遠隔VODでやった授業をYou Tubeに載せる方法を学びました。1回から8回までの講義を全てZOOMで作成しました。結構労力がかかりました。せっかくなのでYou Tubeで紹介することにしました。興味のある方は見て下さい。全部で20分割されています。何回か講義の順番を変更したりしたので混乱が起きています。2021年の講義で整理しなおしました。
第1回は概要、地球環境の推移と生物、原核生物(細菌)の進化です。
概要(解説)https://www.youtube.com/watch?v=XPdjeHOviZI
地球環境 https://www.youtube.com/watch?v=pkd9nKv40Mc
真正細菌 https://www.youtube.com/watch?v=orwUICealGo&t=378s
古細菌 https://www.youtube.com/watch?v=79d2ynGN4_Q
第2回は最初の真核生物である単細胞の原生動物とそれに感染するウイルスです。
原生生物 https://www.youtube.com/watch?v=lsRPFVtpET0
共生 https://www.youtube.com/watch?v=2KyUyMsbXuk
原虫 https://www.youtube.com/watch?v=YUJw2tH-QQE
ウイルス https://www.youtube.com/watch?v=o6fAJUaiqdU&t=0s
第3回は単純多細胞生物群です、真菌から3胚葉の寄生虫(扁形、線形動物)までです。
真菌 https://www.youtube.co/watch?v=hOmmyBgWMxU
寄生虫 https://www.youtube.co/watch?v=RehWSBHlBow
第4回は無脊椎動物の代表として節足動物。海の甲殻類と陸の昆虫です。
概要 https://www.youtube.com/watch?v=9cTFEdMaLBY&t=0s
軟体動物 https://www.youtube.com/watch?v=oM5l0gfm5pY&t=0s
甲殻類 https://www.youtube.com/watch?v=hyrHHHiUWbc&t=0s
昆虫 https://www.youtube.com/watch?v=CM1ADBwP1Z8&t=0s
第5回は脊索動物(ホメオボックスの原点)、無顎類、魚類、両生類、爬虫類です
脊索動物 https://www.youtube.com/watch?v=p7Q-RU0Jw-w
魚類・両生類・爬虫類 https://www.youtube.com/watch?v=3-o8W52Fr7Q
ゲノムと進化 https://www.youtube.com/watch?v=D_IQa8R8k30
第6回は鳥類と哺乳類の比較、免疫系、胎盤構造について考えてみます
免疫・胎盤 https://www.youtube.com/watch?v=H7EbOvU5cjs
翼手目・視覚系 https://www.youtube.com/watch?v=4ZCctYVilhI
第7回は、霊長類に絞って、サル類、類人猿、ヒトへの進化です。ヒトの特性は?
霊長類・ゲノム https://www.youtube.com/watch?v=TwAY6mSSm3w
ネオテニー https://www.youtube.com/watch?v=m6LGuQGCvdA
脳と情報 https://www.youtube.com/watch?v=13EDnqrzzV4
第8回はまとめです。進化論から認識される世界とは?One World.
2021年秋①、久々に難しい問題の質問が来ました。以前にも何回か議論した、細胞膜のエーテル結合とエステル結合に関するものです。もう一度考えてみました。
第二回の予習をしていて疑問に思ったことがあったのでメールさせていただきました。細胞膜が古細菌だけエーテル型脂質であるとおっしゃっていましたが、エステル型脂質とエーテル型脂質では膜の性質はどのように変化するのですか。また、エステル型とエーテル型では細胞膜的にはどちらの方が優れているのですか。教えていただけたら幸いです。
もう一度まとめてみました。エーテル型脂質とエステル型脂質の違い・特性
① エーテル型脂質は、グリセロール骨格に炭化水素がエーテル結合した極性脂質。
② エーテル型脂質を極性脂質として有する生物は古細菌と一部の好熱性細菌のみ。
③ 他の生物(真正細菌、真核生物)の有する極性脂質は2分子の脂肪酸がグリセロールに
エステル結合した構造。
想像をたくましくすると、地球が冷える前に繁栄した化学合成独立栄養の嫌気性・好熱菌は、エーテル結合型脂質膜(炭化水素+グリセロール)を有していた。38億年前に分岐した古細菌はその末裔。その後、地球が冷えてきて、炭酸ガス、酸素が使いやすくなると真正細菌にエステル型の脂質膜(脂肪酸+グリセロール)を持つものが出現した。酸素がより多くなり、冷えていく地球環境では、エーテル結合よりも、より反応性の高いエステル結合の脂質の方が適していたので、その後に出現した真核生物群はエステル結合型がメジャーになった?地球の温度が低下し、大気、海に酸素が増加したことと関係している?
炭化水素→エーテル結合→エステル結合:C-C-C-C→C-C-O-C-C→C-CO-O-C-C
インターネットで探してみたら、https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/28/5/28_5_288/_pdf/-char/jaに、詳細なエーテル型脂質に関するレビューがありました。僕の考えたほど単純ではないようです。
考察;「細菌がエーテル脂質を持つということは,古細菌にとってはどのような意義があるのだろうか.古細菌には,前述のように高度好塩菌,硫黄依存好熱古細菌およびメタン生成細菌(ユーリー古細菌群)があるが,これらの菌は互いに生育環境も,特有のエネルギー獲得様式も異なっているので,共通した意義を見つけだすのは困難である.化学的に安定な飽和アルキル基のエーテル結合は,太陽光のもとで空気(酸素)とともに生育する高度好塩菌や,高温と酸性条件に耐えなければならない好熱好酸菌にはより適切なものかもしれないが,多くのメタン生成細菌にとっては さほど必要とは思われない.グリセロールのsn-1位に極性基が結合した構造は,他の菌が生産するホスホリパーゼ類に対する対抗策と考えられないでもないが,多くの真正細菌と共生しているメタン生成細菌にとっては有効でも,通常の菌の棲息できない異常環境にある高度好塩菌やイオウ依存好熱菌には必要とは思われない.