数カ月前、夏の終わりか秋の初めころだったと思いますが、岡山理科大学の財部(タカラベ)先生と雑談する機会がありました。生の牛レバーが食べられなくなった経緯や、安全な生食に関する処理方法の試みとして放射線照射や高圧殺菌の話になりました。食品安全研究の評価委員をしているので、レバーの高圧殺菌の問題点について概要を話しました。その時は、超高圧処理に関する知識がなかったので、詳しい説明はできませんでしたが、生物と超高圧について調べてみようと思いました。その後、2018年11月, 第59回の高圧研修会で「生物と超高圧」について私見を講演することになり、ここ2~3か月、時間の合間を見て、自分なりにまとめてみました。

 これまで微生物などの不活化には、化学的方法(ホルマリン、次亜塩素、アルコールなど)と物理的方法(加熱、放射線、紫外線照射など)が使用されています。しかし、超高圧が生物にどのような影響を与えるかは、まだわかっていないことが多く、その利用方法も非常に多様性がありそうです。

 

 最初の4枚のスライドは、20世紀に生じた問題点とその原因、21世紀の目標である「持続可能な社会の確立」のために克服すべき3つの課題、すなわち、①環境保全と生物多様性の確保、②食の安定供給と食の安全、③感染症の統御をあげてあります。

 

 ①環境保全の重要性は、40億年の歴史を持つ生物が創生した持続可能な食料・環境・エネルギー循環を維持すること、環境汚染・環境破壊により、この循環を絶つことが最も危険であることを認識する必要があるということです。大気も土壌も水も、見えない微生物によって維持されています。動物も植物もミトコンドリア(αプロテオ菌)と葉緑体(シアノバクテリア)による物質循環(糖と酸素の供給、炭酸ガスと水の排出、炭酸ガスと水と太陽エネルギーから糖と酸素を産生する)によって生きているのです。

 ②食の問題では、第一に食料安定供給(食の安全保障)、そして食の安全、食の防衛(アグロテロ)が国際的な課題であるとされました。食の問題は3階建てで、土台である食の安定供給が確保できなければ、食の安全体制は確立できませんし、食の安全が確保できなければ、食の防衛体制を敷くことはできません。食の安定供給に関しては、途上国の人口増加と動物性蛋白質の供給が問題です。途上国における人口増加により、1960年が30億人、2011年が70億人という現状です。動物性蛋白質の需要では、肉の消費が2010年で3億トン、2040年には5億トンが必要、魚介類では2010年の消費が1.2億トン、2040年が1.6億トン必要と言われています。

 ③感染症の統御では、人・動物と物の移動の増加、生活圏の拡大、異常気象などに伴い多発する新興・再興感染症、家畜の越境感染症、人獣共通感染症の有効な統御法の開発が求められています。まとめると、20世紀の高度経済成長主義、人間中心主義、自国優先主義を見直し、人間を特別扱いするのではなく、生物の一員としてヒトを再認識し、生物の多様性と共生、協調を基本に置くという戦略、そして生命科学(ライフサイエンス)がそれを支えるというコンセプトです。超高圧は21世紀の課題の解決に有効か?というのが今日の主題です。

 最初に生物構造の単純系から入ろうと思います。全体としては、超高圧と高分子(核酸、蛋白、脂質、多糖類)、超高圧と細胞構造(細胞膜、細胞壁、小胞、リボソーム・・・)、超高圧と単純な生物群(ウイルス、細菌、 原生動物)、高圧と複雑な生物群(真菌、無脊椎動物、脊椎動物の臓器、器官)の順で考えてみたいと思います。

 

 また、ここで用いられる圧力の単位は、1気圧が0.1Mpaです。中高圧、超高圧では100Mpaが単位としてよく使われますが、これは1000気圧、海中では1万メートルの深海の水圧ということになります。最近の超高圧ではギガ単位(GPa)の世界に入っているようです。ちなみに地球の中心は約360GPaだそうです。

 

