義に戻って復習すると分かり易いです。
厚生労働大臣と農林水産大臣、厚生労働省令と農林水産省令の違いが判らない。厚生労働大臣は、主として社会保障に関する行政と労働に関する行政を所管する最高責任者で国務大臣の一人です。国民生活の保障と向上、社会福祉・社会保障・公衆衛生の向上と増進、労働条件・労働環境の整備などを統括しています。厚生労働省は大臣のもとに、これらの施策を実行する中央行政機関です。厚生労働に関係する法律に関して、厚生労働省から出される命令が厚生労働省令になります。農林水産大臣は、食料の安定供給の確保、農林水産業の発展、農林漁業者の福祉の増進、農山漁村及び中山間地域等の振興、農業の多面にわたる機能の発揮、森林の保続培養及び森林生産力の増進並びに水産資源の適切な保存及び管理を統括する国務大臣の一人です。農林水産省は、農林水産大臣のもとで、これらに関係する施策を実行する中央行政機関です。農林水産に関係する法律に関して、農林水産省から出される命令が農林水産省令になります。
法規と関係する省庁について、法規と関係する省庁は農林水産省、厚生労働省、環境省と3つに分かれ、それぞれ担当する分野があると習いましたが、なぜ、3つに分ける必要があるのでしょうか。1つのところでまとめて動物について担当する方が管理しやすいのではないかと思いました。そういう考え方もあります。しかし、農林水産省はもともと食料など第一次生産品等(農作物、畜水産品、林業)の産業振興を目的とする省です。厚生労働省は、人の健康福祉、公衆衛生、労働衛生の向上を目的とする省です。環境省は公害や環境汚染が問題となって厚生省から独立してできた省です。そのため、各省に獣医および獣医関連専門家がそれぞれの立場で関与することはありますが、動物関連だけをまとめて省から独立して担当するというのは難しいのが現状です。
業務独占対象動物:診療業務として獣医師しか見られない動物。いいかえれば、獣医師でない者が、飼育動物(牛・馬・豚・めん羊・山羊・犬・猫・鶏・うずら・その他獣医師が診察を行う必要があるものとして政令で定めるものに限る)の診療を業務としてはならない(獣医師法違反になります)ことが業務独占資格で、その対象となる上記の動物が業務独占対象動物です。
診療業務:獣医師のみが診療業務にあたることが出来る動物は理解したのですが、それ以外の動
物は非診療業務で見ることになるということでしょうか。診療業務でなければ、VPPも飼育動物を
見ることが出来るということですか。違います。①家畜・家禽・犬猫(法令で定める飼育動物)と政
令で定める飼育動物(オウム科、カエデチョウ科、アトリ科の鳥類)は獣医師しか診療できません。
しかし、②獣医師であれば、その他の一般飼育動物(人が飼育できる動物)は、何でも診療できま す。③飼育動物であっても所有者が自己の所有する飼育動物を診療することはできます(財産
権)。④家畜、家禽、犬猫および政令指定の飼育動物以外の一般飼育動物(爬虫類、両生類、魚
類など)は、獣医師でなくても診療しても違法にはなりません(有償、無償に関係なく)。また、⑤獣
医学生は獣医師の指導の下で診療しても違法にはなりません(第17条)。⑥VPPの非診療行為は
可能か?はい、「保健衛生指導」「健康相談」「血液等の検査」「検案」のみを行う場合は診療業務
に入りません。⑦実験動物のマウス、ラットやサルなどは飼育動物(法令、政令)の定義には入りま
せん。
動物医薬品を獣医師が販売することは許可されますか?人の医薬分業と異なり、現状では、院内処 方で動物医薬品を処方した病院で薬を買うことができます。また動物用医薬品の販売は「人用医
薬品登録販売者試験」に合格し、都道府県知事の登録を受けることで動物用医薬品登録販売者
になれます。従って、獣医師であってもなくても販売可能です。
罰金以上の刑、交通違反も当てはまるか?:獣医師業務に直接には関係しないが、罰金以上の刑に処せられた事案としては、刑法では殺人、傷害、窃盗、詐欺、強制わいせつ、覚せい剤取締法違反があります、また所得税法、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律、道路交通法等に係る違反行為も含まれます。行政処分の程度は、基本的には司法による判決の内容等を参考に決定されます。
品位を損ずるような行為(例えば何か):品位という言葉が抽象的で難しい問題です。一般的に言えば、獣医師が業務を行うに当たって遵守すべき法律に係る違反行為,獣医師の立場や知識を利用した違反行為,獣医師に課せられた倫理的又は道徳的な職責に大きく反する行為など,獣医師に求められる職業倫理に反する行為となります。行政処分(時に司法処分)になった例では、ハラスメント違反、破廉恥罪、麻薬使用、無許可薬剤販売、頻繁な初歩的医療ミスや応召義務違反などが当たるかと思います。
家畜伝染病→届出伝染病と法定伝染病の違い。家畜の伝染病には監視伝染病があります。そして監視伝染病の中には法定伝染病と届出伝染病があります。法定伝染病は、家畜の伝染性疾病が拡大することによる畜主の被害を抑えるだけでなく、家畜の生産物やそれらの製品への影響など社会全体への影響も最小限にするため、①発生地域の交通遮断、②当該家畜のと殺義務、殺処分命令、③死体の焼却等の義務、④畜舎の消毒義務、などの強制力を持った強力な措置をとるべきものとして、家畜伝染病予防法で法定されている28の疾病です。届出伝染病は、監視伝染病のうち法定伝染病を除く71の疾病で、病畜を診断した時、あるいは検案した時は、都道府県知事に届け出る義務があります。
家畜伝染病予防法について、家畜伝染病予防法では国会が対象と決めた牛、馬、めん羊などと、農林水産省が決めた施行規則の対象動物である水牛、鹿、いのししなどがあります。そこで、農林水産省が決めた施行規則の対象動物が国会が決めた対象動物になることはあるのでしょうか。法律のほうが省令に優先するので、通常はありません。法律を実行するのに国会で決めた動物(いわば法定動物)だけでは足りないと考え、農林水産省令(施行規則)で追加した動物(いわば省令動物)という関係です。
家畜(家禽)である鶏の養鶏農家は高病原性鳥インフルエンザに感染した鶏と鶏舎内の鶏は 全て処分しなければいけません。すると、借金が何十万にもなると聞いたことがありま
す!鳥インフルエンザが原因で借金がでてしまった養鶏農家はどうするのですか?また、
全て処分になっても大丈夫な保険は存在するのですか?昔は国からの補償はなかったので
すが、現在は、①高病原性鳥インフルエンザに感染が確定した家禽や感染の疑いがある家禽を
殺処分した場合、生産者に生じた損失を国が全額補償します。具体的には、殺処分家畜等に対す
る手当金は患畜が家畜の評価額の1/3、疑似患畜は家畜の評価額の4/5です。さらに、殺処分家
畜等に対する特別手当金(鳥インフルエンザや口蹄疫など)が、患畜では家畜の評価額の2/3、疑
似患畜は家畜の評価額の1/5なので、手当金と特別手当金を合わせると100%になります。②死体
や汚染物品の焼埋却に要した費用に対する交付金が出ますが、これは通常、都道府県が焼埋却
を実施するので、国が半分、県負担分は特別交付税措置で支払われます。③経営を再開する場
合に経営支援互助金があります。家畜疾病経営維持資金のうち経営再開資金として、貸付対象
は飼料費、ヒナ購入費、雇用労賃などの経費で、貸付限度額は個人2千万円、法人8千万円です。
貸付利率は0.675% (平成28年現在)です。④農林漁業セーフティネット資金もあります。貸付対象
は経営の維持安定に必要な資金で、貸付限度額は、経営費の3ヶ月分又は600万円、貸付利率は
0.08% (平成28年現在)です。
家畜伝染病予防法:なぜイヌは家畜ではないという分類なのですか。イヌは人によって家畜化さ れたのに家畜として扱われないのですか。家畜というのは、基本的にその動物の肉などや、乳、 卵、毛皮など、その生産物を人が利用できる動物を言います。こうした定義では伴侶動物は家畜と いう 定義に入りません。
「食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律」で対象となる動物にダチョウはどうなの
かと おっしゃっていたので調べて見ました。ダチョウは家畜とされる場合とされない場合があ るとあり、 ワシントン条約によって絶滅のおそれのある動物とされているから、食べれるけど 食べない方が いいと考えられるから、この法律の対象動物に含まれていないと考えるので すが、どうですか?ワシントン条約は「絶滅の危惧のある野生動植物の国際商取引に関する条
約」です。通常、自国で繁殖させた動物は対象にはなりません(野生のダチョウを食用に輸入する 場合は別です)。最近は、ダチョウ、エミュー、キジ、ホロホロチョウなどを家禽として飼育する例もあ
ります。法律で家禽に入れないのは、ダチョウが日本では、まだ家畜・家禽なみの飼育動物として 実績がないからだと思います。繁殖ダチョウの人気が出て、卵や肉、皮革などが日常的に流通す
るようになれば、家禽に入れられると思います。
食鳥処理法は、なぜ別枠なのか?①農水省では家畜と家禽は部署が分かれていること、②処理施設としてと畜場と食鳥処理場は構造が違います。③特に処理方法が大きくことなります。しかし、最大の理由は、歴史の違いでしょう。④「と場法」は、非常に古く1906年に制定され、「と畜場法」は、これに代えて昭和28年8月に法律第104号として制定されました。「屠畜場の経営及び食用に供するために行う獣畜の処理の適正の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講じ、国民の健康の保護を図ること」を目的としています。⑤長い間、鶏は個人が自由に育て、処理して食べていました。食鳥処理法「食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律」は、生産体制が大規模化し工場生産的になったあと、平成2年法律第70号として制定されました。家禽の生産の実態及び食鳥の疾病の発生の状況を踏まえ、「食鳥肉等に起因する衛生上の危害の発生を防止する」ための法律です。
届出伝染病(感染症)とはなにか?特定の患者(感染症法)あるいは患畜(家畜伝染病予防法)を見つけた時に保健所あるいは家畜保健衛生所を介して中央官庁(厚生労働省あるいは農林水産省)に届け出なければならない感染症あるいは伝染病です。それぞれ法律、政令、省令等で決められています。
要指示薬に属さない薬にはどんなものがあるのか、また、誰まで取り扱うことができるのか?動物用医薬品には「要指示医薬品」とそれ以外の「一般医薬品」があります。一般医薬品は薬局やドラッグストアで売っています。獣医師の指示・処方せんを必要とせず購入できる医薬品です。人用でいうところの一般用医薬品(OTC医薬品)にあたります。例としは、ノミ・マダニ駆除薬、皮膚用薬、虫下し、胃腸薬などです。
狂犬病予防法:具体的な予防と適用することの意味の詳細が知りたいため。狂犬病予防法は狂犬病発生の予防、蔓延防止と撲滅を目的として制定されています。大きくは、①狂犬病の発生がない通常時の措置と②狂犬病発生時の措置に分けて、国、地方公共団体、国民の責務を明示しています。
狂犬病の発生がない通常時のリスク回避措置としては、犬の登録:犬の所有者は所在地の市町村長に登録申請。登録犬への「犬の鑑札」公布。鑑札を付ける義務があります。犬が死亡したり、犬の所在地、所有者の住所・氏名の変更があった場合は、届出が必要です。また、狂犬病予防注射は、毎年一回(4月~6月)接種を受ける必要があります。接種後は、獣医師から「注射済証」をもらい市町村長に提示し、「注射済票」の交付を受け、犬につける必要があります。抑留は、都道府県知事が狂犬病予防員(獣医師)を任命し、狂犬病予防員は登録をされていない犬、予防注射を受けていない犬等を捕獲し、抑留することになります。輸出入検疫:検疫を受けた犬等(犬、ネコ、キツネ、アライグマ、スカンク)でなければ、輸出入することはできず、実際の検疫事務は農林水産省が行います。
狂犬病発生時の措置:①狂犬病にかかった犬、疑いのある犬等を診断した獣医師又は犬の所有者は、保健所長への届出義務があります。また、獣医師又は所有者は、その犬等の隔離を義務付けられます(発症するまで当該犬は殺処分しません。確定診断は死亡後の脳の病理検索により行います)。その後の対応(疫学調査、一斉検診、移動禁止、交通遮断・制限など)、については、国、地方公共団体より必要な指示が出されます。
狂犬病予防員-具体的にどのような任務を行うのか。狂犬病予防法に従って都道府県知事
は、当該都道府県の職員で獣医師であるもののうちから狂犬病予防員(予防員)を任命し
なければならない(法第3条)。その職務は、法第6条以降に書かれています。主には、登録をされていない犬、予防注射を受けていない犬等を捕獲し、抑留することが任務となります。犬を抑留したときは、所有者に引き取るべき旨を通知し、所有者の知れていないものについては捕獲した場所を管轄する市町村長に通知しなければなりません(市町村長は、通知を2日間公示する)。公示期間満了の後1日以内に所有者がその犬を引き取らないときは、予防員は政令の定めるところにより、これを処分します。
狂犬病が発生した時は、診断した獣医師又はその所有者は、直ちに、その犬等を隔離しなければなりませんが、予防員は隔離について必要な指示をすることができます。隔離された犬等は、予防員の許可を受けなければこれを殺してはならず、犬等が死んだ場合には、その所有者は、死体を検査又は解剖のため予防員に引き渡さなければなりません。予防員は、病性鑑定のため必要があるときは、都道府県知事の許可を受けて、犬等の死体を解剖し、又は解剖のため狂犬病にかかつた犬等を殺すことができます。公衆衛生又は治安維持の職務にたずさわる公務員及び獣医師は、狂犬病予防のため、予防員から協力を求められたときは、これを拒んではならないと書かれています。
狂犬病について質問させていただきます。狂犬病は、ヒトが感染する可能性もあると聞いたことがあります。実際ネットで調べたところそういった事例は認められているようです。それはつまり狂犬病予防対策などで狂犬病と多く関わることになる予防員・獣医師にも可能性があると言えます。検疫はイヌ・ネコ・アライグマ・キツネ・スカンクが対象動物と教えていただきました。では、感染の可能性を持っている獣医師や予防員は検疫を受けないのでしょうか。ヒトは狂犬病に罹ります。しかし、食肉動物と違い、発症した人が人を咬んで狂犬病を感染させることはありません(極めて例外的に臓器移植で感染した例はありますが)。そのため狂犬病汚染国から来た人を検疫することはありません。国内には狂犬病はないのでワクチンは打ちませんが、狂犬病汚染国に行ってリスクのある仕事をする場合は、通常2回のワクチンを打っていきます。国内検疫でもリスクがある場合は、ワクチンを打つ必要があると思います。
狂犬病予防法について、コウモリは輸入禁止にしたために対象ではないということですが、現存しているコウモリは狂犬病をもっている可能性もあると思いますが、なぜ、対象に入らないのでしょうか。最近話題のヒアリ同様、輸出入のときのコンテナなどに紛れて入ってくる可能性もあると思い、疑問に思いました。狂犬病の検疫対象動物は、国内への動物輸入時に狂犬病予防法に基づいて法定検疫をする対象動物です。コウモリは輸入できないので対象動物にならないという意味です。コンテナなどに紛れて入った例は、ハワイで狂犬病ウイルス陽性のコウモリが紛れ込んで問題になりました。この場合は、輸入時の貨物(コンテナ)などの検査で摘発するので、輸入動物検査ではありません。
ペットフード安全法は今の段階では対象動物が犬と猫のみなのか:①ペットフードの中で
犬猫のペットフード生産が群を抜いていること、②問題が起きた場合の社会的影響が大きいこと、③海外でも沢山の事例が起きていることなどが理由でしょう。行政は規制をかけるのに優先順位を決めるので、通常、全てのペットフードに関して、一度に法制化することはありません。
輸出入検疫-対象動物が犬猫以外に3種類あるがなぜこの3種類なのか。同じネコ科のライオンなどは対象動物ではないのはなぜか。イヌ、ネコ、キツネ、スカンク、アライグマは、ヒトに狂犬病ウイルスを感染させやすい動物として、狂犬病予防法で輸入検疫を義務づけた動物種です。ネコ科の動物と言う意味ではありません。ライオンはワシントン条約のII種なので輸入可能ですが、輸出国の証明書等が必要です。
細胞浸潤:病原体や異物が体内に入って炎症反応を起こすときに白血球等がその部位に集まってくることを、病理学では細胞浸潤(cellular infiltration)といいます。