テトラエーテル型脂質は,以前は高温環境下に適応するためと考えられていたが,好熱性でないメタン生成細菌であるMethano-brevibacter arboliphiticusにも,好熱性のMetha-nobacterium thermoautotrophioumと同程度の量のテトラエーテル型脂質があり,イオウ依存好熱古細菌であるThermococcusはジエーテル型脂質のみからなることを考慮すると,高温環境に適応するためとは考えにくい.このように,現在の古細菌の生育環境条件とエ ーテル脂質の存在を統一的に理解することは困難である.そこで,エ ーテル脂質の存在意義について2つの考え方ができる.①一つは,古細菌の祖先が発生した時点では何らかの理由によりエーテル脂質の採用は一つの有効な選択であったという考え方である.②もう一つの考え方としては,エーテル脂質もエステル脂質もともに膜形成能力を持っており,細胞発生初期にエーテル脂質を使った細胞(古細菌)とエステル脂質を使った細胞(真正細菌)が並列して発生したが,エーテル脂質を持った菌は他の生物の侵入しにくいところにだけ生き残った,というものである.後者はエーテル脂質を適応の結果とみるよりも,むしろ進化の遺物とみる見方である.この問題の解決のためには,エーテル脂質の生化学,生物物理学,古細菌の系統と進化など,広い範囲の研究結果に基づく総合的考察が必要であろう。」ということでした。
2021年春①VODの授業から始めましたが、学生さんから質問が来ました。これまでにない面白い質問を挙げておきます。
真正細菌が住み良い環境に生息して、メタン菌や好熱菌、好塩菌などの古細菌は極限環境に生息しているものが多いとありました。どういう点で、真正細菌のほうが住みよい環境での生存競争に有利だったのか教えてください。
長い細菌界の歴史(40億年)の中で地球環境は随分と変化しました。環境温度や海水塩分などが下がったこと。②シアノバクテリアの登場以来、酸素濃度が上がったこと。③真核生物が出現したこと。④高等多細胞動植物が出現し、地球のメジャーな生物群になったことなどが影響しています。こうした環境変化に適応したのが真正細菌群です。適応性が低かったのが古細菌でしょう。アシナシイモリ、ムカシトカゲ、シーラカンス、オウムガイ・・・といった生きた化石のような細菌群ということになると思います。従って、古細菌群には、①好熱菌や高塩菌が多い、②光合成能を持つ古細菌はいない。③適応した古細菌は、多分、真核生物の母体になった?発展した古細菌は原核細胞から真核細胞に化けた?④後の環境で出現した、後発の動植物と共生する機会が少ない、といったことだと思います。
2021年3月、全部の授業が終わってから2020年春①の学生さんから久々の質問がありました。面白い質問でした。載せておきます。○○○○です。
質問内容:グラム陽性菌である黄色ブドウ球菌(コアグラーゼあり)にあるコアグラーゼは血漿凝固作用を有していることを調べました。この時にコアクラーゼの反応で黄色ブドウ球菌は凝固した血漿で自身を包み免疫反応を回避するということもわかりました。その後に吉川教授のホームページで耐性菌AMRのところの載っているホスホマイシンが黄色ブドウ球菌の抗菌剤として用いられていることが分かったのですが、血漿に包まれている黄色ブドウ球菌にホスホマイシンが抗菌剤として使えるのでしょうか?
A:黄色ブドウ球菌
フィルミクテス門, バシラス綱,バシラス目,ブドウ球菌科,ブドウ球菌属の黄色ブドウ球菌。通性嫌気性のグラム陽性球菌。顕微鏡で観察すると、ブドウの房のように複数の細菌が集団を形成しているのでこの名がある。他の細菌と比較して高濃度 (10%) の食塩存在下でも増殖が可能であり、カタラーゼ活性、ブドウ糖発酵性を持つ。
B:黄色ブドウ球菌感染症
軽度のものから生命を脅かすものまで幅がある。最も一般的なブドウ球菌感染症は、①皮膚感染症(しばしば膿瘍を引き起こす)②しかし、細菌が血流に入り(菌血症と呼ばれる病態、敗血症)、体内のあらゆる部位に広がることもある。③その場合、心臓弁(心内膜炎)と骨(骨髄炎)によく感染する。
C: 黄色ブドウ球菌の病原因子
細胞壁に局在する病原因子: ①プロテインA - 細胞壁に存在するタンパク質で、黄色ブドウ球菌のほとんどが有する特徴的な成分。抗体のFc領域に結合する性質を持ち、これによって抗体の持つ生物活性を抑制することで、菌が免疫系によって排除されることを防ぐ働きを持つ。②フィブロネクチン結合因子 - 細胞壁に存在するタンパク質で、フィブロネクチンと結合して体内に定着する働きを持つ(定着因子)③タイコ酸 - 細胞壁に存在する分子で宿主細胞との結合を高める(定着因子)。
外毒素:① エンテロトキシン群 - 食中毒の原因となる黄色ブドウ球菌が産生する。下痢や腹痛などの直接の原因になるほか、嘔吐中枢にも作用して嘔吐の原因にもなる。スーパー抗原としての活性を持つ。②TSST-1(毒素性ショック症候群毒素-1) - 毒素性ショック症候群の原因となる毒素。強いスーパー抗原活性を持ち、発熱や悪心、ショック症状を引き起こす。免疫系をかく乱する役割を果たす。③表皮剥脱毒素 - スーパー抗原の一種。④溶血素- 赤血球を破壊する溶血活性を持つ毒素群、特にα毒素が重要な病原因子。免疫細胞を破壊することで菌の排除を防ぐ働きを持つ。組織破壊によって病巣部から周辺組織に侵入する際にも働く。⑤ロイコシジン - 白血球を殺す毒素であり、免疫細胞の破壊によって菌の排除に対抗している。
酵素群:①コアグラーゼ、クランピング因子 - 血漿を凝固させ、フィブリン形成を起こす。これによって菌の増殖の場となる凝集塊を作り出し、白血球や血漿中の抗体による排除を防ぐ働きがあると考えられている。②スタフィロキナーゼ - 析出したフィブリンを溶解させる働きを持つ。菌が凝集塊の中で増殖した後、その凝集塊を分解して周囲に感染を広げる際に働くと考えられている。③プロテアーゼ(蛋白分解)、④DNase(DNA分解)、⑤リパーゼ(脂質分解) -周辺組織を分解して感染の拡大に関わる。
D: ホスホマイシン
ホスホマイシンは、ストレプトミセス属の真正細菌が産生する抗菌スペクトルの広い抗生物質の一つで構造は極めて単純。作用機序は、β-ラクタム系抗生物質が細胞壁のアラニンのペプチド鎖を標的とする最終段階での阻害薬であるのに対し、ホスホマイシンは極めてユニークで、細菌の細胞膜能動輸送系によって効率的に菌体内に取込まれ、細胞壁peptidoglycan(ムラミン酸とアセチルグルコサミンの糖鎖)の生合成を初期段階で阻害することにより抗菌作用を示す。
解答