 圧力による分子の影響は、基本的にはその分子の持つ構造の複雑さによります。ビタミンやステロイドホルモンのように低分子で活性を持つものは、単独では超高圧でもほとんど影響を受けません。1Gpa=1000Mpaでも、ほとんど変性しないようです。しかし、 果物や組織・臓器中に存在する時などは、他の高分子や酵素が超高圧の影響を受け活性化すること等が多く、そのために2次的に影響を受けることはあります。

 超高圧と高分子について考えてみましょう。低分子が連なった高分子には様々な種類のものがありますが、大きく分ければ、多糖、脂質、核酸、蛋白質になります。

 

 多糖体であるセルロースは6炭糖のグルコースが重合したものであり、キチンはアセチルグルコサミン(グルコースにアセチル基とアミンが結合したもの)の重合体です。基本的には、スライドに示したように6炭糖のくりかえし構造です。

 

 脂質は、誘導脂質(単純脂質や複合脂質から加水分解によって誘導される化合物)及び単純脂質(アルコールと脂肪酸のエステルからなる単純構造の脂質)と複合脂質に分類されます。複合脂質は、その分子中にリン酸や糖を含む脂質で、一般にスフィンゴシンまたはグリセリンが骨格となっています。多糖と脂質を比較すると、6糖の重合体である多糖は比較的超高圧に感受性が低いのに対し、複合脂質単純脂質の他に、燐酸、糖、蛋白質(リン脂質、糖脂質、リポ蛋白など)を含み、その構造は複雑であり、超高圧に感受性が高い思われます。(感受性は誘導脂質<単純脂質<複合脂質)

 

 核酸にはDNA(デオキシリボ核酸)とRNA(リボ核酸)があります。これは糖(5炭糖のリボース)の違いです。核酸は、基本的に2種類の塩基(プリン、ピリミジン)とリボース(5炭糖)とリン酸から出来ていて、比較的単純な構造です。ゲノムを構成する2重鎖DNAは、安定なヘリックス(ラセン)構造をしており、超高圧による影響は少なく、変性には600Mpa以上が必要です。他方、1本鎖のRNAは、しばしば複雑な構造をとっています。1本鎖と部分的に2本鎖(パリンドローム)を持つアモルファスで複雑な構造のため、2本鎖DNAに比べ超高圧への感受性は高いと思われます。2本鎖DNA<1本鎖RNA) 

 

 蛋白質の立体構造はポリペプチド鎖(20数種類のアミノ酸のエステル結合)が一次構造を形成します。核酸の塩基が4種類なのに対し、アミノ酸は、主要なものが20種類アミノ基とカルボキシル基は共通ですが、側鎖と呼ばれる部分がアミノ酸により異なり、

酸性、塩基性、中性(あるいは芳香族、イミノ酸、含硫アミノ酸、脂肪族など)アミノ酸群から出来ており1次構造自体が複雑です。さらに、ポリペプチド鎖がらせん状(αヘリックス)、折り畳み(βシート)及びアモルファス構造になった2次構造をとります。それがさらに折り畳まれ球状となる3次構造、球状の蛋白がいくつか集まり大きな構造をとる4次構造があります。そのため、超高圧処理にたいする感受性は、核酸よりも高いと思われます。球状蛋白質では300Mpa以上から可逆的な変性が始まり、700~800Mpaで不可逆的変性が起こります。単量体の蛋白でも、構造により400Mpaで変性が起こる場合もあります(超高圧への感受性は2本鎖DNA<1本鎖RNA<蛋白)。

 

 超高圧の影響と分子構造の関係をまとめてみると、感受性の高い順に、以下のようになります。

複合脂質:単純脂肪酸と糖、燐酸、蛋白質等の複合体を持つ

蛋白質αヘリックス、βシート、アモルファス構造を持つ)

2本鎖部分と1本鎖からなる1本鎖RNA

ヘリックス構造を持つ2本鎖DNA(塩基、糖、燐酸)

脂肪酸とグリセリンのエステル結合の単純脂肪酸

6炭糖の繰り返し構造からなる多糖類

単独で機能する低分子物質

 次いで、細胞について考えてみます。細胞内小器官は、高分子により構成されています。基本的な小器官は、細胞膜(及び核膜)、リボソーム、細胞壁、小胞体(及び小胞)、ミトコンドリア、葉緑体、核(及び核仁)などです。