廃棄物処理法→産業動物は産業廃棄物、犬猫は一般廃棄物として処理されると学びました。なぜ、犬猫はゴミとして処理されるのか分かれば教えてください。法律では人は「ヒト」、人以外の動物は「モノ」として扱われています。そのため人を殺せば「殺人罪」ですが、動物を殺した場合は「器物損壊罪」です(虐待があれば「動物愛護および管理に関する法」でも罪になります)。そのため産業動物の死体は産業廃棄物に、犬猫の死体は産業廃棄物以外ということで一般廃棄物に分類されています。
エキノコックス、どのような症状をもたらすのか?自然宿主の食肉動物では症状はありません。エキノコックス症を示すのは、中間宿主(ネズミ、ヒト、家畜、展示用霊長類など)です。虫卵を中間宿主が摂取すると、肝臓で原頭節となり無性生殖を繰り返し、肝臓の中に大きな嚢胞を作ります。成虫と違って駆虫薬が効きません。ヒトでは発症までに10年近くかかるので、発見されると外科的に切除するしか方法はありません。症状は、感染初期の嚢胞が小さい内は無症状です。やがて肝臓腫大を惹き起こし腹痛、胆管を閉塞して黄疸を呈して皮膚の激しい痒み、腹水が起こることがあります。肝臓以外では、肺が侵され咳、血痰、胸痛、発熱が見られます。嚢胞が体内で破れ、包虫が散布されて転移を来たす事もしばしばあります。内容物が漏出するとアナフィラキシーショックを起こすことがあります。
虐待(動物虐待)→今までにも出てきたことがある単語だが、実際どこから虐待と判断されているのか。ケースバイケースで一線を引くことは難しいと思います。むごい扱いをすることを繰り返したり、習慣的に暴力をふるったり、冷酷・冷淡な接し方をすることなど抽象的になると思います。法でいうなら、その判断は慣習法、判例法あるいは条理のような不文法のカテゴリーに入ると思います。
向精神薬(向精神薬と麻薬の境界はどこなのか):明瞭ではありません。向精神薬は非常に広い概念です。基本的に、精神に作用する(「脳」に作用することで精神に作用する)薬は全て向精神薬になります(この意味では麻薬は向精神薬です)。臨床的には、「精神疾患を治療する薬」を向精神薬としているので、抗うつ薬(例:イミプラミン)、抗不安薬(例:ベンゾジアゼピン)、睡眠薬(例:バルビタール)、抗精神病薬(例:パリペリドン)、気分安定剤、その他、抗パーキンソン病薬、抗てんかん薬などいろいろです。麻薬は、国により薬物の範囲が異なりますが、日本では法律で古典的な麻薬であるアヘン、モルヒネ、ヘロイン、コカインの他に、THC(テトラヒドロカンナビノール、大麻の成分), LSD(リゼルグ酸ジエチルアミド, 化学合成), MDMA(メチレンジオキシメタンフェタミン、化学合成)が麻薬に分類されています。
麻薬および向精神薬取締法、覚醒剤取締法→ヒトだけでなく動物にも麻薬や覚せい剤があるのか?ヒトと違って動物が麻薬や覚せい剤を使うわけではありません。動物の麻酔に使っていた医薬品が、麻薬等の指定を受けているので治療用に使う際に許可がいるのです。例えば、麻薬に相当する薬剤は塩酸ケタミンの注射剤、向精神薬系では第1種製剤がセコバルビタール、第2種製剤アモバルビタール、ペントバルビタール、第3種製剤のジアゼパム、フェノバルビタール、ロラゼパム等です。一般の動物病院では、獣医師が麻薬施用者の免許を受け、麻薬・向精神薬の麻薬管理者として管理します。医療用に指定された向精神薬は、麻薬及び向精神薬取締法で、医療上の有益性・乱用の危険性を考慮し、等級分けされ規制されています。
再生医療等製品とは?「再生医療等製品は、以下に掲げる製品であって、政令で定めるものをいいます。(1)ヒト又は動物の細胞に培養等の加工を施したものであって、①身体の構造・機能の再建・修復・形成するもの、②疾病の治療・予防を目的として使用するもの、(2)遺伝子治療を目的として、人の細胞に導入して使用するもの」です。動物を対象とした再生医療が盛んになれば、この定義も変わってくるでしょう。
輸入検疫:日本で動物輸入検疫が行われているのは国際線を扱う空港や港のみですか?そうです。空港では成田空港と関西空港が大規模です。動物検疫所は28カ所(支所を含む)、所属する空港が43空港、港湾が58港です。
レプトスピラ犬とは?レプトスピラはスピロヘータ目に属するレプトスピラ科、レプトスピラ属の細菌です。多数の細菌株(血清型では250以上)があります。人獣共通感染症の病原体もあります。ヒトは古くからレプトスピラ症(ワイル病、アキヤミなど)に悩んできました。主として野生のげっ歯類が保有していますが、種々の動物に感染し、腎臓で増殖し、尿中に排出されて、人では飲み水など水系感染します。通常、ヒトからヒトへの感染は起こりません。国内でレプトスピラ症の原因となった菌の血清型は少なくとも14種類あります。1997年4月に牛、豚、犬などを対象として、7血清型による疾病が監視伝染病(届出伝染病)に指定されています。犬からは、カニコーラ、イクテロヘモリジア、コペンハーゲニー、ヘブドマディス、オータムナーリス、オーストラーリスの6血清型が分離されています。レプトスピラ菌に感染したイヌがレプトスピラ犬です。ワクチンもあります。
JAS法とは具体的に何ですか?平成29年6月にJAS法は、「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」から、「日本農林規格等に関する法律」に改名されました。旧法ではJAS規格の対象が、モノ(農林水産物・食品)の品質に限定されていましたが、モノの「生産方法」(プロセス)、「取扱方法」(サービス等)、「試験方法」などにも拡大されたためです。JAS法は、基本的に農林物資の品質の改善、取引の単純公正化、生産・消費の合理化を図り、農林物資の品質に関する適正な表示を定めた法律です。飲食料品が一定の品質であることや特別な生産方法で作られていることを保証するJAS規格制度と、原材料・原産地など品質に関する一定の表示を義務付ける品質表示基準制度を規定しています。
生産動物に関わるところで、「と畜場に入るまでが農水省、入ってからは厚労省」が責任を負うとありましたが、もしと畜場の入り口(境目くらい)で、何か問題が起きた場合はどちらに責任があるのですか?ケースバイケースです。しかし、実際には、なるべく相手の領域として、責任を回避してしまおうとするケースが多いと思います。しかし、一応、と畜場の敷地内入れば厚労省の管轄になるでしょう。しかし、厚生労働省管轄といえども、生体検査で口蹄疫のような家畜法定伝染病が見つかれば、当然、家畜衛生保健所経由で農林水産省に連絡されます。
ポジティブリスト制度→どのようなものか詳しく知りたい。平成15年食品衛生法の改正があり、ポジティブリスト制が導入されました。食品中に残留する農薬、飼料添加物と動物用医薬品について、一定の量を超えて農薬などが残留する食品等の販売を原則禁止するものです。それまではネガティブリストでA,B,Cは基準値以上はダメという方式でしたので、残留基準が設定されていない農薬(X,Y,Z)等が食品から検出されても販売禁止措置がとれませんでした。ポジティブリスト制では、全ての農薬等について、残留基準を設定し、基準を超えて食品中に残留する場合その食品の販売を禁止するというものです。言い換えれば、リストにあって(P,Q.R……)、基準値以下であればOK(ポジティブ)、リストにないもの(無登録農薬など、ネガティブ、U,S,T…)が検出されればダメという考え方です。
リスク分析:食品の安全性評価等を行う時に考えられた分析方法で、リスク評価とリスク管理とリスクコミュニケーションで構成されています。リスク分析の考え方はコーデックス(国際食品規格)委員会が提案した概念で、日本では、2003年に制定された食品安全基本法により食品安全行政に導入されました。この法律によって、リスク評価機関として、内閣府に食品安全委員会が設置されました。同時に、リスク管理機関である厚生労働省に食品安全部、農林水産省に消費・安全局が設置されました。
様々なところに届出として「遅滞なく」という表現がありますが、遅滞なくはスピードとし てどの程度なのですか?面白い質問です。行政用語です。確かに非常によく見ます。届出 等で時間的なスピード(緊急性)の順番では、「直ちに」→「速やかに」→「遅滞なく」 となっています。「直ちに」届けねばならないなどの条文の場合、届出がないと法律行為 そのものが作用しなかったり、許可・対応が効力を発揮しなかったり、許認可等の取り消 しや罰則の適用があったりする、重要な届出に当たります。感染症などでは24時間以内 (食中毒)というのもあります。また、「直ちに」と「遅滞いなく」という条文には、罰則 規定が伴うものが多いです。「遅滞なく」には届出の緊急性よりも届け出ることの重要性 を示唆していると思います。「速やかに」は、罰則規定に係るものは、比較的少ないよう です。届出には7日以内(5類感染症)と定められているものもあります。
輸入動物について:輸入動物の検疫は厚労省の管轄であるのに農水省が検疫施設を持っているの
はなぜですか。厚労省が管轄を行うのであれば農水省の施設を使わないで厚生省で施設を作って 管理したほうが効率良いように思えます。明治以来、家畜(家畜伝染病予防法)および犬(狂犬病 予防法、拡大でネコ、キツネ、スカンク、アライグマ)は、農水省の動物検疫所で法定検疫をやって きました。動物由来感染症でサルの法定検疫が始まったとき、これまでの実績からの農水省に委 託することになりました。その他の動物は基本的に繁殖個体で外国政府の衛生証明書が添付され ていることをチェックすることになります(書類審査は厚労省がやります)。
緊急指定種:絶滅危惧種の一つという解釈であっていますか?緊急指定種は、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」第5条に基づき、環境大臣が指定する生物種です。特にその保存を緊急に図る必要があると認められる生物種について、捕獲・殺傷、譲渡、輸出入、陳列等を禁止する緊急的な措置を取ります。指定の期間は、3か年が限度です。これまで、緊急指定種に指定された生物種は、ワシミミズク、イリオモテボタル、クメジマボタル、タカネルリクワガタ、ケラマトカゲモドキの合計5種です。
トレーサビリティ法:図の解説が復習時に混乱して分からなくなったため。トレーサビリティ法は正確には「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」といいます。潜伏期の長いプリオン病である牛海綿状脳症(BSE)が発生した時、5年以上前にさかのぼって、陽性牛と同一農場で同一飼料を食べた子牛の戻り調査が必要になりました。またBSEのまん延防止措置の的確な実施や、食の安全・安心につながる個体識別情報の提供の促進などを目的として、この特別措置法が施行されました。農家で牛が生まれた時、個体ごとに10桁の番号をもらい、耳標として個体識別できるようにします。その後、この番号は肥育農家、と畜場、加工処理、販売まで繋がり、10桁の番号を入力すれば、いつでも、だれでも、その牛の履歴を知ることができます。
BSE特別対策措置法のうち、そもそもBSEがなにかわからない:イギリスで1980年代から流行
した牛のプリオン病です。原因は肉骨粉を飼料(代用乳、人工乳等)として利用したためと考えられています。平均5年の潜伏期で進行性の神経障害を示し、100%死亡します。脳が組織病理学的に海綿状(スポンジ状)に穴が開くので、牛海綿状脳症(Bovine Spongiform Encephalopathy: BSE)と命名されました。物流(生体牛や肉骨粉など)によって世界の25か国以上が巻き込まれました。
第3回は、いよいよ各論にはいります。最初は獣医師および獣医関連専門家(VPP)にとって一番基本となる法律、「獣医師法」と「獣医療法」を中心に紹介します。第2回で説明した内容を詳しく説明していきますから、理解して下さい。法律解釈だけだと、どうしても退屈してしまいますので、できるだけ図を多くしました。また、判例のあるものについては実例を紹介し、違反に対しどのような処罰が下るのかを見てみましょう。
公衆衛生と保健衛生の違いは?よく考えてみるとあまり差がないように思います。歴史的
には保健衛生はドイツ医学(北里柴三郎、長與專齋のころ)の欧州衛生学から、新しい公 衆衛生は戦後の米国医学(GHQ、総合指令本部)から積極的に入ってきたように思いま す。公衆衛生の定義には,いろいろなものがあります。「共同社会の組織的な努力を通じ て,疾病を予防し,寿命を延長し,身体的・精神的健康と能率の増進をはかる科学・技術 (サイエンスであり、テクノロジー)である」という定義が分かり易いかと思います。
診察と診療はどこが違うのですか?診察は、病気の有無や病状などを判断するために医療
従事者が患者(患畜)の身体を調べたり患者(畜主)に質問したりすること。治療とは、
病気やケガを治すこと。診療は、医療従事者が診察及び治療、予防などを行うこととされ
ています。診療行為のほうが診察(具体的行為)よりも包括的になりますね。
オウム病:オウム病クラミジアChlamydophila (Chlamydia) psittaci が本症の病原体です。オウムインコ類など愛玩用の鳥からヒトに感染し,肺炎などの気道感染症を引き起こします。動物園での関連例のほか、最近、鳩からの感染例や妊婦での感染死亡例が報告されています。感染症法では第4類に分類されています。
業務の独占:一般的に、ある業務に対して、ある資格を有する者のみが行うことができるこ とを法令により規定されている資格をいいます。獣医師に関しては名称独占(獣医師しか獣医師と名乗れない、無資格者が紛らわしい名前「動物医」などと名乗ることはできません。)と業務独占資格(獣医師しか診られない対象動物が法令で定められています)があります。
獣医師道(具体的な内容は何か?):法律としては書かれていませんが、獣医師のあるべき道です。日本では獣医綱領(獣医師の誓い95年宣言)が近いかと思います。人類は、地球の環境を保全し、他の生物と調和を図る責任をもっている。特に獣医師は、動物の健康に責任を有するとともに、人の健康についても密接に関わる役割を担っており、人と動物が共存できる環境を築く立場にある。獣医師は、また、人々がうるおいのある豊かな生活を楽しむことができるよう、広範多岐にわたる専門領域において、社会の要請に積極的に応えていく必要がある。獣医師は、このような重大な社会的使命を果たすことを誇りとし、自らの生活をも心豊かにすることができるよう、高い見識と厳正な態度で職務を遂行しなければならない。 以上の理念のもとに、私たち獣医師は、次のことを誓う。1 動物の生命を尊重し、その健康と福祉に指導的な役割を 果たすとともに、人の健康と福祉の増進に努める。2 人と動物の絆 ヒューマン・アニマル・ボンド を確立するとともに、平和な社会の発展と 環境の保全に努める。3 良識ある社会人としての人格と教養を一層高めて、専門職としてふさわしい言動を心がける。4 獣医学の最新の知識の吸収と技術の研鑽、普及に励み、関連科学との交流を推進する。5 相互の連携と協調を密にし、国際交流を推進して世界の 獣医界の発展に努める。
獣医道審議会令:獣医事審議会はありますが、獣医道審議会はありません。獣医事審議会令は、獣医師法(法第26条)に基づき、政令で獣医事審議会について決めたものです。
獣医師免許の中に心身の障害により獣医師の業務を適切に行うことが出来ない者として農林水産省で定める者は獣医師免許が取れないとあります。そこで質問です。現在、自閉症を描くドラマ「グッド・ドクター」が放映されており、自閉症でも医師になれることがドラマの中で描かれました。自閉症患者でも獣医師になれますか?アスペルガーのような自閉症では、医師になった例があるようです。実際、自閉症と言っても沢山の種類があります。獣医師としての業務が適切に行うことができるのであれば大丈夫と思います。実際には個別に判断されるのではないでしょうか?そのような事例が起きた場合は、獣医事審議会で検討されると思います。
心身の障害:これにより獣医師の業務を適正に行えない者として省令で定めるものの対象としててんかん患者は含まれますか?含まれない場合又は法律の範囲内で行える場合どのような注意や処置が必要になりますか。難しい質問です。障害者に係る欠格条項(63制度)一覧をみてみましたが、獣医師に関しては、具体的に癲癇については書いてありません。癲癇が欠格条項に明示されているものは、狩猟、自動車運転免許でした。癲癇が法的に精神障害、精神病に入るかという問題ですが、1993年12月に心身障害者基本法が改正され、「障害者基本法」が成立したことにともない、てんかんをもつ人への保障を考慮し、障害者と定義されました。資格制限は絶対的欠格事由と相対的欠格事由に分けられており、前者は「…..の者には免許を与えない」という厳しい制限であるのに対し、後者は「…..の者には免許を与えないことがある」というゆるい制限です。制限を受ける具体的免許・資格に関しては様々な通知、通達、運用で規定されているので、一人一人の症状に基づき、検討されるべきと思います。実際の事例が生じた時は、獣医事審議会にかかるのではないでしょうか?