ブドウ球菌の生体内増殖は多様です。確かにコアグラーゼはフィブリン形成を足場に菌が生体防御系から逃げるように働くようですが、本来、異物が入ったときは生体防御系はフィブリンなどで包もうとします。菌が包まれたまま持続しようとすれば、いずれ好中球やマクロファージ、リンパ球が来て戦いになります。細菌がジッとしていないで積極的に増殖しようとするときは、上述のように自分の酵素でフィブリンを溶かして周囲に広がらなければなりません。危険覚悟で拡散するわけです。ホスホマイシンは細胞壁の厚いグラム陽性菌には、特に有効です。抗生物質の作用機序については、You Tubeを見てください。
https://www.youtube.com/watch?v=XO7JQ3otnjY
期末試験が終わりました。初めてのVOD講義でした。それなりに盛り上がっていたので期待しましたが、結果的には例年通りの成績でした。考えてみれば、いつも対面授業でやっていることをVODに変えただけなので、理解力が急に上がるわけはなかったと反省しています。VODと対面授業を組合わせて両方の長所が生かせるような授業をしてみたいと思っています。面白かった質問6をアップします。今期春①はこれで終了です。春②には動物感染症(獣医3年)、VPPの獣医関連法規(1年)、人獣共通感染症(VPP2年生)、獣医関連法規(3年)と千葉科学大学の人獣共通感染症(zoom)と授業の目白押しです。
面白い質問がありました。今回獣医学科の3年次生の「動物感染症学」で軟体動物の感染症を説明した時に尋ねられた質問です。こちらの方があっているのでこちらに載せます。
タコの感覚器系のところで、タコには涙孔があると記載されていました。しかし、タコは海に生息しているのにどうして涙孔が存在するのでしょうか? 常に水にさらされているのなら涙を放出する必要がないように思えました。面白い質問有難う。試験問題作成をしなければならないのに、つい気になって調べてみました。
1.タコの眼の前方には涙孔(lacrymal pore)が開孔する。
Lachrymal, lacrymal, lacrimalは同義で涙の意味
2、イカの眼は頭部両側に位置し、角膜、虹彩と虹彩に囲まれた瞳孔、水晶体、網膜、及び、視神経から成る。開眼類では、角膜は丸く開いており、眼窩の前部は海水が自由に流入する。他方、タコのような閉眼類やコウイカ類では、角膜は殆ど閉じており、涙孔と呼ばれる小孔が眼窩前部と通じている。
3、とすれば、開眼類では、海水が前眼房水と直接混ざることになります。他方閉眼類では、我々と同様に角膜は閉じている?ので、涙腺は涙孔として瞼と角膜の間に開口する。従って涙孔から出る涙(体液)は海水と混ざることになります。海水の塩濃度は、約3.2%、われわれのように体液が生理食塩水と同じなら0.9%、浸透圧順応型なら3.0~3.4%位でしょう。①前者なら浸透圧差(体液と海水)を少なくして角膜を保護する。あるいは②水圧変動(水深)と眼圧の差の調節に涙腺を利用する?そんなことが出来るか分かりませんが。③一部の魚類と同様に涙腺に唾液腺と同様に餌をとるための麻痺性毒液を入れている、などという説もあるようです。
4、また、涙孔と呼ばれる小孔は眼窩前部と通じ涙腺に繋がっているはずですから、海水と体液のやり取りができるように小孔となって開閉しているのではないでしょうか?そうだとすると、涙腺で何か環境変化を監視する仕組みがあるかもしれません。しかし、明確な説明は英文でも調べましたがありませんでした。
5、上記の浸透圧差の考え方は間違いでした。頭足類は浸透圧順応型で、体液の浸透圧は海水と同じのようです。「一般的なタコを含む頭足類の血リンパ、心外液および尿は、すべて相互に、また周囲の海水と等浸透圧です。頭足類は浸透圧調節しないことが示唆されており、これは彼らが浸透圧順応型であることを示します。これは、環境の浸透圧に合わせて適応することを意味します。浸透圧勾配がないため、生物から海水への、または海水から生物への水の純移動はありません。タコの平均最低塩分要件は27g/l(2.7%)であり、環境にかなりの量の淡水をもたらすいかなる障害も致命的となる可能性があります。」ということでした。従って仮説①はありません。
なお、地中海のタコの唾液腺から抽出したeledoisin(11アミノ酸、undecapeptide)が、涙の分泌を促進するという研究が報告されています。構造式はpGlu-Pro-Ser-Lys-Asp-Ala-Phe-Ile-Gly-Leu-Met-NH2です。また、涙管の進化については、以下の記載がありました。また
The earliest creature with a nasolacrimal duct is thought to have been Eusthenopteron or Osteolepis both of which were considered ancient lobe-finned fish.44 The lobe-finned fish include extant lungfish and the relict coelacanth. 鼻涙管が最初にみられるのはユーステノプテロン、オステオレピスでどちらも条鰭類で肺魚やシーラカンス(肉鰭類)を含むグループです。もっとも、軟体動物は魚類とは別に進化しているので、どこまで共通かは分かりません。
おまけ:軟骨魚類が浸透圧順応型で尿素を体内にためているのは知っていましたが、軟体動物の多くが浸透圧順応型であることは知りませんでした。彼らがどのように高浸透圧適応をしているのかは、試験が終わったら調べてみます。ありがとう、面白かったです。
今回、8回目の講義スライドに加えて新規に「環境と生物進化」を追加しました。何度もの大量絶滅の危機を乗り越えてきた生物の末裔が、現在の世界を作っていることを理解してもらおうと思ったからです。また、生物の多様性を維持することが何故必要か?を理解してもらおうとも思ったからです。このような歴史と世界を理解できるようになった人間とは何者なのか?また、どうすべきなのか?を考えてもらいたかったからです。
2020年4月20日から「新型コロナウイルス感染症COVID-19」の流行拡大により、この授業もVOD(Video On demand)方式に変えました。取りあえず順調?に進んでいます。学生さんは、いつも通り、面白い or 考えさせられる質問を送ってくれます。講義への面白い質問と回答です。連休中に名言をみつけました。
少而學、則壯而有爲 少にして学べば、則ち壮にして為す有り
壯而學、則老而不衰 壮にして学べば、則ち老いて衰えず
老而學、則死而不朽 老にして学べば、則ち死して朽ちず すごい言葉です。
講義への面白い、考えさせられる追加質問への回答です。こちらを先にあげておきます。
面白かった質問の4です
面白かった質問その3です。
第3回の講義(本日のVOD講義)に関する質問です。勉強になりました。
面白かった質問のまとめ1です。第1回と2回の講義についての質問です。