 

 細胞膜は複合脂質親水性頭部コリン+リン酸塩、結合部:グリセロール骨格、尾部:飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2分子)からなる脂質2重膜から出来ています。細胞膜は超高圧に非常に感受性が高いことが知られています25℃、100MPa超で、細胞膜障害が起こります。また100MPa以上では45℃、150Mpa以上では37℃で、脂質2重膜は1重になってしまいます。この段階で細胞膜に埋まっている種々の蛋白質(受容体、チャンネルなど)は解離する可能性があります。

 

 リボソームはmRNA蛋白に翻訳する細胞内小器官です。大小2つのサブユニットから

出来ています。真正細菌と古細菌では小さいサブユニット30S大きいサブユニットは50Sです真核生物のリボソームは40S60Sサブユニットから出来ています。各サブユニットは蛋白質とtRNAの複合体で、サブユニットの蛋白質は真正細菌が57ユーリ古細菌が63クレン古細菌が68真核生物が78の蛋白質からなる複合体です。複合体蛋白質の構造は、共有結合で結ばれている場合を除き、約200MPaで解離する等の影響

を受けます。また、大腸菌RNAポリメラーゼは140Mpaで解離してしまいます

 

 細胞壁は、細菌も真菌も多糖類から出来ています。多糖(グリカン)の多層構造をペプチドでつなぐグラム陽性菌の細胞壁(ペプチドグリカン)は厚くて、超高圧に対する感受性は低く、その不活化に300400pa以上が必要とされています。キチン層とグリカン(β1・6、β1・3)の網目構造、マンノース層を持つ真菌の細胞壁の、超高圧に対する感受性は、200400Mpaです。真菌の完全不活化には、400600Mpa以上が必要とされています。

 その他の細胞内小器官としては、ゴルジ装置、リソソーム、ファゴソーム、ペルオキシソーム、小胞体などがあります。これらは、その形体、内容物は異なりますが、細胞膜や核膜と同様脂質2重膜から構成されています超高圧の影響は、細胞膜に準ずると思われます。異なる点は、細胞膜の場合は、細胞内液と溶媒(低張液、等張液、高張液)との境界に存在することです。その分、浸透圧ストレスを受ける可能性があります。小胞膜が破壊されると、酵素を含む種々の生理活性物質が放出され、種々の高分子は影響を受けます。また、核はDNA、核仁はRNA分子が主要な構成分であり、高分子のところで述べたような感受性を示します。さらに、ミトコンドリアは細胞内寄生、共生能を持つαプロテオ細菌に由来します。葉緑体は好気性で酸素を合成するシアノバクテリアに由来します。超高圧に対する感受性は、後で述べる真正細菌に準じます。

 

 超高圧の影響と分子構造の関係をまとめてみると、感受性の高い順に、以下のようになると思われます。

脂質2重膜

  (細胞膜>核膜>ゴルジ体・小胞体>小胞:○○ソーム):100Mpa

②蛋白複合体(リボソームなど)の解離200Mpa以上

ミトコンドリア、葉緑体

  細胞壁をもつ真正細菌に準じて:200300Mpa以上)

細胞内小器官が損傷し、放出された高分子の感受性は前述

複合脂質

蛋白質300400Mpaで変性、不可逆的には700Mpa800Mpa)

1本RNA

2本鎖DNA600Mpa以上)

単純脂肪

多糖類

低分子物質1000Mpa以上?)