獣医師免許の取り消しについて:獣医師免許を取り上げられた場合、もう一度獣医師免許をとることは可能なのでしょうか。また、その場合はもう一度、学校に行く必要があるのでしょうか。行政処分として獣医師免許取り消し処分の例がないので明らかではありませんが、医師では取り消し後、数年で免許が戻る例があります。医師の処分、再免許にかかる根拠規定には「取消処分を受けた者であつても、その者がその取消しの事由となった事項に該当しなくなつたとき、その他その後の事情により再び免許を与えるのが適当であると認められるに至つたときは、再免許を与えることができる」。と規定されています。
獣医師の許可を得る、もしくは獣医師が依頼するなどして獣医師ではない人が診療した場合 はどうなんですか?業務としての診療の資格は獣医師しかありません。これは国から与え られた資格なので、資格のない人に獣医師が依頼する権限はありません。問題が起きて訴 えられた場合、獣医師も依頼されて診療した者も罰の対象になるでしょう。
獣医師法・獣医療法はなぜ全動物ではなく飼育動物に限っているのですか?通常、獣医師の診 療を考えた 場合、飼育者(オーナー)が病院に連れてくるか、往診を依頼するので、対
象は原則的 に人が飼育している動物になります。ただし、ケースによっては、飼育動物
でない野生 動物が対象になることもあり得ます。
成年被後見人・被保佐人:成年被後見人とは、常に 判断能力を欠いている人、例えば脳死 認定された人や重度の認知症を患っている人のことを指す。そして、被保佐人とは、判
断能力の著しく不十分な人、例えば日常のことならできるが、大きな買い物や契約をす ることが難しい人や中度の認知症を患っている人のことを指す。判断能力レベルによって 類型が分けられている。また、獣医師の免許(第三条)ではこの2つに加え、未成年者も免 許が与えられない対象となる。
禁固の年数は懲役のように決まっているのか?無期と有期があります。有期は原則として1ヶ 月以上20年以下です(但し、刑を加重する場合には30年まで、減軽する場合は1ヶ月未満 にすることができます)。
獣医師が行政処分された事例で、免許の取り消しがないのはな ぜか?司法処分、及び業務 停止の行政処分の事例はありますが、獣医師の免許はく奪(取り消し)の例はないようで す。しかし、医師では、免許はく奪の事例が、2010年3件、準強制わいせつ・住居侵入、 詐欺。2011年5件、強制わいせつ、不同意堕胎、暴力行為など。2012年8件、覚せい剤取 締法違反、児童ポルノ、集団準強姦未遂など。2013年5件、殺人未遂・爆発物取締罰則違 反、心身の障害、覚せい剤取締法違反など。2014年8件、殺人・虚偽診断書作成・同行 使、強制わいせつ・児童福祉法違反など。2015年薬事法違反など、過去5年間で約30件も はく奪されています。獣医師の場合は、まだ前例がないので行政処分が出にくいのかもし れませんが、該当する事象が起きれば免許取り消しもあり得ると思います。
獣医師免許は社会的・法律的に問題のないVPPの人は試験を受けられますか?残念ですが受 けられません。獣医師国家試験の受験資格は、獣医学の正規の課程(6年)を修めて卒業し た者です。
獣医師が診療中・手術中にミスを犯して飼い主に訴えられた場合、その場で共に助手をして いた獣医看護師も罪に問われるのでしょうか?ケースによります。もっぱら獣医師のミス によるものであれば、獣医看護師が助手をしていたからと言って罪には問われません。さ らに、現状では獣医看護師に関する法も規定もないので、獣医療補助行為の範囲が明確で はありません。しかし、明らかに助手としての獣医看護師のミスが原因であった場合は、 看護師とその監督者であった獣医師の両者が罪に問われるのが、社会通念として一般的で はないでしょうか。
責任論ついて説明してください:刑事責任:被告が犯罪を行ったことに対して、刑罰を受け なければならない責任。民事責任:加害者が故意, 過失で被害者の権利、利益を損失させた ため生じる民法上の責任。行政責任:行政機関or 公務員が,自己の行為に関して究極的に は民衆に対し負う責任。社会的責任:市民(個人)は、社会で望ましい個人として行動す べきであるという責任。過失相殺:被害者が損害賠償請求をする時、被害者にも過失が あった場合、裁判所が被害者の過失に応じて賠償額を減額することです。
牛は診断書と検案書、仔牛は出産届出などがあります。他の家畜または展示動物はあるので すか?動物の死体を解剖し、死因を調べて死体検案書を書く場合には、その理由があるは ずです。研究用に野生動物の死体を解剖して論文を書いても検案書ではありません。検案 書を必要とするケースのほとんどは保険金支払いや民事訴訟などではないでしょうか?共 済保険に入っている家畜の、事故・死亡・死体(検案書)等の場合の書類は下記に書式が あります。牛、馬、豚が対象です。www.maff.go.jp/j/keiei/nogyohoken/kokuzi_ tsuchi/attach /pdf/index-41.pdfなど。鳥類でも民間保険があるので、必要であれば書くと思います。保険 に入っていない動物でも、正当な理由で求められれば、獣医師は検案書を書くと思いま す。民事訴訟の場合など。例えばリクガメのような貴重なペットを散歩中に犬に咬まれて 死亡した時は、カメの飼い主は慰謝料を犬のオーナー対象に訴えます。その時は獣医師の 死体検案書が重要な証拠になります。また、牛の出生はトレーサビリティ法により、届出 が必要なので書きます。
応召義務:過去の診療費不払いで診療拒否する事が応召義務違反になる可能性があるのはなぜですか?過去の診療費不払いがあったというだけの理由では、診療拒否の理由としては不十分ということです。最もケースによりますから、不払い額が非常に高額であったり、払う能力があるのに、何度も不払いが繰り返されたり、言いがかりや脅迫を受けるようなケースは、事情が違ってくるとは思います。
応召義務について:私法上の患者に対する義務はないとされていますが、「診療を求められ
た時…」の応召義務の定義は商法(私法)に関与してるでは、と思うのですが、公法とすれ ば、どれに当たるのでしょうか。「獣医師法」は、基本的に国(地方自治体)と獣医組織 についての規定を定めているので公法に入ると思いますが、診療行為をめぐる問題等は、 民法的な問題が多いと思います。しかし、国や地方自治体が応召を求めた時(例えば口蹄 疫の牛・豚の殺処分など)は、受諾の可否が問題になる時は公法的な問題でしょう。こう してみると、公法、私法と分けるのは、典型的な法律を除くと、案外難しいですね。
なぜ今でも応召義務があるんですか?国あるは個人が獣医師に緊急に診療行為を求めるこ
とがあるからです。獣医師は疾病にかかった動物の診療をもとめられたら応えるべきで
あるという規範が社会通念としてあるからでしょう(医は仁術である)。
ボアソナードがどういった人物か分かりませんでした。ポアソナード(1825~1910)は、 明治政府の法律顧問として来日しました。当時の日本にとって急務の課題だった不平等条
約の撤廃のため、国内法の整備に尽力し日本近代法の礎を築きました。フランス・ヴァン
センヌ市で生まれたボアソナードは、パリ大学文科および法科を卒業し、パリ大学法科大
学で教壇に立ち、1864年に法科大学教授資格試験に首席で合格しました。グルノーブル法
科大学助教授を経てパリ大学でアグレジェとして講義を担当していた時、日本政府が駐仏
公使を通して法学教育と法典編さんのために来日を懇願しました。はじめ難色を示しまし
たが受諾し、1873(明治6)年に来日しました。この時、契約期間は3カ年でしたが、
1892年まで更新しました。
検案書(どのような内容を書くのか):主な内容としては、検案年月日、検案した動物の種類、性、年齢(不明の場合は推定)、特徴、所有者または管理者(飼育者)の氏名、名称、住所、死亡年月日時(不明の場合は推定)、死亡場所、死亡原因、死亡の状態、解剖所見(検案のみで、解剖をしなかった場合には不要)などです。
検案書と死亡診断書の違い:患畜の死因が継続的に診療中の疾患によるものである場合につ いては、診療獣医師は死亡診断書を作成する。それ以外の場合は死亡診断書を作成するこ とはできず、獣医師は死体を検案し、死体検案書を作成しなければならない。死体検案書 は獣医師が家畜の死亡事由などについて記した書類であり、死亡診断書と同等に死亡を証 明する効力を持つ。実際に検案した獣医師のみが死体検案書を発行できる。
獣医師の義務として、診療を求められたときは、正当な理由がなければ拒んではならない。 とあり、正当な理由として認められない事情で診療時間外とありましたが、夜中や、私的 な理由で出かけていた場合も帰って来て、診療を行わなければならないのですか?私的な 理由であっても、獣医師が不在の場合は応召の義務の対象ではないので、その時点で断っ ても問題はないと思います。ただ、医師の例では、①「診療時間を制限している場合(夜 間診療をしない?)であっても、これを理由として急施を要する患者の診療を拒むことは できない(昭和24年9月10日医発第752号厚生省医務局長通知「病院診療所の診療に関す る件」)。② 休診日であっても、急患に対する応招義務を解除されるものではない(昭和 30年10月26日医収第1377号厚生省医務局長回答「診療所の一斉休診の可否につい
て」)。③休日夜間診療所、休日夜間当番医制などの方法により地域における急患診療が 確保され、かつ、地域住民に十分周知徹底されているような休日夜間診療体制が敷かれて いる場合において、医師が来院した患者に対し休日夜間診療所、休日夜間当番院などで診 療を受けるよう指示することは、医師法第19条第1項の規定に反しないものと解される。た だし、症状が重篤である等直ちに必要な応急の措置を施さねば患者の生命、身体に重大な 影響が及ぶおそれがある場合においては、医師は診療に応ずる義務がある(昭和49年4月 16日医発第412号厚生省医務局長回答「医師法第十九条第一項の診療に応ずる義務につい て」)。となっています。
獣医師自らが出産に立ち会わなければ出生証明書、死産証明書が出せないとありますが、立 ち会いの途中からVPPのみが立ち会った場合はどうなりますか。まだ動物看護師もVPPも 法定に認められた存在ではありません。従って、その職務は成文化されていません。現時 点では獣医師法しかないので、VPPが立ち会っても証明書は書けないと思います。
ホルマリン固定:病理組織標本を作る時に用いられるホルマリン (formalin) は、ホルムアル デヒドの水溶液(ホルマリン原液を3〜5%に希釈したもの)のことです。無色透明で、刺 激臭があり、生体には有害です。ホルムアルデヒドは、組織の細胞内外に浸透し、分子中 のアルデヒド基が蛋白質のアミノ基に結合し、さらに架橋することで、生物活性を働かな くさせる作用があります。ホルマリン液に浸漬することで、蛋白質の変性、腐敗などをは じめとする死後変化は停止し、固定化します。これをホルマリン固定と言っています。
臨床研修:獣医師法第16条で診療を業務とする獣医師は、獣医師免許を受けた後も、大学
の診療施設又は農林水産大臣の指定する診療施設において、臨床研修を行うように努める もの(努力義務)とされています。大臣の指定する臨床研修施設は、平成30年7月30日現 在で、牛や馬などの産業動物は11施設(単独2共同9)、犬や猫などの小動物は5施設(単 独4共同1)あります。なお、大学は17施設(国立10公立1私立6)です。今治キャンパス も入っています。
アメリカ医師会倫理綱領とは何でしょうか?アメリカ医師会(American Medical Association)が採択している医の倫理綱領(Code of Medical Ethics)です。医の倫理規制には、人間の尊重、患者の最善の利益の保護、患者の自発的な自己決定(インフォームド・コンセント)の保証、利益相反の回避、個別患者の利益と社会の利益の調整、国際的なガイドラインへの貢献などが書かれています。ちなみに日本の医の倫理綱領は、医学および医療は、病める人の治療はもとより、人びとの健康の維持もしくは増進を図るもので、医師は責任の重大性を認識し、人類愛を基にすべての人に奉仕するものである。①医師は生涯学習の精神を保ち、つねに医学の知識と技術の習得に努めるとともに、その進歩・発展に尽くす。②医師はこの職業の尊厳と責任を自覚し、教養を深め、人格を高めるように心掛ける。③医師は医療を受ける人びとの人格を尊重し、やさしい心で接するとともに、医療内容についてよく説明し、信頼を得るように努める。④医師は互いに尊敬し、医療関係者と協力して医療に尽くす。⑤医師は医療の公共性を重んじ、医療を通じて社会の発展に尽くすとともに、法規範の遵守および法秩序の形成に努める。⑥医師は医業にあたって営利を目的としない。となっています。
公法:私人と私人の間の関係(問題)を規律する法が私法です。この私法に対置される法が公法になります。一般的には、①国家と国民(私人)の関係の規律あるいは②国家(行政など)の規律を行う法です。狭義には、民事法と刑事法が私法に、憲法と行政法、国際法が公法に分類されます。さらに租税法、財政法、社会保障法、あるいは広義には刑法、訴訟法も公法に含まれます。しかし、実際には両者に明確な一線を引くことは難しいようです。獣医師法は基本的には国と獣医師の関係(役割、義務、規律)であり公法的な面が強いと思いますが、例えば、応召(診療依頼)の義務を患者からの依頼と読めば私法的になり、国からの依頼(公的依頼)と読めば公法的になると思いませんか?大きな分類としては意味を持つが、それによって全てが分けられるとは思いません。
獣医師の義務で診療簿および検案簿の作成、保存と書いてありました。牛等はTSEの潜伏
期間をふまえ8年の保存を義務付けられるのはわかりますが、鹿、めん羊、山羊も8年なの はどうしてですか。TSEは伝達性海綿状脳症の総称で、プリオンが原因と考えられてい ます。鹿にはCWD(chronic wasting disease)というプリオン病が、羊にはスクレイ ピーというプリオン病があります。また、山羊、羊はBSEに対する高い感受性を持って います。そのため牛と同じく8年となりました。
診療簿及び検案簿の作成・保存義務(診療を義務とするか否かにかかわらずというところが
分からなかった)。検案書は獣医師が家畜の死亡事由などについて記した書類のことであ
り、死亡診断書と同等に死亡を証明する効力を持ちます。実際に検案した獣医師のみが死 体検案書を発行できます。しかし検案する者は獣医師であって、必ずしも診療獣医師であ る必要はありません(病理解剖獣医師など)。しかし、この規定はどこにありましたか?
診断書等の交付義務についてです。交付を求められなかったときは基本的に書かないとい
うことですか?もしそうであった場合、診療簿や検案書は農水省で定める期間保存しなけ ればならないとあるため後々求められても大丈夫だと思いますが、出征証明書や死産証明 書は求められた場合どうするのですか?そもそも、時間がたって求められることはあるん ですか?交付を求められなければ、書きません。しかし、診療簿は書きます。後になって 求められる場合は、ケースによります。カルテ等を基に診断書を書いたりはしますが、訴 訟や保険その他の理由で求められた場合、拒否することも可能です。
無契約診療にあるように、通報のあった都道府県はその動物を収容しなければなりませんが、それは誰がしているのですか。無契約診療は、診療契約を伴わない診療です。不慮の事故に遭った動物の利益(所有者の利益)を守るための獣医療と言えます。治療後に所有者が判明すれば所有者に戻ります。所有不明であれば保健所等に善処を依頼することになります。退院時までに所有者が判明しなければ、保健所から動物愛護センター等に連絡がいくと思います(里親さがし)。診断や治療に要した費用は所有者に請求できますが(民法第702条)、所有者の判明しない場合には,保健所を通じて当該自治体と相談することになります。
往診:レントゲン設備は往診車への搭載は不可能に思えるが、無くても開業はできるのか?