現代生物進化の2019春①が終わり, 早くも秋①が始まりました。2018年のスライドと質疑(現代生物進化の項参照)を見たうえで、講義を聞き、理解できたこと、理解できなかったことを、一つずつメールで送ってもらい、回答することにしました。2018年度は語句の質問と説明が多かったのですが、今回は、質問内容が深くなって回答に苦しむことが多くなりました。
また、説明とともに新しいスライドを追加することになりましたが、このホームページの「現代生物進化」の項目の容量が一杯になったようで、新しいスライド等を入れる余地がなくなったようです。仕方がないので、ここに「現代生物進化2」を開きました。時間を見て、7回目までの質疑をアップしいと思います。なお、2019年春①の試験問題と模範解答は一番後ろに載せてあります。
秋①の講義が終わりました。試験の回答を載せておきます。確認してください。
正しい文章には〇を、間違っている文章は、下線部を正しい言葉に置き換えなさい。
正しい文章は1つだけです。2つ以上〇をつけると減点になります。
第1回講義から
1、従属栄養細菌は他の生物が作った無機物を栄養源とする細菌である。( 有機物 )
2、真正細菌と古細菌の細胞膜は脂肪酸とグリセロールがエステル結合している。(真核生物)
3、ホイタッカーの5界説でモネラ界に属するのは原核生物である。( 〇 )
4、アルコール発酵が細菌によるものであることを明らかにしたのはロベルト・コッホである。(ルイ・パスツール )
5、古細菌のハロバクテリア綱には、その名の通り好気性の好熱菌が含まれる。( 好塩菌 )
第2回講義から
1、単細胞の真核生物である原生生物のうち葉緑体を持ったのは原生動物である。( 藻類 )
面白い回答、ミドリムシ(あるいはハテナ)間違いではありません。
2、1967年、細胞内共生説を唱えたのはマーギュリスである。( 〇 )
3、大腸バランチジウムは胞子虫門に属する。( 繊毛虫門 )
4、トリパノソーマは2宿主性である。鳥類・哺乳類を宿主とする種のもう一つの宿主はヒルである。
(吸血節足動物)
5、マラリア原虫で母細胞の分裂により多細胞となった状態の細胞塊をメロゾイドという(シゾント)
第3回講義から
1、担子菌門の約半分の種は、藻類との共生体を形成して地衣類として生活している(子嚢菌門)
2、動物の遺体は主として細菌が分解し植物の遺体は主として原生動物が分解する傾向がある。(真菌類)
3、ヒドラは、多細胞の動物の中で最も原始的な1胚葉性動物であり、器官を持たず左右の区別も
ない。(カイメン )
4、回虫など線形動物の多くは、雌雄異体であり、複数回の脱皮で成長する。( 〇 )
5、吸虫や条虫の多くは、中間宿主内で有性生殖をおこなう。( 無性生殖 )
第4回講義から
1、カンブリア紀の最大動物で最高の捕食者で節足動物といわれているのがアノマロカリスである
(〇)
2、旧口動物(前口動物)は、原口が肛門になって発生する動物群である。( 口 )
3、エビでは心臓は背側に、神経系は神経鎖となって腹側に、消化器系は体の背側に分布している。( 中央 )
4、エビの血液細胞には赤血球はなく,セミ顆粒球,ヒヤリノ細胞とリンパ球の3種類がある(顆粒球)
5、雄バチから放出されるフェロモンには階級社会を維持する物質がある。9-オキソデセン酸が有名である。(女王バチ)
第5回講義から
1、ナメクジウオは尾索動物であり、1から13までのホメオポックス遺伝子をすべて揃えている。(頭索動物)
2、ヌタウナギは無顎類に属し、嗅球、大脳半球、間脳、延髄などを持つが中脳を欠いている。( 小脳 )
3、ホヤは幼生時、オタマジャクシのような形をしているが、成体は岩などに固着しセルロースを合成する。( 〇 )
4、大部分の軟骨魚類は体液や細胞内に尿酸を蓄積し、体内と海水との浸透圧差を小さくしている。( 尿素 )
5、肺や気嚢の原点となった鰾(ウキブクロ)は魚類時代に鰓の一部から生じた。( 食道 )
第6回講義から
1、魚類ではゲノムを倍加していった。ヒトのゲノムの30倍以上のゲノムサイズを持つ魚はギンザケである。(肺魚)
2、異なる種の染色体間で、遺伝子が同じ順番で配置されていること、もしくはその領域をネオテ
ニーという。(シンテニー)
3、恒温動物とは外温性動物のうち、自律的に体温を制御している動物をいう。(内温性)
4、胎盤を介して抗体(IgG)が胎子に移行できない動物の代表は偶蹄類である。( 〇 )
反芻動物も正解です
5、ココウモリは超音波をだしエコロケーションをする。視覚系では立体視が出来る(立体視できない)
第7回講義から
1、約600万年前にチンパンジーから分岐した人類の祖先は猿人、原人、旧人、新人を経てホモ・サ
ピエンスとなった( 〇 )
2、ヒトの染色体数はチンパンジーより1本少ない。チンパンジーの第12染色体と13染色体が融合
し、ヒトの第1染色体となったためである。( 第2染色体 )
3、 アジア人、ヨーロッパ人のゲノムの1~1.5%はネアンデルタール人由来であるが、、アメリカ人の場合は0.1%以下。( アフリカ人 )。
4、齧歯類は未熟児として生まれる巣籠り動物であるが、ヒトは社会的に未熟な第2次巣立ち動物である。( 第2次巣籠り動物 )
5、ヒトで特に肥大した大脳皮質の部分は頭頂葉の前野で、自意識、意志、推測、やる気、戦略などを司っている。( 前頭葉 )
8, 面白かった質問から
1、核膜は内膜と外膜をもつ脂質2重層の4重膜構造をとっており外膜は小胞体につながっている。
(2重膜構造)
2、 マラリア原虫は無性生殖するが、ガメートゴニ―を行い有性生殖もする。マラリア原虫の終宿
主はハマダラカである。( 〇 )
3、ヒト胎児は尿を産生し、排出された尿は卵黄となる。卵黄には肺の成熟を促す物質が含まれており、胎児は卵黄を飲むことで、肺胞の発達を促している。( 羊水 )
4、哺乳類のゲノムは、祖先のナメクジウオのゲノムを1倍体とすると8倍体となっていると考えられる。( 4倍体 )
5、 最近、ジャンクDNAと考えられていたエキソンがmRNAを核から運び出す過程に関与していることが報告された。( イントロン )
講義を聞いた感想、あるいは予習・復習をどの程度やったか?質問への回答など、授業に関する自由な意見を書いてください。今後の授業に生かしたいと思います。
現代生物進化第1回質問回答まとめ(質問中、主なものを掲載しました)。