 これまで述べてきた考察の根拠の主なものを参考資料として載せておきます。「超高圧処理と各生体物質及び微生物の状態」は、本文も図も非常に分かり易いです。また蛋白質の超高圧処理による蛋白変性の機序の図も分かり易く紹介されています。下のスライドは細菌の超高圧処理において、溶媒の種類と浸透圧が細菌の不活化に影響するという面白い報告です。実際に微生物を不活化する際の条件を検討する際に考慮する必要があります。

 

 ここからは超高圧と単純な生物群について紹介します。ウイルスが生物か否かという議論は、まだあるようです。しかし、最近はメガウイルスのように細菌と同等あるいは細菌よりも大きなウイルスが登場し、遺伝子数も高分子合成酵素の数も多く、細菌との差が分からなくなってきています。それは兎も角、ウイルスは病原体ですので、ここでは、最初に超高圧による不活化条件を見てみます。

 

 図に示したようにウイルスは、ゲノムサイズも形態的にも機能的にも非常に多様性に富んでいます。しかし、基本的にはゲノムと構造蛋白, 被殻(エンベロープやカプセル)から出来ています。ウイルス粒子の表面には細胞受容体と結合する蛋白(リガンド)が埋め込まれています。この蛋白質によって標的細胞に結合し、細胞内に侵入します。

 エンベロープはウイルスが細胞から出芽するときにもらう脂質2重膜です。従って、100Mpaで構造が代わり、リガンド蛋白が離脱すれば、ウイルス粒子は感染性を失います。また、エンベロープのない、カプシド型ウイルスは、200Mpaで、カプシド重合蛋白(カプソメア)が解離すれば、感染性を失うことになります。しかし、ウイルスゲノム(DNAあるいはRNA)を直接不活化するには、600~800Mpa以上?の超高圧が必要となると思います。

 

 「ネコカリシウイルス(非エンベロープウイルス)用いた実験では,200MPa4分また

は250Mpaで2分の条件により4log以上, 275MPa5分間(約21℃で7log以上の

染価の低下が認められています不活化の原因は、主にウイルスRNA の分解

degradaion)ではなくカプシド蛋白質の破壊(disruption)によった。」という報告がなされています。

 40億年の歴史を持つ細菌(モネラ界)は、真正細菌だけでも29門、古細菌が3(あるいは4)門という非常に大きな多様性を持っています。ウイルスとの違いは2分裂で増殖する、細胞壁をもつ、リボゾームを持ち蛋白合成をし、独立した代謝能を有することでしょう。真正細菌は、地球上で最も多様性の多い生物と言えます。

 

 形態的には球菌、桿菌、螺旋菌などがありますし、呼吸系では、好気性菌、嫌気性(偏性、通性)菌、栄養系では独立栄養菌、従属栄養菌など、様々です。しかし、基本的には①厚い細胞壁をもつグラム陽性菌と②薄い細胞壁と外膜を持つグラム陰性菌に代表されます。グラム陽性菌は、超高圧に感受性の低い重層のペプチドグリカンからなる細胞壁をもっています。他方、グラム陰性菌は、薄い細胞壁と超高圧に比較的感受性の高い脂質、リポ質蛋白、リポ多糖類からなる外膜を持っています。そのため、超高圧に対する感受性はグラム陽性菌<グラム陰性菌となります。

 

 グラム陰性菌では200Mpa以上、100分間処理で不活化するものが出てきます。グラム陽性菌では300Mpa100分で不活化するものが現れます。また、400Mpa,10分では、多くの細菌が死滅します耐熱性が比較的高い結核菌(抗酸菌)では耐圧性は高かく、また連鎖球菌,ブドウ球菌、ミクロコックス、コリネバクテリア等グラム陽性菌も高い耐圧性を示しめします。しかし、大腸菌,セラチア菌, サルモネラ菌はグラム陰性菌ですが耐圧性が高い可能性があります芽胞(休眠型)は耐圧性が非常に高い、その不活化には1000MPaあるいは100℃で600Mpa必要です。

 真核生物の最も単純なものは、単細胞の原生生物(原生動物と単細胞藻類)です。原生動物のうち寄生性、病原性を持つものを原虫と呼んでいます。単個細胞レベルで考えると、多細胞真核生物の細胞と比較しても、原生動物の細胞は非常に大きく、かつ構造は複雑です。

例えば、平均的なウイルスのサイズは100nm(0.1 μm)、細菌は1~1.5μmx2~6μmです、ヒトのリンパ球が7μm、単球(マクロファージ)が15μmです。これに対し、原生動物のゾウリムシは30~100μmという大きさです。