日本獣医師会のQAでは、「診療施設の開設は家畜保健衛生所に届け出をしなければなりま せん。施設を認可するか否かは其々の都道府県で異なりますので、開設地の県庁畜産課or 最寄りの家畜保健衛生所へお問い合わせください」。となっています。他方、獣医さんで 「往診専門のため、手術や詳しい検査(レントゲン等)はできませんが、予防接種やワク チン接種、ノミやダニの予防、簡易的な健康診断、薬の処方、爪切りや耳掃除のケアなど を行い犬猫の健康をサポートしています。また、手術などの高度医療が必要だと判断した 場合は、提携病院への搬送や紹介を行いますのでご安心ください」。とありますから、県 によってはレントゲン設備のない往診車による往診専門獣医師を認めているようです。
獣医療法(医療法は8章77条で構成されているのに対して獣医療法は22条で構成されて
いて違いがありすぎるのはなぜか。)獣医療法には章はありません。他方、医療法は章構 成で、選択支援、病院や法人組織(医療法人、推進法人等)など、獣医療施設と医療施設 の運営、規模、体制の違いが大きいために、医療法はその内容が多岐にわたっています。診療施設開設までの手順で、獣医師は開設10日以内に開設届書を提出すればいいとおっ
しゃってましたが、その10日以内であれば開設届書を提出していなくても、動物の診療な どを行っても良いのですか?法律的には可能です。実例として、「同様の例として休日を 利用した犬猫の譲渡会でのマイクロチップの埋込みなどについて相談があり、相談のあっ た診療施設へは開設状況を把握できるよう、開設前に家保へ事前連絡することを指導して いる。加えて、開設前に届出が可能となるように獣医療法第3条の整備を国へ求めていく必 要がある。」等の記載があります。
届出(10日以内の届け出が過ぎた場合、罰則はあるのか。)獣医診療施設開設について「届 出が遅れた場合、遅延理由書が必要です。なお、届出の義務を怠った場合、罰則が科せら れる場合があります」という記載があります。獣医療法第3条に「診療施設を開設した者 は、その開設の日から十日以内に、当該診療施設の所在地を管轄する都道府県知事に農林 水産省令で定める事項を届け出なければならない」。同法21条に「次の各号に該当する者 は、二十万円以下の罰金に処する。第三条の規定に違反して届出をせず、又は虚偽の届出 をした者」とあります。
等価線量:放射線防護のため、人体の各臓器の被曝線量を表す線量値。放射線を被曝した人
体組織の①臓器吸収線量に②放射線加重係数を乗じたものです。単位はシーベルト(Sv) として表示されます。臓器 T の等価線量 [Sv]) HT = (臓器 T の平均吸収線量 [Gy]) DT × (放射線 R の放射線加重係数) wRです。なお、放射線加重係数は、放射線の種類によって 値が異なり、X線、ガンマ線、ベータ線は 1、 陽子線は 5、 アルファ線は 20、 中性子線 はエネルギーにより 5 から 20 までの値になります。
獣医療提供体制:獣医療法第10条第1項の規定により、農林水産大臣がその責務として「獣
医療を提供する体制の整備を図るための基本方針」を策定し、獣医療を提供する獣医師の 確保に関する目標の設定を定めることになる。都道府県は、その基本方針に即して、獣医 師の確保に関する計画、何年先までに獣医師の各職域(公務員、産業動物診療医、ペット 動物診療医などに何人確保するか)を定めることができる。この体制が獣医療提供体制の 確保ということになります。
獣医療法について質問させていただきます。「獣医療提供体制の整備」で都道府県計画の推 進の中に“関係団体の協力”がありました。そういった団体の中に獣医師やVPPとして加 入して支援していくというような形はあるのでしょうか?①地方公務員になって県の農政 局や企画局に入れば、直接計画を作る側として参加できます。②ここでいう関係団体は、 現状では、獣医師会、NOSAI、小動物獣医師会などですが、獣医看護が国家資格になれば 獣医看護師会(?)も、また、VPP団体ができれば、こうした関連団体も体制整備にかか わってくると思います。
診療施設(診療施設に保健衛生の指導や健康相談などを行う施設が該当しないのはなぜ
か。)保健指導や衛生指導は獣医師法では獣医師の診療行為に当たります。施設ではあり ません。また、しつけや健康相談、保健衛生は動物愛護センター(動物指導センター)等 も行っています。しかし、保健所、福祉センター、動物愛護センターは厚労省関係(法律
は環境省の「動物愛護管理法」、厚労省の「感染症法」)なので、農水省管轄の法律(獣
医師法、獣医療法)には規定されていません。
輸血などの目的で動物病院にいる犬や猫は法律上どういう扱いになるのでしょうか。医院
の獣医のペットという扱いをされるのでしょうか。獣医のペットではないでしょう。輸血
用に目的をもって飼養されている動物ですから、カテゴリーとしては科学的利用、生物製
剤等の製造、安全性評価などの目的で飼養されている動物に近いので、広義には実験動物
のカテゴリーに入るかと思います。「動物愛護管理法」が関係することになると思いま す。血液そのものは「医薬品医療機器再生医療製品等法」に関係するでしょう。
犬糸状虫とは?:犬糸状虫(イヌ・フィラリアDirofilaria immitis)は、線形動物門、線虫類
のフィラリア(糸状虫)の一種で、蚊の吸血によって媒介されます(ミクロフィラリ
ア)。イヌを終宿主とし血液中(心臓)に寄生する線虫です。イヌのみならず、ネコ、イ タチ、アシカ、また稀にはヒトにも感染し、犬糸状虫症を引き起こします。
期待権:医療関係では「適切な診療が行われれば救命された相当程度の可能性がある」と
判断された事例で、適切な治療が行われなかった時、期待権侵害が認められる事例があ
る。
新制獣医師:獣医師法に定める獣医師の称号には、「得業士(旧制の専門学校の卒業生に与 えられた称号)又は獣医師法附則第19項(条)に規定する新制獣医師等がある。」と書か れています。また、衆議院獣医師法付則19項には、「第6項若しくは第7項の規定により免 許を受けた獣医師又は第9項の規定により免許を受けたものとみなされる獣医師は、新制 獣医師の称号を用いてはならない。」とあります。従って6項(昭和二十五年三月三十一日 までに旧法第一条第二項各号の一に該当する資格を得た者は、昭和二十五年六月三十日ま では、獣医師国家試験に合格しないでも、この法律の規定に従い、獣医師の免許を受ける ことができる。)、7項(前項に規定する者であつて自己の責に帰せられない事由により 昭和二十五年六月三十日までに同項の規定により獣医師の免許を受けることができなかつ た者は、その期間経過後でも昭和二十八年十二月三十一日までは、同項に準じ獣医師の免 許を受けることができる。)、9項(この法律施行の際旧法第一条の規定によつて獣医師 の免許を受けている者は、この法律の規定によつて免許を受けた獣医師とみなす。)で免 許を受けた者以外で、獣医師免許を受けた者が「新制獣医師」の称号を持つことになりま す。従って、通常の獣医師免許者の称号は新制獣医師ということになります。
第4回は獣医師に取っては歴史的にも、その存立基盤となっている「家畜伝染病予防法」について説明します。家畜伝染病の多くは、動物や動物由来製品の物流が拡大し、容易に国境を越えて広がる感染症(国際感染症あるいは越境感染症)として、グローバルな問題となります。そのため国際獣疫局(OIE)は、リストA,リストBに分類し、陸棲動物健康規範あるいは水棲動物健康規範を発行しています。国内では監視伝染病として、法定伝染病あるいは届出伝染病に分類し統御を図っています。また、最近、「飼料安全法」を参考に制定された犬猫のための「ペットフード安全法」についても解説します。
家畜共済保険:農家が掛金を出し合って共同準備資金とし、災害が発生したとき等に共済金 の支払いを受けて農業経営を守るという、農家の相互扶助を基本とした「共済保険」の制 度です。家畜共済の種類は、乳用成牛、成乳牛、育成乳牛、乳用子牛等、肥育用成牛、肥 育用子牛、その他の肉用成牛、その他の肉用子牛等、乳用種種雄牛、肉用種種雄牛、種雄 馬、一般馬、種豚、一般肉豚、特定肉豚の15種類です。対象となる事故は、加入家畜が 死亡したとき。獣医師から診療を受け、1~2日で死亡すると診断されたとき。病気で、獣 医師から治らないといわれたとき。行方不明(盗難を含む)となり、30日以上生死不明 のとき、谷や井戸に落ち、救えないとき。乳牛の雌、種雄牛または種雄馬が繁殖能力を 失ったとき。乳牛の雌が泌乳期に泌乳能力を失ったとき。肉牛の奇形の子牛が生まれたと き。肉豚を除き加入家畜が病気やけがをしたとき、です。
獣類伝染病予防規則とはどのようなものだったのですか?「獣類伝染病予防規則」では,① 牛疫,炭疽,鼻疽及皮疽,伝染性胸膜肺炎(牛肺疫),流行性鷲口瘡(口蹄疫),羊痘の6 疾病をまん延防止措置の対象とし,②獣医師・所有者(管理者)による届出義務,③牛疫 が発生した場合のと畜義務,④手当金の交付,⑤汚染物品(飼料など)の焼却・埋却義務 ⑥知事などによる移動制限の命令権限などに関する規定が設けられました。こうしてみる と現在の法定伝染病対応に似ていますね。
豚コレラ: 法定伝染病。対象動物は豚、猪、ペスチウイルス属の豚コレラウイルスが原因。
発熱、食欲減退、急性結膜炎を起こす。下痢、全身リンパ節や各臓器の充出血、点状出血 などが認められる。
家畜伝染病予防法のうち法定伝染病とは:法で定める家畜伝染病→法定伝染病(法第二条一項)。28種類あり疾病ごとに家畜の種類も定められている。また、家畜伝染病予防法施行令でその他の家畜も加えて定められている(イノシシやシカ)。これは政令で、政令で補いきれないものは省令で定め、随時対応していくようになっている(法はなかなか変えられないから)。家畜伝染病予防法施行規則では対象となる病原体が定められており、例えば、アジア株は入るけど弱毒株は入らないなど同じ種であっても対応に違いがある。また、特定家畜伝染病防疫指針によって法定伝染病のうち8種が省令で定められており、特定家畜伝染病防疫指針とは、家畜伝染病のうち特に総合的な発生の予防、蔓延防止処置を講じる必要があるものを指す。
家畜伝染病予防法の患畜と疑似患畜:(法第二条二項)患畜は病気にかかって発症した動
物、疑似患畜は患畜である疑いがある家畜、特定の伝染病疾病の病原体(8種類)に触れた または触れた疑いがあり、患畜となる可能性のある家畜のことである。幅広い解釈ができ るようにして落ちこぼれのないようにしている。腐蛆病はここに入らず、患畜・疑似患畜 という考えは当てはめられていない。また家畜伝染病予防法に含まれる狂犬病では対象と する動物に犬などの伴侶動物は含まれておらず、犬などは狂犬病予防法で定められてい
る。基本的に家畜伝染病予防法では、ウシやヒツジ、ヤギなどが狂犬病に罹った犬に噛ま れて発症する家畜の狂犬病のことを指す。日本ではないが、東南アジアでは野犬にウシが 噛まれて発症することがある。
法定伝染病に指定されている病気はどういった基準で指定されているのですか?病原体の伝 播力、疾病の重篤性、社会的・経済的被害の大きさ、海外からの侵入の可能性、国際感染 症(OIEのリスト)などを総合的に考慮したと思います。
腐蛆病→養蜂にみられるそうだが、どんな症状があるのか、人への感染はあるのか?人への
感染はありません。蜜蜂の細菌感染症で、ヨーロッパ腐蛆病とアメリカ腐蛆病がありま す。腐蛆病は国際獣疫事務局(世界動物保健機関:OIE)のリストB、「家畜伝染病予防 法」の法定伝染病にリストされる重要な伝染病です。感染した成虫から幼虫に感染し、幼 虫が死亡します。どろどろに溶ける場合(アメリカ腐蛆病)と、死体が無蓋房にみられ、 強い酸臭があり、死体は透明、汚白色。腐蛆は水分が多く、顆粒状を呈する(ヨーロッパ 腐蛆病)場合があります。
届出伝染病は、71種類あるのになぜ17種類の病原体だけ農林水産大臣に届けないといけないのでしょうか。この17種類の病原体は、法定伝染病の病原体が多く、容易に伝播しやすい、感染した家畜・家禽が重症になる、社会的・経済的な被害が大きいので、病原体の所持について分離した後、速やかに届出るようにしたと思います。
届出病原体:飼養していた家畜が17種のうちの一つに感染してしまったとして、その患畜を 飼っている飼い主は病原体を所持していることになりますよね?17種は7日以内だとして 他の53種はなにか決まりはあるのですか。病原体取扱規則は、病原体を研究室で分離・同 定した時から規制が始まります。農場ではありません。この17種類の病原体が陽性となっ た動物は、患畜として殺処分になります。ただし、馬インフルエンザは別で、隔離し治療 します。しかし、ウイルスが分離されたら、研究者はウイルス保持の届出が必要です。農 水省の規定では、重点管理病原体(3種)、要管理病原体(8種)、届出病原体(17種)の カテゴリーはありますが、その他については記載がありません。ただし法第46条21項に、 「監視伝染病病原体による家畜の伝染性疾病の発生を予防し、又はそのまん延を防止する ため必要があると認めるときは、当該監視伝染病病原体を取り扱う事業者の事業を所管す る大臣に対し、当該事業者による監視伝染病病原体の適切な取扱いを確保するために必要 な措置を講ずることを要請することができる」と書かれています。
届出病原体17種の所持は農林水産大臣に届け出なければならず、その他は都道府県知事に届け出なければならないのはなぜですか。それなら全部農林水産大臣に届け出ればいいのではないでしょうか。病原体取扱で、重点管理病原体、要管理病原体、届出病原体以外は、上記の記載です。伝染病の届出と病原体の届出のシステムは同じではありません。混乱しますよね。感染症法でも1~5類の病気と、取扱いの1種~4種が同じカテゴリーでないのと同様です。
届出しなければいけない病原体のなかの鳥インフルエンザの型はH5,H7のみでしょうか?法改正で、H5,H7以外でも、病原性が高いものは「高病原性鳥インフルエンザ」になりました。4週齢鶏8羽に接種して、10日以内に75%以上の死亡。また「低病原性鳥インフルエンザ」も法定伝染病、「その他の鳥インフルエンザ」も監視伝染病です。
届出:様々なところで出てくる「遅滞なく」というのはどの程度なのか?届出の際に、使わ れますが、「直ちに」→「速やかに」→「遅滞なく」は、決して同じ意味ではなく、スピー ド(緊急性・喫緊度)が異なっています。食中毒の場合は、直ちには24時間以内となって います。また速やかにと考えられる感染症法の5類感染症・全数把握は7日以内となってい ます。「遅滞なく」は正当な、あるいは合理的な理由があれば遅れが許されるというニュ アンスがありますが、他方「直ちに」や「遅滞なく」が用いられた場合、その懈怠は義務 違反とされることが多いのに対して、「速やかに」については訓示的な意味を持つにとど まることが多いようです。ただし、「速やかに」が使用されていても罰則が設けられてい る例もあるので、注意は必要です。
リスク回避(発生を予防):リスク回避とは、伝染の根本を断つという意味ですか?また、
具体的な方法はどんなことを行うのですか?いいえ、人獣共通感染症などの根本を絶つ
ことは困難です。当該感染症のリスク評価(発生のシナリオ、確率、社会的影響の推定な
ど)を行い、リスク回避措置(監視体制、事前調査、ワクチン接種、治療法開発など)を
とることです。
クライシス管理(蔓延を阻止)具体的に蔓延を阻止するにはどのようなことを行うのです
か?家畜感染症が発生した場合は、基本的には病原体の封じ込めです、①流行の拡大を止 める(動物の移動禁止、出荷停止、交通規制など)。② 封じ込めた域内の感染源となる動 物の処分(焼却、埋設)。③汚染区域の消毒です。そのほかに④事前のBCP(Business
Continuing Plan:事業継続計画)を作成し、シミュレーションや事前訓練を行うことも入 ります。
都道府県知事がなぜ色々なことを命じるのですか?愛媛県内でも保健所が東予、中予、南予
で分かれているので、同時に起こった場合だと各市長が殺処分などを命じてもいいのでは ないのですか?家畜伝染病予防法(感染症法も同じ)では流行の初期の抑え込みが最も重 要と考えています。そのため、感染症が発生した時の司令塔は農水大臣(厚労大臣)では なく、都道府県知事に全権委任をします。市町村長だと統一的な対応が取れないので知事 を司令塔にしています。この戦術の弱点は、都道府県を超えて感染が広がる場合で、その 時は国が動きます。
隔離の義務、患畜を隔離するだけで殺さなくて良いのですか?感染症によります。高病原性
インフルエンザや口蹄疫では、全群淘汰なので農場、養鶏場そのものを封じ込めて殺処分
になります。そこまでいかない感染症では、個体ごとに患畜を殺処分、疑似患畜を隔離す
ることになります。
蔓延防止について:感染症の流行などで、殺処分命令なのが出た施設は、徹底的な消毒さえ 終わればすぐにまた飼育はできるのでしょうか?それとも、しばらく空白期間を置くので しょうか?理論的には、すぐにでも飼育は可能ですが、実際には、流行の終焉宣言が出て (通常、最終発症例から平均潜伏期間の2倍の日数)、動物の移動制限解除が必要です。ま た当該農場は、再建計画、資金調達、再導入動物の調整・・・となり、廃業するか?再開 するにしても規模にもよりますが、相当の期間がかかります。
家畜伝染病になり、殺処分した生き物は焼くか埋めるかするという事を学びましたが、埋め る土地は誰のものですか。現在では、基本的に家畜の飼育者が飼育施設を設置する時に、 埋設地を確保しておくことになっています。しかし、口蹄疫のように伝播力が強く、容易 に感染症が拡大し、個別農家での対応が困難になる場合は、地域全体の処理計画として、 都道府県や市町村の単位で計画をたて、公用地を用いた埋却計画や焼却施設を利用した焼 却計画を作成します。
指定検疫物:競走馬にも検疫が必要となると思うのですが、どれぐらいの期間検疫が必要な のですか。また、犬という項目もありますが、災害などに派遣された災害救助犬も同じ扱 いになるのですか。家畜伝染病予防法に定められた「輸出入検疫」については、馬の場 合、基本的には輸出の時5日間、輸入時10日間のけい留検査が実施されています。ただ し輸出国で統御されている(指定厩舎で管理)招待競走馬は、輸入繋留は5日間です。災害 救助犬も同じです(以前は問題になりました)が、狂犬病予防法の改正で、ワクチン接 種・中和抗体価が有効であれば12時間で解放されます。また、、災害救助犬、補助犬は別 扱いになっています。
