千葉科学大学に在籍していた折に、危機管理学部の田中先生と巨大津波の構造と防潮堤による防御方法について数年間議論しました。楽しい討議でした。その後、今治の獣医学部設置と獣医学部生教育に忙殺され、議論する機会はありませんでした。
6年間の任期をおえて東京に戻ったおり、田中先生から計算が完了したとの連絡をもらい日本語の原稿を見せてもらいました。数か月の議論の結果として、この英文の論文を書き上げました。レイアウトはChatGPTとの議論の結果です。テクニカルレポートという形式です。英文よりは日本語の方がわかりやすいと思い、DeepLで和訳してもらったものを載せるつもりです。論文が受理されるまでお待ちください。
千葉科学時代に田中先生と議論した津波の回流水槽モデルが論文になりました。
「水中防潮堤による高流速津波の制御」です。
Hydraulic modeling of submerged seawalls under high-velocity tsunami currents Atsushige Tanaka, Eisaburo Matsunaga, Rina Kohata, Yasuhiro Yoshikawa
One Health Sciences 9(1), 1-14, 2026
https://plaza.umin.ac.jp/~one-health/9/9.1.pdf
概要:2011年3月11日の東日本大震災では、従来の想定を超える巨大津波が発生し、日本各地に甚大な被害をもたらした。本研究では、千葉県銚子沖での現地観測と水理実験を組み合わせ、津波の本質的な破壊メカニズムを解明するとともに、新たな防災構造として「水中防潮堤(submerged seawall)」の有効性を検討した。
論文の内容:現地観測では、津波は単なる「波」ではなく、以下の2つの異なる流れ構造から構成されていることが観察された。①表層の波動成分(SuWaF:surface wave flow)と、」② 海底付近から発生し前方へ突進する高速ジェット流(BeJeC:beneath-jet current)。 特に、沖合にほぼ静止する巨大な白い水壁(GW3:giant white water wall)が形成された後、その下から現れるBeJeCが前方へ突進し、主な破壊力を担っていることが想定された。このジェット流は秒速10 m以上の超臨界流であり、従来の防潮堤では十分に抑制できない。
この問題に対し、本研究ではサンゴ礁などの自然構造に着想を得て、水中に設置する「透過型構造物」によるエネルギー分散を検討した。具体的には、①ダクト型水中防潮堤と②多孔板型水中防潮堤 の2種類を設計し、高速循環水路装置(T-mCFT:tsunami-mimic circulating flume tank)を用いた実験を行った。その結果、これらの構造物は流れを完全に止めるのではなく、逆流(バックフロー)と乱流を発生させることでエネルギーを分散・減衰させることが分かった。特に2種類を組み合わせた場合、流体の運動量(破壊力)の約65%を低減 数値シミュレーションでは最大75%程度の減衰効果 が示された。
さらにモデル計算では、水中防潮堤を設置した場合、津波の遡上高さは大幅に低減し、内陸への到達水位が約18.9 mから1.6 m程度まで抑制される可能性が示唆された。また、津波自体も進行過程でGW3の形成と崩壊によりエネルギーを失うため、この自然現象と人工構造物の効果を組み合わせることで、より高い減災効果が期待される。
結論:本研究は、津波の破壊力の本質が「高速ジェット流」にあることを示し、その対策として、「止める防災」から「流れを制御し減衰させる防災」への転換を提案するものである。水中防潮堤は、従来の高堤防とは異なり、景観や環境への影響を抑えながら、巨大津波に対する実効的な対策となる可能性を持つ。今後の沿岸防災において、新たな選択肢としての社会実装が期待される。