第1回講義真菌は体外消化を行い、植物よりは動物よりに分類されるとおっしゃいました。なぜ、見た目は植物に近くなったのでしょうか。面白い質問です。それは、真菌の生活様式が植物的だからです。①動物と植物の決定的な違いは、生命を維持するために動く生き物か(animal)、動かない生き物(phyto)かです。単細胞真核生物(原生生物)の時に光合成する(独立栄養の)藻類と従属栄養の原生動物類に分かれました。多細胞化した時に植物系と動物系に分かれましたが、真菌は動かないで従属栄養生活をする生物です。②我々の周りでも、家、ビル、教会、寺院のような建築物は動きませんし、そうした構造です。バイク、自動車、電車、飛行機などは動くもので、そうした共通構造を持ちます。生物も同じです。建築物は作ってしまえば、それだけですが、動くものは常にガソリンや電気のようなエネルギーが必要です。③こうしたたとえをすると、真菌類は、絶えず維持にエネルギーのいる建物ということになります。火力発電所や原子力発電所みたいなものでしょうか?④ちなみに、我々の直接の祖先になる、後索動物のホヤは、幼生期には魚のように泳ぎます。しかし、大人になると植物のように岩にくっついて生活します。植物からセルロース合成酵素をもらってセルロース合成をする唯一の動物です。面白いですね。
【理解できなかったこと】理解できなかったこととはまた少し違うような気もするのですが、吉川先生に聞きたいことがあります。高校生の頃に生物の授業の中で進化について勉強していました。その中でカンブリア紀の大爆発の代表的な生物としてアノマロカリスについて学びました。アノマロカリスは当時最大で最強の生物であると言われていますが、当時調べた本の中ではアノマロカリスは三葉虫を食べることができない(硬くて)ほどの弱者だったということが書いてありました。かつ触手のような頭から生えている2本の手は実際に曲げると口までは届かないということも聞きました。ではどうやってアノマロカリスは当時最強な生物になれたのでしょうか?進化という言葉を聞くといつもこのことばかり考えてしまいます。今日の4回目の講義で少しは答えられたと思います。古生物を含めて、その生き物の①実物の大きさと運動の能力、②生存時期・生存期間、③周囲の環境、④地球規模での環境変化を知らなければなりません。エディアカラの最後からカンブリア紀の初期にかけて、大きさ、運動能からみて、やはりアノマロカリスは最強の捕食者であったと思います。ただカンブリア紀は、全ての動物種が一気に登場したので、アノマロカリス(節足動物の甲殻類の祖先に近い?)とほぼ同時期に、強力な軟体動物のオウムガイの祖先や三葉虫が出てきます、また脊椎動物の進化も早く、シルル紀までには魚類の前の鎧を着たような板皮類が出現します。アノマロカリスが長く繁栄できなかったのは、同じ空間を生きる強力なライバルが出現し、①食物連鎖のトップを維持できなかったこと、②深海や淡水に逃げてすみ分ける能力がなかったからでしょう。もう少し早く出現していれば、長く繁栄したかもしれません。その意味ではカンブリア紀は、極端に弱肉強食の食物連鎖が進んだ時代だと思います。そのため多様性が広がり、進化が早まったように見えるのではないでしょうか(生物爆発)。それは、オゾン層や酸素濃度、好気呼吸のエネルギー効率、氷河期のあとの地球の安定的な温暖化などと関連しているかと思います。
メタン菌や好熱性菌などの古細菌は、分岐した時期の地球の環境が厳しく極限環境に生息しているようですが、長い年月を経た今の時代にも生息しやすい場所に移動しないで、わざわざ極限環境にいるのはどうしてですか。また、古細菌はその場所でどのような役割を担っているのですか。① 極限状況の環境では敵対する微生物が、ほとんどいないというメリットがあります。②また、一般的に生息しやすい?環境は、すでに生存競争に勝ち抜き進化した生物群が占めていて、生物学的ニッチ(隙間)がありません。③既に、極限環境に適応しているので、彼らにとって住みにくいことはないと思います。役割というよりも、その環境で栄養、代謝に必要な物質を調達し、生存し、エネルギーや物質循環をしています。人間的視点から見れば、彼らの作った有機物や鉱物など(硫黄やマンガン、鉄、あるいはメタン、石油?など)も、細菌の活動により、濃縮され蓄積されるようです。
質問:嫌気性細菌にとって酸素は猛毒で生体の全てを酸化し死を誘導すると書いてあったのですが、人間の体内には嫌気性細菌の方が多いと授業で聞きましたが大丈夫なのですか?消化器系の酸素濃度は、呼吸器系と異なり、とても低いです。そのため細菌に限らず消化管内の寄生虫でも嫌気性呼吸をするものが多いです。文献的には、大気の酸素濃度(Po2)は145㎜Hg(21%O2),健康な肺胞の酸素濃度は100~110㎜Hg、健康な大腸の酸素濃度は10㎜Hg(1.4%O2)以下と報告されています。
質問:①深海熱水噴出孔周辺は、生物活動が活発とありましたが水温は何度で、②好熱性を示す細菌は何度まで耐えられるのですか?③熱水に含まれる各種の化学物質にはどのようなものがありますか?テルモプラズマ綱に細胞壁が無く、細胞融合性を持つことの利点は何ですか?①熱水噴出孔はマグマに通じているので高温です。噴出孔から噴出する水温は400℃にも達しますが、熱水噴出孔がある深海の水温は2℃くらいです。 深海の高い水圧によりこの高温でも水は液体のままで沸騰しないようです。②好熱菌は通常、100℃以上でも生育します。古細菌では122℃での生育報告があります。③基本的には、硫黄、鉄、リン、炭酸塩、一酸化炭素、窒素などでしょう。噴出孔の周りに生物が存在すれは有機物ができます。④真核細胞は、原核細胞と異なり細胞壁をもちません。細胞膜が嵌入していろいろな異物を取り込み、時に共生したり、細胞内小器官に変質させたりすることが出来ます。また細胞融合して、細胞が巨大化することは単細胞の活動にとって有利です。原核生物に比べ原生生物のサイズは容積で500~1000倍くらい大きいです。
質問:太古の海は200℃超とあり生命の誕生は熱水噴出孔と書かれていましたが、現在のような水温に下がってからできた熱水噴出孔なのか、太古の海で200℃の中にできた熱水噴出孔なのか、どちらの熱水噴出孔で生命は誕生したのですか?もしくは海全体が熱水噴出孔のような状態だったのですか?46億年前に誕生した地球の表面はマグマの海(1,000℃という高温のマグマ・オーシャン)に覆われていました。その約1億年後、地球が冷え始めたので、空の水蒸気が雨となって激しく降り始め、豪雨の後に地球に海が生まれました。原始海洋は200℃以下となり、温度は150~200℃でした。しかし、40億年前の海でも、大気中の炭酸ガスの温室効果?で、温度は100℃を超えていたと考えられます。しかし、月は現在の1/10くらいの近距離にいたので、10mを超える海水の満ち引きがあり、海水はかき混ぜられ、揺れ動いていたと思われます。このエネルギーと海にある化学物資の反応で生命が誕生したという考えがあります。隕石から来たという、生命の起源に関する別の考えもありますが・・・・
理解できなかったこと:①クロマトフォアと②クロロゾームに関して質問です。クロマトフォアの由来が細胞膜であるのに対して、クロロゾームは由来が細胞膜でないならいったい何からどのようにできたのでしょうか?その材料か構造に違いはあるのでしょうか?