どういった理由で動物は輸入禁止なのですか?関連する法律により、考え方は異なります。 例:家畜伝染病予防法では汚染国からの家畜、家畜由来製品は清浄国に戻るまで輸入禁止 です。感染症法ではペストとプレイリードッグ、エボラ出血熱・マールブルグ病とサル、 ラッサ熱とマストミスといったように疾病と動物を組み合わせて、そのリスクを考え永続 的に輸入禁止としています。
家畜防疫員は知事によって獣医師の中から任命するとありましたが、これは家畜防疫員に
なりたい獣医の中から選ばれるのですか?また、何を基準に任命されるのですか?通常時 は、地方公務員に採用された獣医師で家畜保健衛生所などに配属される獣医師がなりま
す。蔓延防止時は、感染症によっては、産業動物獣医師は、ほとんどが一時的に家畜防疫 員を命じられるのではないでしょうか。
空港でお土産などにまぎれた持ち込み禁止物(外国の肉等)を探知する検疫探知犬のハンド
ラーには何か資格が必要なのでしょうか。麻薬探知犬は税関(財務省)管轄ですが、検疫 探知犬は農水省の動物検疫所の所属になります。日本では検疫探知犬とハンドラー育成の 歴史が短く。最初は家畜防疫官2名がオーストラリアの民間ハンドリング企業(ハンロブ) で、探知犬育成とともに訓練を受け帰国しました。というわけで現状では家畜防疫官なの でVPPであれば農水省のII種国家試験に合格し、家畜防疫官として動物検疫所所属になる必 要があるようです。http://nichiju.lin.gr.jp/mag/05906/06_5a.htm
輸出入検疫のスライドの、場所等を動物検疫所に届けなければならないというところの場所というのは生産地でしょうか?違います。検疫所長に提出する輸入申請書の主な項目は、動物の種類、頭数、区分(性別、年齢別、生産地別)、輸入時期、輸入場所(輸入空港、港)、荷受人住所、氏名、搭載予定日、航空機便(船舶便)、その他です。
輸入検疫、日本で輸入検疫が行われているのは国際線を扱う空港や港のみですか?基本的にはそうですが、指定港まで入れると違います。一般に日本国内における人体の検疫は厚生労働省健康局、食品の検疫は医薬食品局食品安全部所管の検疫所が行います。他方、動植物の検疫は農林水産省消費・安全局所管の植物防疫所(植物)及び動物検疫所(動物)がそれぞれ管轄しています。動物検疫所は本所(1カ所)、支所(7カ所)、出張所・分室22カ所、指定港97カ所あります。植物検疫所は本所5カ所、支所16カ所、出張所45カ所、指定港152カ所あります。
ペットフード安全法を成立させるにあたって農林水産省と環境省が共管で施行されたと教え ていただいたのですが、施行する上で農林水産省と環境省はそれぞれどういった役割で安 全法を成立させたのですか?製造・販売、輸出入等、「肥料・飼料安全法」に準じて規制 する部分が農水省、「動物の愛護管理法」に基づいて飼養管理、動物愛護の観点から規制 する(第1種動物取扱業、第2種動物取扱業など)のが環境省です。
往診診療について:医学では、医師が、診療上必要があると判断したとき、予定外に患者さ
んの自宅などに赴いて行なう診療が「往診」です。他方、在宅医療を行なう患者さんで、
通院が困難なケースで、医師が、あらかじめ診療の計画を立て、患者さんの同意を得て定
期的に(例:1週間に1回)患者さんの自宅などに赴いて行なう診療が「訪問診療」です。管理獣医師:獣医師法にも獣医療法にも管理獣医師という言葉はないようです。しかし、一 般には「管理獣医師」という言葉は広く使われています。動物診療施設に関しては、法第5 条に「開設者は自ら獣医師であってその診療施設を管理する場合のほか、獣医師にその診 療施設を管理させなければならない」とあり、一般に、この獣医師を管理獣医師と言って います。他にも、実験動物分野では、実験動物の獣医学的ケアをする獣医師を管理獣医師 と呼んでいます。また養豚管理獣医師、養鶏業管理獣医師あるいは単に(農場)管理獣医 師という表現もあります。
主治医権では、他の医師が診療に介入することを拒否することですが、逆に、複数の医師で 助け合って診療をすることもあるのですか。あると思います。特に1次病院と2次病院の獣 医師間では、十分にあり得ます。
動物の治療でもセカンドオピニオンがありますが、獣医師の中でも専門の治療などあるの
ですか。あります。獣医系大学や大型の民間獣医病院には専門医がいます。ただ医師会の ような専門医制度はまだ出来ていません。眼科など専門医の研究会のような形態です。ま たエキゾチックアニマルの専門獣医病院もあります。両生類や爬虫類の臨床研究会もあり ます
プロピンレングリコール:毒性が低く、無味無臭なので、保湿剤、潤滑剤、乳化剤、不凍
液、プラスチックの中間原料、溶媒に用いられる。防カビ性に富むことから医薬品や化粧 品、麺やおにぎりなどの品質改善剤等に用いられる。 医薬品としては、注射剤・内服薬・ 外用薬の溶解補助剤として用いられている。猫は肝障害、腎障害を起こすので禁忌です
ペットフードと安全管理のスライドで猫草は対象にならないとありますが、栄養のために取るものではないとしても体内に入れるのになぜ対象にならないのでしょうか?リスクは、出来るだけ定量的に評価します。ゼロか1かでなく、対象物のもつ危害の程度と暴露量により決まります。猫草は体内に入ったとしてもそれほどのリスクはないと評価されたのでしょう。
ペットフード安全法で対象となるペットフードは犬・猫だけで、齧歯類や鳥類・爬虫類・魚
類のペットフードは対象外なんですか?そうです。行政的に最も大量に生産され、社会的、
経済的影響の大きいペットフードということで犬猫のペットフードを最初に対象とした
のでしょう。ただし、養殖漁業の水産飼料は「飼料安全法」で規定されています。
「カビ毒」と「アフラトキシンb1」。発がん性との関係がわかりません。アフラトキシン は、産生菌のAspergillus flavus と 毒 toxin の合わせた合成語です。ビスフラン環とクマ リン化合物が結合した構造で、主に肝細胞癌を引き起こす原因物質として知られていま
す。発癌機構としては、肝臓の代謝酵素シトクロムP450によって活性化され、それがDNA と結合して付加体を形成します。付加体はDNAの変異や複製阻害を引き起こし、癌化のイ ニシエーターとなることが明らかにされています。動物実験では15 μg/kgのアフラトキシ ンB1を含む飼料で飼育されたラットが全て肝癌を発生し、非常に発ガン性が強いことが分 かっています
ペットフード安全法で、政令で指定されている犬猫以外の金魚や鳥などの動物達のペットフードの安全管理はどうなっているのですか?政令で対象動物は犬猫としているので、その他の動物を対象にしたペットフードはこの法律の範囲には入りません。その他の動物で問題が多発すれは、①法改正をする(他の動物を含む法律に変える)か、②他の動物のために新法を作ることになります。実際、ペットフード安全法も、家畜の「飼料安全法」では、問題をカバーできないので新しく立法されたものです。
ペットフードには人工色素が入っていますが、色素は食品添加物に含まれますか。また、犬
や猫は色覚を持たないと思っていたのですが、なぜわざわざフードに色をつけるのです
か。色素(青色2号、赤色2,3,40、102、105号など)は、食品添加物に含まれます。お 菓子、飴、加工品などにも使われますが、ペットフードにも使われます。犬、ネコも色覚 はあります(青と黄色が主で赤と緑は弱い)が、人の様には発達していません。ペット フードの色付けは飼育者のためでしょう。無着色のペットフードも販売されています。
ペットフードの商品の裏には原材料名として多い順に書いてあると教わりました。私がこの前店 で見かけたペットフードには肉類(牛エキス…)穀物(小麦…)と書いていました。これは肉類の 全部が穀物に勝っているということなのですか?①公正取引委員会及び消費者庁の認定を受 けた「ペットフードの表示に関する公正競争規約・施行規則」では、原材料名の表示は、使用量の 多い順に記載すると定められています。しかし、ペットフード安全法では、原材料名の記載順序は 特に規定していません。消費者に対する適切な情報提供の観点からは、原則、多い順に記載する ことが望ましいと思います。②原料にひえ、あわを使用するので、雑穀と記載し、「雑穀(ひえ、あ わ)」のように個別の原材料名であるひえ、あわが記載されていれば、「雑穀」という分類を併記し ても問題ありません。「雑穀」だけでは個別の原材料の記載がないため不適切です。質問の表示 はこの分類方法によるものです。肉類の総重量が穀類の総重量より多い可能性はあります。
メラミンやプロピレングリコールが入ったペットフードは犬・猫に具体的にどういった影
響を与えるんですか?2007年メラミンが混入された中国企業製ペットフードが米国等に
輸出され、犬猫が主に腎不全で死亡する事件が起きた。2008年には中国でメラミン混入粉ミルクが原因で乳幼児に腎不全が多数発生する事件が起きました。プロピレングリコールはネコの肝障害、溶血性貧血、腎不全を起こします。
安全なペットフードについて:日本で製造されているものなどは、国が定める基準により、
安全性に配慮されていることがわかりました。私は、猫を飼っているのですが、最近は海 外製品も多く見受けます、それらも国の基準を通ったものなのでしょうか?
輸入に当たっての諸手続きがあります。①製品名、輸入元国、原産国の明示、②原材料に は、有害な物質を含み、若しくは病原微生物により汚染され、又はこれらの疑いのある原 材料を用いていないこと、猫用の場合は、原材料にプロピレングリコールを使用していな いこと、原材料に専ら医薬品に該当する成分を含んでいないこと。③製造方法には、加熱 し、又は乾燥する場合は、原材料等に由来してペットフード中に存在し、かつ、発育し得 る微生物を除去するのに十分な効力を有する方法で行っていること、製造者における製品 規格書や製造工程表を入手し、製造方法の概要を確認すること、このほか④包材の表示、 最終製品に関する事項や、⑤輸入後の確認事項のチェックリストがあります。⑥法の遵守 状況の確認については、国及び独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)が 原則として無通告で立入検査を行います、となっています。
日本では外国のフードも売られているが、これは日本の規格と基準をクリアしているのか、 それとも、外国の基準をクリアして売られているのか。ペットフード製品の安全性を確認 するために、国によって「愛玩動物用飼料等の検査法」が定められています。しかし、国 内とは別の法や基準に基づいて作られた海外のペットフードを輸入・販売する場合でも、 国内の基準・規格をクリアしていなければならないので、日本で定めた検査法によって安 全性を検査することになっています。
水産動物の種苗確保ってどうゆうことですか?水産養殖分野では、養殖漁業のために人工
生産又は天然採捕した水産植物の稚魚・稚貝等と総称して種苗といいます。養殖の種とな る幼生個体群を確保するということです。
第5回の講義資料です。獣医・VPPにとっては、厚生労働省関係の法律になります。動物由来感染症(人獣共通感染症)を法律に取り込んだ「感染症法」と長い歴史を持つ「狂犬病予防法」について説明します。両法とも現実に私が法改正に取り込まれ、法律と関係することになった法律です。それぞれ2回くらいの時間が必要ですが、ここでは概要にとどめます。各論は、個々の動物感染症や人獣共通感染症、動物危機管理学等で詳しく説明します。
なお回答の中の青文字は学生さんが理解した言葉として送ってくれたものです。よくまとまっているので、一緒にのせました。
ジフテリア:ジフテリア菌 ( Corynebacterium diphtheriae ) の産生するジフテリア毒素によって起こる疾病です。感染部位により咽頭・扁桃ジフテリア、喉頭ジフテリア、鼻ジフテリア、 皮膚ジフテリア、眼結膜ジフテリア、生殖器ジフテリアなどに分類されます。保菌者の咳などにより飛沫感染します。すべてのジフテリア菌が毒素を産生するわけではなく、毒素遺伝子をもつバクテリオファージが感染した菌のみがジフテリア毒素を産生します。
狸紅熱:子供に多い発疹性の感染症。かつては法定伝染病に指定され恐れられていた病気の一つ でしたが、抗生物質で容易に治療が可能となりました。このため法定伝染病として届け出が必要な 猩紅熱と診断せず、一般的な溶血性連鎖球菌感染症として診断・治療します。1998年の感染症法 改正に伴い、猩紅熱は法定伝染病ではなくなりました。
天然痘はどうやって根絶させたのか?①人から人にしか感染しない、②痘痕(あばた)として残る
ので罹った人は見分けられる、③有効なワクチンが開発された(2度罹りしない)、④WHOが国際的 撲滅運動(ワクチン接種)を展開した。⑤各国の研究機関にあるウイルスを米国CDCに送り、残りは 滅菌しました。パラチフスとは?:パラチフスA菌(Salmonella Paratyphi A)の感染による全身性感 染症です。腸チフ スとともにチフス性疾患に分類されます。パラチフスA菌の感染はヒトに限って 経口感染で起こりま す。通常は1~3週間の潜伏期の後、発熱で発症し39~40℃に達します。徐 脈、バラ疹、脾腫が 30~50%のケースでみられます。ニューキノロン薬が治療に使用されるよ うになってからは稀になり ました。
感染症法の成立と経緯:感染症法においてのリスク評価は5年ごとに行われるのでしょうか。そ れとも何か大きな流行が起きたときに随時行うのですか。随時行います。しかし、特に大きな流 行が無くても、5年毎に見直すというのが、この法を制定した時の理念です。100年も見直さなかっ たことにより、時代錯誤の人権を無視した対応になってしまったという反省が根底にあります。
感染症類型→類の分け方がわかりません。1類は最も重要な感染症で、その病原体は伝播力が
強く、病原性が高いので、流行が起こると社会的影響が非常に強い感染症です。患者は指定病院 に隔離されます。2類は主に空気感染を起こすので人から人に比較的容易に伝播します。重篤化 する感染症で注意が必要です。患者は必要に応じて入院させます。3類は経口感染(糞口感染)で 比較的容易に広がります、発症者は回復し病原体の排出がなくなるまで、食品関係の仕事には就 業できません。4類はほとんどが動物からヒトに感染する感染症です。5類はヒトからヒトに感染する 疾病で、全数把握、定点監視の対象となる感染症です。
感染症の類型に関して理解したこと:感染症の症状の重さ、病原体の感染力の強さ、治療法があ るかないか、流行したときの社会的な影響の大きさによって感染症を1から5類に分けられている。 このことによって関係する人がどのように処置していかなければならないかを明確にし、コントロー ルしやすくした。一類感染症の7種が見つかると全国の指定病院に強制入院させられる。二類は 呼吸器系の重大な疾患に分類され、これも一類同様に強制入院させられる。三類は食品衛生に 関わっている人は就業制限がかかるが、強制入院といった隔離処置はされない。四類は動物感 染症、五類は人の感染症の分類がされている。五類感染症においては48種類あるが更に分けら れており、全数把握感染症と定点把握感染症である。全数把握感染症は指定されている感染症 (22種類)を患った患者が来たらすべて届出なければならず、毎週全数を把握している。定点把握 感染症は指定されている感染症(26種類)を患った患者が全国3000箇所ぐらいの定められた病院 に来たとき、報告しなければならず、全国でどれだけの感染症が発症してるか毎週、衛生週報とい う形で公表されている。
全数把握感染症と定点把握感染症:獣医師は1-4類の感染症や新型インフルエンザのうち政 令で定める感染症ごとに保健所長を経由して都道府県知事に届出なければならないとありま すが、人の第五類感染症における全数把握感染症と定点把握感染症の2つはどちらも厚生労 働省に直接届出をおこなうのですか。違います。どちらも保健所に届け出ます。保健所から都道 府県を通して厚労省に伝えられます。全数把握は症例が少ないが重要で、常に全容を掴んでおく 必要のある感染症。定点把握は症例数が多いので、定点からの届出で流行状況が把握できる感 染症です。
指定された感染症が発生している地域から帰国した時に念のため検査に行くときはこの指定病 院なのか?ケースによります。流行地域から帰国し、現地で患者と接した可能性等があり、空港 で発熱等の症状があれば疑似症患者として指定病院に送られ、隔離状態で検査されます。厚労 省から様々なケースでの帰国後のフローチャートが出ています。私のHPで「エボラ出血熱3年」の ファイルで、エボラ出血熱検疫フロー、検疫後のフローの徹底・訓練などのスライドに載せてありま す。
動物の感染症分類:五類感染症は人の感染症で分類されていますが、もしその五類感染症が 何らか変異で人から動物に感染った場合どのような対処方法になるのでしょうか。4類と5類は 一応動物由来感染症と人から人の感染症に分けていますが、感染症の性格上、どちらにも入るも のもあります。また耐性菌や麻疹のように変異しなくても人から動物に行く感染症もありますが、基 本的に人から人への感染が主流なので5類に入れています。結核、麻疹、ポリオ、赤痢などは、本 来人の感染症ですが動物に行く例(人由来感染症)が、知られています。したがって、動物に行くよ うに変異しても、人-人感染症の性状が変わらなければ対応は変わりません。変異により動物の 側の感染症として重要になれば、動物種により、動物防疫の対応が必要になるかもしれません。無症状病原体保有者→無症状なのに、どうやって保有者を発見するのか?病原体あるいは患
者に接触し感染した可能性が高い場合で、発症しないがウイルスゲノムや抗原などがPCRで陽性 に出ることはあります。この場合は無症状病原体保有者です。また感染症によってはデング熱の ように大半が無症状(不顕性感染)ですが、蚊によって病原体が伝播される可能性があります。
科学的リスク評価:科学的リスク評価とは何ですか?普通のリスク評価とはどう違うのですか? かつてのリスク評価には、科学的エビデンスや分析を無視したリスク評価がありました。しかし、最 近のリスク評価は科学的エビデンスに基づく評価になっているので、違いはありません。
都道府県に多大な水害をもたらした豪雨がありましたが、川の氾濫や生活用水が混雑した水な どは感染症の恐れがあると思うのですが、このような場合、獣医師やVPPも関わってくるんで すか?関わるのであればどんな役割を担い対策を取るのですか?厚労省や地方公務員で保 健所等に就職した場合は、疫学調査や感染症統御指導の役割があります。水害では、一般の感 染症(風邪や下痢症など)の他に、レプトスピラ症、クリプトスポリジウム症、食中毒(O157、赤痢な ど)、破傷風、ボツリヌス症などの流行の危険性が高くなります。これらの感染症はほとんど届出感 染症です。