 

 原生動物の進化上の分岐は、トリコゾア亜門のトリコモナスやランブル鞭毛虫(ジアルジア)が最も古いと思われます。ジアルジアのゲノムは半数体(n) あたりおよそ 12Mbp で、5本の線状の染色体からなり、その末端にはテロメアがあります。大きさは12μmです。

 次いで分岐したのがキネトプラスト門に属するレーシュマニアやトリパノソーマです。ブルートリパノソーマのゲノムは1Mbp以上の染色体が11対(合計11Mbp)と、それに満たない(50-500Kbp100種ほどの小さな染色体群からなっています。この小さな染色体群には主に抗原多型に関与する遺伝子が存在しています。大きさは1030μmです。

 3番目の分岐はアメーバ動物門の根足類アメーバです。赤痢アメーバは約24Mbpのゲノムで、14本の染色体を持っています。赤血球などを貪食します。大きさは1550μmです。

 4番目は、多くの胞子虫を含むアピコンプレックス(頭頂複合体)門の原生動物です。代表格のマラリア原虫は、23Mbpのゲノムサイズで、14本の染色体を持ち、約5300の遺伝子をコードしています。抗原多型は染色体のサブテロメア領域に集中しています。大きさは、やや小型です。マクロガメートサイトで1015μmです。

 最後の分岐は繊毛虫門です。ゾウリムシのゲノムは2倍体(2n)の小核と多倍体(polyproid)の大核からなり、そのサイズは約87Mbpです。原虫のバランチジウムの栄養型は、長さ30100μm,幅2070μmという大きなものです。

 

 超高圧の影響と単純な生物群の関係をまとめてみると、感受性の高い順に、以下のようになると思われます。

①最も大型の単細胞で、非常に複雑で多様な細胞内小器官をもち、脂質2重膜の細胞膜しか持たない原生動物は超高圧に対する感受性は非常に高い(原虫100MPa

②細胞から出芽する時に、細胞膜をエンベロープ(外殻)としてもらうウイルス群(エンベロープウイルス100200Mpa)

③カプソメア(単位蛋白質)の重合したカプシドを外殻としてもつカプシドウイルス群200Mpa以上)

④薄い細胞壁と外膜を持つグラム陰性菌200Mpa, 100以上)

⑤厚い細胞壁をもつグラム陽性菌300Mpa, 100以上)

⑥細菌類の芽胞1000Mpa以上)

 比較的単純な多細胞生物には真菌類(カビやキノコ)があります。真菌類の原点は水棲の真菌類(ミズカビ)と思われます。ツボカビ門は、最も原始的な真菌に属します123 1500 が知られています多く河川や湖沼などの淡水中,森林や草原などの土壌中生息しています。このうち寄生種は,菌類,藻類,コケ植物,維管束植物,線虫,ワムシ,昆虫等の様々な生物を宿主とします。しかし、カエルツボカビ以外に脊椎動物(両生類)を宿主とする寄生種は報 告されていません。

 

 次いで分岐したのが接合菌門のグループです。接合菌門は下等な陸生真菌です。多くは有機物を分解して生活する腐生菌に属します昆虫や小動物、菌類に寄生するものが多く、線虫を捕らえるものは線虫捕食菌よばれていますトリコミケス綱は昆虫や多足類などの節足動物の腸内に生息しています接合菌門は1050が知られています。

 

 第3に分岐したのが、最も繁栄している子嚢菌類です。子嚢菌門のうち地衣化(真菌と藻類の共生)しているものの割合は46%と約半数です嚢菌56億年前生まれました。非常に多様性に富み、酵母 、カビ(アオカビ、コウジカビ、アカパンカビ) 、白癬菌(水虫のたぐい)、 カンジダ  キノコ(アミガサタケ、トリュフ)や「冬虫夏草」、麦角菌の仲間があります。子嚢菌門は32000と真菌類の最多種です。

 