①紅色細菌のクロマトフォアは光合成に必要な成分を多くもった細胞膜小胞で脂質二重膜です。多くの紅色細菌は嫌気状態で,細胞膜のくびれ込みに由来する細胞内膜系(intra-cytoplasmic membranes)を形成します。この膜小胞には光合成反応中心,アンテナ色素タンパク質複合体,電子伝達系成分、ATP合成酵素などの光合成初期反応に必要な成分が含まれています。他方、②緑色光合成細菌のクロロゾームは主に糖脂質(リン脂質)よりなる一層の膜で囲まれた米粒の形をしているアンテナ器官です。バクテリオクロロフィル c 等が会合して棒状になったものを多数内包する脂質一重膜の組織です。包膜である脂質一重膜にはいくつかのタンパク質が存在しクロロソームの形状維持等に関与しています。一重膜ですが両方にグリセロール+リン酸が付くので、外面も内面も親水性になるようです(古細菌の細胞膜型あるいは図のように内面は疎水性のまま?)。真核生物の小胞体、リソゾーム、ゴルジ体などのミクロソーム系はいずれも一重膜?膜構造はもう1度調べる必要があります。
①シアノバクテリアは緑色硫黄細菌と紅色細菌の両方の回路を持っていること、②紅色細菌の一部が、光合成暗反応(カルビン・ベンソン回路)を逆転させクエン酸回路をつくり、酸素が発生するようになったとありましたが、逆転させるの意味がよくわからなかったです。しかも、緑色硫黄細菌があったから変化したのか、紅色細菌のみで変化したのか気になりました。 よろしくお願いいたします。①はシアノバクテリア(藍色細菌)が緑色硫黄細菌の光合成系と紅色細菌の光合成系を合体させた光合成系であるということ。②糖新生系(カルビン・ベンソン回路)と解糖系(クエン酸回路)がちようど鏡像のような関係にあるという意味です。以下に説明します。①シアノバクテリアが2つの細菌の光合成系を合体させたものであるという理由。光合成細菌には、①紅色細菌、緑色硫黄細菌のように、光合成電子伝達系が1種類で、水の酸化能(酸素発生能)を持たないグループと、②シアノバクテリアや真核光合成の葉緑体のように酸素発生型光合成の電子伝達系を持つものがあります。酸素発生型の光化学系は,2つの光化学系(PSI、PSII)の電子の流れがシトクロム複合体を通して繋がれています。①PSIは2つの蛋白質より成るヘテロ二量体構造をもち,アンテナ色素系(光を受け電子を発する)と反応中心(電子伝達)が一体になったアンテナ・反応中心複合体です。ヘリオバクテリアや緑色硫黄細菌にみられる鉄硫黄クラスター型光化学系(PSI型光化学系)は類似し,両者は同一祖先型から派生したものと考えられます。②PSIIは2つの蛋白質より成る構造ですが、この構造は,紅色硫黄細菌や緑色糸状細菌にみられるフェオフィチン-キノン型光化学系(PSII型光化学系)に類似し,両者は共通の祖先型から派生したものと考えられます。従って、酸素発生型の光化学系(シアノバクテリア)の基本構造は,光合成細菌にみられる2つの光化学系(PSI:緑色硫黄細菌とPSII:紅色硫黄細菌)を併せもつことにより成り立っています。②光合成系(シアノバクテリア、葉緑体)と解糖系(αプロテオバクテリア、ミトコンドリア)が逆回転であるという説明。①シアノバクテリアではカルビン・ベンソン回路が回転するので、リブロース(C5)2リン酸に二酸化炭素(CO2)が固定(C6)され、リングリセリン酸(2xC3)となりNADPHからプロトンをもらい、グリセロールアルデヒドリン酸となり、糖(グルコース)と酸素と水を産生する回路です(糖新生系、同化)。他方、②解糖系は、グルコース2リン酸(C6)がピルビン酸(2xC3)となり(2ATP)、ミトコンドリアのクエン酸回路に入り(TCA回路:C2→C6→C5→C4→C4+C2=C6、2TPA)、プロトンポンプを介してシトクロムの電子伝達系へ、プロトンチャネルで輸送して酸素を使って34ATPと二酸化炭素と水を作る回路です。カルビン・ベンソン回路が左周りなら、解糖系+ミトコンドリア(異化)は右周りということになります。鏡像関係にあるという意味で回路の回転が反対になっているという程度の意味です。
質問:原核生物が誕生してから真核単細胞生物が出現するまでには約20億年かかっていますが、①その期間の環境は単細胞生物でいたほうが利点のあるような環境だったのでしょうか?②また多細胞生物は細胞群体のようなものから始まったのですか?③高校生物で真核生物は細菌より古細菌のほうに近いと習ったのですが、原核生物と古細菌の分岐のほうが早いのはなぜですか?①単細胞の方が有利というよりも、原核細胞から真核細胞ができるまでに、20億年かかったということでしょう。原核生物(真正細菌、古細菌)が多様化し、従属栄養で高エネルギー生産が可能になる細菌(好気性従属栄養真正細菌)が出現すること、共生の相手方になる古細菌が大型化し、細胞壁を消失させ、細胞膜を使って、異物を貪食できる能力を開発するのに、やはり時間がかかったのではないでしょうか?酸素濃度の上昇など、環境も少しずつ整ってきた可能性もあります。もちろん、20億年前に突然始まったわけではなく、真核生物になるための試みは何度も起こったはずです。しかし、うまくいかなかったケースは時期尚早だったのではないでしょうか?②現存する多細胞生物の起源は群性化する立襟鞭毛虫(単細胞)であることがゲノムから明らかにされています。体細胞核と生殖細胞核を持った繊毛虫由来の多細胞生物は見つかっていません。でも、どこかにいるかもしれませんね。生物はあらゆることを試みたので、大半は絶滅してしまっています。③古細菌は原核生物です。真正細菌を共生し、真核生物のもとになったと推測されています。真核生物は、理論的には真正細菌と真正細菌の共生or 真正細菌と古細菌の共生 or 古細菌と古細菌の共生のどれかで始まったのでしょう(1次共生)。その後、真核生物と真核生物の共生(2次共生)があったようです。今でも高等生物と細菌の共生はあります。アブラムシのブフネラ菌、植物の内生菌など・・・。
疑問:①最初の生命体とはどのようなもので、どのようにして生まれたのか?②隕石によって飛来したとして、それを証明する手立てはあるのか?どのようにその研究を展開していくのか?①地球上で生命が生まれた場合と、②隕石によって運ばれてきた可能性があります。①の場合は、原始地球の状況を再現し、物理・化学的に有機物を合成し、高分子合成から生命体に持っていく研究で古くからおこなわれています。超高圧、高温、放電条件などで化学合成のアンモニア+CO2→尿素+アクロレイン→尿酸+アンモニア-O2→プリン体にリン酸+りボース(フラノース)が出来れば、核酸が合成できる?RNAそのものに酵素活性があれば、重合して遺伝情報となる?しかしリボゾームがないと、RNAの複製が出来ても、蛋白合成ができない。核酸とアミノ酸が結合するtRNAを作り、RNAから蛋白に置き換える?しかし高次構造蛋白からなるリボゾームがやはり必要・・・。②類似の質問がありました。隕石から最初の生物が来てた場合どうやって証明するのですか? ①隕石中に水の痕跡、②有機体の化石、あるいは③有機物(核酸や蛋白や糖、脂質などの痕跡)が存在していれば、生物がいた可能性が高いと思います。