獣医師やVPPは感染症に感染している可能性のある動物を診断することがあると思うのです
が、獣医師やVPPはそれらの感染症に対してワクチンや予防接種などを自分に打って感染症 を防ごうとする対応はするんですか?また、それは法律で定められていますか?一般の動物 の感染症については動物の予防、治療はしますが、獣医療関係者が自分にワクチンを打つことは ありません。動物用医薬品(生物製剤を含む)と人の医薬品は違います。用法、用量、効果・効能、 安全性等の基準が違います。法律にもありません。しかし、必要に応じて動物診療関連者が人用 のワクチンなど(破傷風、狂犬病、炭疽、抗ウイルス薬)を使用することはあります。
ハンタウイルス肺症候群→どういった症状が見られるのか知りたい。突然の発熱、高熱、筋
肉痛、急性肺炎、肺水腫等で呼吸困難、感染して1週間から10日で死亡します(致死率は
40~50%近いです)。アメリカ大陸でのみ認められます。他方、腎臓を標的とする腎症候性出血熱 (ハンタウイルス感染症)は旧大陸でみられます。
輸入禁止事項に、省令で定める地域からの発送または、そこを経由してきた動物とあったの
に、今回の講義では汚染国からの輸入後の係留期間についての話もありました。汚染国で
あるのに省令で定めていないのはなぜですか?また、汚染国とは具体的にどの国を指し
ているのですか?対象動物により複雑です。汚染国であっても隔離・繁殖飼育されたものであれば許されるものもあります。また汚染国を経由しても輸入可能な例もあります。さらに家畜のように汚染国は定めてはいます。しかし、家畜感染症でいう汚染国は一定していません。日本も2001年からはBSEが発生して汚染国でした。無視できるリスク国になったのは2016年です。2010年の口蹄疫では4月に発生、7月に終息、10月に清浄国申請、2011年2月に清浄国になりました。貿易が絡む家畜や動物由来食品の輸出入は、感染症の発生、流行と関係しており、汚染国も清浄国も変動します。難しいですね。
輸入検疫について:生命倫理学でも、輸入検疫について厚生労働省と農林水産省とふたつが
関与すると学習しましたが、どうして輸入経路によって担当が変わるのでしょうか。①輸入対象の管轄が異なるため。厚労省は主にヒトと食品、農水省は動物・植物です。②省庁が主管する動物関連の法律が異なるため。例:家畜伝染病予防法等では、家畜、家禽が農水省。感染症法ではげっ歯類、鳥類、ウサギ類、霊長類など(霊長類の検疫は農水省に委託)、狂犬病予防法では、基本的には動物検疫は農水省。③省の目的が異なる。動物由来食品の検疫検査では農水省は家畜・家禽の防疫から、厚労省は食中毒、人獣共通感染症の防疫のため検査します、等です。
霊長類は輸入目的としてペット用でない旨の記載をと書かれていますが、実験動物や展示動物
としてしか輸入出来ないのか。そうです。ワシントン条約で、ほとんどの霊長類は、国際商取引を 禁止・制限されています。また国際獣疫事務局(OIE)の陸生動物健康規範でもペットとしての輸入 をすべきでないとしています。感染症法でもこれらの指摘を受け、ペットとしての輸入を禁止しまし た。
プレーリードッグはペスト防止のため平成15年から原則として全面輸入禁止と書いてありました が、動物園などではプレーリードッグがいると思います。輸入禁止なのにどうやって持ち込ま れたのか気になります。展示動物にかぎり例外的な法があるのでしょうか。例外的な法は、あ りません。法改正以前に輸入され、日本で繁殖された個体群です。もし、何かの別の理由で、どう しても輸入が必要になる場合は、大臣申請で個別審議になるかもしれません(プレーリードッグが 輸入禁止になった理由はペストです。プレーリードッグはペスト菌に感受性なので、感染していれ ば発症します。)
特定病原体の時の「P3」とは何か。感染病原体の物理的な封じ込め(physical containment)
の省略です。P3はバイオセーフティレベル3(BSL3)の封じ込め施設です。比較的感染性が 強く、重症化する恐れのある病原体(BSL3病原体)を安全に扱うことのできるハード、ソフトを 備えた施設と言えます。P1(BSL1)からP4(BSL4)まであります。
狂犬病:狂犬病の起源が知りたいです。狂犬病の始まりはどこからですか?おそらくコウモ リに リッサウイルスが入った頃でしょう。コウモリの分岐とウイルスの発生が同じころなら7千万年~5千 万年くらい前になるかも?歴史的にはエシュヌンナ法典やハムラビ法典に狂犬病で人が死んだ場 合の所有者への罰則規定が書かれているのが最も古いです。
バイオテロ防止:バイオテロ防止とは具体的にどのようなことをするのですか?①テロ組織の摘発、 ②バイオテロの道具となる病原体の取扱いの国際的な規制、封じ込め、③ワクチン開発等予防、 治療法開発によるテロの道具の無効化、④平常時の監視機構の強化などでしょう。
狂犬病が発生した時、獣医師は診断や検案、届け出提出、また予防員として働くとなっています が、VPPにできることは何ですか?有能であれば、国家公務員となって狂犬病発生時の措置の 司令塔として働く。あるいは地方自治体の首長のもので封じ込めの指令を出すことも可能と思いま す。感染症、病原体、疫学、法律、社会学などをこなす必要はあると思いますが。
狂犬病が発生した時の予防員の役割に「予防員は隔離について必要な指示をすることができ
る。」とありましたが、具体的な指示内容はどのようなものがありますか?感染した可能性のあ る犬を繋留あるいは抑留により隔離するように飼養者あるいは診療獣医師に指示します。その
後、発症するまで監視し、発症した時点で殺処分し、確定診断します。ウイルスは神経系のみを移 動して、血液中に出ないので抗体が上がりません。脳まで到達し発症した時点で、確定診断が可 能になります。
繋留と抑留の違い:繋留(係留)は綱などでつなぎとめる行為です。抑留は捕獲した犬などを檻等に 入れ拘束する行為です。ちなみに、勾留は、逮捕された被疑者or 被告人を刑事施設に留置して拘 束することで、逃亡や証拠隠蔽を防ぐために行います。拘留は既決の受刑者を刑事施設に拘置す る刑罰です。
日本は約60年間、狂犬病が発症した事例がないのですが、昔は多くの野生動物が狂犬病を保 有していたと思うのですが、それらをどうやって根絶したんですか?また、日本の野生動物は 狂犬病に感染していない確証はありますか?絶対的な確証は無理です。狂犬病予防法の成立 後、法律に基づくリスク回避措置を続けた結果なくなったのが実情で、特に野生動物について狂犬 病の撲滅を図ったことはありません。日本の野生動物での狂犬病の再生産率(R0)が1以下であっ たためと思います。
狂犬病についてです。ヒトの狂犬病は感染から発症するまで(噛まれた部位にもよりますが、) 数ヶ月かかることもあるようですが、待機期間と係留期間をみると最大潜伏期6ヶ月と書いて ありました。犬も犬種によってだいぶ大きさには違いがありますが、ヒトと同じくらい大きな超 大型犬がもし感染していても6ヶ月以内に発症するのでしょうか。①犬の場合は、狂犬病に感 染すると2週間から2カ月程度で発病します(中には早いもので3日、遅いもので5カ月もかかって発 症した例もあります)。②ウイルスが体内に侵入してから症状が出るまでの間を潜伏期間といいま すが、犬で3~8週間です。③犬は、狂犬病に感染すると1~2週間の短期間で発病します。④In dogs, the incubation period is typically two weeks to four months.⑤The incubation period between exposure to rabies virus and clinical evidence of disease varies from 7 days to many months (average, 3 to 8 weeks) in dogs. ⑥Most cases in dogs develop within 21 to 80 days after exposure, but the incubation period may be considerably shorter or longer.といった具合です。犬 は人よりは感受性が高く、潜伏期は短い。平均潜伏期で多いのは3週から12週くらい、最大で16週 から20週です。6カ月は少し安全を見て長めにしているのでしょう。
昭和には犬だけではなく馬や羊、豚が狂犬病にかかっているが、今はどのように対策している のか(ワクチン以外で)コウモリなどの野生動物からの感染をどのように防いでいるのか。現在 の日本では、狂犬病は国内には存在しないという考えなので、動物の輸入検疫時に①狂犬病に 罹っていないことの証明書の添付と、②家畜等では輸入時の生体観察で行っています。
オーストラリアやアイスランド等も狂犬病が発生していないが日本のような対策をとっているの
か。どちらも日本のような毎年のワクチン接種はしていません。アイスランドは、ヨーロッパ大陸か
ら隔絶した島国という特殊な地勢条件から特異な生態系が存在しています。アイスランドは、生態 系保護と狂犬病対策のために、2000年に国内全域で、野良猫根絶事業を行いました。そのような 理由からアイスランドでは、海外からの犬猫などの持ち込みは大変厳しく、無許可持ち込みの場合 は、即時殺処分されます。オーストラリアも生態系の保護のため生きた野生動物の輸入には非常 に厳しい体制をとっています(原則禁止)。また、オーストラリアの狂犬病対策の中心は検疫です。 オーストラリアではイヌの輸出国をリスクに応じて3 カテゴリーに分け,段階的な輸入条件を課して います。
厚生労働省結核感染症課が近隣以外の県に通報・指示とありますが、どこまでが近隣の県で
どこまでが近隣以外の県になるのですか?また、地震などの災害で狂犬病の発生が確認さ れたとき行方不明者、救助を待っている方と狂犬病の犬などの捕獲はどちらが優先なのです か?①狂犬病の動物が見つかった場合の、厚労省が知らせる近隣県以外の県は事実上日本全 体でしょう。実際には知事が近隣県に知らせたと同時にメディアが日本中に知らせるでしょうor イ ンターネットですぐに広がるでしょう。②人命救助は警察や自衛隊が担うでしょう。もし、同時に狂 犬病が広がれば、そちらは野犬捕獲員が動員されるでしょう。狂犬に咬まれて発症すれば、ほぼ 100%死ぬわけですし、狂犬が他の犬を咬めばウイルスを感染させてしまうのですから、全ての人 員をどちらかに投入するよりは、それぞれの専門家をそれぞれの専門職域に動員するのが賢明と 思います。
ネコエイズ(FIV)にかかった猫が免疫を延ばして健康でいられる方法は?:エイズウイル スをは じめ、レトロウイルスは感染したあと宿主の染色体に入り込むので、完全に排除するのは困難で す。ヒトでは多種類の抗ウイルス薬の併用や受容体欠損細胞の移入といった方法がありますが、 ネコではFIVワクチンによる防御くらいしかありません。研究が進めば、感染ネコを救う方法が見つ かるかもしれません。
マイクロチップ:犬の個体識別のマイクロチップの耐久年数はどれほどなのか:30年は持つようで す。①マイクロチップの耐久年数は30年程度で、作動に電池は必要ありません。②マイクロチップの 耐用年数に関しては、設計上は最低でも30年は持つように作られていると思います。経年劣化の 心配はしなくても大丈夫でしょう。③一度入れてしまえば、電池なども不要で生涯に渡って使用で きます、耐久年数は30年程度。
狂犬病が人に感染したときの処置法は?狂犬病には、感染後のワクチン接種(暴露後ワクチン)
があります。狂犬病ウイルスは、通常のウイルスと違って、咬まれた部位から末端の神経細胞に 侵襲し、神経軸索を逆流してゆっくりと脳に到達します。この間に免疫を着けて、脳への侵入を阻
止できれば助かります。ウイルスが脳に到達してしまうと、ほぼ100%死亡します。
狂犬病予防法及び狂犬病について調べました:狂犬病発症がない通常時では、飼育犬の登録、狂犬病予防注射、鑑札と注射剤票の装着があり、これらの規定に反すると罰則がある。飼育犬の登録に関しては、犬を取得した日から30日以内に所在地の市町村に登録申請を行い、鑑札をもらう。そして、その鑑札を犬に身につける義務がある。また、狂犬病予防注射は年一回(4月から6月)受けさせ、注射済票をもらう。鑑札同様に犬につけておく義務がある。この2つを守られていなければ、狂犬病予防法に違反したことになり、罰金が発生するので下手をすると獣医師は行政処分や免許取り消しとなる可能性もある。忘れがちだが、しっかり行うようにしていかなければならない。狂犬病についてyoutubeで実際どんな症状がでるのかを確認していたところ狂犬病から生還した女子高生の話があった。今まで100%狂犬病に罹ったら死ぬと思った居たのだが、そうではなかったことに驚いた。(ケタミン治療として注目されましたが、なかなか再現性がない様子です)。脳の機能を弱めると狂犬病ウイルスも増殖しなくなるという話だったのだが、なんでそんなことが起こるのかよくわからなかった。でも一人でも助かった人がいるとこれからもしかしたら治療法ができるかもしれないという希望が持てるような気がした。そうですね、狂犬病は通常のウイルス病のように脳炎を起こすのでなく、脳機能を異常化させるので(脳症)、治療法も脳炎を抑えるのでなく、脳機能を変化させウイルス増殖を抑える安定化した方法が見つかれば治療できるかもしれません
https://www.youtube.com/watch?v=O4IjtWLfRE(女子高生世界初の狂犬病からの生還)
狂犬病が人に移った場合はどうしているのか。ヒトからヒトへは感染しないので、入院させ暴露後 ワクチンを接種し発症を阻止します。ガンマグロブリンを投与する方法もありますが、日本では行わ れていないようです。また、感染源となった動物(犬?)を繋留し、狂犬病に罹っていることを確認し ます。
第6回は、「身体障害者補助犬法」(追加で身体障害者差別禁止法)、「食品衛生法」(食中毒関係を追加)、「と畜場法」、「食鳥検査法」について説明します。後で述べるように、後の3法は食品衛生法が基本で、獣畜に焼き直したのがと畜場法、さらに家禽に適合させたのが食鳥検査法という関係です。動物看護は、あまり食品や家畜・家禽には関係ありませんが、感染症と食、公衆衛生が中心となるVPPにとっては、感染症法、狂犬病予防法とともに、非常に大事な法律群です。なお、青字の部分は、学生さんの分かった言葉の解釈です。よくまとまっているのでそのままアップしました。
ヒトの介助をするのが、なぜ犬なのか。サルはヒトに近いけれどなることは難しいのか。海外では介助サルが米国(テレビや映画でよく見ます)、フランス、ベルギーなどで試みられています。日本では、ありません。日本で介助サルが出来ても、法律はあくまで補助犬(定義あり)なので、適用されないと思います。
身体障害者補助犬法:法律としては第1章~8章まで30条を超えないコンパクトな作りに
なっている。主に身体障害者補助犬を訓練する事業者の義務、補助犬の定義、使用者の義 務、国・公共機関の対応について定められている。法律の真の理念は身体障害者を社会か ら排除するのではなく、補助犬の助けを借りて一般の人と同じように社会参加できるよう にしようというものである。そのために訓練事業者を厳密にし、届出が必要になる。訓練 事業者には、専門職との連携や継続指導、再訓練の義務がある(第二種社会福祉事業)。 また訓練事業者で訓練された補助犬は厚生労働大臣指定の法人による認定する義務が発生 するが盲導犬は含まれない。盲導犬は、国家公安委員会で指定された訓練施設で訓練・認 定された犬になる。日本の身体障害者補助犬法はアクセス保証だけでなく、良質な補助犬 育成に多くの条文を費やし、使用者と補助犬をあわせて認定している。
身体障害者補助犬法について質問させていただきます。人間・動物関係学で補助犬法が 施行されてから20年近く経つが、社会の受け入れはまだあまり進んでいないと教わり ました。今回身体障害者補助犬法の2本柱として「社会へのアクセスの保障」とありま したが、受入側に対する対策には具体的に何か取られているのでしょうか。法では、 ①補助犬の同伴を拒否できないとしましたが、罰則がありません。拒否行為に罰則を負わ せるには時期尚早という考えの様です。②身体障害者差別解消法も同様に罰則規定があり ません。そのため、訴訟が起こらず、改善措置が進んでいないのでしょう。また、③国は 法で補助犬育成業者の許可や認可、補助犬及び使用者の認定などは、詳細に決めています が、災害時の同行、同伴避難等については、これらの法では触れられていません。③災害 時の補助犬同伴避難の受け入れは「動物の愛護と管理に関する法律」です。法の主管であ る環境省から救護対策ガイドラインが出ていますが、ほとんどはペットの所有者が災害時 に備えて平常時にやっておくべきこと(準備やしつけ)がかかれています。④避難所での 補助犬の受け入れについては、まだほとんどの市町村の条例では定められていないようで す。しかし、いくつかの自治体では「避難所運営マニュアル」の中で、避難所において補 助犬の同伴受け入れが明文化されています。まだ時間がかかると思います。今治キャンパ スはグランドも体育館も動物病院もあるので、市と協力して災害時の同行避難や同伴避難 の拠点として活動するには適していると思います。
盲導犬は法律の中で、なぜ道路交通法に入るのですか?「身体障害者補助犬法」ができる 前は、補助犬としては盲導犬がほとんどで、盲導犬に関する法制化を準備するしかありま せんでした。この時代は、まず盲人が盲導犬とともに道路を歩く、乗り物に乗るための法 整備が必要でした。独立した補助犬法を作るほど、社会が進歩していなかったので、道路 交通法の中に組み込まれたのです。そのため、第三者認証はありません。訓練所の認定で 終わりです。身体障害者補助犬法の時に見直しの意見もありましたが、現行(道路交通 法)の体制で続けるということになりした。
介助犬・聴導犬の認定の内容がよくわからないです。補助犬のうち、介助犬と聴導犬は盲
導犬と違い、後で規定されたので合理的です。介助犬・聴導犬として認定を受けようとす るときは、使用者及び訓練事業者は、認定に係る申請書を厚生労働大臣が指定した法人に 申請します。指定法人は、聴導犬or 介助犬訓練基準で示されている基礎訓練、動作訓練及 び合同訓練が全て終了し、総合評価・判定を受けていることを確認します。さらに、使用 者の指示により、犬が基本動作を確実に行えることを実地検証します。使用者のニーズに 応じた動作が行えることを確認するため、検証等に当たっては、公共交通機関の他、商業 施設、飲食施設、幼児や子供の多い場所などにおいても行います。基本動作は、合図した ら来る、座る、伏せる、待つ、止まる、解除の意思表示があるまで維持できる、強く引っ 張ることなく落ち着いて歩く、指示された時・場所で排泄できる、様々な刺激や関心の対 象を無視できる、使用者に注目して集中することができる、指示された場所(部屋、車 等)に入ることができる、人と接する楽しさ・喜びを感じることができるなどです。