 最後に分岐したのは担子菌類です。担子菌門の多くは植物寄生(茸)、あるいは土壌の有機物を分解して増殖するものです。子嚢菌門についで多く、真菌の約30%を占めていますいます2群に大別され、サビキン綱やクロボキン綱は、丸ごと植物寄生です。他のグループは「茸」です。担子菌門は22000あります。

 

 真菌類は、200Mpa以上で不活化されます。多くの真菌は400Mpa, 10分でが不活化されます。菌糸先端部には、成長点があります、この部分が栄養吸収のための役割と菌糸の成長の原点です。先端小胞集団、及びゴルジ体、ミトコンドリア、液胞、小胞体、微小管、アクチンなど非常に複雑な細胞内小器官をそろえています。表層には細胞膜と厚い細胞壁があります。高等真菌類で個々の細胞を隔てる隔壁は、細胞壁と同じ構造でできています

 

 多細胞の動物について考えてみたいと思います。スライドに示したように2胚葉の刺胞動物門、ヒドラであっても、既に内胚葉、外胚葉及び中膠の組織を持ち、細胞も神経細胞、刺胞細胞、間細胞、消化細胞、腺細胞、表皮筋細胞と分化しています。このように機能分化した多細胞動物では、超高圧処理により最も影響を受けやすい感受性細胞群が律速となります。

 細胞の感受性の高さは?大型>小型、細胞質が多い>少ない(核が大きい)、複合脂質が多い>少ない、細胞内小器官が多い>少ない、基底膜を持たない>持つ、鞭毛・線毛を持つ>持たない、細胞骨格が少ない>多いという関係になるでしょう。

 

 具体的には、大型で、細胞質が豊富、核が 小さく、細胞骨格の乏しい、脂質成分の多い、複雑な細胞群内胚葉系 or 錐体細胞等の細胞系が感受性が高く、100Mpaあるいは、それ以下で不活化される可能性があります。

 

 3胚葉性の動物の基本である扁形動物(吸虫、条虫で軟体動物へと進化)と線形動物(線虫で甲殻類、節足動物へと進化)は、寄生虫として退行性の進化を遂げたため、その体構造は比較的簡単で、ほとんどは生殖器官と消化器官になり、運動器官、感覚器官等は退化しています。扁形動物は体表に角質層は持ちませんが、雌雄同体で、200MPa程度で不活化されます。

 

 他方、線形動物は体表が発達した角皮に覆われています。特徴としては、形態は細長い円筒形偽体腔体節はなく、体表厚いクチクラ層で出来ています。上皮は長軸方向の神経索をみ、頭部には化学受容器官が発達しています。筋肉質の消化管が発達し、前端に口,筋肉質の咽頭,後端付近に肛門があります。神経環が食道の中央部を取り囲み、はしご状神経系腹側の長軸方向に神経索が走っています。
筋肉系は縦走筋長軸方向の神経索と連絡しています。循環器系と呼吸器系を欠き(低酸素、嫌気呼吸)ます。多くは雌雄異体で,生殖腺をもち交尾します。雄は総排泄腔に肛門と陰茎を雌は生殖口陰門)を持ちます。構造が複雑なため、超高圧には比較的感受性です。
25℃で200 MPa、5分間高圧処理により、トリヒネラ症の原因となる旋毛虫Trichinella spiralisの筋肉内幼虫が死滅したという報告があります

 最後に、高等動物の3胚葉由来の臓器の超高圧に対する感受性について考えてみたいと思います。もともと高等動物の組織や臓器に存在する微生物と宿主の細胞群の感受性の違いを考えてみようというのが、今回の目的の1つです。尤も、精製された病原微生物を不活化するという別の目的もありますが。

 

 宿主臓器、中胚葉の筋肉から始めます。牛肉では、200300 MPa , 加熱しなくても硬直肉は軟化します。圧力強度の増加ととも断片化した筋原線維増加します。また筋内, 筋周膜などの結合組織の変化が, 高圧処理肉では瞬時に起こるようですこれは、①コラーゲン線維間をつなぎ止めているプロテオグリカンの構造変化あるいは②コラーゲン線維からの脱離と関係している可能性があります。100 MPa では筋原線維が短縮するため, ドリップが増加しますしかし、200400 MPa では, ドリップは逆に減少します(破壊された筋原繊維間に水を保持するため)。10, 150 MPa では赤みを帯びたやや輝きのある色調(ピンク色), 250350 MPaでは、赤味の色調が減少し白色化, 400 MPaでは加熱色となります。