南極で見つかった火星の隕石?「ALH84001」には、生命の痕跡があるということで話題になりました。その時の根拠は、1) ALH84001に含まれる炭酸塩が生命に適した温度で形成されたこと。2) ALH84001から見つかった有機物は炭素13を比較的少量しか含んでいなくて、生化学反応の痕跡であること。3) 磁性粒子(磁鉄鉱結晶)がバクテリア由来であること。4) ALH84001から見つかった奇妙な構造はバクテリアの化石であること。その後、磁鉄鉱結晶は非生物的に作れることが明らかにされ、この根拠はなくなりました。
現在、世界に存在する細菌の数やウイルスの数は比較的正確に数が推測されていますが、どうやって調べているんですか?僕も気になっていました。1998年、William Whitmanとジョージア大学の彼のチームは、①細菌の生存領域として異なる生息域のタイプ(海洋と他の水生環境、土壌、土壌の地下、空気、動物の内部と葉の表面など)を調べて、②その生息域の数を別々に推定しました。さらに、③生息域は必要に応じてより小さなカテゴリーに分類され(森林土壌対非森林土壌のように)その数が推定されました。④しばしば小カテゴリー別に直接、細菌数が算出されました。⑤直接計算が不可能な場合は、公表されている文献に基づいて推定しました。このようにして地球上に存在する細菌数を推定しました。その結果、地球上の細菌総数は5x1030になりました。
高校までの理解では鳥類から人類が進化したものだと思っていたのだが、人類(哺乳類)は爬虫類のある一種から進化したことがわかった。また、高校生物ではあまり習わなかった五界説についてまだ最初の方であるけれど細菌やウイルスの違いなどについて理解することができた。鳥類が爬虫類から分岐したのは、ほ乳類が爬虫類から分岐したよりもかなり遅いと考えられています。始祖鳥は、現生鳥類の直接的な祖先ではありませんが(系統のとぎれた絶滅種)、ジュラ紀(2億年前~1億4600万年前)の後期、約1億5000万年前のものです。哺乳類の起源は古く、既に三畳紀後期、2億2500万年前には、最初の哺乳類といわれるアデロバシレウスが生息していました。そのルーツは、古生代に繁栄した単弓類 (Synapsida) のうち、キノドン類 (Cynodontia) です。単弓類は、爬虫類の双弓類 (Diapsida) とは石炭紀(約3.5億年~2.9億年前)中期に分岐し、独自の進化をしていました。単弓類は、ペルム紀末の大量絶滅(約2億5100万年前)において壊滅的なダメージを受け、キノドン類などごくわずかな系統のみが三畳紀まで生き延びました。
生物の進化について学んでいるが、そもそも生物が進化しない時の条件はハーディ•バインベルグの法則が成り立っている時と高校生物では習った。しかしハーディ•バインベルグの法則の内の4個(5個のうちのどれを棄却する?)を常に満たすのは困難だと思った。しかしそれでも僕らが今生きている時代で僕は進化というのを目の当たりにしたことがない。この4個の条件を満たしていても特別に進化する時などはあるのか?また進化とは僕らの気づかない内に少しずつ少しずつ起こっているものかなと疑問に思った。吉川先生、解答をお願いします。①ここで問題としている時間は40億年です。突然変異の累積は新種を作り出すには十分すぎる時間です。また、生命史を見れば、最低5回の大絶滅期があり、生物の大半が死滅するという、強烈な選択圧をくぐってきています。もともとハーディ・バインベルグの法則が成り立たないことを前提に考えています。②他方、我々が生きている実時間はせいぜい100年以下です。周りの生物で進化を見るのは難しいかもしれませんが、例えばインフルエンザウイルスの遺伝子を見ればわかるように、流行ごとに遺伝子再集合(リアソート)や突然変異により進化?します。しかし、この場合は自然選択と突然変異がありますね。進化と多様性は、基本的にはゲノムの複製時の遺伝子組み換えと読み間違いによる突然変異を基本としているので、常に少しずつ起こっているとも言えますね。
理解できなかったこと:細菌の構造について質問です。鞭毛が生えている根元の器官ですが、図では細胞膜上にあり、細胞膜・細胞壁を貫通しています。今まで習った範囲ですと、この様な器官は見たことがありません。鞭毛の他にも同じような器官が存在するのでしょうか?線毛も類似の構造です。「線毛は機械の中心から伸び、その長さは細胞の大きさに匹敵することも珍しくない。機械は細胞壁を完全に貫通して存在している。細胞膜に埋もれている回転モーターは新たなサブユニットを追加し、襟の部分は伸びる線毛を外膜の外に誘導する。環状のタンパク質は二層の膜間にある空間を満たしているペプチドグリカン層に機械全体を固定する。」と書かれています。ゲノムをやり取りするには、細胞質同士をつなぐ必要があるので、性線毛は中空で、互いの細胞質に直接開口しているはずです。
疑問:隕石が衝突し、それによって多くの生物が滅んだにも関わらず、なぜ多く生き残ったのがげっ歯類であったのか。本来なら体の大きな爬虫類や両生類などが生き残るのではないのか。また、それらの動物はなにを食べて生き残ってきたのか。約6600万年前、直径約10〜15キロメートルの小惑星が地球に衝突し、恐竜がほぼ絶滅しました。衝突により、約10兆トンの二酸化炭素、1000億トンの一酸化炭素、さらに1000億トンのメタンが一気に放出されたといわれています。また、発生した火災と衝突の衝撃で巻き上げられた塵埃が太陽の光を遮り、全地球規模の気温低下を引き起こし、その結果、植物の光合成が劇的に減少しました。低酸素と低温と少ない食料の中では、恒温(内温性)動物で小型の雑食性で夜行性のげっ歯類に近い哺乳類の祖先が生存に有利となり、生き延び、爬虫類がほろんだ空隙(ニッチ)を埋めるように、繁栄・多様化したと考えられています。大量消費の大型の変温(外温性)動物は、こうした環境には適応できませんでした。
質問:地球上の最初の生命体である細菌の多様性は、化学合成独立栄養細菌から、嫌気性従属栄養細菌、嫌気性光合成独立栄養細菌、好気性従属栄養細菌ときて何故、「好気性光合成独立栄養細菌」が誕生することがなかったのか、その理由があるのか、それとも、存在していたのか、が分かりません。最初は確かに、「嫌気性光合成独立栄養細菌」の方が多かったのですが、シアノバクテリアは酸素を産生する独立栄養の光合成菌細菌です。酸素に耐える能力を持っているので一応好気性と考えられます。しかし、シアノバクテリア(葉緑体)とαプロテオ菌(ミトコンドリア)の両機能を同時に備えた真正細菌が存在したかどうか?真面目に考えていませんでした。インターネットに素晴らしい、専門家の回答がありました。事態はかなり複雑のようです。「シアノバクテリアは、酸素発生型光合成(光化学系Iと光化学系IIが機能する光合成)を営む原核生物として定義されます。ただ、生活様式(代謝系)としては、シアノバクテリアは多様な生物群を包含しており、また、その性質も環境条件によって大きく変化することがあります。1)進化の過程でシアノバクテリアがどのようにして出現したかは不明です(狭義の光合成細菌が起源に関係していることは明らかですが)。シアノバクテリアが出現する以前から地上には低濃度ではあるが酸素が存在していて、酸素を消費する代謝系が発達していたようです。酸素を還元して水に変化させるシトクロム酸化酵素(酸素呼吸の鍵酵素)もその一つです。このような時代から機能している酸素除去系がシアノバクテリアにも備わっています。シアノバクテリアが備えている酸素呼吸の能力が、最初から備わっていたものか、その後の進化の過程で獲得されたものかは分かりません。2)現生のシアノバクテリアには酸素呼吸の機能が備わっているようです。ただ、外部から与えるグルコースなどを取り込んで従属栄養的に増殖できるシアノバクテリアは比較的限られているようです。3)酸素発生の機能(光化学系IIの機能)を備えることによってシアノバクテリアの細胞では、非光合成細胞と比較して、酸素濃度が一万倍程度にも高まったと見積もられています。それに伴って酸素に耐える代謝系が整備されて行ったのだと思います。酸素の存在下で生育する生物と言う意味で、シアノバクテリアは好気性生物です。