身体障害者補助犬法に必要な再訓練を行うとありますが、①再訓練を行うときに飼い主の金銭的な負担はかかるのですか。②再訓練が必要であるという判断は誰がくだすのです か。③もし盲導犬が何らかの事故や病気に罹って亡くなってしまったときの飼い主への保証はあるのですか。①盲導犬が貸与であることを考えると費用はかからないと思います。②「盲導犬訓練事業者は、育成した盲導犬の健康状態並びに基本動作及び歩行誘導の 状況について、これを使用する身体障害者から定期的に報告を求め、その障害の状況 及び必要とする補助、屋内外の生活環境等の変化に対応するための補充訓練、追加訓練その他の再訓練を継続的に行わなければならない」と規定されています。③基本的に貸与ですから、事情により代替の補助犬の貸与が検討されると思います。
補助犬と一緒に行動する一人の市民を拒否しない社会を実現させるためにVPPが出来る
こととは?①VPPという専門家がいることを社会に認識してもらう。②補助犬育成事業所に就職して補助犬の育成等を置け持つ。③地方公務員になって社会福祉局等に就職し障害者支援の部署で活動する。私のホームページ「盲導犬同伴避難」に修士の学生さんがいろいろ提案されています。参考にしてください。
補助犬認定について、獣医師が不足しているとよく言われますが、盲導犬の認定をする のに獣医師である必要はあるのでしょうか。いいえ、特に獣医の専権事項とも思えませ んが、認定のメンバーの中に獣医がいてもいいとは思います。例えばVPPも知識があれば 同等の事は行えるのではないかと考えました。そのように思いますし、例えばVPPが訓練 事業所にはいって専門家になればメンバーとして参加可能と思います。しかし、現状では VPPや動物看護師などが、社会的・法的に規定されておらず、その職務や職責が決められて いないので、認定委員に職指定という形では書けないということです。
盲導犬の狂犬病予防注射などは、訓練する方が病院に連れていき、犬の健康管理を確かめているのか。訓練中の犬はそうですが、そうでない時は使用者が連れていきます。
盲導犬の認定には獣医師が関わらないのですか?介助犬や聴導犬の認定と異なり、盲導犬の認定は「道路交通法」に規定されたシステムを「身体障害者補助犬法」でも踏襲したため第三者認定にならず、盲導犬の訓練事業所が認定するためです。
盲導犬を利用している飼い主が亡くなってしまったとき補助犬はどうなるのでしょうか
若くても引退してしまうのでしょうか。貸与なので、盲導犬育成事業者が引き取ると考えられます。
盲導犬が道路交通法で、介助犬・聴導犬は身体障害者補助犬法とべつの法律ですが、一 緒の法律にしたほうが管理として楽になると思うのですが、なぜ今まで変更しないの でしょうか。私なら犬は犬でまとめたいです。私もそのように思いますが、現状の法規 制で何か深刻な問題が生じなけれは、代える理由がないということになると思います。
犬のレプトスピラとはなんですか?レプトスピラは細菌です。急性熱性疾患を起こし、全
世界で発生しており、とくに熱帯・亜熱帯地域に多くみられます。ワイル病、日本では 「アキヤミ」と言われていました。イヌのレプトスピラ症も世界的にみられる感染症で す。レプトスピラは, ネズミなどの野生哺乳動物の腎臓に保菌され, 尿とともに排出され ます。ヒトやイヌなどは, レプトスピラを含む尿との接触, あるいは尿に汚染された水や 土壌との接触により偶発的に感染し発症します。イヌの感染初期症状としては, 発熱, 倦 怠感, 食欲不振, 嘔吐, 脱水, 出血がみられ, その後, 腎不全, 肝不全に発展し, 治療が 遅れれば死に至ります。
同伴避難:災害時の同伴避難に関してなぜ法律として定めず、指針で留めているのです
か。①問題がまだ十分に社会に理解されていない。これは災害時でなくて日常でもそう思います。②災害時は第一義的には人命救助です。身体障碍者補助犬を人と同じに扱うことに関しては、まだ検討の余地がある。③災害時には、災害弱者はマイノリティーであるということです。行政はどうしても多数ケースから対応を考えます。④指針(ガイドライン)レベルが適当(地方自治体任せ)と国が考えている(この問題に関して、まだ、国が国民の指導に責任を取るという意識が弱いのでしょう)。といったことが考えられます。
同伴避難と同行避難:同伴避難とは、補助犬はペットではなく身体障害者の身体の一部なの で避難所などで同伴することを拒否することができない。同行避難は、災害事にペットを 一緒に連れて避難しなければならないのだが、避難所の状況によっては同行することを拒 否されてしまう可能性がある。
障害者差別解消法違反時の罰則について:同法の罰則規定は2つあります。法第25条、①
法第十九条「協議会の事務に従事する(していた)者は、正当な理由なく、協議会の事務 に関して知り得た秘密を漏らしてはならない」。この規定に違反した者は、1年以下の懲 役又は50万円以下の罰金。法第26条②第12条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告を した者は、20万円以下の過料とあります。第12条には、「第8条の規定の施行に関し、特 に必要があると認めるときは、対応指針に定める事項について、当該事業者に対し、報告 を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる」法第8条は、「事業者における 障害を理由とする差別の禁止」です。事業者が障害理由に不当に差別した場合、12条によ り報告を求め、報告がないor 虚偽の報告があった場合は20万円以下の過料となります。補助犬:盲導犬・聴導犬・介助犬はそれぞれいくらぐらいするのですか。平成30年5月現 在で、盲導犬941頭、聴導犬74頭、介助犬75頭です。大多数を占める盲導犬については、国 内で10団体が育成していますが、ほとんどの団体は、無償貸与という形をとっているよ うです。盲導犬の使用を希望する人の中で、1頭が育つまでにかかる食費や医療費、訓練 をするための人件費や施設維持費など、全て払える人はほとんどいません。そのため、出 来るだけ平等に盲導犬の使用の機会を提供出来るよう、公益事業として行っているようで す。したがって盲導犬には値段はありません。使用者が、引退した盲導犬を最後まで飼育 するのは、大変なので、引退後のサポートなどにも育成団体として責任を持つという事 で、貸与という形が主流なようです。
化製場は、と畜場と同じように獣医師にしかならないのか?いいえ、化製場でできる加工品等は、非可食部分の処理で食用のものではありません、獣医でなくても大丈夫です。
化製場法における獣医師の役割と義務はなんですか?化製場は、獣畜の肉、皮、骨、臓器等を原料として皮革、油脂、にかわ、肥料、飼料その他の物を製造するために設けられた施設です。死亡獣畜を死亡獣畜処理施設(化製場等)に搬入する場合は、獣医師の検案を受け、獣医師の発行した「死亡獣畜処理指示書」等を提出する必要があります。
化製場:屠殺され、利用部位以外の部位は死亡獣畜場(化製場など)に運搬され焼却等 されますが、その過程でも獣医師は必要なんですか?もし必要だった場合、役割や法 律はどのように明記されていますか?家畜伝染病予防法の法第11条に、化製場について 規定されています。「化製場においては、農林水産大臣が特定疾病又は監視伝染病の発生 を予防するため必要があると認めて指定する骨肉皮毛類については、農林水産省令で定め る基準に適合する設備及び方法によるのでなければ、これを原料とする製造を行つてはな らない。」この監視は獣医師(家畜防疫員)の役割になっていると思います。獣畜以外の動物:イノシシやシカがと畜場で処理できないのは理解したのですが、例え ばイノシ シを捕まえて食べないから化製場で処理してもらうことはできるのですか。 これに 関わる法律は食品衛生法ですか。可能と思います。食品ではないので食品衛生法 では ないです。殺処分後、一般あるいは産業廃棄物として処理することができると思いま す。
食中毒菌がと畜する時に感染が確認された時はどうなりますか。中止ですか?いいえ、 と畜検査(目視検査)で食中毒の細菌やウイルスを発見することは不可能です。多くは家 畜の細菌感染症(膿瘍)や敗血症、寄生虫感染症です。また、実際には腸管出血性大腸菌 やキャンピロバクター、サルモネラなどは、家畜・家禽は無症状で持っていることがあり ます。と殺時に汚染しないような措置や滅菌措置を屠畜工程に入れて防いでいます。汚染 がありうることを前提に、対策をとっています。食中毒菌の汚染で家畜が発症したり、病 変がでるなら、その時点で食中毒は防げますが、多くの食中毒は人の感受性が高いので、 わずかに汚染した菌数で人が発症するので、統御が難しいのです。動物自身が食中毒菌で 食中毒になることは通常ありません。
と畜検査に関係する人の服装がものすごく暑そうです。熱中症になったりしないんです か?と畜場に行くとわかりますが、冷房が効いています。細菌等が増殖しやすいのででき るだけ環境温度を下げるようにしています。それでも蒸気や動物や人の体温などでかなり 暑いですが、熱中症になる程ではありません。と殺という汚染しやすい環境で食品を汚染 させないための服装というとかなり重装備になります。
食鳥についてです。前のバイト先に鳥のユッケというメニューがありました。でも近く の店で食中毒がでたから注文されても断ってと言われていました。夏ならまだしも冬 になっても断り続けてました。冬に食中毒がでたのは聞いたことがないのですが、冬 に食中毒がでた場合どうやって菌は繁殖したのでしょうか。鶏肉で食中毒の問題となる のはカンピロバクターです(卵ではサルモネラもあります)。カンピロバクターの発育温 度は31~46℃と高く、低温では増殖しません。そのため、カンピロバクターは家畜や家 禽、人の体内や腸管内の限られた環境でしか発育・生存できず、通常のコールドチェーン の食品内では増殖できません。問題は、感染菌量が100個程度と少ないことから、食品汚染 した菌量で、人は食中毒を起こします(食鳥処理・加工工程で増殖しなくても、汚染養鶏 場の鶏腸内の菌量が1g当たり106個とすると0.1㎎の汚染で起こる)。カンピロバクター は、条件により菌体が螺旋系から球形に変化し、球形化した菌体は培養が不可能となりま す(滅菌できたと考えた)。しかし、球形化した菌体を実験動物や発育鶏卵に接種すると 元の螺旋系に戻り、増殖が可能になるとする報告がなされてきました。汚染防止が難しい とすれば、加熱が一番です。冬に多い食中毒はノロウイルスです。細菌性食中毒は夏に多 いですが、カンピロバクターは上のような理由で、それほど季節性はありません。
食鳥にあひるが入っていますが、普段の生活で食べる機会がありません。どうして入っ
ているのですか?海外ではあひる(合鴨、フランス鴨を含む)の飼育は盛んです。日本で もアイガモの飼育・消費はあります。その辺に配慮したのかもしれません。
と畜場と食肉処理場の違いは何ですか?と畜場は家畜をと殺・解体・処理するところです。食肉処理場は家畜・家禽以外の動物(主にシカやイノシシ)を食用に解体・処理するところです。
と畜検査員と食鳥検査員はなぜ分けているのですか?と畜検査は家畜、食鳥検査は家禽で 感染症を含め疾病の種類が違うので、それぞれ専門の検査員が必要です。
卵の扱いについて:食鳥検査法では鶏肉の作り方が法律で定められていますが、鶏の「卵」にまつわる法律はないのですか?卵はGPセンター(グレーディング・アンド・パッ キングセンター)、鶏卵の格付(選別)包装施設に集められ格付けされます。鶏卵の洗 卵・選別・包装をする施設です。衛生管理に当たっては、食品衛生法第50条第2項に基 づき都道府県知事が定める管理運営の基準があります。
カンピロバクタージェジュ二とは?:カンピロバクターは、発生件数が急激に増加し注目されている食中毒細菌で、鶏・豚・牛・ペット・野鳥等の動物の消化管内に広く保菌されています。市販されている鶏肉からはカンピロバクター・ジェジュニが高率に検出されます。またカンピロバクター・コリは豚から比較的高率に検出されています。
サルモネラ・エンテリティディスとは?:サルモネラ属の細菌の一種です。食中毒の原因 菌の一つで、鶏卵及び鶏卵由来食品からの感染が報告されています。卵の汚染率が1万個に 1個程度あるといわれています。 腸炎を起こす菌で、8~48時間の潜伏期後に、発熱・下 痢・腹痛を起こし、まれに死亡例もあります。
ボツリヌス菌:クロストリジウム属のグラム陽性、偏性嫌気性の大桿菌Clostridium
botulinumです。毒素の抗原性の違いによりA~Gの7種類の型に分類され、ヒトに対する筋 弛緩性の中毒はA, B, E, F型で起こります。A, B型は芽胞の形で土壌中に分布し、C, E型 は海底や湖沼に分布しています。
食中毒についてです。前にドラマでフグの毒の解毒剤は存在しないといってたのを聞いたのですが、本当ですか。解毒剤がない場合、どうやって毒を体からぬくのですか。また、フグの料理の免許も食品衛生法で定められているのですか。神経麻痺(最終的には呼吸筋麻痺)で死亡します。有効な治療薬・解毒薬はありません。早期であれば嘔吐させ、胃の洗浄などにより毒素(テトロドトキシン)の吸収を止めます。食品衛生法、「フグ毒規制に関する法令」に、ふぐ調理師の免許は、次の各号のいずれかに該当する者に対し、その申請に基づいて知事が与えると定められています。さらに免許に関しては、フグ調理師は、「ふぐ条例」に基づき都道府県知事が行うふぐ調理師試験において免許を取得した者であり、有資格者以外はその業務を行えない業務独占資格であるとされています。しかし、実際には都道府県によって調理人のレベルは異なるようです。
食品衛生(食中毒?)の病原菌はどれが一番死亡率(致死率?)が高いのですか?死亡率は、各年の総人口(推計)に対して1,000 万人当たりの死亡者数で示すと、①サルモネラ・エンテリティディス:サルモネラ菌による腸炎での死亡率は0.35です。年間4~5人が死亡しています。②ボツリヌス菌:細菌性食中毒の中では最も致死率が高いと思われますが、十分な呼吸管理と抗血清により、近年は致死率が低下しています。致死率は5~10%、しかし発生数が稀なので死亡率は低い。死亡者数は60年間で120人なので、平均では年間2人くらいです。③腸管出血性大腸菌症ではボツリヌス中毒に次いで. 致死率が高く、HUS(溶血性尿毒症症候群)の患者の致死率は1~5%です。ここ10年間の年間の平均死亡者数は4.9人です。④エルシニア・エンテロコリチカO8:年間の食中毒発生件数は1~4件くらいです。死亡者はここ20年くらい、ほぼゼロです。⑤カンピロバクター・ジェジュニ/コリ:細菌性食中毒の原因菌としは、発生件数、患者数ともに第1位(年間400~500件、1200~1700人)です。しかし死亡例はここ20年間ありません。⑥コレラ菌:年平均30例(11例~86例)の報告があるが、多くは海外での感染と考えられています。死亡例は1例報告されています。⑦赤痢菌:食中毒は国内では年間1~3件と少ないのですが、海外での感染例は多く年間200~800例です。近年、死亡例の報告はありません。
獣医法規の第7回は、「薬事法」が改正され、新しく医薬品、医療機器、再生医療製品を含む「医薬品医療機器等法」となりました。最初にこの法律について説明します。これまでの法律とはかなり違います。また、「薬事法」以来、動物医療のための薬事法というのはなかったので、新しい法律でも、法第83条に、読替えとして「厚労大臣」を「農水大臣」に、「厚労省」を「農水省」と読替えるという新しい法解釈が出てきます。また関連する法律として「麻薬・向精神薬取締り法」「覚せい剤取締法」「毒物・劇物取締法」について説明します。
医薬品医療機器等法:「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保に関する法律」という長い名前の法律の名前を短くして医薬品医療機器等法と呼ばれている。従来の薬事法に医療機器や再生医療の製品を加えた法律へと平成25年に改正された。この法の目的としては、①様々な医療に関係するものの品質、有効性、安全性を確保するための規制。②指定薬物の規制(指定薬物とは、毒劇薬に近いグループ、覚醒剤など勝手に取り扱われると困るもの、違法ドラッグも作用機序がわかってくると指定薬物となる)。③医療を発展させるための研究・開発促進。医薬品医療機器等法は、この種の法律としては珍しく研究・開発を推進することが書かれている。多くの法律は病気を統御することや健康、福祉、公衆衛生の向上に柱をおいているため研究・開発のために必要な処置を行うことが書かれること自体少ない。薬学では、国が研究・開発を法律で示しているので医薬品開発を名乗ると研究費が取れやすそう。④保健衛生の向上。以上4つとなっている。また、この法律の特殊なところは、家畜伝染病法と感染症法のように農林水産省と厚生労働省が別れて同じような法律を管轄するのではなく、人に関するのほうが圧倒的に前から存在していたので、動物の医薬品も医薬品医療機器等法の中に含まれているところにある。そして、法第83条に読み替え規定があり、厚生労働省令、厚生労働大臣と書かれているところを農林水産省令、農林水産大臣と読み替えて解釈し、動物に適応する。ただし、動物に化粧品という概念は存在しない。
医薬部外品→日本独自の分類で欧米にはないとあるが、欧米にはこれにあたる分類は存在
するのか。ある場合は日本のものと比較して内容は似ているのか。これにあたる分類はありません。例えば日本で部外品となる美白製品、腋臭防止剤は欧米では化粧品に入ります。
あせもやただれ等の防止の作用がある医薬部外品は、効果があるとは限らないから医薬品
には入らないのか。違います。有効性の有無ではなくて、人体への影響がおだやかなものを医薬部外品という分類に入れています。
日本薬局方とは?:一般に薬局方は、医薬品に関する品質規格書のことです。医薬品や生薬が収載されているほか、試験法や純度の基準・剤型なども記されています(薬典)。日本では、「日本薬局方」(Japanese Pharmacopoeia: JP)といいます(略称は「日局」、「局方」)。米国薬局方(United States Pharmacopeia: USP)、英国薬局方(British Pharmacopoeia: B.P.)、ヨーロッパ薬局方(European Pharmacopoeia: EP)などが主な薬局方です。近年は日米欧の三極薬局方の国際調和が検討されています(日米欧三薬局方検討会議(PDG : Pharmacopoeial Discussion Group)。