 

 鯨肉では、ミンククジラの赤身肉を凍結状態で真空包装、20℃で100400MPa20分処理緩慢解凍で肉の応力、ドリップ量とも未処理と差がありません。色調は100MPa, 20では明度、赤色度、黄色度に未処理と差がなく、200MPa,20分及び400MPa,10では肉眼的には黄色みが強く、白っぽい色調となりました。鯨肉の主な筋肉色素であるミオグロビン、それを取り巻く筋肉蛋白質の変性によるものと推定されていますhttps://www.hro.or.jp/list/fisheries/marine/att/78-02.pdf

 しかし、ヒラメ刺身食中毒の原因となるクドア(粘液胞子虫:ミクソゾア門)は高圧処理に弱いと考えられますが、刺身の高圧処理データは見つかりませんでした。

 

 宿主の内胚葉由来の臓器として肝臓と消化管について調べてみました。

肝臓(牛)105107CFU/gの菌数の大腸菌、サルモネラ菌(グラム陰性菌)では、300Mpa

(90分)400Mpa(60分)500Mpa(30分)で検出不可となりました。しかし、黄色ブドウ球菌(グラム陽性菌)では、600Mpa(30分)で検出不可となりました。他方、400Mpaでは、

色が変色し、柔らかさ、おいしさは変わりませんでしたが、500Mpa有意に変性しました。Nippon Shokuhin  55  Kagaku Kogaku Kaishi Vol.53, No12,651~654(2006)

 別のデータでは、牛肝臓が300Mpa, 10分、25では、硬化・脱色がおこり生肝臓としては適合しない。また、細菌のog3減少には400Mpa以上が必要。ミトコンドリアの膨化、粗面小胞体の減少が起こったという報告があります。https://www.hindawi.com/journals/jfq/2017/7835714/

 牛のミノ(第1胃)、センマイ(第3胃:葉胃)、シマ腸(大腸)では、10の黄色ブドウ球菌を添加、400Mpa, 60 処理で検出不可となりました。他方、牛センマイでは400Mpa, 60処理では、色・美味しさ・柔らかさに変化なしという報告があります。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk/53/12/53_12_651/_article/-char/ja/

 

 最後に、宿主の外肺葉由来臓器について紹介します。とプリオン:感染を引き起こすレベルのプリオン含むハムスターの脳をホットドックに入れ, 121137℃で690, 1000, 1200 MPa の高圧処理をしたところ,プリオンのレベルは感染性を示さない程度に減少したと報告。Proc Natl Acad Sci U S A. 2003 May 13;100(10):6093-7

 

 胎盤(栄養外胚葉):様々な方法により抽出液(プラセンタエキス)が作成される

 例、①前処理哺乳動物の正常分娩胎盤から血液、汚物及び臭い部位の除去  

    ②処理後の胎盤と胎盤重量対して0.2〜2重量のプロテアーゼ

     酵素とを、袋体に内挿して真空包装する.

          ③真空包装した袋体を50MPa以上〜200MPa未満の圧力で20

               50の範囲内で、1〜3保持(抽出).

          ④袋体内の内容物からプラセンタエキス原液を分離する固液分離

    ⑤固液分離後のプラセンタエキス原液を静置させて熟成させるエイジング

がありました。

妻と作った人形。

娘の修学旅行の写真をもとにしました。

オリジナルの写真です

 

娘のドイツ時代のカーニバルの写真です。大家さんは子ネズミちゃん「モイスヒェン」といっていました。

下の人形は妻の作品です。

先日、妻の作品が創刊700号記念家庭画報大賞の佳作に入りました。

題「何して遊ぼう」です。

 

妻が、稽古に通い、粘土で作った作品です。昨年、東京フォーラムで、他の生徒さんと一緒に展示されました、「仙人草」

(水やり不要です)。