理解できなかったこと:細菌の性転換の仕組みについては講義資料より理解できたのですが、細菌の性転換は何を感知して行われるのですか?仮に集団内の性の偏りが感知されて性転換が行われるのだとしたら、♀の個体が減少して新たに♀の個体が必要になるというパターンも考えられると思うのですが、そうした場合は講義資料とは逆に♂から♀に性転換することも可能なのですか?とても面白い質問です。①しかし、生物の世界で雌と雄の比率が1:1に近いケースはむしろ少ないでしょう。2倍体で性染色体をもつ高等生物でも魚類、両生類、爬虫類までは性染色体にかかわらず性転換します。雌雄比はあまり関係しません。環境影響の方が大きいのです。単純な生物では、一般に環境が良いと雌になり、環境が悪化すると雄が出現します。もっと単純な生物では、環境に恵まれれば無性生殖になります。しかし、鳥類と哺乳類くらいは性染色体に従って、約1:1の比で出現します。②おそらく、感知するというより、fプラスミド(f因子)を持つ細菌が性線毛を伸ばし、fプラスミドのない細菌にヒットした時、性線毛が繋がるのでしょう。③fプラスミドを持つ細菌(雄)が2分裂するとき、fプラスミドの入らない方の菌は、雌になるでしょう。またHfrの雄菌は受精させてもfプラスドは崩壊し、受容菌は雌のままです。fプラスミドによる性転換は1万回に1回くらいの頻度と言われています。
理解できなかったこと:深海熱水噴出孔や塩田などはどの生物にとってもかなり厳しい環境なのでかなり大きな進化を遂げないといけないと思うのですが、なぜ古細菌はそのような進化をできて魚などの生物はそのような厳しい環境にも適応できるようにならなかったのですか?とても面白いが、難しい質問です。おそらく、古細菌が分岐した時期(38億年前)は、地球の環境がとても厳しい(高温、高圧、高塩?・・・)状況だったと思います。その後、地球が次第に冷え、雨で薄められる、酸素濃度が上がる・・・など、住みやすい環境になり真正細菌が栄える世界になったのでしょう。極限状況に適応した細菌は少なく、ほとんどが古細菌として進化が止まったのでしょう。魚類などは5億年前に分岐した生物種ですから、極限状況では生存できない細胞から体が出来ています。
質問:1946年にLederberg,J.が大腸菌に雌雄の区別があり、有性生殖を行うことを発見してノーベル賞の受賞したとありましたが、①雌雄の区別があって有性生殖を行えるのは大腸菌だけですか?②また、細菌には環状DNAである、プラスミドが存在していますが、なぜ細菌にはプラスミドが存在しているのですか?③その存在する経緯と雌雄の区別以外の役割は何なのでしょうか?①Fプラスミドには、大腸菌の接合とDNA組換えに関与するF因子があります。しかし、大腸菌以外にもFプラスミドはあります。コレラ菌のP因子,緑膿菌のPF因子などです。②プラスミドは細胞内で複製され、娘細胞に分配される染色体以外のDNA分子の総称です。原核生物の細菌や真核生物で真菌類に属する酵母の細胞質内にも存在します。宿主のゲノムDNAとは独立して自律的に複製を行います。③F因子のようにプラスミドとして細胞質内に存在し、遊離の状態と染色体に組込まれた状態の二つの状態をとることのできる因子をエピソーム (episome) と呼びます。エピソームにはF因子のほか、薬剤抵抗性を支配するR因子 (resistant factor) 、コリシン産生因子、病原性プラスミドなどがあります。プラスミドの由来は、ウイルス同様、明確にはなっていません。
第1回で理解できなかったこととしては、「生命の誕生は40億年前?」のスライドにおいて、研究者らはカナダで見つかった化石は非生物学的理論が当てはまらないので地球最古の生命体の痕跡(有機体)と確信しているとありましたが、その理論とは一体どういうものなのでしょうか。どんな結果から得られた確信なのでしょうか。ケベック州北部のハドソン湾で見つかったこの化石は、①年代的(放射性同位元素による分析?)に37億7千万~42億8千万年前のものと判断されたこと。②化石は、酸化鉄の単繊維とチューブからできており、生物の構造に類似していること(海底の熱水噴出孔のまわりにいる今の微生物が作る構造物に極めて類似)、③酸化鉄が原始細菌により生成されたものと推測されること(炭素化合物と酸化鉄からなる微粒子が見つかった)。④構造物のまわりにはリンを含む鉱物もあったこと。リンは生命の基本構成元素の1つで、死骸が腐敗するときに放出される。⑤今回発見された構造物の分布は無秩序でなく規則的だったこと。当然、異論も出ています。
理解できなかったこと:太陽と地球はほぼ約46億年前に誕生したと言われており、45億年前には海ができ、原始生命体は原核生物(細菌)だというとが分かった。また、約38億年前には真正細菌から古細菌が分岐しました。この時代、生命の歴史の40億年の半分は細菌だけの世界であると分かったがどんな世界だったのだろうと思った。細菌だけの世界といっても、原始地球の隕石やガス、マグマ噴火の灰や高圧の大気、超高熱のマグマと冷えだした地殻、放電や雷、暴風の世界から始まり、水蒸気が雨になり、海が出来、地球から欠けた月が近くにあり、強烈な潮の満ち引きによる大波の中で原始生命である化学合成独立栄養嫌気性細菌が出来た?そのあと独立栄養菌を食べる?あるいは彼らの作った有機物を利用する嫌気性の従属栄養細菌(発酵菌)が出て、弱肉強食の世界の戦いを始めたでしょう。そのうち極限世界に生きる古細菌が分かれ、すみかを広げていきます。最も繁栄した嫌気性の従属栄養細菌が化学合成独立栄養細菌を駆逐し、また、独立栄養菌が利用できる無機物が減ってきたとき、太陽エネルギーを利用して光合成(炭酸ガスと水から糖を作る)をする嫌気性光合成独立栄養細菌がでてきました。その中でシアノバクテリアは光合成で糖とともに酸素を産生するようになりました。海水中の酸素、大気中の酸素濃度が上昇すると今度は、強烈な好気性従属栄養細菌が出現し、主流派となりました。といったストーリーが考えられます。もちろん、いろいろな例外はあります。例えば硝酸菌や硫酸菌のような化学合成好気性菌は、ずいぶん古くからいたようです。