医療機器について:「高度管理医療機器」と「管理医療機器」の違いについて、その差は「人体 に入れるものは高度管理医療機器で、体内に入れることはないが診断に使う上で、整備など管理の必要があるものを管理医療機器という」のではないかと思いましたが、いかがでしょうか。なるほど、一理あると思います。高度管理医療機器の定義は、「患者への侵襲性が高く、不具合が生じた場合、人の生命の危険に直結するおそれがあるもの」とあり、体内に入れるものが多いのはこのためです。(例:ペースメーカー、冠動脈ステント、吸収性縫合糸、人工乳房、ビデオ軟性血管鏡、中心静脈用カテーテルなど)。他方、高度医療管理機器に入る分析装置においては、「不具合が生じた場合、人体への影響が大きいもの、誤った診断結果が得られた場合に、人の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある検査項目を測定する自己検査用診断機器、主たる反応系を内蔵する専用分析機器のうち、体外診断用医薬品で承認を必要とする検査項目を測定するもの」があり、例として透析機器、人工骨頭、放射線治療機器、血管用ステント、胆管用ステント、体外式結石破砕装置、汎用輸液ポンプなどがあります。必ずしも体内使用でない医療機器も高度管理医療機器に入っているようです。
体外診断用医薬品の所でのクラスの見分け方がよくわからないです。体外診断用医薬品は3
つに分類されます。①体外診断用医薬品を使って疾病の診断等に使用する際、その診断情報リスクが比較的大きく、情報の正確さが生命維持に与える影響が大きいと考えられるものについては、クラスⅢ(誤診すると深刻な結果となる診断薬グループ)。② クラスIIIに該当しない体外診断用医薬品で、較正用標準物質が存在し、体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の一環として行う較正が比較的容易であり、かつ、一般用検査薬(OTC)以外のものは、クラスⅠ。 一般用検査薬(OTC)、および①②に該当しない体外診断用医薬品はクラスIIです。
医薬品製造販売→製造販売の許可は製造所の許可を受けた事にはならないんですか?なりません。定義で医薬品製造販売は、①自ら製造した医薬品を販売すること②他に委託して製造した医薬品を販売すること(他から委託を受けて製造する場合は除きます)③輸入した医薬品を販売することです。外注して製造した医薬品や国外で製造された医薬品を国内で販売する場合にも、この「製造販売」に含まれるということです。「製造販売」という名称ではありますが、医薬品を製造するにはこの「製造販売業許可」の他に、「製造業許可」が必要になるため、注意が必要です。あくまで製造販売業許可とは、医薬品等を「販売」するための許可となります。
医薬品の検定:特定のワクチンや診断薬について、動物用生物製薬材検定基準より動物医薬品検査所で国家検定が行われています。民間の検定を合格した薬のなかでさらに、国家検定も受けなければならない薬とはどのような基準があるのでしょうか。ワクチンを含む生物由来製品(ワクチン、血液製剤(成分製剤)、インターフェロン、遺伝子組み換え製剤など)は、原材料を作成する細胞、病原体のシーズ、作成過程の手順、力価、安定性、安全性など、化学薬品とは異なる複雑さがあります。また、問題が起きた時の社会的影響が後遺症を含め非常に大きいことから、国で再検定することになっています。米国ではかつて不活化ポリオワクチンが不活化されておらず大きな被害を起こしました、日本では薬害エイズ(血液成分製剤)、脳硬膜移植による薬害ヤコブ病などの例があります。
指定薬物は普通の薬物よりどのくらい危険なのですか。指定薬品は、麻薬等を除く、中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用を有する可能性が高く,人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある薬物です。危険ドラッグから指定薬物にされるものも多く、その意味では、人にとっては、一般薬比べかなりかなり危険と言えます。
毒薬と劇薬はどういった場面で使われるのか。例;毒薬にはガンシクロビル(抗ヘルペス薬)、アン ホテリシンB(抗真菌薬)、シスプラチン(抗ガン剤)、A型ボツリヌス毒素(眼科用)、マイトマイシン
C(抗ガン剤)、アミオダロン(抗不整脈)などがあります。
動物に使うけど人間には使わない薬、またその逆の薬はありますか。あります。加齢性疾患
のうち認知症、パーキンソン病などや、新規のがん治療薬などは、まだ動物では使用されていません。また、抗生物質は人と家畜では使い分けています。あるいはノミやダニの駆除、寄生虫の駆虫薬などでは動物に使うが人には使わない、あるいは人には使うが動物には使わないものがあります。生物製剤のワクチンも人用と動物用のワクチンに分けて使うものがあります。こうしてみると結構ありますね。
医薬品販売業:「医薬品販売業許可を受けた者」とは、登録販売者のことですか?薬剤師
は販売できないのですか?薬局開設者=薬剤師ですか?医薬品販売業の許可を受けた者は、医薬品販売店舗としての許可を受けた店舗の開設者です。薬剤師である必要はありません。登録販売者は誰でもなれます。登録販売者は、「薬剤師ではないが、医薬品を販売できる専門家」です。2009年に薬事法が改正され登録販売者資格が新設され、コンビニエンスストアやスーパーなど、一定の条件を満たした店舗でも、登録販売者がいれば医薬品の販売ができるようになりました。登録販売者の資格は、都道府県が行う試験に合格後、都道府県に登録すれば取得できます。試験は筆記試験のみで、学歴や年齢などの受験資格はなく、誰でも受験可能です。当然、薬剤師は販売できます。
「アジュバンド」使用禁止期間と休薬期間 のところに記載がある、アジュバンドという言葉の意味を教えてください。アジュバント(Adjuvant)とは、ラテン語の「助ける」という意味をもつ 'adjuvare' という言葉が語源です。生ワクチンは弱毒化した病原体が、接種された宿主の体内で増殖するので十分な免疫ができます。しかし、不活化ワクチンでは、殺した病原体の量が限られるので十分な免疫を誘導することができません。この時、不活化病原体と一緒にワクチンとして投与して、その効果(免疫原性)を高めるために使用される物質がアジュバントです。油性アジュバントと水酸化アルミニウム(アマルガム)のような非油性のアジュバント等が開発されています。
動物用医薬品に使用禁止期間と休薬期間が設けられているのは何故ですか?家畜・家禽の場合は食肉になります。食品中に投与した薬剤(抗生物質等)やワクチン(アジュバントを含む)が残留している危険性を回避するためです。
モルヒネは毒薬および麻薬に分類されているようですが、癌の疼痛にも用いられています。
病院で使うモルヒネやほかの薬物はどのように用意するのですか。ケシから抽出される
みたいですが、製薬会社でも合成できるのですか。加工・精製等はしますが、合成ではあ
りません。麻薬の原料となりうるケシの栽培は、モルヒネ等の安定供給のため、アヘン法により厚生労働省の委託を受けた特定農家で栽培されます。しかし、量が不足するため アヘン需要の大半は、インドからの輸入に頼っています。アヘンから加工してモルヒネやヘロインを得ます。
動物用医薬品の使用特例に「獣医師がやむを得ないと判断したとき」基準量以上の使用を認
めるとありますが、どういう場合の時がやむを得ないのですか?産業動物などでは、疾病が進行していて通常の使用量では有効性が期待できない場合があります。蹄葉炎、乳房炎、膿瘍、蜂窩織炎など。農家は高用量の投薬で治療してほしいが、治療しても肉の歩留まりが悪いので、出来るだけ早くと畜場に出したい。こうしたケースでは薬が残ることが多いです。そのため、治療には用法用量の基準を超しますが、休薬期間を延ばすように指示します。
麻を作っている農家は申請が必要なのか?必要です。申請して許可を取る必要があります。かねてしめ縄など神事には大麻が使われていました。しかし、大麻取締法により栽培が禁止され、許可された農家だけが栽培することになっています。現在、栽培農家は、およそ30農家です。種からは油が取れ、食品・化粧品・ディーゼルオイルなどに使われています。七味唐辛子に入ってる硬くて大きいのが麻の実です。茎からは繊維と芯が取れます。繊維は布(麻布)になったり建材として固められたり、和紙にも使われていました。芯は炭やバイオエタノール燃料にも使われています。穂は医療利用が殆どです。葉と穂は許諾敷地外への持ち出し禁止が一般的です。
動物病院では、獣医師が麻薬施用者の免許を受け麻薬、向精神薬の管理者として管理するとありますが、つまり動物病院で働く獣医は麻薬施用者の免許も取っておくべきであるということですか?はい。麻薬施用者は、都道府県知事の免許を受け、疾病治療の目的で業務上、麻薬を施用・交付・麻薬処方せんを交付する者です。動物病院では、勤務する獣医師が取得可能です。免許は獣医師個人に与えられるもので、免許を取得した獣医師以外は麻薬を使えません。また、免許証を他人に譲渡・貸与することはできません。麻薬施用者は、免許証に記載された麻薬診療施設以外では麻薬の施用ができません(免許申請時に複数の施設を記載すれば、免許証に複数の施設が記載されます)。また、都道府県知事ごとの免許なので、都道府県が異なる2か所以上の施設で麻薬施用者になるためには、それぞれの都道府県知事の免許が必要です。
飼育動物診療施設(獣医療法に規定する、診療施設や往診 診療者等の住所を含む)及び研究所は、麻薬業務所として指定されている。これはVPPも知っておくべきである。とありますが、麻薬業務所を指定する団体はどこの団体ですか?都道府県知事です。また、麻薬業務所に含まれますが、麻薬臨床施設という言葉があります。麻薬診療施設とは、麻薬・向精神薬取締法第2条で「麻薬施用者が診療に従事する病院等をいう。」と定義しており、麻薬施用者が現に診療に従事している病院、診療所又は飼育動物診療施設をいいます。
麻薬及び向精神薬について:飼育動物診療施設において、麻薬や向精神薬の管理を行うのは
主に誰になるのでしょうか?免許を受ければVPPでも管理出来るのでしょうか。①主には診療獣医師です。②薬剤師その他向精神薬を取り扱うにつき必要な知識経験を有する者として政令で定める者でなければ、向精神薬取扱責任者となることができない。政令で定める者は、学校教育法に基づく大学(短期大学を除く)において薬学又は化学に関する専門の課程を修了した者とあります。しかし、実際の申請書を見ると、麻薬施用者又は麻薬管理者の免許の申請であるときは、「医師、歯科医師、獣医師又は薬剤師の免許の登録番号を記載すること」と書かれています。
メタンフェタミンが店頭に並んでいた本来の目的はなんだったのか?歴史的な背景があります。 ヒロポン (Philopon) は、メタンフェタミンの商品名です。ギリシア語の(ピロポノス/労働を愛する) を由来としています。戦前から 「除倦覺醒劑」として販売され、疲労倦怠感を除き眠気を飛ばすと いう目的で、軍・民で使用されていました。ヒロポンは「本土決戦兵器」の一つとして量産され、終 戦時に大量に備蓄されていました。戦後、 軍の備蓄品が一気に市場へ流出すると、酒やタバコと いった嗜好品の欠乏も相まって、人々が精神を昂揚させる手軽な薬品として蔓延しました。そのた
め、中毒患者が50万人を超えるなど社会問題となりました。 1949年、政府はヒロポンを劇薬に指
定、製造業者に対し、覚醒剤としての製造を禁止するよう勧告し、1951年に「覚せい剤取締法」を 施行しました。「限定的な医療・研究用途での使用」を除き、覚醒剤の使用・所持がすべて禁止され ました。
毒物?ヤドクガエルとか毒を持つカエルはなぜ増えすぎないのですか。自然界で生物は毒をもってることをカラフルな体色で知らせて、捕食されないようにしているのならもっと増えるかとおもったのですが。面白い質問です。毒を持つ動物種は、毒という武器を持っているので、基本的には毒を持たない動物種よりも行動力が低い傾向があります。熱帯にいる割に、ヤドクガエルは高温に弱く、餌(小型昆虫類)の消費量が高い点からすると、捕食されにくいからと言って、そんなに増えることはないと思います。ちなみにヤドクガエルの毒は捕食した昆虫から得たもので、自分で産生するのではないようです。弱毒、無毒のヤドクガエルもいるようです。
毒物・劇物・特定毒物:この手のものはいつ使うのですか。医薬品や医薬部外品にはふくまれないのだったら使い道は何ですか。医療に用いるのではありません。農薬や塗料の多くは毒物や劇物が含まれており、これらを使わないと農作物が育たなかったり、工場で塗装する塗料が使えなくなったりします。また毒劇物には工業用薬品や農薬、大学や研究機関で使用される試薬などさまざまな種類があり、その科学的な特長を生かして有用に活用されています。
カリウムは劇毒の一覧に入っていたのですが、人間のなかにはカリウムイオンが入っている
はずなのですがイオンは劇毒には入らないのですか?入ると思います。カリウムイオンは細胞活動に必須ですが、一定の閾値内を外れると危険です。急性毒性試験では塩化カリウムは、急性毒性(LD50 mg/kg)が、 静脈内投与では、マウス117 mg/kg、ラット39 mg/kg、 経口投与ではマウス383 mg/kg、ラット2430 mg/kg、モルモット2500 mg/㎏となっています。水酸化カリウムは経口投与でラットのLD50 mg/kgは、284mg/kg、経皮:データなし、吸入:データなしです。毒劇物の定義では、動物における知見の急性毒性では、原則として,得られる限り多様な曝露経路の急性毒性情報を評価し,どれか一つの曝露経路でも毒物と判定される場合には毒物に,一つも毒物と判定される曝露経路がなく,どれか一つの曝露経路で劇物と判定される場合には劇物と判定されます。(ア)経口投与、 毒物:LD50が50mg/kg以下のもの、劇物:LD50が50mg/kgを越え300mg/kg以下のもの、(イ)経皮投与、 毒物:LD50が200mg/kg以下のもの劇物:LD50が200mg/kgを越え1,000mg/kg以下のものなどとなっています。ただし金属カリウム(カリウム単体)は水と反応すると爆発する危険があり、水酸化カリウムが生成され、皮膚の腐食等を起こします。
ご多忙のところ恐縮ですが日本の治験に関する質問があります。健康成人男性を対象とした、人間に対しても安全に使えるかどうかを調べるための人間に対する第一段階の治験はハーフやクォーターは参加できません。日本人に対する薬のデータが欲しいというのは分かるのですが、人種が変わっただけでそこまで遺伝子が変わるとは思えません。何故治験ではこのように厳密に人種まで区別するのでしょうか?
質問有難う。知りませんでした。
臨床試験第I相は、健康な成人ボランティア(健常人、通常は男性)を対象に、治験薬の安全性とADMEなどについて確認する試験です。「漸増法」、「反復投与試験」などがあります。GLPを通過した治験薬を、第I相試験で、初めて人体に投与することになります。
健康な成人では、①患者に比べ、短期間に治験参加者を集めやすいこと、②他の薬剤を服用している可能性が低く、治験薬の安全性・薬物動態を確認しやすいこと、③採血やその他の頻繁な検査に耐えることができます。④抗癌剤などの場合は毒性が強いことが多く、健常者の健康を害してしまう可能性があるため、第I相から患者を対象に行われます。⑤人体の安全性が未確認の段階なので、通常は妊娠の可能性のある女性をさけ、男性です。女性向けの薬などの場合は、閉経後の女性を対象とした試験が行われることがあります。薬物動態に男女差がある場合もあり、最近は女性を含めた試験も行われてきています。 ⑥日本人のみであることが絶対に必要ということはないと思いますが、基本は日本人を対象にするようです。詳細は平成26年10月27日の通知があります。「国際共同治験開始前の日本人での第Ⅰ相試験の実施に関する基本的考え方について」です。
「第Ⅰ相試験を実施する主な目的は、被験薬のヒトでの忍容性及び薬物動態を評価することである。したがって、国際共同治験を開始する時点で、ヒトでの忍容性について十分に確認できていない、又は日本人での安全性に係るリスクが高い可能性があると考えられる場合には、国際共同治験に日本が参加する前に、日本人での第Ⅰ相試験を実施することが必要と考えられる。一方で、被験薬のヒトでの忍容性は確認されており、民族的要因が被験薬の安全性に大きな影響を及ぼさないと考えられる場合等には、国際共同治験に日本が参加する前に日本人での第Ⅰ相試験を実施しないことが許容される場合もあると考えられる。大規模比較試験における日本人の十分なエビデンス集積の可能性や、被験薬の特性を考慮した場合の日本人での安全性等についても検討した上で、日本人での第Ⅰ相試験の実施が必要か否かを総合的に判断することとなる。一般的には、国際共同治験参加前に日本人での第Ⅰ相試験を実施するか否かに関わらず、日本が国際共同治験に参加する場合には、その試験に十分な日本人症例を組み入れ、適宜、薬物動態測定や安全性モニタリング等を実施することが有用である。」としており、基本的にはI相の安全性・動態は日本人を対象にする方針のようです。
他方、人種差・民族差よりも個人差を問題に試験を組むべきという考え方が国際的には多くなっているようです。確かに、先進国のほとんどは多民族国家であり、日本のような単一民族?国家はマイナーですね。個人的な考えですが、グローバル化している現状では早晩、修正されるのではないでしょうか。
いよいよ最終回になりました。1単位なので7回半の授業です。今回は期末試験(45分)があるので、45分間で環境行政に関連する法規を7ついっぺんにやります。「動物の愛護と管理に関する法律」は、動物福祉学、動物生命倫理学、人と動物の関係学で習い、また実験動物学でも習うので、今回は簡単な説明にします。また野生動物については、動物危機管理学で復習します。国際条約、廃棄物処理法は、ともに重要なテーマですが、時間が足りませんでした。高学年になってから、専門科目で、また聞くと思います。
ご苦労様でした。返せなかった質問に対する回答は夏休みの宿題にしてください。
第8回の講義に質問してくれた学生さん有難う。復習評価に加えます。OMさん特定外来生物種の素晴らしいスライド有難う。ここに掲載させてもらいます。
OMさん、本当に有難う。
素晴らしいまとめ方です。参考になります。